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千年狐の愛は一度だけ の小説カバー

千年狐の愛は一度だけ

たった一度、愛するあの方と再会したい。その一途な願いを叶えるため、私は自らの命とも言える大切な妖丹を捧げました。想像を絶するような幾多の苦難を乗り越え、ようやくの思いで再会を果たした私を待っていたのは、あまりにも残酷な現実でした。彼が私に投げつけた最初の言葉は、慈しみなど微塵も感じられない「失せろ」という拒絶だったのです。その冷徹な一言に、私は長年抱き続けてきた俗世への未練をすべて断ち切る決意をしました。執着から解き放たれた私は、やがて悟りの境地へと至り、仙人としての新たな生を歩み始めます。しかし皮肉なことに、今度は彼が私への愛に溺れ、手に入らぬ存在となった私を求めて苦悩の淵に沈んでいました。かつての自分を見ているかのような、その場に縛り付けられた彼の姿。私はかつての恋慕を捨て、今はただ静かに彼を見つめています。そして、私と同じようにその苦しい執着を手放し、心を自由にするよう彼を諭すのでした。千年という長い時の果てに、二人の立場は完全に逆転してしまったのです。
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【1】

妖王の玉座で得意満面に笑みを浮かべていた楼天行と、一瞬、視線が絡み合う。私は満面の笑みで応えた。

彼は虚を突かれたように動きを止めると、威厳に満ちたその君主は私を指さし、冷たく吐き捨てた。「五百年経っても亡霊のように付きまとうか。消えろ、貴様が来ていい場所ではない!」

全身の血の気が引いていく。五百年という歳月を経ても、彼は過去の憎しみを忘れられず、いまだに私を疑っている。あの日の、何が正しく、何が過ちだったのかを……。

神との賭けは人を狂わせ、代償を伴うもの。もう彼に会えたのだから、それで十分なのかもしれない。

下級の妖たちが数人、私を捕らえに来る。なされるがままになろうとした、その時。ふと考えを改めた。楼天行と共に、永遠を生きることはできないだろうか? その方が、ずっと良いのではないか?

私は玄冥骨扇を固く握りしめる。扇が凄まじい妖力を放ち、下級の妖どもは一瞬にして地に伏した。

次の瞬間、喉元に衝撃が走る。抵抗する力は一瞬で奪われた。楼天行だ。金色の王衣をはためかせ、その身から放たれる覇気に圧倒される。彼の手の中で、私は糸の切れた凧のように無力だった。

両足が宙に浮き、手から滑り落ちた玄冥骨扇が音を立てて床に転がる。

彼は怒りを露わにせずとも、その威圧感は凄まじい。「わざわざ、ここで死にに来たのか?」一言一言、言葉を刻むように彼は言った。

妖丹に守られていないこの身は、毒にも侵されている。たちまち顔から血の気が引き、呼吸が苦しくなっていく。

「浮生。千年生きた狐妖が、今更俺の前で何の悲劇を演じている?」

彼は不意に考えを変えたのか、私を地面に叩きつけるように投げ捨てた。私は急いで扇を拾い、そこから霊力を得ようと必死になる。

かすれる息を整え、私は懇願する。「天行、昔のことは誤解だったの。過去は水に流して、もう一度やり直しましょう?」

彼は冷たく笑った。「誤解だと?どうしても俺のそばにいたいと言うのなら……だが、おまえの夫とやらは知っているのか?おまえがこれほど尻軽な女だということを」

夫ですって? 言い返そうとしたが、声が出ない。喉から漏れるのは意味をなさない音だけ。これは紫冥の呪いだ。楼天行に、あの日のことを話すことは許されない。

何も説明できない。「天行、昔は私が悪かったわ。でも、こうしてあなたの元へ帰ってきた」 その手にすがりつこうとするが、容赦なく振り払われた。

結局、私は牢に閉じ込められた。暗く、冷たい牢獄には、様々な妖たちの断末魔が響き渡る。その夜、私は一睡もできなかった。

だが、これくらいで諦められるものか。 彼を探し求めたこの五百年、どれほどの苦難を乗り越えてきたと思っているのか。

【2】

蜘蛛の毒が、じわりと腕を這い上がってくる。玄冥骨扇をひと振りすれば、表面上は何事もないように見える。だが、体内では毒が五臓六腑を蝕み、夜ごと私を苦しめる。

玄冥骨扇には十条の白い光が揺らめいている。紫冥は言った。この光は私の彼への愛の証であり、十の光がすべて消え去る時、自分は現れる、と。

私に残された時間は、もう多くない。天行は今もなお、あの日のことを許せずにいる。 私が彼の元を去り、琉璃鏡を借り受けたことが、結果として彼の父君の死を招いてしまったのだ。

彼は私を憎んでいる。だが、私にはそうするしかなかった。琉璃鏡を借り受け、彼の元を去る以外に、道はなかったのだ。

翌日、私は牢から出された。ここ幻山は、彼と過ごした青丘とはまるで違う場所だ。

まるで俗世から切り離された桃源郷のよう。生命力に満ち溢れた植物が、ところ構わず生い茂っている。

歩を進めると、赤い花が一面に咲き誇る場所に出た。妖しいまでに美しいその花々が、丘の斜面を埋め尽くしている。

その斜面に、天行が寝転んでいた。その姿は、私の記憶の中にいる、あの日の少年の面影に重なる。かつて彼は、私の怪我を治すため、必死になって霊薬を探し回ってくれたものだった。

一度、彼がなかなか帰ってこないことがあった。言いようのない不安に駆られて探しに出ると、彼は名も知らぬ小さな花々が咲き乱れる丘の上で、今と全く同じように寝転んでいたのだ。

近寄って見れば、彼はすやすやと寝入っている。あの時も、柔らかな陽光が降り注ぎ、山には花が咲き乱れていた。吹き抜ける風が私の裳裾を揺らすたび、心までがふわりと揺さぶられたのを覚えている。

「天行!」 私は、そっとその名を呼んだ。

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