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余命宣告、彼との終焉 の小説カバー

余命宣告、彼との終焉

余命わずかと宣告されたその日、杏樹は最愛の恋人である玉置春斗の残酷な本性を知る。無名だった彼をトップスターへと押し上げるため、彼女は己の人生と才能のすべてを捧げてきた。しかし、春斗にとって彼女は愛する対象ではなく、単なる「便利な金づる」に過ぎなかったのだ。浮気相手の人気モデル・梅田凛香から送りつけられた動画には、仲間と共に杏樹を地味で退屈な女だと嘲笑う彼の姿が収められていた。献身的に尽くしてきた日々も、削り続けた命も、すべてが踏みにじられた瞬間、深い愛情は冷徹な殺意へと変貌を遂げる。残された時間はあとわずか。杏樹は病の治療を拒否し、自らの命を対価にした最後の計画を実行に移すことを決意する。ターゲットは、裏切り者の春斗と凛香。華やかな表舞台に立つ彼らからすべてを奪い去り、死してなお消えることのない絶望と後悔をその胸に刻み込む。悲劇の幕開けと共に、命を賭した壮絶な復讐劇が今、静かに始まる。
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余命宣告を受けたその足で, 私は恋人の裏切りを知った.

私が人生の全てを捧げてトップスターに押し上げた玉置春斗は, 裏で私を嘲笑っていたのだ.

「杏樹? あいつはただの便利な金づるだよ. 地味でつまんねぇ女」

浮気相手の人気モデル・梅田凛香から送られてきた動画の中で, 彼はそう言い放ち, 仲間たちと下品に笑っていた.

私の愛も, 才能も, 削ってきた命さえも, 彼にとってはただの「道具」でしかなかった.

心臓が張り裂けるような痛みの中で, 私の愛は冷徹な殺意へと変わった.

残されたわずかな時間, 私は治療なんてしない.

春斗, そして凛香.

あなたたちから全てを奪い, 私が死んだ後も一生消えない後悔を植え付けてやる.

私の命を賭けた, 最後の復讐劇が幕を開ける.

第1章

(桜庭杏樹 POV)

私の心臓は, まるで時限爆弾のように, 残り少ない時間を刻んでいた. その爆弾の針が止まろうとしている時, 私は彼が別の女と笑い合う姿を週刊誌で見た. そして, その瞬間, 私の人生のすべてを捧げた「彼」と, 私の余命が, 酷く重なり合って見えた.

手のひらでぐしゃぐしゃになった診断書が, 私の人生の予定をひっくり返した. 冷たい紙の感触が, まるで私の血管を流れる血液が凍りついたかのように感じられた.

「桜庭さん, 残念ですが... 」医師の声は, なぜか遠く聞こえた. 彼の口から発せられる残酷な言葉が, 私の耳朶を叩くたびに, 世界が色を失っていくようだった. 「残された時間は, 長くありません. 」

遺伝性の重い心臓病. 手の施しようがない. 私の祖母も, 母も, 同じ病で若くして命を落とした. 私は, その宿命から逃れられないことを知った. この現実は, あまりにも重すぎた.

待合室の硬い椅子に座り, 私はぼんやりとスマートフォンを操作した. 指先が画面を滑り, 目に入るのは, 無数の芸能ニュース. 画面の明るさが, 私の心の闇をさらに際立たせた.

その中に, 見慣れた顔を見つけた. 人気ロックバンドのボーカル, 玉置春斗. 彼の隣には, 人気モデルの梅田凛香. 二人の親密な写真が, 私の視界を占拠した.

記事の下のコメント欄を開くと, 案の定, 批判的な言葉が並んでいた. 「またか」「この男は本当に懲りない」「相手の女性が可哀想」. でも, 私の胸を締め付けたのは, そんな言葉ではなかった.

「桜庭さん, お迎えが参りました」秘書の声に, 私はハッと顔を上げた. 診断書を慌ただしく折りたたみ, バッグの奥に押し込む. この事実を, 誰にも知られたくなかった. 特に, 彼には.

残された時間. 頭の中には, すぐに終わらせるべき仕事が山積していた. それが終わったら, 海外の病院にでも行ってみようか. わずかな希望に, 私はしがみつこうとした.

車に乗り込みながら, 私は春斗にメッセージを送った. 「今夜, いつ帰るの? 」短い言葉に, 私の不安と期待が込められていた.

メッセージを送信してから, もう一時間以上が経った. 画面は沈黙を守り, 既読マークもつかない. 焦りが, 私の胸の奥でじわりと広がる. 彼は, 今どこで何をしているのだろう.

我慢できずに, 何度も電話をかけた. しかし, コールは虚しく鳴り続け, そして「お話し中」の機械的なアナウンス. 私の心臓が, 診断書の内容とは関係なく, 不規則なリズムを刻み始めた.

スマートフォンを膝の上に投げ出し, 私は両手で頭を抱えた. この絶望的な診断と, 彼の不在. 二重の苦しみが, 私を容赦なく襲う.

「玉置さんも, 最近お忙しいですからね」横から聞こえる秘書の声が, なぜか私を苛立たせた. 「人気が出れば出るほど, プライベートな時間も削られてしまうものです. 」

「忙しい? 」私は鼻で笑った. 彼の忙しさなんて, 私が一番よく知っているはずなのに. 彼のスケジュール管理も, 彼の楽曲制作も, 彼のイメージ戦略も, すべて私が手がけてきたのだから.

「彼が私より忙しいなんて, 初めて聞くわね」私の声には, 隠しきれない皮肉がにじんでいた. 「まるで, 私が彼のマネージャーか何かみたいじゃない? 」

「それから, もう『玉置さん』じゃなくていいわ」私は冷たく言い放った. 「今日から, 彼を呼ぶときは『玉置』で構わない. 」

彼の態度を正す必要がある. 私に対する彼の接し方, そして私たちの関係に対する彼の認識. すべてを, 私がもう一度, 彼に教えてあげなければならない.

豪華だが, 私一人には広すぎる自宅に戻った数分後, ようやくスマートフォンが震えた. 春斗からだ.

「あれ, ごめん, 今気づいた」画面の向こうから, 少し興奮したような彼の声が聞こえた. 「今, 打ち上げ中なんだ. すげぇ盛り上がっててさ. 」

ガヤガヤとした喧騒が, 電話の向こうから響いてくる. 私の言葉を遮るように, 「じゃ, また後で! 」と一方的に電話を切られた. まるで, 私の存在が彼にとって, 些細な邪魔でしかないかのように.

私はリビングのソファに深く身を沈めた. 彼が帰ってくるのを, ただひたすら待った. 窓の外は, いつの間にか漆黒の闇に包まれ, やがて夜が明けた.

朝日が窓から差し込み, 部屋を明るくし始めた頃, 玄関のドアが開く音がした. 彼は, ようやく帰ってきた.

「あれ? まだ起きてたのか」彼は私の顔を見ると, いつものように抱きしめようとした. しかし, 私は反射的にその腕を押し退けた.

彼の体からは, タバコの匂いと, 甘ったるい香水の匂いが混じり合って漂ってきた. その匂いが, 私の胃の奥から込み上げる吐き気を誘った.

彼は私の反応に少し驚いたようだったが, すぐに自分の匂いを嗅ぎ, 苦笑した. 「あー, これか. さすがに酷いな, ちょっとシャワー浴びてくるわ. 」

シャワーを浴び終えた彼は, 髪を拭くこともせずに出てきた. 濡れたままで, 私に向かってタオルを投げつけ, いつものように甘えた声を出す. 「ねぇ, 拭いてくれよ, あんじゅ」

これは, 彼のいつもの手だ. 私が彼のために尽くすのを当然のように思っている, 彼の甘え. その無邪気なふりをした傲慢さが, 今となっては見ていられなかった.

以前の私なら, きっと笑ってタオルを受け取り, 彼の髪を優しく拭いてあげただろう. 彼の少しずつ増えていくわがままも, 愛ゆえだと受け止めてきた. 何度も, 何度も.

しかし, 今は違った. 私の手は, 冷たいタオルを受け取ろうとしない. 彼の目を見つめ, 何も言わずにただ首を横に振った.

「どうしたんだよ, 急に」彼は少し不機嫌そうに, 私の隣に座り, 再び抱きしめようとした. 彼の顔には, まだ困惑の色が浮かんでいる.

「最近, 色々な付き合いがあるんだよ」彼は, 私の肩に顔を埋めながら, 耳元で囁いた. 「今が大事な時期なんだ. 俺のキャリアにとって, すごく重要な時なんだよ. 」

私は彼の体を強く押し退けた. 彼の話は, いつも自分本位だ. 私は真剣な目で彼を見つめた. 「春斗, 少し話があるの. 」

彼は大きなあくびを一つした. 「えー, 今からかよ. もう眠いんだってば. 昨日の打ち上げ, 朝までだったんだぞ. 」そう言って, 私の目を避けた.

私の返事を待たずに, 彼はのっそりと立ち上がり, 階段を上がっていった. 「俺, もう寝るから. あんじゅも早く寝ろよ. 」

私はその場に立ち尽くし, 乾いた笑いを漏らした. 恩知らず. まさしく, その言葉が今の彼にはぴったりだった.

テーブルの上に, 彼のスマートフォンが置きっぱなしになっているのを見つけた. 液晶画面が, 薄暗いリビングで微かに光っていた.

手に取った私は, 咄嗟にロックを解除しようとした. しかし, 見慣れないパスワードが要求される. 彼は, いつの間にかパスワードを変えていた.

スマートフォンをそっとテーブルに戻し, 私は部屋着に着替えるために自室へ向かった. 疲労感が体全体を蝕む.

洗濯物をまとめようと, 彼のジャケットを手に取った時だった. ポケットの中から, 一枚のカードが滑り落ちた. ホテルのルームキー.

それは, 明らかに女性用の, 真っ赤な口紅の跡がべったりと付いていた. 私の心臓が, ドクンと嫌な音を立てた.

手のひらに握りしめたルームキーが, 私の怒りをさらに燃え上がらせた. 私は階段を駆け上がり, 寝室のドアを乱暴に開けた.

春斗は, ベッドの上でぐっすり眠っていた. 私が部屋に入ってきたことにも気づかず, 寝返りを打って, 空いている私の隣のスペースに, 私を引き寄せようと腕を伸ばした. 彼の無邪気な寝顔が, 私の視界に入った.

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