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望まれざる者、止められぬ者 の小説カバー

望まれざる者、止められぬ者

児童養護施設での十年を経て、ようやく実の両親に引き取られた私。しかし待っていたのは、完璧な双子の妹・莉奈の生活費を稼ぐための道具として扱われる日々でした。家族の愛を諦め、恋人の蓮だけを心の支えにしていましたが、残酷な裏切りが私を襲います。バイト先で耳にしたのは、両親と蓮の親が、蓮と莉奈を結婚させようと画策する密談でした。その直後、蓮は私の目の前で妹にプロポーズし、一通のメッセージで私との関係を切り捨てたのです。真実を問い詰めると、家族は「お前を連れ戻したのは間違いだった」と私を蔑み、妹は自作自演で私を突き落とし犯に仕立て上げました。父に殴られ、ゴミのように路上へ放り出された私を、両親は警察に凶悪な加害者として突き出します。私という存在を完全に抹消しようとする彼ら。しかし、彼らはまだ気づいていません。その理不尽な仕打ちが、破滅への幕開けになることを。私を「望まれざる者」として捨てた代償は、決して安くはありません。失うもののなくなった私による、静かな反撃が今ここから始まります。
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3

涙が頬を伝うまで、私は笑い続けた。

あまりにも馬鹿げていた。

彼をシェアする。

まるでおもちゃみたいに。

そして彼女は、私に順番を譲ってやる心優しい姉のつもりらしい。

「信じられない」

ようやく息をつき、目を拭いながら言った。

「本当に」

莉奈は、まるで平手打ちされたかのように身をすくめた。

「ただ、助けようと…」

「違う」

私の声は、冷たくなった。

「あなたは、人生ずっと『助けて』きた。私がここに来たばかりの頃を覚えてる。あなたは、私に古着を『あげて』、それから友達に私のセンスが悪いって言いふらした。宿題を『手伝って』、それから私の良い成績を自分の手柄にした。あなたが私のためにしたことで、あなた自身がもっと得をしなかったことなんて、一度もなかった」

「なんてひどいことを言うの!」

明美は、莉奈を庇うように抱きしめながら叫んだ。

「事実よ」

私は、彼らに背を向けた。

「もう終わり。荷物をまとめて、出ていく」

「出ていく?」

莉奈の声は、パニックで鋭くなった。

涙は、一瞬で消えていた。

「出ていっちゃダメよ!来月の家のローン、誰が払うのよ!」

その問いは、生々しく、利己的に、宙に浮いていた。

それが、彼女が本当に気にしている唯一のことだった。

私の痛みじゃない。裏切りでもない。

金だ。

「金持ちの婚約者ができたんでしょ」

階段に向かって歩きながら、私は肩越しに言った。

「彼に払わせればいい」

「そこに戻れ!」

父が怒鳴った。

「妹に謝るまで、どこにも行かせん!」

私は彼を無視し、階段を上り始めた。

私の部屋は廊下の突き当たり。

かつて物置だった、狭くて窮屈な空間。

わずかな持ち物をまとめるのに、時間はかからないだろう。

階段の最上段にたどり着いた時、母の声が、突然柔らかく、懇願するように、私を呼び止めた。

「結菜、お願い、待って」

私は立ち止まったが、振り返らなかった。

「こんなことしないで」

明美の声は震えていた。

「私たちは、ただカッとなってただけ。あんなこと、本気で言ったんじゃないの。お父さんは、ただ…莉奈のことを心配しすぎてるだけなのよ」

私は黙っていた。

いつもの手口だ。

爆発の後に続く、甘く、巧みな謝罪。

これまで、それで百回はうまくいってきた。

「愛してるのよ、結菜」

その嘘は、薄っぺらく、擦り切れて聞こえた。

「あなたがいなくなって、私たちは途方に暮れた。何年も、あなたを探し続けたの。また私たちを捨てないで。そんなことされたら、私は死んでしまうわ」

その演技は、ほとんど説得力があった。

でも今夜、私はカーテンの裏側を見てしまった。

「あなたは言ったわね。十年もの間、私を探すためにお金を全部使ったから、一度も旅行に行かなかったって」

私は、平坦な声で言った。

「私が行方不明なのに、自分たちだけ楽しむなんて考えられなかったって」

「そうよ、その通りよ」

彼女は、熱心に言った。

「毎日が、地獄だったわ」

私は、ゆっくりと振り返った。

「おかしいわね。先月、屋根裏の古い箱を整理してたら、アルバムを見つけたの。2005年のハワイ旅行の写真でいっぱいだった。2008年のバハマクルーズ。2011年の北海道でのスキー旅行。二人とも、すごく…地獄を味わってる顔には見えなかったけど」

明美の顔が凍りついた。

血の気が引いていく。

父は目をそらし、顎の筋肉がぴくりと動いた。

「嘘つき」

私は、ただそう言った。

「全部、嘘だったのね」

「あなたは、わかってない…」

明美は、口ごもった。

「ああ、今は完璧にわかってる」

私は言った。

「私は、あなたたちが嘆き悲しんだ行方不明の娘じゃなかった。解決済みの、恥ずかしい問題だった。そして、私が再び現れた時、私は新しい問題になった。収入源であり、都合のいいスケープゴート」

「なんて口の利き方だ!」

父が、再び顔を赤くして怒鳴った。

「俺たちは、お前にセカンドチャンスを与えてやったんだぞ!」

「違う」

私は、首を振った。

「あなたたちは、莉奈にセカンドチャンスを与えた。私を犠牲にして」

「結菜、お願い」

莉奈が、何かをねだる時に使う、あの甘ったるい、懇願するような声で言った。

「こんなことしないで。お母さんもお父さんも、ストレスが溜まってるだけなの。私の結婚式のことを考えて!あなたがいなかったら、藤堂家の人たちが色々聞いてくるわ。格好がつかないじゃない」

いつだって、どう見えるか、だ。

「私の恋人を盗む前に、それを考えるべきだったわね」

私は、再び背を向けた。

「私のお金を取り返して、私の人生を取り戻す」

その時、母が泣き始めた。

私を打ちのめすために計算された、大げさで、芝居がかったすすり泣き。

「自分の娘に、こんなことを言われるなんて!何年も苦しんできたのに!私は、悲しみのあまり死にかけたのよ!」

この話は、千回は聞いた。

嘆き悲しむ母親の物語。

かつては、私も彼女と一緒に泣き、その手を握り、もう二度と離れないと約束した。

今夜、私は何も感じなかった。

私の同情の井戸は、干上がってしまった。

「私は、あなたたちに何の借りもない」

私の声は、硬かった。

「私の借金は、完済済み。私は十年、あなたたちが想像もできないようなことを乗り越えて、生き抜いてきた。ここに来て、あなたたちのために働いた。私の痛みで、あなたたちの快適な生活を支えた。これで、おあいこよ」

私は、彼ら三人を見た。

嘘と強欲でできた、完璧で、惨めな小さな絵画。

「私は、この家族の一員じゃない」

その悟りは、奇妙な安らぎとともに、私の中にすとんと落ちた。

「私はただ、請求書を払う幽霊」

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