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奇跡の命、地獄の愛の果て の小説カバー

奇跡の命、地獄の愛の果て

財閥のトップを夫に持つ私は、七年に及ぶ不妊治療を乗り越え、ようやく新しい命を授かった。夫の帰国日に合わせて妊娠という最高の驚きを届けようと、手料理を手に会社を訪れた私を待っていたのは、無残な悲劇だった。夫の秘書である辻村美唄は、私を社長のストーカーだと決めつけ、周囲の嘲笑の中で私の服を切り裂いた。さらに彼女は「目障りだ」と言い放ち、膨らみ始めたばかりの私の腹部を鋭い靴で何度も踏みにじった。ロビーの大理石が鮮血に染まる中、私は愛する我が子の鼓動が消えていく絶望を味わう。異変に気づき駆けつけた夫は、血の海に沈む妻の姿を見て激昂し、秘書の顔を殴打し、傍観していた社員たちにも凄惨な報いを受けさせた。しかし、夫がどれほど残酷な復讐を遂げようとも、失われた命は戻らない。子宮も心も空虚になった私には、もはや夫への愛も憎しみも、いかなる感情も残っていなかった。地獄のような愛の果てに、ただ凍てついた孤独だけが横たわっている。
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広山真知子 (Machiko Hiroyama) POV:

意識が朦朧とする中で, 私は自分がまだ生きていることを皮肉に感じた. 目の前は真っ暗だが, 体中の激痛が, 私が地獄にいることを教えているようだった.

「ふん, これで広山社長の邪魔者はいなくなったわね」

辻村美唄さんの声が, 頭上で響いた. その声には, 一切の悔恨も, 罪悪感も感じられなかった.

むしろ, 達成感に満ちた, 嫌悪感を催す響きだった.

「この女を早く処理して. こんな汚い血で, ロビーを汚さないでほしいわ」

彼女の言葉は, 私の心を再び切り裂いた. 私は人間として扱われていない. まるで, ゴミのように.

「社長に言いつけてやる…」

私は, かすれた声で呟いた. 復讐の念が, 私の意識をなんとか繋ぎ止めているようだった.

「社長に? 笑わせないでくれる? 社長はあなたのことなんて, 金輪際忘れるわ. この会社に, あなたの居場所なんてないのよ」

辻村さんは, 私の頭を足で軽く蹴った. その行為に, 周囲の社員たちは誰一人として眉一つ動かさない.

彼らの目には, 好奇心や軽蔑だけでなく, 辻村さんへの畏怖の念が宿っていた.

私は, なんとか体を起こそうとした. 亮佑に連絡しなければ. 彼なら, この状況を, この不条理を, 必ず正してくれる.

「スマホ…」

私は震える手で, ポケットを探った.

しかし, その動きを, 辻村さんは見逃さなかった.

「何を探しているの? 誰かに助けを求めようとでも? 無駄よ」

彼女は私の手からスマホをひったくると, 何の躊躇もなく, それを床に叩きつけた.

パキッ, という鈍い音がして, 画面がバキバキに砕け散った.

「こんな安物のスマホで, 広山社長に連絡できるとでも思った? あなたの持っているもの全てが, 社長には相応しくないのよ」

彼女はそう言って, 私のスマホをゴミのように投げ捨てた.

私の心は, 完全に絶望に打ちひしがれた.

助けを呼ぶこともできない. 亮佑に連絡することもできない.

私はただ, この場所で, 彼らが私に何をしようとも, 抵抗することもできずに横たわっているだけだった.

「このストーカー女, 本当に社長の奥さんだとか言ってたな」

「ありえないだろ. 社長があんな地味な女と結婚するわけない」

「それに, お腹に子供がいるって? 社長が二ヶ月も海外出張してたのに? 浮気相手の子供を社長に押し付けようとしたんじゃないか? 」

周囲の社員たちの囁き声が, 私の耳に届いた. 彼らの言葉は, まるで毒の矢のように, 私の心を貫いた.

彼らは, 辻村さんの言葉を鵜呑みにし, 私を一方的に悪者だと決めつけていた.

「どうせ, 金目当てに決まってる. 社長の財力に目がくらんで, 手段を選ばない女だ」

彼らの視線が, 私をますます深く, 深い闇へと突き落としていった.

私は, 必死に頭を振った.

「違う…違うの…」

しかし, 私の声は, 誰にも届かない.

辻村さんは, 満足げに笑みを浮かべ, 再び私の前にかがみ込んだ.

その手には, 先ほどのハサミが握られていた.

「あなたのような女が, 広山社長の妻を名乗るなんて, 鳥肌が立つわ. その穢れた体から, 社長の影を消してあげる」

彼女の目は, 完全に狂気に染まっていた.

ハサミの冷たい刃先が, 私の頬に触れる.

「ひっ…! 」

私は, 恐怖で体が硬直した.

「やめて…何を…」

「何をって? そうね, まずはその汚らしい髪を切って, その顔も少し整えてあげましょうか」

彼女の言葉の裏には, さらなる暴力の予感があった.

私は必死に体をねじったが, 警備員たちが私を強く押さえつけ, 身動きが取れない.

「ねえ, あなたたちも手伝って. この女のせいで, 社長のイメージが損なわれるのは困るでしょう? 」

辻村さんは, 周囲の社員たちに呼びかけた.

彼らは一瞬, 躊躇したように見えたが, 辻村さんの冷たい視線に, すぐに顔を強張らせた.

「あの, 辻村秘書. これ以上は…」

一人の男性社員が, おずおずと口を開いた.

しかし, 辻村さんは彼を睨みつけた.

「何か文句でもあるの? 社長のために, この問題を解決するのは, 我々の務めでしょう? それとも, あなたはこのストーカー女の味方をするつもり? 」

彼女の言葉に, 男性社員は口を噤んだ.

そして, 他の何人かの社員が, 私の周りに集まってきた.

彼らの目には, 恐怖と, 保身が複雑に絡み合っていた.

「さあ, みんなでこの女を『清めて』あげましょう」

辻村さんの歪んだ声が, ロビーに響き渡った.

私の体は, 血でべとつき, 衣服は破れ, 痛みで感覚が麻痺し始めていた.

しかし, この屈辱だけは, 決して消えることはなかった.

彼らの顔が, 私の視界を覆っていく.

私は, もう, 何も見たくなかった.

「亮佑…」

心の中で, 愛する夫の名前を呼んだ.

その名前だけが, 私をこの地獄から救い出してくれる唯一の希望だった.

しかし, その希望も, 今, 目の前で, 彼らの冷たい視線と, 辻村さんの狂気に満ちた笑みによって, 踏みにじられようとしていた.

私は, もう, 終わりだと, そう思った.

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