
捨てられ主婦、正体は世界的カリスマ
章 3
「お姉さん、一杯どう?」
男たちは下品な笑みを浮かべ、いやらしい視線で彼女を頭のてっぺんからつま先までなめ回すように見た。
七海は氷のように冷たい表情で、感情のこもらない声で言い放った。「失せろ!」
「ずいぶんキツいね? ハハッ!いいねぇ、俺たちはそういう気の強い女をモノにするのが好きなんだよ」
七海は無表情に言い返した。「賢い犬は道を譲るものよ」
下品な男は口笛を吹き、ニヤニヤしながら手を伸ばし、七海の胸を掴もうとした。
その瞬間、七海の堪忍袋の緒が切れた。素早く、鋭く、正確に手刀が振り下ろされる。
「ぎゃあっ!」男の手の骨が砕ける音がし、豚のような悲鳴がバーに響いた。
「てめぇ、よくも……」残りの男たちが言い終わる前に、一人、また一人と蹴り飛ばされていった。
ほんの数瞬の間に、男たちは地面に打ちのめされ、起き上がることさえできなかった。
二階。
「うわっ!あの女、すげえカッコいいじゃん。美人だし、俺のタイプだ」
友人の言葉に、西永良陽は階下で波打つ髪の女に目をやった。見れば見るほど見覚えがある。まさか――彼の元妻、織田七海だというのか!
北村深悠を病院に連れて行った後、彼女から気晴らしにバーへ行きたいと誘われ、こんなところで知人に会うとは夢にも思わなかった。
「あれ……七海さんじゃない?」北村深悠が驚きの声を上げた。
「なんだって? あれが織田七海だと? あんなに度胸があって綺麗な女が、あの退屈で面白みのない主婦の織田七海なわけないだろ?」
仲間たちが目を凝らすと、その立ち居振る舞いのすべてが妖艶な女性が、紛れもなく西永良陽の元妻であることに気づき、言葉を失うほど驚愕した。
西永良陽の妹、西永恵瑠が冷ややかに嘲笑った。「あんな尻軽そうな格好して、ろくな女じゃないわ。 兄さんに捨てられた途端に、こんな格好でバーに来て男を漁るなんて。体を売らなきゃ生きていけないのよ」
恵瑠だけでなく、周りの男たちも口々に嘲笑した。
「尻軽女なんてそんなもんだ。男がいなきゃ死ぬんだよ。男に満たしてもらわなきゃな」
「お前の兄貴が離婚したのは正解だな。こういう男に媚びる女は、いつだって平気で旦那を裏切るものさ」
「男に寄生しなきゃ生きていけないんだ。男がいなきゃ、自分じゃ何もできない。一生娼婦でいるのがお似合いだ」
彼らの嘲笑に良陽は苛立ちを隠せず、低く唸るように叱りつけた。「黙れ!」
彼らを鋭く一瞥すると、身を翻し、足早に織田七海のもとへ向かった。
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