
望まれざる者、止められぬ者
章 3
涙が頬を伝うまで、私は笑い続けた。
あまりにも馬鹿げていた。
彼をシェアする。
まるでおもちゃみたいに。
そして彼女は、私に順番を譲ってやる心優しい姉のつもりらしい。
「信じられない」
ようやく息をつき、目を拭いながら言った。
「本当に」
莉奈は、まるで平手打ちされたかのように身をすくめた。
「ただ、助けようと…」
「違う」
私の声は、冷たくなった。
「あなたは、人生ずっと『助けて』きた。私がここに来たばかりの頃を覚えてる。あなたは、私に古着を『あげて』、それから友達に私のセンスが悪いって言いふらした。宿題を『手伝って』、それから私の良い成績を自分の手柄にした。あなたが私のためにしたことで、あなた自身がもっと得をしなかったことなんて、一度もなかった」
「なんてひどいことを言うの!」
明美は、莉奈を庇うように抱きしめながら叫んだ。
「事実よ」
私は、彼らに背を向けた。
「もう終わり。荷物をまとめて、出ていく」
「出ていく?」
莉奈の声は、パニックで鋭くなった。
涙は、一瞬で消えていた。
「出ていっちゃダメよ!来月の家のローン、誰が払うのよ!」
その問いは、生々しく、利己的に、宙に浮いていた。
それが、彼女が本当に気にしている唯一のことだった。
私の痛みじゃない。裏切りでもない。
金だ。
「金持ちの婚約者ができたんでしょ」
階段に向かって歩きながら、私は肩越しに言った。
「彼に払わせればいい」
「そこに戻れ!」
父が怒鳴った。
「妹に謝るまで、どこにも行かせん!」
私は彼を無視し、階段を上り始めた。
私の部屋は廊下の突き当たり。
かつて物置だった、狭くて窮屈な空間。
わずかな持ち物をまとめるのに、時間はかからないだろう。
階段の最上段にたどり着いた時、母の声が、突然柔らかく、懇願するように、私を呼び止めた。
「結菜、お願い、待って」
私は立ち止まったが、振り返らなかった。
「こんなことしないで」
明美の声は震えていた。
「私たちは、ただカッとなってただけ。あんなこと、本気で言ったんじゃないの。お父さんは、ただ…莉奈のことを心配しすぎてるだけなのよ」
私は黙っていた。
いつもの手口だ。
爆発の後に続く、甘く、巧みな謝罪。
これまで、それで百回はうまくいってきた。
「愛してるのよ、結菜」
その嘘は、薄っぺらく、擦り切れて聞こえた。
「あなたがいなくなって、私たちは途方に暮れた。何年も、あなたを探し続けたの。また私たちを捨てないで。そんなことされたら、私は死んでしまうわ」
その演技は、ほとんど説得力があった。
でも今夜、私はカーテンの裏側を見てしまった。
「あなたは言ったわね。十年もの間、私を探すためにお金を全部使ったから、一度も旅行に行かなかったって」
私は、平坦な声で言った。
「私が行方不明なのに、自分たちだけ楽しむなんて考えられなかったって」
「そうよ、その通りよ」
彼女は、熱心に言った。
「毎日が、地獄だったわ」
私は、ゆっくりと振り返った。
「おかしいわね。先月、屋根裏の古い箱を整理してたら、アルバムを見つけたの。2005年のハワイ旅行の写真でいっぱいだった。2008年のバハマクルーズ。2011年の北海道でのスキー旅行。二人とも、すごく…地獄を味わってる顔には見えなかったけど」
明美の顔が凍りついた。
血の気が引いていく。
父は目をそらし、顎の筋肉がぴくりと動いた。
「嘘つき」
私は、ただそう言った。
「全部、嘘だったのね」
「あなたは、わかってない…」
明美は、口ごもった。
「ああ、今は完璧にわかってる」
私は言った。
「私は、あなたたちが嘆き悲しんだ行方不明の娘じゃなかった。解決済みの、恥ずかしい問題だった。そして、私が再び現れた時、私は新しい問題になった。収入源であり、都合のいいスケープゴート」
「なんて口の利き方だ!」
父が、再び顔を赤くして怒鳴った。
「俺たちは、お前にセカンドチャンスを与えてやったんだぞ!」
「違う」
私は、首を振った。
「あなたたちは、莉奈にセカンドチャンスを与えた。私を犠牲にして」
「結菜、お願い」
莉奈が、何かをねだる時に使う、あの甘ったるい、懇願するような声で言った。
「こんなことしないで。お母さんもお父さんも、ストレスが溜まってるだけなの。私の結婚式のことを考えて!あなたがいなかったら、藤堂家の人たちが色々聞いてくるわ。格好がつかないじゃない」
いつだって、どう見えるか、だ。
「私の恋人を盗む前に、それを考えるべきだったわね」
私は、再び背を向けた。
「私のお金を取り返して、私の人生を取り戻す」
その時、母が泣き始めた。
私を打ちのめすために計算された、大げさで、芝居がかったすすり泣き。
「自分の娘に、こんなことを言われるなんて!何年も苦しんできたのに!私は、悲しみのあまり死にかけたのよ!」
この話は、千回は聞いた。
嘆き悲しむ母親の物語。
かつては、私も彼女と一緒に泣き、その手を握り、もう二度と離れないと約束した。
今夜、私は何も感じなかった。
私の同情の井戸は、干上がってしまった。
「私は、あなたたちに何の借りもない」
私の声は、硬かった。
「私の借金は、完済済み。私は十年、あなたたちが想像もできないようなことを乗り越えて、生き抜いてきた。ここに来て、あなたたちのために働いた。私の痛みで、あなたたちの快適な生活を支えた。これで、おあいこよ」
私は、彼ら三人を見た。
嘘と強欲でできた、完璧で、惨めな小さな絵画。
「私は、この家族の一員じゃない」
その悟りは、奇妙な安らぎとともに、私の中にすとんと落ちた。
「私はただ、請求書を払う幽霊」
おすすめの作品





