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~タイムトラベル~王室からの愛 の小説カバー

~タイムトラベル~王室からの愛

21世紀を生きる法医学の権威、ハーパー・チューの運命は、ある遺体の解剖中に見つけた不可解な証拠によって一変する。巨大な犯罪組織の標的となり、絶体絶命の窮地に追い込まれた彼女は、逃亡の果てに時空を超え、古代の光明王朝へとタイムスリップしてしまう。見知らぬ時代で生き延びるため、彼女は現地の役人の娘という偽の身分を隠れ蓑に、追っ手から身を隠すことを決意した。頼れる家族も友人もいない孤独な環境下で、ハーパーは現代で培った卓越した検死技術と観察眼を武器に、自身の身を守りながら復讐の機会を窺う。しかし、その類まれなる才能は、一人の王子の関心を強く惹きつけることになった。正体が露見すれば命はないという緊張感の中、執拗に迫る危機を回避し、彼女は自らの運命を切り拓くことができるのか。時をかける専門家が、王朝に渦巻く陰謀と愛憎の嵐に立ち向かう、壮大なロマンス・ファンタジー。
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ハーパー・チューはペロペロキャンディを食べながら、道具箱を慣れた手つきで開けると、同僚のディエゴ・グオに話しかけた。「少し難しそうね。 今度はちょっとした大物だからどう切ればいいかわかんないや」

「ハーパー、君は法医学の専門家だろう。 死体を調べている間くらいは何も食べず、もう少しプロらしく行動出来ないのか?」 そんなふざけてそうなハーパーを見てディエゴは少し困ったような顔で尋ねた。 これは彼が前から言いたかったことでもあった。

ハーパー・チューはとても美しい女性だが、 その美貌にもかかわらず、彼女は28歳になってもまだ独身で、 その美貌を見るとすぐ言い寄ってきた男たちも 彼女の死体を解剖することへの熱意に気づくと、全員が逃げ出した。

「ディエゴ、甘い砂糖が脳細胞を活性化するのに良いって知ってる? それって本当だと思うわ。 あなたも、試してみるべきね」と提案すると、ディエゴへのペロペロキャンディをバッグの中を探し、 そして、かわいい笑顔でそれを彼に手渡した。

自分に向けられたキャンディを見てディエゴ・グオの顔は暗くなった。 「遠慮するわ。 このことは忘れて、仕事に戻ろう。 この死者、結構お偉いさんだそうだ。 どうやらたくさん機密情報を知ってるらしてくな、 それを踏まえるとたぶん口封じのために殺されたんだろう。 我々のリーダーが何を考えていたのかはわからないが、 なぜこの死体を調べるために私たちをここに送ったんだ? リーダーもこれが危険な仕事だと知っていたはずだ...」

「ちょっと黙ってて」 ハーパーは彼の話を遮って、 死んだ男の腹を切り裂くとすぐに、胃の中に鍵を見つけた。 「ほら! ここに鍵があるわ」

「何の鍵だ?」 ディエゴは不思議そうに尋ねると、よく見ようと前かがみになった。

「貸金庫の鍵よ。 被害者は攻撃される前に鍵を飲み込んだに違いないわ」と鍵をきれいにし、注意深く見ながら答えた。

「彼が死んだ時家も荒らされていたと聞いたわ。 殺人犯がこの鍵を探していたのか?」 ディエゴは、深く考え込んで尋ねた。

「ディエゴ、すぐにリーダーにこの発見について知らせてちょうだい。 けれど、他の誰にも内密に」と、歯ぎしりしながら警告した。

「わかった」 ディエゴはすぐに振り返ると、ハーパーを鍵と死体と置き去りにした。 彼がいなくなると、彼女は何も起こらなかったかのように死体検査を続け、 そして検査を終え死体を縫う直前、冷たい銃が彼女の頭に向けられた。

「それを渡すんだ」という聞き覚えのある声が、彼女の行動を止めようとしていた。

「まさか… ディエゴ、なぜあなたが?」 この声が同僚のディエゴのものであることに即座気づいたハーパー はそう尋ねた。

「ハーパー、君を殺したくない。 大人しく鍵を渡すんだ」 と言いながら銃を持っていたディエゴの手が震え始めた。 「俺は本気だ! 鍵を渡せば、身の安全は保障する。 ここでのことも何も見なかったことにしてあげる。

ディエゴが言葉を終える前に、ハーパーが動いた。 彼女はメスを使って彼の手首を切ると、その手にある銃を払い落としたが、 助けを求める声を上げる前に、胸に鋭い痛みが走った。 血が彼女の体からにじみ出始め、白衣をゆっくりと赤色に染めた。

「彼女は殺さない約束のはずだ!」 ディエゴは怒り狂ってハーパーを撃った警備員に向かって叫び、 そして床に倒れかかろうとした彼女のぐったりした体をつかんだ。 彼女は全身に悪寒が走るのを感じると、 目を閉じ、同僚が何を言おうとしているのか聞こえなくなった。

ハーパー・チューが再び目を開けると、その視界にあるのは冷酷な死刑執行人がナタを持つ姿だった。 目の前の光景は、歴史劇や時代劇にある囚人の首が切り落とされるシーンとよく似ていた。 首を切り落とされそうになっていることに気づくと彼女はパニックになり、必死にもがき始めた。 しかし、首が痛くて頭が爆発しそうになった上、 たくさんの記憶が脳に押し寄せると、彼女は危うく気絶するところであった。

そう遠くない距離で、彼女の妹が泣き出し始めた。 彼女は「姉さん、私たちを置いていかないで…」と叫んだ。

ハーパー・チューは脳みそを絞ってゆっくりと現在に至るまでの記憶を思い出すと、 自分がタイムトラベルしたことに気づいた。 その身分も 現代の法医学の専門家から、古代ブライト王朝のチュー家の嫡女に変わり、 さらに将軍であるマクスウェル・ジャンの側室の赤ちゃんの出産を助ける時にトラブルに巻き込まれ、 将軍のまだ生まれていない息子を殺したと濡れ衣を着せられたのだ。

そして、目の前で必死に泣いていた妹こそ、彼女を罠にはめた共犯者の一人だった。

息子を死なれて激怒していたマクスウェルの 怒りを和らげるために、皇帝は彼女を斬首すると決めた。 そしてチュー家のものは、すでに彼女を見捨て、 唯一見送りにやってきた妹も、自分が斬首されるところを見たいだけであった。

「もう正午だ! 今すぐ死刑を執行せよ!」 高台の上で、今回の死刑執行の責任者である 九皇弟のマシュー・ジュン親王が命令を出すと、 死刑執行人はナタを持ち上げた。 そして迫ってくる危機を見ると、ハーパーはすぐに叫んだ。

「冤罪です!! 殿下、マクスウェル将軍の側室はそもそも妊娠すらしていなかったんです! 私はただあらぬ罪を着せられただけです!!」

龍の紋様が入った黒いローブを着ており、墨のように黒い髪は翡翠で留められていた マシュー親王のお姿は堂々としていて、 顔立ちも均整が取れて立体的で、 普段は無為に毎日を過ごしている怠惰親王と呼ばれているが、その冷たくて黒い瞳は刃のように鋭いものだった。

目の前にひざまずく女を見たとき、なんとも言えぬ笑顔が彼の顔に浮かんだ。

ほんの少し前まではあれだけ死を求めていた彼女が なぜナタを首にかけられた途端、 冤罪だの濡れ衣だの保身的にほざきはじめたのだろう。

「ハーパー・チュー、勅令が出された以上、陛下の命令に逆らうことは不可能だ。 そなたは無実だと言ってるようだが、 それを証明できる人は?」

「証明はできるわ! 殿下、私には証拠があります!」 そう言ってハーパーはマシュー親王に目を向けた。 「殿下!私たち一族の命にかけて言えます!マクスウェル将軍の側室が私たちを騙してるんです!彼女はそもそも妊娠などしていません! それで私に秘密をばらされるのが怖くて、こうして私に濡れ衣を着せようとしています! どうかこの私めにマクスウェル将軍に会い、汚名返上する機会をくださいませ。 自分の無実を証明できない場合、私たち一族全員斬首してもらっても構いません!」

「自分一人の無実を証明するために家族全員を危機に巻き込むなんて大したもんだ。 とっくにチュー家に見捨てられたとは聞いていたが、 まさか逆に家族全員をも道連れにするとは思わなかったよ。 女ってのは怖いもんだね。 他のやつだったら、きっと自分が死んでも家族を巻き込まないようにするだろう。 しかし、彼女は逆に自分から巻き込ませようとするなんて、 実に面白い!」

マシューがそう思ってる間も、 ナタがますます彼女の首に近づいてきているので、彼はすぐに決断しなければならないことに気づいた。

処刑台の外では、民衆は最愛の将軍の怒りを晴らす為にハーパー・チューが死ぬのを待っていた。

彼女の隣では、心の奥底で自分が姉の地位と一族の財産を引き継げると期待している 実の妹も首を長くして彼女の死を待っていた。

要するに、誰もが彼女の死を望んでいるのだ。

「たとえマシュー新王が私を助けたいと思っても、きっと状況を変えることはできないだろう」とハーパー・チューは必死に考えた。

しかし、その顔にある絶望と決意を見て、マシュー・ジュンは「ならば、君にチャンスを与えよう」と口を開いた。

親王の傍らにいる役人は「殿下! しかし陛下の勅令が…」と念を押した。

マシューは手を挙げて、役人の話を止めた。 「陛下のほうには、私が直に説明しよう。 それより見せてもらおうじゃないか、もし彼女が証拠を出せなかったら、本当に家族全員を道連れにできるかどうかをね」と語った。

ハーパーは感謝の気持ちでいっぱいになった目で彼を見て、「殿下、ありがとうございます」と言った。

しかしマシュー・ジュンは彼女の感謝に応える 代わりに、ただ冷たく、「君が無実を証明できる証拠を出せなかったら、また同じ状況に戻されるだけでしょう。 これはただの一時しのぎに過ぎないんだぞ」

確かに希望をかすかに見出したが、彼女は自分がまだ安全ではないことを知っていた。 一方、この劇的展開を見た彼女の妹、フェリシア・チューが激怒して、 歯を食いしばると、「ハーパー、よくも私たち一族の命までかけてくれたわね」と責めつけた。

「フェリシア、私が無実だと思わないの?」 と言いながらハーパーから如何にも可憐でキラキラと輝くような目を向けられると、 妹は歯を食いしばってうなずくしかなかった。

「もちろん、マクスウェル将軍の子供を殺すつもりはなかったと思うわ。 けれど、私たち一族を危機に巻き込むことは、とても利己的で残酷よ!」

「自分自身を助けるために、利己的になったっていいじゃない?」 ハーパー・チューは皮肉に満ちた笑顔を見せながらそう反論した。

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