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叔父様、その愛は罪ですか? の小説カバー

叔父様、その愛は罪ですか?

孤児だった十歳の頃、名家に養子として迎えられた彼女。孤独な暮らしの中で唯一の救いだったのは、義理の叔父の存在だった。しかし彼はある日、彼女を置き去りにして海外へと発ってしまう。七年の歳月が流れ、葬儀の場で再会を果たした二人は、叔父と姪という表向きの顔を保ちながら、密かに禁断の愛を育むようになった。世間では遊び人を卒業し、政略結婚を控えた「愛妻家」と評される彼だが、その裏にある奔放で冷酷な素顔を知っているのは彼女だけだった。彼の情熱に溺れ、いつしか本気で彼を愛してしまった彼女は、涙ながらに結婚を望む。だが、彼は冷たく突き放し、「君と結婚することはない」と言い放つのだった。絶望した彼女は別の男性との婚約を決め、街中にその報せが広まる。迎えた結婚式当日、かつての余裕を失い、彼女の前に跪いたのは彼だった。必死な形相で「行かないでくれ」と懇願する彼の真意とは。名家の重苦しい空気の中で繰り広げられる、執着と背徳に満ちたロマンス。
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3

「理紗、いらっしゃい。あなたの未来の叔母さんになる方よ」

谷川家の本邸に足を踏み入れると、谷川美桜が親しげに彼女を手招きした。

杉山汐里がゆっくりと顔を上げた。清らかな大きな瞳が、涙で潤んでいる。

美桜はため息をつき、汐里の手を握った。「どこの御曹司だって、夜のお店に入り浸って女遊びの一つや二つはするものですわ。ましてや智彦さんのような方ならなおさらよ」

汐里はしゃくりあげた。「兄から、智彦さんがクラブにいると聞いても信じられなくて……自分の目で見に行ったら、本当に彼は女を両脇にはべらせて……」

「あなたはもう彼の彼女なのだから、きちんと引き戻してあげなさい」

汐里は顔を覆って泣き崩れた。「一緒に帰りましょうって言ったのに、聞いてくれないの」

「福田さんに行かせて、連れ戻させましょう」

汐里は首を横に振った。「福田さんはもう行ってくれたわ。でも、智彦さんは帰ろうとしないの」

美桜は少し考え込むと、顔を上げて言った。「理紗、あなたは年下なのだから、叔父様を呼びに行けば、彼も無下にはできないはずよ」

理紗は踵を返して玄関へ向かった。

「福田さんを連れて行って」と美桜が呼び止めた。

よほどのことがない限り、理紗をクラブのような場所に行かせたくはなかった。

家の運転手である福田剛志は思慮深く、彼女の腹心でもある。

彼が一緒なら安心だった。

クラブの中は、色とりどりのライトが乱舞し、着飾った男女が騒めく、まさに絢爛たる夜の世界が広がっていた。

理紗は、むせ返るようなアルコールと香水の匂いが渦巻くフロアを抜けながら、何度も言い寄ろうとする男たちを振り払った。

個室の扉を開けると、そこには男女が入り乱れていた。

谷川智彦の指先には、赤い光点が揺らめき、もう片方の腕はソファの背もたれにゆったりと伸ばされている。

官能的なドレスをまとった女が彼の膝に座り、酒を飲ませていた。立ち上る紫煙が彼の目元を覆い、その表情は窺い知れない。

理紗の品のある佇まいは、その場の雰囲気から明らかに浮いていた。

突然音楽が止み、全ての視線が彼女に突き刺さる。

理紗は前に進み出て、小声で言った。「叔父様、杉山さんがお屋敷でお待ちです」

「叔父様? これが谷川様のところの養女か。ずいぶんと瑞々しく育ったもんだな」 と隣の男が下卑た笑いを浮かべた。

理紗が顔を上げると、その男が鳴海市でも有名な高官、井上泰弘の息子――井上琢真であることに気づいた。

父親の権力を盾に、彼は傍若無人の限りを尽くしていた。

杉山さんが腹を立てるのも無理はない。こんな男とつるんでいて、ろくなことをしているはずがなかった。

「極上の水蜜桃だな……」琢真は淫らな視線を向け、ワイングラスを片手に理紗の前まで来ると、彼女の髪の先端を掴んで深く匂いを嗅いだ。

芳しい香りが鼻孔をくすぐり、琢真は陶然とした表情を浮かべた。「いい香りだ……」

「消えろ」 智彦の眼差しに、昏い光が宿る。

理紗の体が微かに震えた。

琢真は智彦を一瞥し、唇の端を吊り上げてさらに大胆になる。ワイングラスを理紗の口元に押し付けた。「せっかく来たんだ。俺と一杯付き合ってから帰りな……」

個室にいた五、六人の男たちが、一斉に面白がるような笑い声を上げた。

ガシャン――。

ボトルが砕け散る音と共に、赤ワインが飛び散り、智彦の隣にいた女が耳を塞いで甲高い悲鳴を上げた。

琢真は信じられないといった様子で振り返った。一筋の血が、彼の額を滑り落ちていた。

智彦は砕けたボトルを投げ捨てると、指を鳴らした。「チャンスは一度しかやらん」

その場にいた者たちは、先ほどの「消えろ」が琢真に向けられた言葉だったことを、ようやく理解した。

智彦は理紗を懷に引き寄せると、氷のように冷たい声で言い放った。「お前たちのプロジェクトは全て白紙だ。谷川グループは提携を拒否する」

部屋中の人間が愕然とした。

一晩かけて、ようやく谷川智彦を説得し、投資の約束を取り付けたというのに。

一瞬のうちに、なぜこの金のなる木を怒らせてしまったのか、誰にも分からなかった。

智彦は理紗の肩に腕を回し、千鳥足で部屋を出た。

福田が車のドアを開けると、智彦は理紗を抱えるようにしてマイバッハの後部座席に転がり込んだ。

「雲上ヴィラへ」 智彦が理紗の上にのしかかり、低く掠れた声で命じた。

雲上ヴィラは、鳴海市で最も豪華な邸宅街だ。

二年前に分譲が開始されたとき、美桜がコネを使っても手に入れられなかった場所である。

智彦がどうやって手に入れたのかは、誰も知らなかった。

智彦の手が、タイトスカートのスリットから伸び、太ももの付け根で止まった。「こんな窮屈な服は嫌いだ」

彼は不快感を露わにした。

理紗は顔を背け、アルコールの匂いが混じる吐息から逃れながら、彼に言い聞かせた。「杉山さんと奥様が、お屋敷であなたを待っています」

「そんなにあの家が好きなのか?」智彦が理紗の耳たぶに噛みついた。

理紗は思わずくぐもった声を漏らし、慌てて口元を覆った。

福田は谷川美桜の人間だ。

谷川智彦は怖いもの知らずだが、自分は違う。

携帯電話が鳴り響いた。智彦は彼女の手を押さえつけた。「出るな」

理紗は電話に出た。

美桜の声が聞こえてくる。「叔父様は見つかった?」

車窓の外に広がる深い夜が、車内を薄暗く包み込む。

その闇に紛れて、智彦はさらに大胆になった。

ビリッ――。

太ももに冷たい空気が触れた。

智彦がタイトスカートを引き裂き、その手はあるべきでない場所へと侵入していく。

理紗は頭皮が粟立つのを感じながらも、必死に声の調子を保った。「まだ……」

その返事に満足したのか、智彦の手つきが少し優しくなる。

電話の向こうから、汐里の泣き声が聞こえてきた。

美桜が厳粛な声で告げた。「叔父様にお伝えなさい。汐里さんはずっとあそこにいると。彼が帰ってこなければ、彼女も帰らないそうよ」

智彦は携帯電話をひったくって一方的に通話を切り、彼女の顔を自分の方に向けさせると、有無を言わさず唇を重ねた。

アルコールが混じった息が理紗の鼻孔に流れ込む。その後から、智彦だけが持つ清冽な香りが追いかけてきた。

理紗の体から、抗う力が抜けていく。

彼女の心は、罪悪感と背徳感でかき乱されていた。

物心ついてから、美桜に嘘をついたことなど一度もなかった。

だが、智彦が帰ってきてからというもの、良心を裏切る嘘を重ね続けている。

車は雲上ヴィラに到着した。

福田はバックミラー越しに、顔を紅潮させた理紗に言った。「若様はひどく酔っておられます。申し訳ありませんが、中に入って介抱をお願いできますでしょうか」

智彦は彼女の肩にぐったりと寄りかかり、人事不省に陥っていた。

理紗は仕方なく、彼を支えて家の中へ入った。

玄関をくぐった瞬間、世界が反転するような感覚と共に、理紗の体は広くて暖かい腕の中に落ちていた。

智彦は立ち止まり、福田に告げた。「一ヶ月、里帰りの休暇をやろう」

福田は全てを察し、頷くと、そのまま車で故郷へと向かった。

理紗は自分が虎の穴に入ってしまったことに気づいたが、もう手遅れだった。

智彦は彼女をベッドに放り投げると、その体を押さえつけ、覆いかぶさった。

初めては汐辺テラスだった。

立ったままの、緊張と痛み、そしていつ誰かに見られるかもしれないという恐怖に満ちた行為。

だが今回は、彼の呼吸は荒いものの、動きは驚くほど優しく、忍耐強かった。

理紗は、この行為が苦痛だけではないことを知った。痛みの後には、身を焦がすほどの快感が待っていた。

夜が明けるまで、二人は幾度となく求め合った。

朝、目を覚ますと、智彦がベッドのヘッドボードに寄りかかっていた。その長い指には一枚のカードが挟まれており、顔には侮蔑的な笑みが浮かんでいる。「『絵画のごとき絶景も、君が眉間に差す一抹の紅にはかなわない』……随分と気障な詩を書いてくれるじゃないか」

理紗が手を伸ばして奪おうとすると、智彦は指先でひらりとそれをかわし、床に投げ捨てた。

「前田晟とは誰だ?鳴海大学の学生会長か? それとも、品行方正な奨学金受給者の貧乏学生か?」

その声には、あからさまな嘲りが含まれていた。

理紗は何も言わず、黙って下着を身につけた。

前田晟は学生会長で、大学で最も優秀な学生だ。

そして、自分とは違う。裕福な家庭に生まれ、幸せな家族に囲まれた、いわゆる御曹司だった。

彼が自分に想いを告げてくれたことにも驚いたが、それを谷川智彦に見つかってしまうとは。

理紗はカードを拾い上げ、鞄にしまった。

智彦は無造作に一枚のブラックカードを彼女の前に放った。「上限なしだ。好きにしろ」

カードに刻まれた001の金色の文字が、理紗の目を焼いた。

これは、一夜の代償ということだろうか。

理紗はクレジットカードを脇に置いた。「必要ありません。お金には困っていませんから」

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