
凍てつく地下室の妻
章 3
笹木翔子 POV:
私は, 玄が美緒を客室に送り届けるのを, 冷めた目で見つめていた.
その時, 外で稲妻が閃いた.
ゴロゴロ... と, 遠くで雷鳴が響き渡る.
「きゃあああ! 」
美緒は, 小さな悲鳴を上げ, 玄の腕に飛びついた. まるで, 雷に怯える小さな子どものように.
玄の体は, 一瞬だけ硬直した.
だが, 美緒は玄の腕を離そうとしない.
「玄, 私, 一人じゃいられない! お願い, 一緒にいて... 」
美緒の声は, 震えていた. 玄の手は, 美緒の背中に一瞬触れ, そして優しく撫でた.
「わかった. 大丈夫だ. そばにいるよ」
玄は, 美緒の頼みを承諾した.
私は, 自分の愚かさに笑いがこみ上げた. 私も, 雷が苦手だった.
一人暮らしをしていた頃, 激しい雷雨で停電になった夜があった. 私は, 怖くてたまらず, 玄に電話をかけた.
「玄, 私, 雷が怖くて... 一人じゃいられないの」
私の声は, 震えていた.
だが, 玄の返事は冷たかった.
「お前は, いつもそうやって僕の同情を引こうとするんだな. そんなことじゃ, いつまで経っても自立できないぞ」
玄は, 私を突き放した.
「強くなれ, 翔子. 自分の弱さくらい, 自分で乗り越えろ」
そう言って, 彼は電話を切った.
私は, 真っ暗な部屋で, 朝まで一人で震えていた. あの時, 玄は, 私を本当に愛していなかったのだと, 初めて知った.
私が死んでなお, 雷を恐れていることに気づき, 私はまた, 苦笑した.
私は, そこから動くことができなかった. ただ, 彼らの姿を見ていることしかできない.
美緒は, 玄の腕の中で, 勝利を確信したような笑みを浮かべた.
やがて雷が止むと, 玄は客室から出てきた.
美緒は, 玄の後ろ姿を見つめながら, 小さく呟いた.
「これで, もう誰も私から玄を奪うことはできない」
彼女の言葉に, 私は息をのんだ.
なぜ, 美緒は離れていったのだろう. そして, 玄はなぜ, 私と結婚したのだろう.
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