
六十六回キャンセルされた花嫁
今日、私の結婚式は通算六十六回目のキャンセルという最悪の節目を迎えた。原因はいつも同じ。誓いのキスの直前、幼馴染の千結が嘘のアレルギー発作で倒れると、婚約者の直哉は私を祭壇に置き去りにして彼女のもとへ駆けつけたのだ。直哉は私との約束のために克服したはずの高所恐怖症を、実は裏で千結と観覧車に乗って克服しており、私に肌身離さず着けるよう強いたペアネックレスさえ彼女に与えていた。私は外科医になる夢を諦め、胃に穴が開くほど彼に尽くしてきたが、彼の心に私の居場所など最初からなかったのだ。裏切りを知った私は、震える手で六十七回目の式の予約を自ら取り消した。「さようなら、直哉。今度は私があなたを捨てる番よ」私は未練の象徴であるウェディングドレスをゴミ箱に叩きつけ、かつて志した医療の道へ戻ることを決意する。愛に溺れた過去を断ち切り、戦火が渦巻く国際医療援助の最前線へと私は旅立った。
章
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章 3
西村佳代 視点:
かつて, 直哉は私の体の弱さをよく知っていた. 彼は, 私が少しでも顔色を悪くすれば, すぐに気づいた.
「佳代, 顔色が悪いぞ. 無理しすぎじゃないのか? 」
彼は心配そうに私の顔を覗き込み, 私のために手料理を作ってくれた. 私が好む味付けや食材を覚えていて, いつも私の体を気遣ってくれた.
「君は僕が守るから, 無理はしなくていい」
彼はそう言って, 私の頭を優しく撫でた. 私は, 彼のその言葉を信じていた. 直哉は, 私にとってこの世界で一番大切な人だった. 私の一番の理解者であり, 私の心を一番深く知っている人. 彼がいれば, 何も怖くなかった.
しかし, 千結が現れてから, 全てが変わった. 私の胃の痛みも, 顔色の悪さも, 直哉は気づかなくなった. 彼の視線は, いつも千結を捉えていた. 私を放り出し, 千結の元へ駆けつけたことは, もう数えきれないほどだ.
直哉は, 私を七回も裏切った. 七回も, 私を置き去りにした. 私の心と体は, もう限界だった. 私は, もう直哉にチャンスを与えることはしない.
もう, 終わりにしよう.
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