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叔父様は、私の元カレ の小説カバー

叔父様は、私の元カレ

芳村智子の前に現れたのは、二年間消息を絶っていた元恋人の宗谷颯介だった。しかし彼は、智子が現在交際している相手の叔父という驚愕の立場で再会を果たす。表向きは冷徹なカリスマ経営者を装う颯介だが、その本性は智子を病的に追い詰め、永遠に幽閉しようと企む狂気に満ちていた。彼の異常な執着から逃れるため、智子は車椅子に揺られながら強大な権力を振るう実業家、六条今安に助けを求める。今安の庇護を利用して自由を掴もうとした智子だったが、それは新たな罠の始まりに過ぎなかった。優しさの裏に冷酷さを隠し持つ今安もまた、彼女を捕らえて離さない野獣のような本性を秘めていたのだ。二人の危険な男たちの間で翻弄される智子。狂った独占欲を露わにする颯介は、涙を浮かべて跪き、自由の代償として自らに首輪をかけるよう懇願する。一方で今安は、彼女を抱き寄せながら「俺たちを支配してくれ」と支配権を委ねる言葉を囁く。かつて彼女を追い詰めた男たちは、今や喜んで彼女の足元にひれ伏す存在へと変貌していた。逃げ場のない三角関係の果てに、彼女が手にする運命とは。
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胃の奥からこみ上げてくる強い吐き気を必死にこらえ、智子は微笑みを浮かべた。優しく晴真の襟元をもう一度直し、その腕にそっと自分の腕を絡めると、颯介に向き直って自己紹介をする。「叔父様、はじめまして。私、晴真さんとお付き合いさせていただいております、芳村智子と申します」

そう言って白く細い手を差し出したが、目の前に立つ、圧倒的な威圧感を放つ男は、ただ真っ直ぐに彼女を見据えるだけだった。その引き結ばれた顔には、自らの領域を侵されたかのような、怒りの色が滲んでいる。

彼に握手をする気など毛頭ない。言葉を返すことすらせず、意図的に彼女を立往生させようという魂胆が見え透いていた。

颯介のこの態度は、ここにいる全ての者に対し、この芳村智子という女は晴真の恋人にふさわしくないと、暗に示しているも同然だった。

「叔父様…?」智子は、目の奥が一切笑っていない微笑みを保ったまま、あくまで物腰柔らかく、丁寧に問いかける。

ほんの五分前まで、晴真の恋人という立場など投げ出して、穏やかな日常に戻りたいとさえ思っていた。だが今、颯介を前にし、その恐ろしい眼差しを受け、彼の過去の所業を思い返した今、智子は悟る。この男がいる限り、安穏とした日々など決して訪れない。ならば、晴真の恋人というこの立場は、まだ手放すわけにはいかない。

琴子にしてみれば、ふらりと戻ってきたこの義弟の今日の振る舞いは、実に小気味良いものだった。少なくとも、甥の嫁選びという点においては、二人の意見は完全に一致しているのだから。

颯介が頑なに握手を拒み、自分の存在を認めようとしない。その仕打ちに、智子はいかにも傷ついたという風情で、晴真に縋るような視線を送った。

晴真は、智子がいかに純粋で従順かを知っているだけに、今日彼女が受けた屈辱を思い、堪らない気持ちになった。彼女の手を引いてぐっと自分の胸に抱き寄せると、不満を隠そうともせず颯介に言い放つ。「叔父さん、どんな事情があれ、智子は俺が連れてきた彼女なんだ。少しは俺の顔を立ててくれてもいいだろう」

颯介は唇の端を吊り上げ、冷笑を浮かべる。その視線は智子の横顔と、彼女の細い腰に回された晴真の腕に突き刺さっていた。「お前、血迷ったか。どんな女にでも手を出すとはな」

晴真が憤然と何か言い返そうとするのを、智子は彼の胸に手を当てて制した。彼のシャツに残る、別の女の悪趣味な香水の匂いに耐えながら、か細い声で囁く。「私は大丈夫よ、晴真さん。あなたが分かってくれれば、それでいいの。私が好きなのは晴真さんであって、ご家族の方々ではありませんから」

こういった甘い言葉で男を懐柔する手管は、この二年間、晴真を相手にするうちにすっかり手慣れたものになっていた。

案の定、晴真は一層罪悪感を募らせ、彼女の小さな手を揉みながら言う。「分かってる。お前のことを一番理解してるのは、ここにいる誰でもなく、俺だ」

「ふっ」

颯介は鼻で笑い、嘲りを込めた視線を投げかける。「お前が、こいつを一番理解している、だと?」

「じゃあ、あんたが知ってるって言うのかよ」晴真は食ってかかった。「今日のあんたは、智子に対してあんまりじゃないか」

颯介がここまで感情を露わにする姿を、晴真は見たことがなかった。そもそも、大勢の人の前で、か弱い一人の女をやり込めるような男ではないはずだ。今日の彼は、まるで人が変わってしまったかのようだった。

智子を巡って空気が張り詰める中、前方から晴真の父、宗谷清志の重々しい声が響いた。「もういい。ここでみっともない真似はよせ。宗谷の人間は、前へ出て焼香を」

宗谷家の者、と名指しされ、智子はすっと空気を読んで晴真から身を離した。さも涙を拭うかのような仕草で目元を隠し、ただ辛そうに一言、「……行ってきて」と告げる。

晴真は、ようやく不承不承といった体でその場を離れた。

宗谷家当主の葬儀は、大小様々な雑事に追われ、全ての弔問客を見送る頃には、時刻はとっくに深夜を回っていた。

智子はその中で、成り上がりを狙うしたたかな女の役を完璧に演じきり、一日中立ち働いて、ようやく水を一口飲む暇ができたところだった。

「さっき、私たちのアレを見た時は、きっぱり晴真と別れるなんて言ってたのに。ずいぶんと殊勝な女だと思ったけど、結局この有様ね。やっぱり、晴真のお金が手放せないんでしょう?」いつの間にか背後に立っていた玲奈が、嘲るように言った。

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