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捨てられ妻、今は大物に抱かれています の小説カバー

捨てられ妻、今は大物に抱かれています

夫に裏切られ、屈辱の中で離婚を突きつけられた柴田友子。どん底を味わった彼女だったが、その苦難を糧に再び自らの足で立ち上がる。かつては平凡な主婦に過ぎなかった彼女は、類まれなる才能を開花させ、今や世界中から熱い視線を浴びる人気画家へと華麗な転身を遂げていた。名声と輝かしい日々を手にした彼女の前に、かつて自分を捨てた元夫が「もう一度やり直したい」と身勝手な未練を抱いて現れる。しかし、彼の前に立ちはだかったのは、友子を優しく腕に抱く謎めいた大物実業家の姿だった。「彼女は俺の大切な人だ」という力強い宣言が響き渡る。自分を卑下していた過去を脱ぎ捨て、真実の愛と成功を掴み取った女性の物語。かつての夫の嫉妬や後悔が交差する中で、新たなパートナーとの絆が深まっていく。どん底からの鮮やかな飛躍を描き、真の幸福を問いかける、痛快な大人の逆転ラブロマンスが幕を開ける。
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友子の意識は現実に引き戻された。目の前にいるのは彼女の夫、伊藤友征だった。

その男はいつも通り、尊大な態度を崩さない。彼の目に映る彼女への視線には、冷淡さと退屈さしかなかった。

唯一、違和感を覚えたのは——その唇に残る、妙に艶めかしい傷跡。

誰かとキスでもしたの?そんなに激しかったわけ?

思わず、今までに感じたことのない嫌悪感が湧き上がり、柴田友子はスマホを閉じて、視線を伏せたまま淡々と言った。「別に…」

それだけ告げて、中へ入ろうとした。

だが伊藤友征が眉をひそめ、彼女の手首を強く掴んだ。「友子…その態度は何なんだ?」

彼はめったに家に戻らない——

いつもなら、彼の姿を見ただけで、跳ねるほど喜んでいたくせに。今日はなんだか元気ないな顔をしてる?

友子は、掴まれた手を振り払おうともせず、ただ静かに彼を見つめた。「私、ずっとこんな感じだったじゃない。 おとなしくて、素直で、文句も言わずに家のことを全部やって…あなたが気持ちよく働けるように、快適に過ごせるように、何から何まで支えてきた」

そこまで言って、彼女はふと口を閉ざした。そして唇の端をわずかに持ち上げ、皮肉げに微笑む。「あなた、こういう私が一番好きだったでしょ。外で思う存分、愛人と燃え上がるには都合がいいものね」

伊藤友征の目が、ふっと陰を落とした。

——こんなこと、隠せるはずもない。そもそも、隠す気もなかったのだろう。彼は手を離し、低い声で言った。「今日は…その話をしに帰ってきたんだ」

柴田友子は、彼に掴まれていた手首をそっとさすった。

それは未練などではない。ただ、汚れた何かを拭い取るような仕草だった。

「彼女との関係、そろそろ公にするつもり?」

その一言で、伊藤友征の表情が一気に険しくなった。「…彼女のこと、調べたのか?」

思わず漏れた焦り混じりの声。その様子があまりに滑稽で、柴田友子はふっと笑みをこぼした。「調べる必要なんてある? 昨夜、あなたが2億も出して彼女を喜ばせたって話…誰だって分かるわ」

伊藤友征は、黙って彼女を見つめた。

この女の声は、相変わらず静かで淡々としている。まるで他人事のように、感情の波一つない——いつもと、何も変わらない。

だが、伊藤友征の胸の奥に、なぜか鋭く突き刺さるものがあった。

真っ白な肌に、どこか乱れた美しさが滲んでいる。けれど——琉璃のように澄んだその瞳には、一片の感情も浮かんでいない。

いつもなら、自分しか映っていなかったはずの瞳なのに。

その微かな苛立ちを無理やり押し込め、彼はさらに酷な言葉を投げつけた。「…彼女、妊娠してる。不安定な時期なんだ。ちょっとしたプレゼントで、機嫌を取ってただけさ」

その瞬間、柴田友子の拳が、反射的にぎゅっと握り締められた。

——妊娠?

じゃあ……この2年間、彼女が夜ごとに待ち続けたあの暗い時間を、伊藤友征は、他の女とベッドで汗だくになってたというわけか

友子の顔から、見る見るうちに血の気が引いていく。その様子を見て、伊藤友征はようやく満足げに口元を歪めた。「俺が君を抱かなかったのは、そうしたくなかったんじゃない。君が退屈すぎるだけだ。誰が水みたいな女を好むっていうんだぜ」

その一言は、心の奥を容赦なく突き刺した。

——彼女は、夫婦の営みを拒んだことなど一度もなかった。ただ、自分から誘わなかっただけ。それが、そんなにも罪だったの?色気が足りないというだけで、こんな仕打ちを受けるほどに。

柴田友子は静かにうなずいた。

「ちょうどいいわ。離婚しましょう。彼女にも正式な立場を与えられるじゃない」

その「離婚」の二文字に、伊藤友征のまぶたがぴくりと動いた。

彼は冷たく笑った。「またその手か?駆け引きのつもり? この二年、君が俺に気に入られたくて、どれだけ子どもじみた手を使ってきたか…君が飽きなくても、俺はとっくにうんざりだよ」

話すほどに、彼の声には軽蔑がにじんでくる。「そんなに俺のこと好きだったくせに、本当に離れられるのか?」

その言葉を聞いた瞬間、柴田友子は思わず吹き出した。

…惜しい?離れられない?

彼が起業に失敗し、人生のどん底に落ちたあの頃――差し伸べたのは、彼女だった。貯金をすべて差し出し、一緒に苦境を乗り越えた。

その恩返しとして、彼は結婚という形を選んだ。

結婚してからの二年間、彼女は一言の不満も漏らさず、黙々と彼を支え続けた。表に立たせ、後ろから支える役を買って出て、ついには彼が嵐半市にしっかりと根を張り、頭角を現すまでに至った。

けれど彼女が最後に手にしたのは――他の女を妊娠させたという、残酷な現実だった。

本気の想いを踏みにじられて泥にされた今、それでもまだ愛し続けるなんて――それは、ただの愚かさだ。

柴田友子は淡々と言った。「離婚届、あなたが用意して。条件は何でも飲むわ」

そう言い残し、彼女は迷いなく扉を押して中へと入っていった。

伊藤友征はその背中を見つめながら、怒りのあまり笑い声を漏らした。

…続けろ

せいぜいどこまで続けられるか見ものだな。

……

伊藤友征は勢いよくドアを叩きつけて出ていくと、その足で情人・新鹿花月の元を訪ねた。

「そんなにうまくいったの?」彼が離婚すると聞いて、新鹿花月は思わず鼻で笑った。「あなたが言ってたほど、彼女って手強くないんじゃない?」

伊藤友征は新鹿花月を腕に抱き寄せながら、冷笑を浮かべた。「友子は相当な策士だ。口では離婚に同意したけど、本気かどうか…まだ俺を弄んでるだけかもしれない」

新鹿花月は彼の膝に腰を下ろし、甘えるようにその首に腕を回した。艶やかな眼差しで見上げながら、囁くように言った。「大丈夫よ、友征。たとえ彼女が今さら気が変わったって…もう遅いわ」

伊藤友征は、その言葉にわずかに眉をひそめた。「…どういう意味だ?」

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