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クズと結婚したら、世界一の億万長者の妻に!? の小説カバー

クズと結婚したら、世界一の億万長者の妻に!?

結婚式当日、新郎に逃げられ世間の晒し者となった菊池星奈。土砂降りの雨の中、彼女は偶然通りかかった男のネクタイを掴み、半ば自暴自棄に「私を妻にする勇気がある?」と迫った。こうして彼女が連れ帰ったのは、名家・藤井家の落伍者と噂される「クズ」の藤井勇真だった。周囲は星奈の選択を嘲笑し、逃げた元婚約者までもが「あんな役立たずを選ぶなんて間違っている」と彼女を憐れむ。しかし星奈は、元婚約者に離婚届を叩きつけ、夫を守る決意を固めた。誰もが彼女の不幸を確信していたが、事態は予想外の展開を迎える。なんと勇真の正体は、世界経済を裏で操る伝説的な億万長者だったのだ。正体を明かした彼は、世界中が注視するライブ配信の最中、星奈の前に跪いた。その手に握られていたのは、十億円もの価値があるピンクダイヤモンド。かつて適当に拾われたはずの男は、熱い眼差しで彼女を見つめ、真摯にこう告げる。「今度は本気で、残りの人生を僕に預けてほしい」。最悪の結婚から始まった、世界一贅沢な逆転愛が幕を開ける。
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菊池星奈のその言葉に、男の目がすっと細められた。 射抜くような、それでいて値踏みするような光が宿る。 「お嬢さん、本気かね。 俺は見ての通りの身体だ。 俺に嫁げば、いずれ必ず、後悔する日が来ますよ」

星奈はまっすぐに男を見据え、問いを問いで返した。 「どなたか他の女性のために、ご自分の妻を蔑ろになさいますか?」

「無論、ありえん」男は即答した。 その声に一片の迷いもない、静かな確信に満ちていた。

その声を受け、星奈は微笑みさえ浮かべて言い放った。 「でしたら、私も後悔などいたしません。 あなたが娶ってくださるのなら、私は喜んで嫁ぎます!」その曇りなき瞳に見つめられ、男はふっと息を漏らした。

これ以上、この女の覚悟を試すのは野暮だろう。 断る理由は、どこにもなかった。 「……いいでしょう。 では、結婚しましょう」

こうして、花婿不在で中止になるはずだった星奈の結婚式は、車椅子の見知らぬ男を新たな伴侶として、滞りなく執り行われた。

牧師の立ち会いのもと、二人の名が記された結婚証明書を、彼女は震える指で受け取った。

教会の重い扉を押し開き、星奈はまだ夢の中にいるような心地だった。 まさか、ほんの数時間のうちに、見ず知らずの男と夫婦になるなど、誰が想像できただろう。

今日から、私の新しい人生が始まるのだ。

彼女は静かに車椅子のグリップを握り、ゆっくりと石畳の上を押し始めた。 その時、ふと、あまりにも初歩的なことに気づいた。 「あの……わたくし、まだあなた様のお名前を伺っておりませんでした」

「藤井勇真だ」 男は短く答えた。

その名を聞いた瞬間、星奈は思わず息を呑んだ。 「あなたが、あの藤井グループの……藤井勇真様、でいらっしゃいますか?」

藤井勇真は、星奈の動揺を面白がるでもなく、ただ当然のこととして受け止めた。 その唇の端に浮かんだのは、すべてを諦めたような、冷たい自嘲の笑みだった。

「どうした。 この街で知らぬ者のない『出来損ない』に嫁いだと知って、早くも後悔が始まったか?」

藤井グループの御曹司、藤井勇真。 その名を知らぬ者は、この街にはほとんどいない。

彼が生まれた時、母は難産で亡くなり、父は継母を迎えた。

その後、交通事故に遭い、この若様は両足が不自由になり、完全に役立たずの人間になってしまった。

ちょうどその頃、継母が待望の男児を産んだことで、勇真は藤井家で完全な「お荷物」となったのだ。

もし彼の祖母、藤井家の大奥様の庇護がなければ、とうの昔に家を追い出され、路頭に迷っていたに違いない。 だから、わかるのだ。

まともな女が、自分のような男に嫁ぐはずがない。 あるとすれば金目当て。

だが、今の自分に何がある? この女の目論見は、早々に打ち砕かれるだろう。

勇真は待っていた。 目の前の女の顔が、絶望と後悔に歪む、その瞬間を。 だが、勇真の予想は裏切られた。 星奈の心に浮かんだのは、後悔ではなかった。

むしろ、目の前の男と自分を重ね合わせるような、不思議な共感だった。 家族に愛されなかった者同士――その痛みを、彼女は知っていた。

星奈はそっと手を伸ばし、彼の冷えた手を両手で包み込んだ。 「申し上げたはずです。 あなたに嫁ぐと決めたこと、後悔はいたしません、と。 夫婦になったのですから……これからは、あなたと共に、温かい家庭を築いていきたい。 ただ、そう思っただけなのです」

「……そうか。 だと、いいがな」

その言葉は、勇真の心の壁を通り抜けることなく、虚しく響いただけだった。

何の得にもならないと知った時、この女の優しい芝居はいつまで続くだろうか。 見ものだな、と勇真は冷ややかに思った。

やがて、一台の黒塗りのセダンが音もなく二人の前に滑り込んできた。

「行くぞ」彼が短く告げた。

星奈は思わず尋ねた。 「どこへ……?」

「決まっているだろう。 俺たちの『家』に帰るんだ。 夫婦になったのだから、共に暮らすのは当然だ」

私たちの、家……?

その言葉が、細い針のように星奈の胸をちくりと刺した。

脳裏をよぎったのは、伊藤直哉と共に夢見た「家」の光景だった。 二人の未来を思い描き、一つひとつ心を込めて整えた、あの部屋。

だが、あの夢はもう終わったのだ。 過去の残骸は、この手で葬り去らなければならない。

そう決意し、彼女は口を開いた。 「あの、私、片付けなければならない私的な用事がございまして……差し支えなければ、ご連絡先とご住所を教えていただけますでしょうか。 それが済み次第、すぐに伺いますので」

「送ろうか?」勇真がかすかに眉を上げて尋ねる。

「いえ、お気遣いなく。 これは、私一人の問題ですから」 星奈がきっぱりとそう言うと、 勇真はそれ以上何も言わなかった。

ただ黙って連絡先を交換すると、 車に乗り込み、 去っていった。

三十分後。 星奈は、かつて「新居」と呼ぶはずだったマンションのドアの前に立っていた。

二人で選んだテーブルクロス。 壁に飾った思い出の絵。 窓辺に並べたお揃いの観葉植物。 部屋の隅々にまで、ささやかな幸せへの願いが満ちていた。この家を、世界で一番温かい場所にするために……。

星奈は、その一つひとつに歩み寄ると、一瞬の躊躇いも見せず、壁から絵を引き剥がし、テーブルクロスを乱暴に引きずり下ろし、すべてを大きなゴミ袋へと叩き込んだ。

新しい人生を始めると決めたのだ。 過去への未練など、一片たりとも残してはならない!

思い出の残骸をすべて捨て去り、自分の荷物をスーツケースに詰め込んでいた星奈は、開け放たれたドアの外に立つ人影に、まったく気づいていなかった。

部屋の惨状と、無心に作業を続ける星奈の姿を、伊藤直哉は愕然と見つめていた。 やがて、絞り出すような、怒りに震える声が響いた。 「菊池星奈ッ……! お前、ここで一体、何をしているんだ!?」

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