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初夜に部屋を間違えたら、冷徹な次期総帥に囲われました。 の小説カバー

初夜に部屋を間違えたら、冷徹な次期総帥に囲われました。

篠原琴音は、義父による望まぬ縁談を逃れるため、姉と共に名門・長谷川家へ嫁ぐことになる。しかし初夜の晩、彼女は手違いから姉の婚約者である長男・彰人の部屋へ足を踏み入れてしまった。長谷川家はその間違いを逆手に取り、花嫁を入れ替えたまま姉妹に「三ヶ月以内の妊娠」という過酷な条件を突きつける。冷徹な彰人との新婚生活は、彼の拒絶と無関心から始まった。琴音は居場所を失う恐怖から懸命に尽くすが、ある日、彰人が自分を「厄介な荷物」と見なしている事実を知り、さらには彼が密かに避妊を続けていた裏切りに絶望する。心を閉ざした琴音は、役目を果たし彼のもとを去る決意を固めた。しかし、彼女を失う現実に直面した瞬間、常に冷静だった彰人は激しく取り乱し、跪いて愛を乞うのだった。一方、自由奔放な次男・悠真に嫁いだ姉もまた、独自の思惑で動き出す。策略家の姉と軽薄な義弟、そして後悔に狂う彰人。二組の夫婦が織りなす、手遅れから始まる愛の物語。
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2

篠原琴音は一晩中、激しく翻弄された。

うつ伏せにされたり仰向けにされたり、小さな体は何度もひっくり返された。足は震えて力が入らなかったが、顔も知らない夫に逆らう勇気などなかった。

深夜に目が覚めると、隣では男がまだ眠っていた。部屋が少し明るくなっていたので、彼女はこっそりと長谷川悠真の顔を見てみようと思った。

しかし、彼女が視線を向けた瞬間、男もパッと目を開けた。

琴音は驚いて飛び退き、男の足に自分の足が触れてしまった。昨夜の情事を思い出し、顔が瞬く間に真っ赤に染まった。

長谷川彰人も、ようやくこの少女の顔をはっきりと捉えた。

小さく青白い顔は、恐怖と羞恥で不自然な赤みを帯びている。濡れた瞳で、怯えた子鹿のように彼を見つめていた。

篠原栞奈は25歳だったはずだが、この娘はどう見てもそれより幼く見える。

「ここに嫁いできた理由は分かっているはずだ」

彰人は彼女にいくつか話しておきたいことがあり、声をかけた。

すると少女は慌てて口を開いた。「分かっています、悠真様。私……頑張って妊娠しますから」

男の瞳がスッと細くなった。「悠真?」

「は……はい」

彰人のまとう空気が、一瞬で凍りついた。

昨夜の暗闇の中で、すでに違和感はあった。あまりに臆病すぎて、母親から聞いていた「淑やかな栞奈」とは似ても似つかなかったのだ。

ただ、酒が少し回っていたことと、腕の中の体があまりに柔らかかったことで、些細な違和感を気に留めていなかった。

「お前は誰だ」

男は氷のように冷たい声で、威圧的に問い詰めた。

琴音は彼の急変した気迫に震え上がった。「わ……私は琴音です……」

彰人はその名前を繰り返し、冷ややかな声で告げた。

「栞奈ではないのか?篠原家の次女……」

琴音は目に涙を浮かべながら、力なく頷くことしかできなかった。

彼女もようやく異変に気づいたようだった。目の前の男は悠真ではなく、本来なら姉の夫になるはずの彰人なのではないか。

これでおしまいだ……。

彰人の周囲の気圧は、恐ろしいほど低くなった。

琴音は布団にくるまり、こらえきれずに涙をこぼした。「ご……ごめんなさい……」

彰人は、昨夜の彼女の不慣れな反応や、か細いすすり泣き、そして今朝の涙を浮かべた瞳を思い出した。彼女が異常なほど怯えていた理由がようやく繋がった。

姉妹で乗り間違えたのだ!

そして自分も、取り返しのつかない間違いを犯してしまった。

となれば、悠真の方は……。

彰人は眉間を指で押さえ、ベッドの上で丸くなって肩を震わせている少女を深い眼差しで見つめた。

「ここにいろ。俺の許しがあるまで、一歩も外へ出るな」

琴音はビクッと体を震わせ、泣き声を強引に飲み込んだ。赤くなった目と鼻の先が、この上なくいじらしく見えた。

彰人はスマートフォンを手に取り、部屋を出ていくと悠真に電話をかけた。

***

一方、その頃。

悠真は朝から電話の音で叩き起こされた。背中を向けて眠っている女を一瞥してから、スマートフォンを手に取った。

寝起きの悪さから、荒っぽい口調で応じる。『誰だよ!』

その声で栞奈が目を覚ました。

寝返りを打とうとした瞬間、全身に鋭い痛みが走った。

32歳の男があれほどの体力を持っているなんて。

彼女は無意識に自分の下腹部に手を当てた。3ヶ月もあれば、きっと妊娠できるはずだ。

もし彼の体に問題がなければの話だが。

彰人の子供さえ授かれば、夫の寵愛は得られずとも、長谷川家の夫人としての地位は盤石になる。そうすれば妹を守る力も手に入るはずだ。

たとえ琴音が妊娠できずに実家へ戻されることになっても、彰人に頼んで妹を引き取って養うこともできるだろう。

そんな思考を、男の声が遮った。

『俺、“義姉さん”を抱いちゃったってこと?』

その言葉を聞いた瞬間、栞奈の頭の中が真っ白になった。

悠真は気にする様子もなく、鼻で笑った。『いや、まだ入籍前だし義姉さんじゃねえか。なあ兄貴、今から入れ替えるか? あんた、俺の使い古しでも気にしないだろ?』

電話が切れると、栞奈も布団を引き寄せて起き上がった。

上半身裸のままベッドの背もたれに寄りかかっていた悠真が、隣の女へ視線を向けた。

とんでもないことになった。母親が決めた女なんて興味はなかったが、抱く相手を間違えるというのはあまりに馬鹿げている。

昨夜、この女が全く物怖じせず、むしろ度胸があることに驚いた理由がようやく分かった。

2人は同時に昨夜のことを思い出した。

寝室のドアを開けた時、悠真は母親から「相手はまだ20歳の娘だ」と聞かされていた。

そう言われると、かえって怖がらせてやりたくなるのが彼の性分だ。

20歳の娘など、まだ何も知らない子供だろう。

悠真は薄暗い部屋の中で平然と座っている彼女を見て、からかってやろうと思いついた。

「ここへ連れてこられた理由は分かっているな」

わざと意地悪く尋ねた。

栞奈は2秒ほど沈黙した。彰人は32歳なのだから、酸いも甘いも噛み分けてきた男だろう。今さら恥じらったり、もったいぶったりする必要はないと考えたのだ。

「ヤるんでしょ」

彼女は潔く答えた。

悠真は眉を上げた。ーーずいぶん物分かりのいい娘だ。

彼は小さく笑った。暗闇で顔はよく見えなかったが、そのシルエットが華奢であることは分かった。

「ヤるなら、まずは俺をその気にさせてみろ」

言い終わるか終わらないかのうちに、女は直接彼の膝に乗ってベルトを解き始めた。悠真は目を見開いたが、すぐに面白そうに口角を上げた。これほどギャップがあるとは。

彼は咳払いをした。「まずは自分で脱げよ」

悠真は2秒ほど間を置き、欲望のせいでがっついているように見えないよう、自らの反応を抑え込んだ。

母親が選んだ女は、確かに悪くない。

悠真が身を乗り出し、彼女をベッドに組み敷こうとしたその時、少女の声が耳に届いた。

「待ってください、長谷川様」

女は反対側の枕を掴むと、それを自分の腰の下に敷いた。

栞奈の頭の中は、一刻も早く妊娠することでいっぱいだった。

「30分くらいあれば、いけますか?」

悠真は眉をひそめた。ーー俺を種馬か何かだと思っているのか?

彼は彼女のシャツのボタンを外し、顔を寄せてキスをした。

……

事が終わった後。

「あの……少しの間、こうして抱いていてくれませんか?」

悠真はニヤリとした。やはり若い娘だ、終わった後は甘えたいのだろう。

「頼んでみろよ」と言いかける前に、また彼女の声が聞こえた。「この方が妊娠しやすいって聞いたので……」

彼はひどく不機嫌になった。

そのため彼女の言葉など一切無視し、一晩中安らぎを与えることはなかった。

……

まさか、自分が抱いたのが兄のために用意された女だったとは。

悠真は栞奈を見た。彼女は自分よりもずっと落ち着いているように見えた。

栞奈は布団を整えて胸元を隠すと、冷静な声で沈黙を破った。「つまり、昨夜のことは誤解だったということですね」

悠真は、彼女のその冷徹なまでの冷静さを眺めながら、昨夜自分から跨ってきたり枕を敷いたりしていた姿を思い出し、再び不快感が込み上げてきた。

彼は皮肉っぽく口の端を上げた。「ああ、誤解だな」

栞奈は微かに眉をひそめた。彼の軽薄な口調は気に入らないが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「彰人様の方は……何と?」彼女は妹のことと、現在の状況がどうなるのかを何よりも案じていた。

彼女も妹も、絶対にあの家へ送り返されるわけにはいかない。

悠真は、電話越しの兄の冷淡な声を思い出した。この件は間違いなく本邸へ戻って話し合うことになるだろう。

しかし、彼はわざと意地悪く言った。「どうもこうもないさ。このままにするしかないだろ」

栞奈は凍りついた。琴音はあんなに臆病なのに、あんなに腹の底が読めない彰人の手に落ちてしまった。今頃、生きた心地もしていないはずだ。

「ダメよ!」

栞奈は思わず叫んだ。必死な口調で訴える。「琴ちゃんはまだ幼くて、世間知らずなの。彰人様のところに置いておくなんてできないわ!」

「篠原栞奈、長谷川家がこんなスキャンダルを公にすると思うか? それに、兄貴が一度抱いた女を、改めて俺のベッドに送り込むと思うか?」

栞奈の顔からは血の気が引き、爪が手のひらに深く食い込んだ。

悠真の言うことが事実であることは分かっていた。長谷川家がこんな荒唐無稽な話を世間に公表するはずがない。

彼女の瞳から一瞬で光が消えるのを見て、悠真の不快感は少し和らぎ、代わりに言いようのない興奮が湧いてきた。

この冷静さを装っている女の弱点は、ここにあったのだ。

彼は身を乗り出し、彼女の長い髪を一房指に巻きつけた。いつもの無頓着な態度に戻って告げる。「決まったことだ、諦めろ」

「兄貴みたいな氷男の相手をするより、俺の方がずっとマシだろ。子供が欲しいんだろ?」

彼は彼女の耳元に顔を寄せ、熱い吐息とともに低い声で囁いた。「少なくとも俺なら、枕のことなんて気にしなくて済むようにしてやるよ」

しかし、栞奈の心は半分冷え切っていた。

琴音はどうなってしまうのか。自分はどうなってもいいが、彰人は長谷川家の長男だ。琴音が相手をしなければならないのはあの男だけでなく、長谷川家の両親もなんだから……。

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