フォローする
共有
獣王の花嫁は美しきΩの王子 の小説カバー

獣王の花嫁は美しきΩの王子

ネコ科の獣人たちが支配する軍事強国・サバニア王国の脅威にさらされているアルベニア王国。国家の存亡をかけた危機を乗り越えるため、王家は隣接するエクセリア王国との強固な同盟を模索し、その証として王女をエクセリア王のもとへ嫁がせるという政略結婚の計画を進めていた。しかし、当事者である王女はこの縁談を断固として拒絶し、事態は混迷を極める。国家間の約束を違えるわけにはいかない絶望的な状況のなか、身代わりとして白羽の矢が立ったのは、王女の兄であり、稀少な性質を持つオメガの王子であった。妹の身代わりに、そして愛する祖国を守るための盾として、王子は自らの運命を捧げる決意を固め、異国の地へと赴くことになる。本来の性別を隠し、王女に成り代わって獣王のもとへ嫁ぐことになった王子の運命は、激動の物語へと動き出す。政略と宿命が複雑に絡み合うなかで、種族や立場の垣根を超えた愛の形が試される。運命に翻弄される王子が、新たな環境でどのような絆を築き、過酷な状況を切り拓いていくのかを描いた、切なくも壮大なファンタジー・ロマンス。
共有

1

獣人と人間が共存する世界。

ユークリット大陸はその昔、人間が治めるアルバニア王国とイヌ科獣人が治めるエクセリア王国の二国からなっていたが、エクセリアの使節団が他の大陸で見つけたネコ科獣人を生け捕り奴隷として王へ献上した。

それ以降、美しいネコ科獣人を奴隷として飼うことが上流貴族のステータスとなり、より強く美しいネコ科獣人を競って飼っていはじめた。

強いネコ科獣人が増えていくことで次第に力をつけていき、ついにはネコ科獣人の反乱によりアルべニアの領地のうち砂漠地域を奪われることになる。

そこにネコ科獣人によるサバニア王国が建国され、ユークリット大陸は3つの王国からなる大陸となった。

9年前

エクセリアのセレステン王が第3王子であるテオドールを伴い、アルべニアのルイ王の誕生日のお祝いにアルべニア城を訪問していた。

ルイ王は第1王子フレデリック、第2王子ヴァレリー、王女ブリジットの三人をテオドールに紹介するが、ブリジットは獣人を嫌っているため挨拶もそこそこにどこかへ行ってしまった。

さすがにフレデリックは長兄であるため礼儀をつくした挨拶をしてから自室へ戻って行った。

そんな二人の姿をルイ王はため息交じりに見送ったが、末の王子ヴァレリーは自分より6歳年上の16歳ながらすでに王者の風格を備えたテオドールに興味と好意を抱き、テオドールもヴァレリーと同じく獣人である自分にも物怖じしない美しい王子に興味をもった。

その姿に気をよくしたルイ王は

「ヴァレリー、テオドール王子に城内を案内してあげなさい」

「はい、お父様。こっちだよ」

そういって、満面の笑みのヴァレリーはテオドールの手を握って歩き出した。

急に手をとられたテオドールはすこし驚いたが、それ以上に鋭い爪と黒く光る毛に覆われた手を握るヴァレリーの白く美しい手に見惚れて心臓が破裂しそうなほど動悸がした。

全身が沸騰するほどであるが、オオカミ特有の黒い毛に覆われているおかげで顔が赤くなっているのを気づかれずに済んだ。

城内を歩きながらヴァレリーは見たことのないエクセリアの話に夢中になっていた。

本を読むのが好きなヴァレリーにとって、エクセリア湖に住むというウォータードラゴンや城の北にある島にすむドラゴン族、北の半島にはコボルトの村もあるという。

さらには、エクセリア湾にはマーマンや人魚などの海中の民がやってくるという話をきいて

ヴァレリーは目をキラキラさせた。

「エクセリアに行ってみたい」

「いつでも歓迎しますよ、その時はわたしが案内します」

「そうそう、エクセリア湾で養殖されている真珠は世界一の美しさと言われてます。是非それも見せてあげたい」

「真珠かぁ、お母様に合うだろうな」

きっとヴァレリーにも合いますよと言いたかったがそれは黙っていた。

楽しく話をしていると庭の中心にある温室に着いた

中は色とりどりのバラの花が咲き乱れていた。

「見せたいバラがあるんだ」

そういってテオドールの手を掴もうとしたときに

赤いバラに手が引っかかってしまった

「あっ」ヴァレリーは指を抑えた。

抑えている所を見ると白く形のいい指の先から真紅の雫が流れていた、反射的にヴァレリーの指を口に含む。

驚くヴァレリーにあわててあやまった。

一瞬驚いたが指先にのこるテオドールの温度に少し照れながらゆっくりと顔を横に振り

「このバラは嫌い、美しいけど棘があって王妃様のよう」

「僕が好きなのは母様が好きなアレッサというバラ」

そう言うとテオドールの手を取って歩き出す、

温室の中はむんと甘い香りが漂う。

ヴァレリーに手を引かれて温室の最も奥へ行くと、そこには薄いピンクに黄色が溶け込んだ上品で優しげなバラが咲いていた。

「このアレッサには棘がないんだ、この名前はアレトゥーサからきていて神話のアレトゥーサはアルテミスに使えた美しい人だったんだ、だけど恋や結婚に興味がなく、ある日狩の帰りにアルペイオスの河で水浴びをしていたら、アレトゥーサに一目ぼれしたのだけど、驚いたアレトゥーサは逃げ出したんだ。どこまでも追いかけてくるアルペイオスから逃げるためにアルテミスに助けを求めて純潔を守るために泉になったんだって」

このバラについて話すヴァレリーがとても幸せそうに見えた

「美しいバラだね」

「うん僕の母様もこのアレッサのようにやさしくて美しいんだ」

テオドールにはヴァレリーこそこのバラに似ていると思ったが

「お母様は?」と聞いてみた

「母様とはもう何年も会ってない」

そういうと、ふとヴァレリーの美しい顔に陰りが入る、

「申し訳ないことを聞いてしまった」そういってうなだれるテオドールに

「違うよ、母様はこの城のどこかにいるのだけど王が隠してしまったんだ。お母様は逃げ切ることができなかったんだ」

「そうかそれはさみしいね」

ヴァレリーはテオドールがその雄々しい姿とは反対に、とても繊細で優しい気持ちを持った人なんだと思うとますます、この王子が好きになった。

「ここにくるとこのアレッサを見て母様の事を思うことができるから大丈夫」

そう言いながらもテオドールの手を握っていた手に力が入っていた。

先ほどの第一王子と王女とは母が違うと聞いた、

ヴァレリーはここでさみしい思いをしているのだろうか

だとしたら、力になりたい。今日会ったばかりなのに、この小さくて美しい王子を守りたいという気持ちがいっぱいになった。

テオドール様

テオドール様どちらにいっらっしゃいますか?

どこかでテオドールを探す声が聞こえる。

「そろそろ戻らないといけない、案内をしてくれてありがとう。」

「また会える?」

「ああ、きっと会えるよ」

・・・・

・・

そう言って別れたのが9年前

あの頃僕は10才だった。

いつかテオドールに会えると本気で思っていたのに

12才の時、僕がオメガであることが分かったのだ。

発情したときに王子である僕が誰かわからないものと番になることがないように

城の西にある塔の住人となった。

僕は籠の中の鳥だ

それにくらべてテオドールは20歳になった年、エクセリア王の急死により王位を継承し、大国の王となったと聞く。

もう二度とテオドールに会うことは無い。

もうあの精悍な顔つきの優しい狼の王に会うことはかなわない

テオドールの元にはブリジット、僕の異母妹が嫁ぐことになったと知らされた。

おすすめの作品

百回の輪廻、奪われた愛 の小説カバー
9.1
異世界での輪廻を百回以上も繰り返し、愛を渇望し続けた主人公。しかし、婚約者や幼馴染、さらには愛する息子までもが、常に「沙織璃」という一人の女に奪われる悲劇に見舞われてきた。任務失敗によりシステムから抹殺を宣告された絶望の淵で、彼女は「攻略対象に殺されれば元の世界へ帰還できる」という新たな条件を提示される。もはや愛に未練はなく、ただ家族の元へ帰るために死を願う彼女は、元婚約者の正幸に自らを殺すよう懇願する。だが、彼は冷徹に拒絶し、死ぬことさえ許されない過酷な状況に追い込まれていく。ついに彼女は、沙織璃の秘密を利用して自らの命を絶つ完璧な計画を実行し、崖から身を投げた。すべてが終わったかに思えたが、再び目を開けるとそこは懐かしい元の世界だった。涙を流す母との再会を果たす中、彼女の脳裏には「攻略成功。全対象の好感度が最大値に到達した」という非情なシステム音声が響き渡る。皮肉な結末を迎えた彼女の運命を描く、愛と執着のファンタジー。
Death Real ~現実での女子高生は憂鬱すぎるので、ゲームの世界でPKしまくります!~ の小説カバー
8.7
革新的なオリジナリティを追求し、世界中から熱い視線を浴びる最新のVRMMORPG「Beyond Ideal Online」。通称「BIO」と呼ばれるこの仮想現実の世界に、突如として正体不明の最凶プレイヤーが姿を現した。その人物は、情け容赦のないプレイヤキラー(PK)として瞬く間に悪名を轟かせ、全ユーザーを恐怖に陥れていく。本名はおろか、その素顔や目的さえも一切が謎のベールに包まれており、プレイヤーたちの間では様々な憶測が飛び交っていた。しかし、血も涙もない残虐なプレイスタイルを貫くその正体は、現実世界では誰もが羨むような完璧な美貌を持つ17歳の女子高生、柏崎葵であった。清楚な外見からは想像もつかないが、彼女は日々の鬱屈した現実を忘れるかのように、ゲーム内での殺戮行為に歪んだ悦びを見出していたのだ。「キルたのちい」と独りごちながら、彼女は今日も仮想世界で獲物を狩り続ける。美しき女子高生による狂気的なPKライフが、今幕を開ける。
武道の神 の小説カバー
9.0
武術の実力が人々の敬意を左右するロスランド大陸において、スティーブンは周囲から「負け犬」と蔑まれる不遇な日々を送っていた。しかし、空から飛来した謎の火の玉が彼を直撃したことで、その運命は劇的な変貌を遂げる。九死に一生を得た彼が手に入れたのは、他の生物が持つ才能を自らのものとして吸収できるという、常識を超越した異能であった。圧倒的な力を手にしたスティーブンは、最愛の妹や家族を理不尽に傷つけた者たちへの復讐を開始する。かつて自分を虐げたすべての人間に「いつか必ず俺の前で膝をつかせてやる」と心に誓い、彼は過酷な戦いの道へと足を踏み出す。どん底から這い上がった男が、強大な才能を奪い取りながら武の頂点へと突き進む、壮絶な復讐と成長の物語が幕を開ける。失った尊厳を取り戻し、家族の仇を討つための孤独な旅路の果てに、彼はどのような景色を見るのか。運命に抗い、己の力で世界を屈服させるための冒険が今、ここから始まる。
異世界移転した僕たちだけど僕のスキルだけファンタジー感が足りない気がする の小説カバー
8.3
平凡な中学生だった宇美矢晴兎は、ある日突然、クラスメイトたちと共に未知の異世界へと召喚される事態に見舞われる。周囲の仲間たちが勇者や聖女、賢者といった、まさにファンタジーの王道とも言える強力な希少職や伝説級の能力を次々と発現させていく中、晴兎に授けられた力はそれらとは一線を画す異質なものだった。ファンタジーの世界観にはおよそ似つかわしくない、あまりにも現実的で場違いなその能力に、彼は困惑を隠せない。剣と魔法が支配する過酷な新天地において、華やかなスキルを持つ友人たちと対照的に、地味で特殊な力を手にした晴兎の運命はどう転んでいくのか。異世界召喚という非日常の渦中で、一人だけ毛色の違う能力を与えられた少年の葛藤と、その独自の力を駆使して切り拓く冒険の幕が上がる。定番の英雄譚とは一味違う、異色の異世界サバイバルが今ここに始まる。果たして彼は、ファンタジー感の欠如したそのスキルを武器に、この世界の荒波を生き抜くことができるのだろうか。
炎の記憶、裏切り夫を捨てる の小説カバー
9.3
猛火の中から命懸けで夫・古川一を救い出した私。しかし、次に意識を取り戻した時、私は肉体を失い魂だけの存在となっていた。そこで目にしたのは、あまりにも残酷な裏切りの光景だった。夫は私の弟である瑞樹を冷酷に見捨て、愛人の榊原千絵とその娘を迎え入れて、まるで新しい家族のような生活を謳歌していたのだ。適切な治療を受けられなくなった瑞樹は、最期まで私の名を呼び、苦痛の中で孤独に息を引き取った。絶望の淵で、私は火災の最中に夫が囁いた「必ず助ける」という偽りの言葉を信じた自分を激しく呪った。なぜ、愛する弟を犠牲にしてまで、あのような男を助けてしまったのか。激しい後悔に苛まれながら意識を失い、再び目を覚ますと、そこは火災が起きる三日前の見慣れた寝室だった。運命を変えるチャンスを手にした私は、自分を欺き弟の命を奪った夫への復讐と、最愛の弟を守り抜くことを誓う。炎の記憶を胸に、偽りの愛に終止符を打つための逆襲が今始まる。
元恋人の花嫁は、私の妹でした の小説カバー
8.6
跡継ぎの男子を望み、娘ばかりを産み続けた両親。その果てに家計は破綻し、私を含む姉妹全員が売られることになった。過酷な運命の中、幸運にも私は良き主人のもとで刺繍の技術を学び、職人として名を成すまでになった。そこで出会った一人の男性に心を奪われ、彼が科挙に合格して高官になる日を夢見て、献身的に支え続けた。彼は「合格したら君を正妻に迎える」と約束してくれたが、見事に三位で及第した途端、その誓いは裏切られた。彼は名門の令嬢に一目惚れしたと言い放ち、私に別れを告げたのだ。出世した彼にとって、今の私は恥ずべき存在でしかないことを悟り、絶望が胸をよぎる。しかし、彼が夢中になっているその「高貴な令嬢」の正体を知り、私はさらなる衝撃を受ける。彼の心を奪った花嫁候補は、かつて私と同じように売られ、生き別れになった実の妹だったのだ。家族の絆と恋慕が複雑に絡み合う、裏切りと再会の物語。