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白い狼の身籠った番、再起の刻印 の小説カバー

白い狼の身籠った番、再起の刻印

不妊に苦しんだ二年間を経て、ようやく黒石一族の跡継ぎを授かった私。この命は、アルファの番としての地位を盤石にする希望の光のはずだった。しかし、喜びも束の間、親友から届いた念話が私を絶望の淵へ突き落とす。そこには、運命の番である涼真が別の女と睦み合う姿が映っていた。問い詰める私に、彼は重圧による「ストレス発散」だと吐き捨てたが、真実はさらに残酷だった。涼真の母と愛人・聖奈の密談を盗み聞きした私は、聖奈が既に妊娠六ヶ月であり、彼女の子こそが真の後継者として望まれていることを知る。十五年間の献身も、私が築いたビジネスの功績も、彼らにとっては無価値な「空っぽの器」に過ぎなかったのだ。一族の駒として使い捨てられる運命を悟った私は、満月の祝祭で従順に妊娠を告げる代わりに、決別の道を選ぶ。壇上で涼真に離別の言葉を突きつけ、私はかつて拒んだ男・戒に連絡を入れた。すべてを焼き尽くし、再起するための復讐劇が今、幕を開ける。
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凛 POV:

メモに書かれた住所は、看板さえない超高級レストランだった。

私の最初の車より高価な料理の皿の上で、何十億もの取引が交わされるような場所だ。

私が中に入ると、支配人はただ頷き、静まり返ったダイニングルームを抜け、重いベルベットのカーテンで仕切られた奥のプライベートブースへと私を案内した。

そこに座って、琥珀色の液体が入ったグラスを揺らしていたのは、戒だった。

紅月一族の跡継ぎ。

一族の噂話では、彼は笑いものだった。

快楽主義的な生活と、一族の事柄への完全な無関心で悪名高い、24歳のプレイボーイ。

彼らは彼を「役立たずの跡継ぎ」と呼び、その強力な血筋の恥だと蔑んでいた。

しかし、目の前の男は役立たずには見えなかった。

退屈そうで、危険で、そしてあまりにも知的すぎた。

私が向かいの席に滑り込むと、ある香りが私を襲い、思わず身をすくめた。

今まで嗅いだことのない香りだった。

それは吹雪の後の澄み切った空気、雪を纏った松の木の深く土臭い香り、そして古の石が持つ冷たく揺るぎない力強さ。

それは力と荒野を物語る香りで、私が固く抑えつけている内なる狼を揺り動かし、頭をもたげさせた。

私の心臓は肋骨に打ち付けられ始め、突然の激しい血流が耳の中で轟音を立てた。

「話があるそうね」

私は、内に渦巻く混沌を無視し、声を平坦に保つよう努めて言った。

彼はゆっくりと飲み物を一口飲み、その薄暮色の瞳で私の顔を眺めた。

「お前の伴侶は、お前を裏切っている」

「一度きりのことよ」

私は言ったが、その嘘は自分の耳にさえ薄っぺらく聞こえた。

「制御できなかった、ただの戯れよ」

ゆっくりとした、嘲るような笑みが彼の唇に広がった。

それは美しい笑みで、だからこそ余計に腹が立った。

「忠誠心か。黒石一族の最も賞賛すべき、そして最も利用しやすい美徳だな。教えてくれ、それは忠誠心なのか、それともただの馬鹿なのか?」

彼は声を荒らげなかったが、低い力の響きが彼から発せられた。

彼は近くのウェイターに目をやった。

「席を外せ」

それは要求ではなかった。

命令だった。

ウェイターの目は一瞬虚ろになり、頭を下げ、そして静かに、効率的にレストランから他の客を全員退去させ始めた。

あれがアルファ・コマンド。

アルファの声に宿る、下位の狼が逆らえない生来の力。

戒はまだアルファですらなく、ただの跡継ぎだが、すでにその力を何気ない傲慢さで操っていた。

彼への敬意と、そして恐怖が、一段階上がった。

「ただの戯れ?」

彼は私に注意を戻し、そう呟いた。

彼は小さく洗練されたタブレットをテーブルの向こうから滑らせてきた。

「これが戯れに見えるか?」

彼は再生ボタンを押した。

画面がビデオで明るくなった。

涼真だった。

そして、バーにいた女、聖奈。

彼らはホテルの部屋にいて、背景のタオルには黒石一族の企業ロゴが見えた。

映像は非常に鮮明で、音声もはっきりしていた。

「彼女はただの政治的な駒だ、聖奈」

涼真は、彼女の髪を撫でながら、滑らかで甘い声で言っていた。

「凛のビジネス手腕は役に立つ。だが、彼女の血筋は脆弱だ。俺がアルファになり、地位が安定したら、拒絶の儀式を行う。そうすれば、お前が俺のルナだ」

世界が傾いた。

肺から空気が吸い出された。

心臓の鼓動の一つ一つが、肋骨に痛々しく響いた。

私が二十八年間身につけてきた鎧であるプライドは、ただひび割れただけではなかった。

粉々に砕け散った。

私が青ざめたのだろう、戒の笑みが広がった。

私は鋭く、乱れた息を吸い込み、無理やり彼の視線に合わせた。

私は壊れない。

彼の前では絶対に。

「何が望みなの、戒?」

私は、かすれた囁き声で尋ねた。

「同盟だ」

彼は簡単に言った。

「お前が彼から離れるのを手伝ってやる。その見返りに、俺のために一つやってもらう」

「何を?」

「黒石一族のエネルギー技術部門だ。お前が築き上げたものだ。お前が去る時、それを持って行け。紅月一族の風力発電部門と合併させる。そうすれば、我々はグリーンエネルギー市場で他のどの一族も叩き潰せる」

それは見事で、冷酷なビジネス戦略だった。

「彼がそれを許すはずがないわ」

私は言った。

「彼に選択の余地はない」

戒は身を乗り出して言った。

彼は声を低め、松と冬の嵐の香りが強まり、私の頭をくらくらさせた。

「なぜなら、お前は必要な切り札をすべて手に入れることになるからだ」

彼はタブレットを戻し、新しい画面にスワイプした。

それは一連の財務記録だった。

オフショア口座。

不動産証書。

「彼は一年間、一族の資産を横領している」

戒は、柔らかく、しかし致命的な声で言った。

「そして、彼はすでに聖奈に中立地帯の不動産を八つも買っている。お前が稼ぐのを手伝った金でな」

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