フォローする
共有
元カレの頂点に君臨する男の、秘密の愛玩妻。 の小説カバー

元カレの頂点に君臨する男の、秘密の愛玩妻。

聡明で可憐な朝倉美咲は、6年連れ添った恋人の神崎隼人から、家柄を理由に婚約破棄を言い渡される。初恋相手の帰国を機に捨てられ絶望する彼女の前に現れたのは、隼人が恐れる一族の真の権力者、神崎悠真だった。彼は「私と結婚すれば復讐も望みも叶う」と契約結婚を持ちかける。月1000万円の手当と不干渉を条件に承諾した美咲だったが、結婚生活は予想外の展開へ。出張がちという言葉は嘘で、悠真は初夜から情熱的に彼女を求め、独占欲を露わにする。後日、未練から復縁を迫る隼人を悠真は冷徹に一蹴し、美咲を抱き寄せた。夜ごとに愛を囁き、執着を見せる悠真。美咲はあくまで利害の一致だと自分に言い聞かせるが、次第に彼の真意に気づき始める。この結婚は偶然ではなく、彼女を救い出し手に入れるために、彼が6年前から密かに、そして周到に描き続けてきた愛の計画だったのだ。10歳年上の包容力溢れる実力者が、愛する妻を甘く、激しく翻弄する。どん底から一転して頂点に君臨する男の寵愛を受ける、至高の溺愛ラブストーリー。
共有

3

一週間後、2人は区役所で落ち合った。

手続きはあっという間に終わった。

署名し、捺印する。手にした書類の並んだ2人の名前を眺めていると、自分が本当に結婚したのだという実感が、現実味を欠いたまま美咲の胸に押し寄せた。

神崎悠真の声が耳元で響いた。「君のマンションに行こう。引越しを手伝うよ」

美咲はここに至ってようやく、自分と悠真が結婚したのだと実感した。これからは寝食を共にし、誰よりも近い存在になるというのに、彼女は彼のことをほとんど何も知らない。

彼がどこに住んでいて、どんな習慣があり、何が好きで何が嫌いなのか、彼女はすべて知らなかった。

車の運転手はずっと無言だ。美咲と悠真は後部座席に座っているが、2人の間には腕1本分の距離が空いている。

「彼は中村航太。私の助手の1人だ」 悠真が助手席の男を指さした。「今後何かあれば、直接彼に頼むといい」

航太が振り返り、恭しくうなずいた。「奥様、よろしくお願いします」

美咲は少し居心地悪そうに返事をした。

彼女のマンションは古い洋館をリノベーションしたもので、3階建てで外壁にはツタが這っている。

「私は3階です」美咲は車を降りた。

悠真も車を降り、航太には下で待つように命じた。

狭い階段の踊り場では、足音に合わせてセンサーライトが点灯する。美咲が鍵を取り出してドアを開ける時、悠真がすぐ背後の半歩の距離に立っているのを感じた。

シダーウッドの清冽な香りが彼の気配と共に漂い、抗いようのない存在感で彼女を包み込んだ。

ドアを開けた後、数十平米のワンルームは温かみがあり洗練された空間になっていた。オフホワイトのソファ、白木の本棚、壁には水彩画やデザインのラフ画が飾られている。

南向きのフランス窓の外には小さなベランダがあり、洗濯した数着の服と、繊細なレースの下着が数点、無防備に揺れていた。

美咲の顔がパッと赤くなった。

足早に近づき、物干しハンガーを取り込もうとしたが、悠真に手首を掴まれた。

「私がやろう」

悠真は手を伸ばして衣類を取り込んだ。長くて骨ばった指で、柔らかい布地を丁寧に取り外した。

下着、パジャマと一枚ずつ丁寧に畳み、傍らの籐カゴに収めていく。

「あの……。自分でやりますから」美咲は小声で言った。

悠真は顔を上げずに言った。「夫が妻の片付けを手伝うのは、当然のことじゃないか?」

彼は当たり前のように言うが、美咲は少し心臓が早く打っているのを感じた。

ベランダの片付けが終わったら、悠真はこの小さな空間を見回し始めた。本棚の本から、作業台の上の未完成のデザイン画に視線を移し、そして、ソファの肘掛けで視線を止めた。

そこには1本のマフラーが掛けられている。バーバリーの定番、メンズ用だ。

悠真は近づき、そのマフラーを手に取った。「彼の?」

美咲はテーブルの上の本を片付けているが、顔を上げてそれを見た。「ええ、隼人のです」

悠真はマフラーを2つ折りにし、ゴミ箱のそばまで歩いて行き、手を離した。

マフラーが中に落ちた。

彼は振り返って美咲を見た。「神崎夫人、過去の男の残滓など、ここに置いておくべきじゃない」

彼の言う通りで、美咲もそう思っているが、それでも彼女の心にはチクリと刺さるものがあった。

隼人にまだ未練があるわけではない。ただ、あの丸6年という時間は、良いことも悪いことも含めて、すべて彼女の人生そのものだったからだ。

悠真は彼女の感情の揺れに気づいたのか、歩み寄ってきた。「未練があるのか?」

「いいえ」 美咲は首を横に振った。「ただ、ちょっと可笑しいなと思って」

「何が可笑しい?」

「あのマフラーの持ち主を頼って、真実の愛で階級の壁を越えられると本気で信じていた自分が可笑しくて」 美咲は自嘲気味に笑った。「結局は、全てが水に映った月……。幻だったってわけね」

彼女は顔を背け、荷物の片付けを始めた。

服、本、画材、化粧品。

彼女の荷物は多くなく、すぐにスーツケース2つと段ボール一つにまとまった。

悠真はシャツの袖をまくり、重い方のスーツケースを受け取ると、もう片方の手で段ボールを持ち上げた。「君は何もしなくていい。残りは私がもう一度運ぶから」

美咲は自分でできると言おうとしたが、悠真はすでに荷物を持って外へ歩き出した。

この男は、今日までは手の届かないビジネス界の伝説で、彼女が高嶺の花と仰ぐ神崎家の当主だった。それが今では、自分の夫として、まるで夢みたいな話だが引越しの荷物運びまでこなしている。

下に着くと、航太が車のトランクを開けた。悠真は荷物を積み込むと、振り返って美咲に尋ねた。「残りのスーツケース一つ以外は、全部持ってきたか?」

美咲はバスルームのものをまだ片付けていないことを思い出した。「バスルームにまだ服が残っています。あそこは湿気が多いから、放っておくとカビが生えちゃうかも。この家は後で売るつもりだから、カビが生えたら掃除が大変だし」

南エリアの気候は特殊で、少しでも湿気のある場所に衣類を置いておくと、すぐにカビが生え、キノコが生えることすらある。

「私が取ってこよう」悠真は振り返って階段を上った。

美咲も後を追おうとしたが、航太に礼儀正しく引き止められた。「奥様は先に車へ。ここは旦那様にお任せください」

悠真がドアを開けた後、バスルームは決して広くはないものの、清潔に整頓されている。

洗面台には電動歯ブラシやスキンケア用品が置かれているが、どれも女性向けの物ばかりだ。鏡の横の棚には、薄紫色のタオルと数着の衣類が掛かっている。

彼の視線はそれらをさっと一通りなぞり――そして、隅にある棚で止まった。

1着のメンズシャツ。

彼の瞳が暗く沈んだ。

美咲と隼人が同棲していなかったことは知っている。だが、他の男の衣類が彼女のプライベートな空間にあるのを目の当たりにすると、やはり針を刺されたような痛みが胸に走った。

悠真は無表情のままシャツを無造作に丸め、先に捨てられたマフラーの道連れにするかのようにゴミ箱へ叩き込んだ。

彼は蛇口をひねって手を洗う。冷たい水が指先を洗い流していったが、胸に渦巻く苛立ちは少しも洗い流せなかった。

美咲と隼人の過去は既成事実で、彼は6年前から知っていた。

だが、知っていることと目の当たりにすることは別だ。あまりにも長く、彼はこの時を待ちわびすぎた。

車に戻った後、美咲は悠真の様子がおかしいことに気づいた。

彼女は尋ねた。「どうかしたんですか」

悠真は彼女を見ようともせず答えた。「何でもない」

だが、明らかに何かがあった様子だ。

美咲は少し考えて、ふと気がついた。「もしかして、何か見ましたか?」

悠真は何も言わなかった。

それはつまり、暗黙の肯定だ。

美咲は胸を締め付けられた。バスルームに何があっただろうか? 彼女は記憶を呼び起こした――ああっ、あのシャツだ。

先週、隼人がやって来た。重要な会議があるのに、その前にシャツにコーヒーをこぼしてしまったと言うのだ。

彼女の家は彼の会社から近かったため、彼はここでシャワーを浴びていった。

美咲は釈明した。「あれはアクシデントなんです。彼がコーヒーをこぼしてしまって、急遽着替えに来て、そのまま持って帰るのを忘れて……」

悠真の声音は少し冷たかった。「説明は不要だ。君たちのことに口出しするつもりはない」

しかし、固く結ばれた唇も、微かにひそめられた眉も、すべてが「不機嫌だ」と物語っている。

美咲の胸に奇妙な感覚が芽生えた。

(でも、どうして?)

「神崎さん」 美咲は小さな声で彼を呼んだ。

「ん?」

「怒っていますか?」

悠真はようやく彼女をちらりと見た。「怒ってなどいない」

美咲は確信を持って言った。「怒っていますよね」

悠真は顔を向けた。「妻の住まいに別の男の物があり、妻の部屋で別の男が夜を明かした可能性を疑いながら、平然としていられる夫などいるはずがないだろう」

美咲はわずかに呆然とし、そして静かに言った。「私たちの過去は事実です。でも、彼と一夜を共にしたことなんて……。一度もありません」

隼人はこの6年間、まるで藤原清花に操を立てるかのように、誰も寄せ付けなかった。キスやハグといった親密な触れ合いはあっても、彼女と一晩を共にしたことすら、ただの一度もなかったのだ。

「知っている」 悠真は再び顔を背けた。

だが、感情を抑えることができなかった。

(わかっているって、この人の何がわかっているというの?)

車は陵川市の天城レジデンスに入り、湖畔に建っている別荘の前で停まった。

庭園、プール、そして本館。広大な敷地面積を誇るそこは、美咲が思い描いた豪邸のすべてを満たしている。

美咲は尋ねた。「普段はずっとここに住んでいるんですか?」

悠真は彼女を中へと案内しながら答えた。「1年中出張しているから、陵川市のここにはあまり住んでいない。だが、結婚したのだから、これからはもっと帰ってくるようにするよ」

美咲の心臓がドクンと跳ねた。

(もっと帰ってくる?) (それって、つまり……)

悠真は彼女の考えを見透かしたように言った。「君の部屋は2階で、私の部屋の隣だ。安心していい。君の心の準備が整うまで、無理に指1本触れるつもりはない」

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
全編を読むには、moboreaderで「95RHE」を検索してください。
コードをコピーし、Moboreaderアプリで検索して続きをお楽しみください。
95RHE
コピー
公式サイトを開く

おすすめの作品

99回目の地獄 〜その愛は、試練ですか?虐待ですか?〜 の小説カバー
8.5
名家の御曹司たちがこぞって求婚する清純な令嬢。しかし今、彼女の人生は奈落の底にあった。流出した動画により実家の株価は暴落し、激昂した父は病に倒れる。だが、絶望的な状況下で彼女の心は冷え切っていた。これは恋人の幼馴染の女が仕掛けた、九十九回目となる凄惨な「罰」に過ぎないからだ。かつて恋人は幼馴染と「三十歳まで恋愛をしない」と約束したが、彼女への一目惚れを機にその誓いを破った。裏切りに狂った幼馴染は、愛の証明として「試練に耐えれば結婚を認めるが、失敗すれば彼を譲れ」という残酷な賭けを彼女に承諾させる。愛を信じた彼女は、それが執拗な虐待の始まりだとは気づかなかった。理不尽な苦痛に耐え続けてきた彼女だったが、ある男の卑劣な愛撫を受けた瞬間、ついに限界が訪れる。男を拒絶し、激しい罵声を背に受けながら、彼女は人目を憚らず慟哭した。もうこれ以上、耐えることなどできない。九十九回目の悲劇を前に、彼女の精神はついに崩壊の時を迎えていた。
冷酷御曹司に独占される偽りの令嬢 の小説カバー
8.9
瀬川清美は、偽の令嬢という濡れ衣を着せられ、一夜にして名門の地位から田舎の貧農の娘へと突き落とされた。偽令嬢の悪意ある罠、婚約者からの侮蔑、そして養父母による追放。周囲は彼女が没落し、田舎で一生を終えるのを嘲笑っていた。しかし、彼女の正体は中京市の名門一族に連なる真の令嬢だった。さらに彼女は、天才ハッカー、宝飾デザイナー、人気作家、そして神の手を持つ医師という多重の顔を隠し持っていたのだ。かつての養父母が恩を盾に資産を奪おうとすれば、その醜悪な本性を白日の下に晒し、復縁を迫る元婚約者は冷酷に一蹴して街から追放する。立ちはだかる敵を次々と沈め、圧倒的な力で逆転劇を演じる彼女。そんな彼女を「田舎者に嫁ぎ先などない」と嘲笑う者が現れる中、中京を支配する冷徹な御曹司が彼女の腰を抱き寄せ、熱い視線で囁いた。「どこへも嫁ぐ必要はない。俺が君の元へ婿入りする」と。最強の仮面を纏う令嬢と、彼女を独占せんとする大物御曹司。二人の運命が、華麗なる報復と共に動き出す。
億万長者ベビーとスーパー・マミー の小説カバー
9.5
人生で最も過酷な夜、彼女はすべてを失った。見知らぬ男に純潔を奪われ、愛していた恋人は実の妹と裏で通じていたのだ。周囲から蔑まれ、居場所を失った彼女は、深い悲しみを抱えたまま姿を消した。それから6年の月日が流れ、彼女はかつての姿からは想像もつかないほどの変貌を遂げて帰還する。その圧倒的な美貌は人々を驚愕させ、彼女の傍らには一人の愛らしい息子が寄り添っていた。わずか6歳にして天才的なハッカーの才能を持つその少年は、独身の富豪たちの個人情報を次々とハッキングし、母親のために最高の再婚相手を見つけようと画策する。「ママ、僕が新しいパパを探してあげる。どんな人がタイプ?」大人顔負けの態度で問いかける息子に対し、彼女が答えようとしたその時、一人の男が二人の前に立ちはだかる。「小さなハッカー君、まだ父親を別の男に替えようとしているのか?」冷徹な声が彼女の思考を遮り、封印されたはずの過去が再び動き出す。富豪の親子と、運命に翻弄された女性が織りなす現代ラブストーリー。
最悪の夜に私を奪った男は、潔癖症の億万長者 の小説カバー
8.0
新婚の夜、花婿を待つ彼女の運命は、見知らぬ男の侵入によって無残に引き裂かれた。この事件をきっかけに、彼女は姑から執拗な辱めを受け、夫からは冷酷に見放されてしまう。さらに夫の愛人からも嘲笑を浴びせられた末、住み慣れた家を追い出されるという絶望の淵に立たされた。しかし、彼女には敏腕弁護士という隠された顔があった。自分からすべてを奪った男を裁くため、彼女は法廷で戦う決意を固め、訴状を叩きつける。だが、その相手は街で一番の富豪として知られる男だった。彼は派手な女性遍歴を持ちながらも、実は重度の潔癖症で、激しい感情の起伏と強引な性格を併せ持つ厄介な人物だった。男はあらゆる手段を駆使して彼女に結婚を迫り、執拗に追い詰めていく。法によって復讐を遂げようとした彼女だったが、皮肉にもさらなる波乱に満ちた泥沼の展開へと巻き込まれていくことになる。富と権力を手にした億万長者の横暴な愛に、彼女の日常は再び激しく揺れ動いていく。
“顔面崩壊”の旦那様、実はスパダリ億万長者につき。 の小説カバー
8.4
妹が拒絶した縁談を引き受け、彼女が嫁いだ相手は「顔面崩壊した放蕩息子」と蔑まれる男だった。結婚初日に一族を追放され、世間の嘲笑を浴びる二人。しかし、周囲の予想に反して彼女は事業で頭角を現し、夫婦は深い絆で結ばれていく。一方で、彼女を虐げてきた者たちには無慈悲な報いが訪れる。そんな折、謎に包まれた巨大財閥の社長が会見に現れた。仮面をつけたその姿は、紛れもなく彼女の夫。さらに仮面の下から現れたのは、誰もが息を呑むほど圧倒的な美貌だった。実は夫の醜い姿は、女を遠ざけるための偽装に過ぎなかったのだ。当初は政略結婚の妻に無関心だった彼も、凛とした彼女の強さに触れ、いつしか執着にも似た愛を抱くようになる。だが、嘘が露見したことで妻は激怒し、別れを決意。余裕を失い、なりふり構わず彼女を追い詰めた若き富豪は、血走った目で懇願する。「行かないでくれ。君の口づけが得られるなら、この命さえ惜しくない」と。正体を隠したスパダリ億万長者と、身代わりの妻が織りなす逆転ラブストーリー。
私の心を傷つかない の小説カバー
7.9
「嘘つきとビッチ、お似合いの二人ね」と、アシュリは冷ややかな笑みを浮かべて言い放つ。その凛とした美しさは、周囲の人々の目を釘付けにするほど輝いていた。しかし、その夜の彼女に過酷な運命が待ち受けていた。母親の手によってワインに薬を盛られた彼女は、意識を失ったまま、圧倒的な富と美貌を兼ね備えた見知らぬ男の元へと連れ去られてしまう。人生を根底から覆すような、あまりにも衝撃的な一夜。アシュリは初めて出会ったその男に、自らの純潔を捧げることになった。まるで悪夢と陶酔が入り混じったような狂乱の時間が過ぎ、翌朝彼女が目を覚ますと、目の前には昨夜の男が立っていた。困惑する彼女に対し、男は傲慢に、そして抗いがたい響きで「キスしてくれ」と要求する。見ず知らずの億万長者との間に起きた一夜の過ちが、彼女を逃れられない愛憎の渦へと引きずり込んでいく。最悪の出会いから始まる二人の関係は、果たしてどのような結末を迎えるのだろうか。裏切りと欲望が交錯する中で、アシュリの運命は激しく動き出す。