
アルファの王の禁断の愛、秘めたる復讐
章 3
エララ視点:
その夜、戒様は千鳥足でスイートルームに帰ってきた。
狼人間が酔うのは珍しい光景だ。
私たちの代謝はアルコールをすぐに分解してしまう。
それが起こるのは、極度の精神的混乱に陥った時だけだ。
私の心臓が、愚かで頑固なこの心臓が、彼のために痛んだ。
私は彼の上着を脱がせ、重い体をベッドへと導いた。
彼はマットレスに崩れ落ち、私を一緒に引き倒した。
彼の狼が表面近くまで出てきていて、低い唸り声が胸の奥で響いていた。
彼は私の髪に顔を埋め、その腕は鋼鉄のようだった。
「俺のために戻ってきてくれたんだろう?」
彼はしゃがれた声で言った。
私に向けられたことのない、必死の希望に満ちた声だった。
私は身を引こうとした。
冷たい恐怖が私を襲う。
「戒様、酔っています」
「莉央…お前なんだろ」
彼はつぶやいた。
その息は私の肌に熱くかかった。
彼の心はアルコールと執着でひどく混乱し、自分の番と幻想の区別さえつかなくなっていた。
「お前のはずだ。お前しかいない」
それが、最後の、口に出された真実だった。
その瞬間、私は彼がなぜいつも冷静で、自制心を保っていたのかを悟った。
彼は、ほんの一滴のアルコールが彼の舌を緩め、彼の念話が必死に守ってきた秘密を裏切ることを、恐れていたのだ。
私は力の限り彼を突き飛ばし、バルコニーへ逃げた。
冷たい夜の空気を求めて、息を切らす。
街の灯りが涙で滲んで見えた。
ようやく落ち着いて部屋に戻ると、彼の姿はなかった。
隣のバルコニーから声が聞こえた。
莉央が泊まっているスイートに繋がっているバルコニーだ。
私は影に隠れ、そっと近づいた。
戒様がそこに立っていた。
月を背にシルエットになり、その姿勢は怒りで硬直していた。
「なぜヨーロッパに戻るんだ?来たばかりじゃないか!」
「これは間違いだったわ、戒様」
莉央の声は張り詰めていた。
「ここにいるわけにはいかない」
「俺のせいか?」
彼は問い詰めた。
その声はひび割れていた。
そして、彼の日記で読んだ告白が、彼の口から奔流のように溢れ出した。
生々しく、醜い真実の奔流が。
「あいつと結婚したのは、お前に似ていたからだ!」
彼は吠えた。
その声は荒々しく、壊れていた。
「あいつはお前の血筋で、お前の家族だ。それが、裏切り者にならずに、お前の香りをこの家に、この人生に留めておく唯一の方法だったんだ!唯一、俺が偽りの生活を送れる方法だった!」
彼は荒い息をついた。
「お前に会うためだけに、お前と同じ空気を数時間吸うためだけに、パリへ飛んだ。だから彼女の念話を遮断したんだ。俺がお前をどれだけ必要としているか、彼女に聞かせるわけにはいかなかった」
莉央は恐怖に震え、沈黙していた。
「俺たちの子供には、戒莉(かいり)と名付ける」
彼は狂気じみた確信に満ちた声で宣言した。
「そしてエララは……何もできない。俺を捨てる勇気なんてない。あいつは俺の番だ。俺はあいつのアルファだ。あいつは俺のものだ」
彼は間違っていた。
彼の番は、もういなくなっていた。
彼のアルファとしての地位は、もはや私にとって何の意味も持たなかった。
私はもう、彼のものではなかった。
私は、私自身のものだった。
そして私は、ここを去る。
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