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愛した妹を殺した英雄 の小説カバー

愛した妹を殺した英雄

炎に巻かれた妹、奈津穂からの必死の救助要請。しかし、ハイパーレスキュー隊長である私は、婚約者の莉結を陥れるための狂言だと決めつけ、「死ねばいい」と冷酷に突き放して通話を切った。数時間後、私は身元不明の焼死体の前に立っていた。隣に寄り添う真犯人の莉結を愛おしく抱き寄せながら、被害者を自業自得だと嘲笑っていたのだ。その遺体が、私の言葉に絶望して息絶えた実の妹だとは夢にも思わずに。だが、黒焦げた遺体の手首に、かつて私が贈った安物のヘアゴムを見つけた瞬間、世界は一変する。震える手で現場の携帯に妹の誕生日を入力すると、ロックが解除され、画面には私に向けた彼女の笑顔が映し出された。取り返しのつかない過ちに気づき、絶叫する私。世間から英雄と称えられた男は、あの日、最愛の妹を見殺しにした残酷な殺人者へと堕ちた。守るべき命を自らの言葉で葬った男の、絶望に満ちた後悔が幕を開ける。
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3

陸翔は, 携帯電話の画面を見た瞬間, 顔中の筋肉を緩ませた. 私の魂は, 彼のそんな表情を, 何年も見ていなかった.

「莉結…どうしたんだい? 大丈夫? 」

彼の声は, まるで別人のように優しかった. 甘く, 愛おしさがこもっている. 私の魂は, その声を聞くだけで, 胸が締め付けられるような痛みを感じた.

「うん, 僕も会いたいよ. 今すぐ行きたいけど, まだ仕事が…」

彼は, 私が見たこともないような優しい笑顔を浮かべた.

莉結…高森莉結.

私の魂は, その名前を聞いた瞬間, 全身を駆け巡る悪寒を感じた. 彼女は, 私たち兄妹の幼馴染. そして, 私から全てを奪った女.

かつて, お兄ちゃんも私に, こんな風に優しく微笑んでくれたことがあった. 幼い頃, 私が転んで泣いていると, 彼はいつも一番に駆けつけてくれた. 私の手を握り, 頭を撫でて, 「大丈夫だよ, 奈津穂. お兄ちゃんがいるから」と言ってくれた.

しかし, その優しさは, 莉結が現れて以来, 私から完全に向けられなくなった. お兄ちゃんの優しい笑顔は, 今では全て莉結に向けられている.

私の魂は, まるで心臓を直接握り潰されるような痛みに襲われた.

彼にとって, 莉結が全てだった.

「わかった, わかったよ. すぐに終わらせて, 迎えに行くからね. りゆが寂しがってるって聞いたら, 僕も寂しくなるよ」

陸翔は, 携帯電話に向かって甘い言葉を囁いた.

「何を怯えているんだい? 誰かに何かされたのか? 」

彼の声が, 突然, 少し低くなった. 表情に, わずかな緊張が走る.

「奈津穂が, また何かしたのか? 」

陸翔の目が, 鋭く私の方に向けられた. 私の魂は, 彼の視線が私を貫くような錯覚に陥った.

「あの女が, また莉結をいじめたのか? 許さない. 絶対に許さない」

彼の声は, 怒りに震えていた.

「安心して, 莉結. 僕が必ず守るから. あの女が君に手を出そうとしたら, 僕が責任を持って, 二度と君の前に現れないようにする. どんな手を使ってでも, ね」

陸翔の言葉は, 私に向けられた明確な脅迫だった. 私の魂は, 彼の言葉に, 深い絶望を感じた.

「だから, りゆは何も心配しなくていい. 僕が全部解決するからね. 週末は, 二人で温泉に行こうか? ゆっくり休んで, 僕と一緒に癒されよう」

彼は, 再び優しい声に戻った.

私を, 二度と莉結の前に現れないようにする, か. それは, つまり…

私の魂は, 自嘲するように笑った. お兄ちゃんは, 私を殺すと言っているのだ.

彼が, 莉結の言葉しか信じないことは知っていた. しかし, 彼がここまで私を憎んでいるとは.

お兄ちゃん…本当に, 私を, 死んでほしいと願っているの?

彼の言葉が, 深く深く, 私の魂に突き刺さった.

「うん, 愛してるよ, 莉結. 早く会いたい」

陸翔は, 携帯電話に向かって, 甘く囁いた. その言葉は, 私の魂を粉々に打ち砕いた.

私の魂は, その言葉を聞いて, 胸の奥底から冷たい水が湧き上がってくるような感覚に襲われた.

愛している…私には, 一度も言ってくれなかった言葉.

「奈津穂は本当に嫌な女ね. いつも陸翔君の邪魔ばかりして」

電話の向こうから, 甘く, しかしどこか悪意を秘めた声が聞こえた. 莉結の声だった.

この声…!

私の魂は, 全身が震え上がった. この声だ. この甘い声に, 私は騙され, お兄ちゃんは操られてきた.

「…り…りゆ…」

私の魂は, 無意識に, かすれた声を出そうとした. だが, それはただの空虚な響きとなり, 誰にも届かない.

お兄ちゃん, お願い, 莉結を信じないで! 彼女は…!

私の魂は, 必死に警告しようとした. しかし, 私の声は, 彼には届かない. 私の存在も, 彼には見えない.

「じゃあね, 陸翔君. 週末, 楽しみにしてるわ」

莉結の声が, 電話の向こうで響いた. その声は, 甘い毒のように, 私の魂を蝕んだ.

「うん, またね」

陸翔は, 携帯電話を切り, 満足げな笑顔を浮かべた.

「奈津穂の件, 今すぐもう一度確認してくる」

陸翔は, 森永警部にそう言って, 再び遺体安置室に向かおうとした.

森永警部は, 慌てて陸翔を呼び止めた.

「安斎隊長! 奈津穂さんの携帯に, 何度か電話したんだが, 繋がらないんだ! まさか, 本当に何かあったんじゃ…」

森永警部の顔には, 真剣な心配の色が浮かんでいた.

「また, 俺の気を引くための芝居だろう. どうせ, どこかで男と遊んでいるか, 俺に恨みを晴らすための計画を練っているかだ」

陸翔は, 冷たく言い放った.

「そんなことはない! 奈津穂さんは, 君のために…」

「もういい! 」

陸翔の携帯電話が鳴り響いた. 彼の顔から, 一瞬にして不機嫌な表情が消え去った.

彼の表情は, まるで氷が溶けるかのように, 柔らかなものへと変わっていった.

誰だろう…

私の魂は, その変化に, 言いようのない不安を感じた.

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