
元夫に捨てられたら、逆に儲けまくった〜再婚は、あとでいい〜
章 3
しかし、彼の瞳の奥には、欲望の欠片も見えなかった。 あるのは、骨の髄まで凍てつくような冷たさだけだった。
まるで、嫌悪感を抱きながらも、ただ公務をこなしているかのように。
佐藤婉寧は、彼が電話を切った時の決然とした態度を思い出し、再び手を上げて彼を突き放そうとした。
鈴木ケイは素早く反応し、彼女の両手を掴むと、頭の上で押さえつけた。 彼は冷ややかに目を伏せ、警告するように言った。 「婉寧、もう芝居はやめろ。 俺には、お前に付き合う時間も、我慢もない」
その言葉が終わるやいなや、彼は荒々しく彼女の身体に侵入した。
婉寧は痛みに涙がこぼれそうになったが、唇を固く噛みしめ、声を殺した。 痛みと抵抗から、身体はかつてないほど強張っていた。
彼女の激しい抵抗を見て、ケイの眼差しはさらに陰鬱で凶暴なものへと変わった。 彼はさらに力を込めて彼女の腰を掴み、無理やり支配すると、その身体を好き勝手に弄んだ。
一巡目が終わった後、婉寧は彼がいつものようにすぐに立ち去るものだと思っていた。 しかし、今夜の彼はまるで別人だった。 彼女の顔を枕に押し付けると、新たな侵犯を始めた。
その最中、彼は彼女の耳元に顔を寄せ、低く掠れた声で囁いた。 「婉寧、これ以上俺に面倒をかけるようなら、鈴木夫人という立場から引きずり下ろすことも厭わないぞ」
どれほどの時間が経ったのか、婉寧はもはや耐えきれず、意識を失った。
その夜、彼女はひどく落ち着かない眠りについた。何度も同じ悪夢を見た。
夢の中で、誘拐犯が彼女に尋ねる。 なぜケイは彼女の生死を全く気にかけないのかと。 彼女は答えた。 彼が自分を愛していないから、生きようが死のうがどうでもいいのだと。
すると、誘拐犯は彼女を崖から突き落とした。
婉寧は悪夢から飛び起き、勢いよく身体を起こした。
枕もシーツも、冷や汗でびっしょり濡れていることに気づいた。 しばらく呆然と座り込んだ後、彼女は痛む身体を引きずってバスルームへ向かい、シャワーを浴びた。
朝食を済ませた後、婉寧は車で会社へ向かった。
エレベーターを降りた途端、女性社員が笑いながら声をかけるのが聞こえた。 「高橋さん、オフィスのお掃除、終わりましたよ」
婉寧は足を止め、声のする方へ顔を上げた。
少し離れた場所に、一人の女性が立っていた。 ブランド物の服に身を包み、肩まで届く黒髪を揺らし、優雅な佇まいをしている。
ケイがその女性をずっと隠してきたため、婉寧は彼女の後ろ姿を何度も見たことはあったが、その顔を正面から見たことは一度もなかった。
彼女もまた、ケイが他の女性からのアプローチを全て無視し、これほどまでに一途に想い続ける女性が、一体どれほど美しいのかを知りたいと思っていた。
婉寧の探るような視線を感じ取ったのか、その女性はゆっくりと振り返った。
二人の視線が交錯した瞬間、婉寧は全てを悟った。 なぜケイが自分を嫌悪するのか、その理由がようやく理解できた。 自分と高橋菱荷は、全く異なるタイプの人間なのだ。
菱荷が太陽のように明るく輝いているのに対し、自分は月光のように穏やかで内向的だ。 二人を比べること自体が、間違っている。
「高橋さん、 こちらが佐藤社長部長です」 女性社員が親しげに紹介した。 「佐藤社長部長、 こちらが新しくいらした高橋菱荷さんです」
菱荷の瞳に複雑な感情がよぎったが、すぐに微笑みを浮かべ、優しく言った。 「佐藤さん、初めまして」 婉寧は無表情に頷き、冷ややかに返した。
「まだ昼間だというのに、高橋さん、随分と早くからお出ましですね。 少し気が早すぎませんか?」
菱荷の顔色は一瞬で青ざめた。 婉寧が、自分を日の当たらない第三者だと皮肉っていることを理解したのだ。
心の中は憎悪で満ちていたが、顔には依然として優しい笑みを浮かべていた。
「ケイ兄さんが、朝早くに車で送ってくださったんです。 本当に申し訳ありません」
口では申し訳ないと謝りながらも、その口調には自慢と得意げな響きが隠しきれていなかった。
(ケイ兄さん……随分と親しげに呼ぶものだ)
その女性社員は、二人の間に流れる緊張した空気を察し、慌てて間に入ろうとした。
彼女は婉寧に笑顔で言った。 「佐藤社長部長、今日から高橋さんはマーケティング部の新しい部長になります。 役職上は、あなたと同格です。 ただ、鈴木社長から特別に、高橋さんは社長にだけ責任を負うようにと指示がありました」
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