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奇跡の命、地獄の愛の果て の小説カバー

奇跡の命、地獄の愛の果て

財閥のトップを夫に持つ私は、七年に及ぶ不妊治療を乗り越え、ようやく新しい命を授かった。夫の帰国日に合わせて妊娠という最高の驚きを届けようと、手料理を手に会社を訪れた私を待っていたのは、無残な悲劇だった。夫の秘書である辻村美唄は、私を社長のストーカーだと決めつけ、周囲の嘲笑の中で私の服を切り裂いた。さらに彼女は「目障りだ」と言い放ち、膨らみ始めたばかりの私の腹部を鋭い靴で何度も踏みにじった。ロビーの大理石が鮮血に染まる中、私は愛する我が子の鼓動が消えていく絶望を味わう。異変に気づき駆けつけた夫は、血の海に沈む妻の姿を見て激昂し、秘書の顔を殴打し、傍観していた社員たちにも凄惨な報いを受けさせた。しかし、夫がどれほど残酷な復讐を遂げようとも、失われた命は戻らない。子宮も心も空虚になった私には、もはや夫への愛も憎しみも、いかなる感情も残っていなかった。地獄のような愛の果てに、ただ凍てついた孤独だけが横たわっている。
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広山真知子 (Machiko Hiroyama) POV:

辻村美唄さんの冷たい声が, 私の胸に重くのしかかった. 彼女の視線は, 私が持っている風呂敷包みのお弁当と, 私の質素な身なりを交互に見ている.

「あ, あの, 広山社長に, お祝いの品を…」

私はとっさに言葉を探したが, うまく出てこない. サプライズにするつもりだったから, 辻村さんにも詳しい事情は話していなかった.

「お祝いの品? 広山社長はつい先ほど帰国されたばかりです. あなたは一体, どちら様ですか? 」

彼女の声はさらに鋭くなった. まるで, 私が何か悪いことを企んでいるとでも言いたげな口調だった.

「私は…広山真知子と申します. 亮佑さんとは, 幼馴染で…」

私は正直に答えた. 亮佑は, 公には私との関係を隠している. だから, 幼馴染という言葉を選んだ.

「幼馴染? ふざけないでください」

辻村さんの表情が, 一瞬にして凍りついた. 彼女の唇が歪み, 嘲笑めいた笑みが浮かんだ.

「広山社長の幼馴染を名乗る不審者が, アポイントもなく会社に乗り込んできて, お荷物ですか. はっきり言いますけれど, 広山社長は今, 非常に疲れていらっしゃいます. お会いする時間などありません」

彼女はそう言い放ち, 私をまるで害虫でも見るかのような目で睨みつけた.

私の胸が, ぎゅっと締め付けられた. この冷たい視線は, 亮佑の周りにいる人たちが私を見る時の, いつもの視線だった.

「で, でも, どうしても渡したいものが…」

「金目当てのストーカーですか? それとも, 広山社長の愛人を気取るつもりですか? あなたのような薄汚い貧乏人が, 社長に近づくなど, 身の程を知りなさい」

辻村さんの言葉が, 容赦なく私の心を抉った. まるで, 鋭い刃物で切り裂かれたかのようだった.

目がくらむほどの怒りが, 心の奥底から湧き上がってきた.

「そんな言い方, 酷すぎます! 私は…亮佑さんの妻です! 」

我慢できず, 思わずそう叫んでしまった. このサプライズを台無しにしたくはなかったけれど, これ以上侮辱されるのは耐えられなかった.

辻村さんの顔から, 血の気が引いた. 彼女の目は大きく見開かれ, 信じられないものを見るかのように私を凝視した.

しかし, その驚きはすぐに, 狂気じみた怒りに変わった.

「妻? ふざけるのも大概にしてください! 広山社長があなたのような女と結婚するはずがないでしょう! 」

彼女の声はヒステリックに響き渡った. 周りの社員たちが, 何事かとこちらを見始めた.

私は, まずい, と思った. 亮佑の立場を危うくするわけにはいかない.

「違うんです, 私は…とにかく, 亮佑さんに会わせてくれませんか? 」

私は必死に懇願した. お腹の赤ちゃんが, まるで私の緊張を感じ取ったかのように, 小さく震えた気がした.

「会わせるわけがないでしょう! あなたは広山社長を利用しようとしているだけ! 警備員! 」

辻村さんはそう叫び, セキュリティスタッフを呼んだ.

背後から, 二人の大柄な警備員が近づいてくるのが分かった. 彼らの足音が, 私の心臓の鼓動と重なって聞こえた.

「この女を速やかに排除しなさい! 彼女は広山社長のストーカーです! 」

辻村さんの声が, ロビー全体に響き渡った.

私の周りにいた社員たちの視線が, 一斉に私に突き刺さる. 彼らの目には, 好奇心と, 軽蔑と, わずかな嫌悪感が混じっていた.

「違う! 私はストーカーなんかじゃない! 」

私は必死に弁解しようとしたが, 辻村さんは私の言葉を遮った.

「社長がいない間にできた子供なんて, どうせ浮気相手の種だろう! 」

彼女の言葉が, 私の頭の中で雷鳴のように轟いた.

怒り, 悲しみ, そして恐怖が, 私の全身を駆け巡った.

お腹の子を侮辱されたことに, 私は理性では抑えきれないほどの激しい怒りを感じた.

「お腹に赤ちゃんがいるの! 」

私は叫んだ. 震える声で, その事実を突きつけた.

しかし, 辻村さんはそれを嘲笑った.

「笑わせないで. そんなもの, 広山社長の子であるはずがないでしょう! 不貞の証拠ね! 」

彼女の言葉は, 氷のように冷たかった. その瞳には, 一切の慈悲も宿っていなかった.

警備員が, 私の腕を掴もうと手を伸ばしてきた.

私は必死に抵抗した. お腹の赤ちゃんを守らなければならない.

「触らないで! お願いだから, 触らないで! 」

私は叫び, 体をよじった.

その瞬間, 辻村さんが一歩踏み出し, 私の腹部を思い切り蹴り上げた.

鈍い衝撃が, 私のお腹を襲った.

「ぐっ…! 」

息が詰まり, 体がくの字に曲がる. 激痛が, 私の下腹部から全身へと広がった.

お弁当箱が, 私の手から滑り落ち, 硬い大理石の床に激突した.

中身が飛び散り, 亮佑のために作った色とりどりの料理が, 無残にも散乱した.

私は膝から崩れ落ち, その場にうずくまった.

「や, やめて…! 」

震える声で懇願したが, 辻村さんの狂気は止まらなかった.

彼女はどこからか小さなハサミを取り出し, 私のワンピースのスカート部分を掴んだ.

「その薄汚い服も, 社長の会社のロビーに相応しくないわ! 」

ザクッ, ザクッ, と, ハサミが布を切り裂く音が響いた.

私の服は無残にも引き裂かれ, 肌が露出する.

警備員たちが私を押さえつけ, 私は抵抗できない.

社員たちの好奇の視線が, 嘲笑めいた視線が, 私に突き刺さる.

私は, 屈辱と激痛に耐えながら, ロビーの冷たい床に横たわった.

その時, 下腹部から, 温かい液体が流れ出る感触があった.

「あ…」

私は, 自分の下半身を見た.

真っ白なワンピースのスカートの裂け目から, 真っ赤な鮮血が, 止めどなく溢れ出しているのが見えた.

私の心臓が, 凍りついた.

赤ちゃん.

私たちの赤ちゃん.

私の視界が, ぐにゃりと歪んだ.

周りの声が, 遠く, 霞んで聞こえる.

「あ…赤ちゃん…」

私の声は, 誰にも届かなかった.

ロビーの冷たい床が, 私の血で, 濡れていく.

意識が, 遠のいていく中で, 私はただ, お腹の中の命が失われていくのを感じていた.

目の前が真っ暗になった.

私は, もう, 何も感じなかった.

ただ, この絶望だけが, 私の心を支配していた.

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