フォローする
共有
替え玉の花嫁 の小説カバー

替え玉の花嫁

祖母の莫大な治療費を工面するため、オータムは切羽詰まった状況に追い込まれていた。そんな時、姉のイヴォンヌが自身の結婚式を目前にして行方をくらませてしまう。残されたオータムは、治療費の支払いと引き換えに、姉の身代わりとして花嫁の座に就くことを決意した。結婚相手は、莫大な富と権力を掌中に収める若き実業家、チャールズ。彼は端正な容姿と地位を武器に、常に派手な女性関係が噂される奔放な男だった。次々と恋人を替える彼の不実な振る舞いは世間の知るところであり、愛のない政略結婚に未来を感じる者は誰もいない。オータム自身の願いも、契約期間である一年を無事に終え、彼との離婚を成立させることだけだった。互いに惹かれ合うはずがないと確信していた二人だったが、偽りの夫婦生活を続けるうちに、運命の歯車は予想外の方向へと動き始める。金と利害で結ばれた仮初めの関係は、冷徹なチャールズの心と、秘密を抱えたオータムの境遇を少しずつ変えていく。果たして、一年後の二人に待っているのは、予定通りの別れか、それとも予期せぬ愛の結末か。
共有

1

イボンヌ・グーが結婚式から逃げだした! マスコミで取り上げられているこの結婚式は、21世紀最大の結婚式であるはずだったが、 今となっては、世間の笑い種になってしまう寸前だった。

オータム・イェは鏡で自分の姿を見て、 床に置かれているウェディングドレスを力強く踏んだ。 イボンヌが滅茶苦茶にしたのに何故私が解決しないといけないの?

「もっとやったら! まだ怒ってるなら、踏みつけれるドレスが後10着もあるわ!」 オータムの母親であるウェンディ・イェが厳しい顔つきで彼女を見た。

オータムの心が沈んでいった。 彼女は立ち尽くし、呼吸を整えてから話し始めた。「お婆様の医療費を払うお金が必要なの。 お金が入り次第イボンヌの代わりに、チャールズ・ルーと結婚するわ」

歪んだ微笑みを浮かべながらウェンディは携帯を取り出し、秘書に電話をした。「チャンさん、病院の理事に連絡をとって」

電話を切った後、ウェンディは振り返ってオータムの方を見た。 素朴なウェディングドレス姿のオータムをうんざりとした顔で見て、 ハサミを手に彼女に向かって歩いて行った。

ウェンディは落胆した表情でハサミを持ち上げながら言った、「そんな顔で見ないでよ。 あなたは私の娘だけど、あなたを見るたびにあの役立たずな父親を思い出すわ。 あなたを見捨てた事を責めないでね。 人間は我が儘になって自分の事だけ気にすればいいのよ」

ウェンディはオータムのドレスを切り、袖に大きな穴を開けた。

そして部屋の外で待っている担当者の方を向き、「ボケっと立ってないで。 ウェディングドレスが破れてるわ。 新しいのを持ってきてあげて! 私のイボンヌは一般人ではないのよ。 彼女は一番素敵なウェディングドレスを着るべきだわ」

オータムは鼻を引き攣らせた。 ウェンディが自分が彼女の娘だと初めて認めたからだ。 しかしそれは、ウェンディが世間にイボンヌが彼女の最愛の娘であり、オータムはただの代理だと公表したことにより落胆させられた。

オータムはひび割れた下唇をかみ、小馬鹿にしたように笑った、「私の父親は確かに頼りない男性だったけど、あなたみたいなグー叔父の愛人になるような女性と結婚したんだもんね。 まぁ、あなたがしたみたいに、別の女性がグー叔父を誘惑してくれるといいけど」

「お黙り! なんてことを!」 ウェンディは激怒し、 手を振り上げ、オータムの右頬を叩こうとしていたが 、オータムの完璧に仕上げられた化粧を見て、 彼女の魅惑的な美しさに落ち尽かされた。 「今日はあなたと言い合いはしないわ。 とにかく、さっさとチャールズと結婚して、騒ぎを起こさないで! グー家とイボンヌに恥をかかせないでよ!」 ウェンディが断固とした態度で言った。

オータムはにやにやと笑った。

チャールズ・ルー? その男は金持ちで権力があった。 1年中毎日違う女を連れているほど、 無数の女性と関係づけていた。 「なぜチャールズはイボンヌと結婚したいのかしら?」 オータムは不思議に思った。

「騒ぎを起こさずに、この結婚式を乗り切ればいい! あなたはチャールズを知らないけど、結婚式はかなりのものよ。 あなたを見捨てた事は本当に悪いと思ってるわ、でも裕福になるんだし、これからはいい人生を送れるわよ。 昔の事は忘れて、新しい人生を送りなさい!」

母親のその言葉を聞き、オータム・イェは長い事押し隠していた感情が涙になり湧き出てきた。 涙が頬を伝い流れ落ちた。 「獰猛な虎ですらこの母親のように自分の子供を扱わないわ」 と、彼女は思っていた。

オータムはまだ体の震た状態で荒々しくウェディングドレスを掴んだ。

「わかったわ! 彼と結婚するわ! イボンヌの代わりにチャールズ・ルーと結婚することを約束するわ。 でも… 今後、私はあなたの娘ではないわ。 だから私の人生の邪魔をしないで。 それに、お婆様に何かあったらあなたのことは許さないから!」

「あなたがチャールズ・ルーと結婚さえしてくれれば、あなたの言う通りにするから」

ウェンディがオータムにこれほど親切だったことはなかった。 彼女はオータムをチャールズに差し出せるのであれば何でもした。 数年後、オータムがこの出来事を思い出し、思いもよらなかった運命に思わずため息を漏らした。 彼女を絶望に落としたこの結婚式は、後々、彼女の人生を守る重大な事となった。 彼女が思いもよらなかった出来事が起こり始めた。

「結婚式が始まります。 新婦さん、急いでください!」

結婚式は予定通りに行われた。 白いウェディングドレス、レッドカーペット、花、そしてゲスト… その結婚式は映画で見るような華やかなものだったが、 オータムの心は氷のように冷たかった。 彼女は無表情だった。

豪華な結婚式だったにも関わらず、彼女は夫の顔すら見たことがなかった。 出席者たちは微笑んでいたが、オータムは周りにいる皆が式の初日に夫に愛されていない自分を嘲笑っていると感じていた。

チャールズが彼女の手をしっかり握っているにも関わらず、彼女は彼と話をしようともしなかった。 式の後、チャールズは乱暴に彼女の手を振り解いて言った。「先に帰るんだ。 俺は終わらせないといけない仕事がある」

チャールズの運転手がオータムを送り届けた。 彼女は運転手にチャールズがどこへ行くのかを聞いた。 運転手はチャールズがどこに居るのかよく知っているようだし、彼女に言わないような指示も受けていないようだから、 無関心に「リリーヴィラ」と言った。

「リリーヴィラ?」 確かにセレブのレイチェル・バイがリリー・ヴィラに住んでいるという噂があった。なるほど。 オータムはそう考えながら無関心な笑顔を見せた。 レイチェル・バイが私の夫となった男のガールフレンドだと言う噂は本当だったようだ。 今この瞬間にも、チャールズはレイチェルを抱きしめ、そして宥めているに違いない。 つまり、チャールズには既にガールフレンドがいたのだ。それで、彼が私の提案を受け入れるのはそんなに困難ではなかっただろう。

オータムは長い間チャールズをウェディングルームで待っていた。 その部屋は結婚式ムードで飾られいたが、オータムはそんなロマンチックな気分ではなかった。

彼女はチャールズは今夜は戻ってこないだろうと思ったので、 着替えをし、気分転換をしようと浴室へ向かった。

彼女は肉体的にも精神的にも疲れていたので、浴室で長い時間過ごした。 今日は色んなことがあり過ぎ、じっくり考えたかったからだ。

浴室の温度は高く、鏡は蒸気で曇っていた。 オータムは混乱していた。

ウェンディ、イボンヌ、チャールズそしてレイチェルのことが頭から離れなかった。

考えれば考えるほど、彼女はより混乱になった。

温かい湯船に浸かり落ち着きを取り戻してから、 彼女はタオルで身を包み、 別のタオルで髪を拭いた。 浴室から出て来た時、チャールズがまっすぐ自分を見ているのに気がついた。

部屋は暗く 壁ランプだけが点けられていた。 しかし、部屋のその暗さは無表情なチャールズよりましであった。

この20数年の人生で、男性の前でこれほど体をあらわにしているのは初めての事だった。

彼女はチャールズを見るや否や、服を取りに向きを変えた。 しかし、チャールズは彼女を捕まえ、 ベッドに投げ入れた。 「お前、どうしても俺と初夜を過ごしたいようだな??」 チャールズがバカにしたような口調で言った。

彼女の体はタオルで覆われているだけで 濡れた髪からは水滴が落ちていた。 分厚い結婚式用メークは既に洗い落とされていたが、チャールズは彼女の素顔から目を離せなかった。

チャールズは彼女の体から石鹸の香りがするのに気がついた。 その石鹸は彼がいつも使っているものであったから、 彼のにおいが彼女に付いていると感じ、彼の欲望に火をつけた。

が、レイチェルの涙目が頭に浮び、すぐに落ち着きを取り戻した。

彼とレイチェルは2年も付き合っている。 彼女をがっかりさせたくない。

おすすめの作品

挙式当日に捨てられた私、隣に座っていた御曹司が「待っていた!結婚しよう」と言った。 の小説カバー
8.9
汐見台市屈指の富豪を祖父に持つ瀧ノ上清穂は、交際して三年の北条渉との結婚式当日、最悪の裏切りに遭う。渉は彼女を「しがない田舎娘」と見下し、式を放棄して初恋の女性のもとへ去ったのだ。清穂は未練を断ち切り、隠していた令嬢としての身分を明かすことを決意。数千億円にのぼる莫大な遺産を相続し、華麗なる転身を遂げて人生の絶頂を迎えようとしていた。しかし、彼女の財産や美貌を狙う不届きな男たちが次々と現れる。清穂がそんな有象無象を冷徹に叩き潰していくなか、その姿を愉しげに見つめ、賞賛の拍手を送る一人の男がいた。それは、圧倒的な権力を持ち、世の人々から畏怖される存在である藤原だった。彼は不敵な笑みを浮かべ、「さすが俺が選んだ女だ、最高に面白い」と清穂に告げる。裏切りから始まった彼女の新たな人生は、さらなる波乱と情熱に満ちた展開へと加速していく。捨てられた花嫁から最強の相続人へ、清穂の逆襲劇が幕を開ける。
裏切りの夫を捨てて復讐の華となる の小説カバー
9.7
夫の資産管理を行うため、区役所を訪れた私は衝撃の事実を突きつけられる。窓口で告げられたのは、自分が「未婚」であるという現実だった。三年前の婚姻届は受理されておらず、夫の戸籍に妻として記されていたのは、信頼していた親友の名だった。彼女はすでに夫の子を身籠り、義父母までもが結託して私を欺き続けていたのだ。私はこの三年間、佐藤家の体面を守るための無償の家政婦として利用され、心血を注いだ事業の資産さえ奪われようとしていた。信じた人生がすべて虚構だったと知り、絶望と怒りに震える私の元へ、財界の重鎮から一本の電話が入る。提示されたのは、彼の孫との結婚という驚くべき提案だった。その強力な後ろ盾を得る道を選んだ私は、溢れる涙を拭い去り、完璧な妻の仮面を被り直す。自分を裏切り、尊厳を弄んだ者たちへ冷徹な復讐を果たすため、私は決然とした足取りで偽りに満ちた家へと引き返した。
拾った子がまさか億万長者の息子だったなんて!? の小説カバー
8.0
「不妊である」という冷酷な宣告を突きつけられ、清水瞳は四年前、鈴木家を追われるように去った。絶望に打ちひしがれた彼女は、逃げるように辿り着いた地方の町で、激しい雨に打たれ捨てられていた赤ん坊を救い出す。その子を育てる決意をした瞳にとって、息子との暮らしは生きる希望そのものだった。しかし四年後、彼女の質素な住まいに高級車が列をなし、一人の男が現れる。大富豪である天草蓮は、ブラックカードを無造作に差し出し、多額の報酬と引き換えに実子である少年を連れ去ろうとした。瞳は必死に息子を庇い、命を懸けて守り抜く覚悟を鋭い眼差しで蓮にぶつける。我が子を誰にも渡さないと言い放つ彼女の強い意志と、眩しいほどの気高さに触れた蓮は、不敵な笑みを浮かべた。彼は息子を抱き上げるだけでなく、瞳の腕をも強引に引き寄せ、驚くべき宣言をする。子供だけでなく、彼女自身もまとめて自分の手中に収めるというのだ。そこから、孤独な母子と傲慢な億万長者の、新たな運命が動き出す。
婚約破棄当日、彼女は帝都の御曹司の禁断の花嫁となった の小説カバー
9.4
結婚式を目前に控えた宮沢沙織は、婚約者と実姉の不貞を映した映像を突きつけられ、残酷な破局を迎える。参列者からの嘲笑を浴び、ワインで汚れたドレスを脱ぎ捨てて激しい雨の中へ飛び出した彼女は、偶然通りかかった高級車を止め、車内にいた見知らぬ男に復讐心から強引なキスを仕掛けた。その場限りの過ちで終わるはずだったが、相手は帝都で強大な権力を誇る上田家の御曹司、上田拓海であった。翌朝、沙織のアパートを訪れた元婚約者は、冷酷無慈悲と恐れられる拓海がエプロンを纏い、献身的に朝食を作る姿を目撃し愕然とする。拓海は沙織の腰を力強く引き寄せ、逃がさないと言わんばかりにその首筋に顔を埋めた。そして独占欲に満ちた瞳で、冷徹かつ官能的に囁く。「選べ、俺かあいつか。もし選択を間違えれば……一生檻に閉じ込めて、俺だけを見続けることになるぞ」。最悪の裏切りから始まった運命は、帝都の支配者による執着と狂愛に満ちた新生活へと塗り替えられていく。
憎まれ妻は逃げ出したい の小説カバー
9.4
初夜の夜、男は新妻の首を絞め「地獄へようこそ」と冷酷に告げた。彼は兄の死の原因が彼女にあると信じ込み、復讐のために結婚したのだ。触れることさえ拒み、一生を「生ける未亡人」として幽閉するつもりだったが、ある事故をきっかけに運命は狂い始める。彼女は身を挺して彼を救い、皮肉にもその身に彼の子を宿したのだ。妊娠を隠し、監視の目を盗んで息を潜める彼女に対し、彼は執拗な屈辱を与え続ける。しかし、奇妙なことに他者が彼女を傷つけることだけは決して許さなかった。裏では彼女を侮辱した相手を容赦なく叩きのめし、彼女が望むならと全財産を譲る準備まで進めていた。そんな彼の歪んだ執着も知らず、彼女はただお腹の子供を守るために逃亡の機会をうかがう。だが、ついにその時が来たとき、彼は逃げようとする彼女を強引に抱き寄せ、耳元で低く囁いた。「俺たちの子供を連れて、一体どこへ消えるつもりだ?」憎しみと執着が入り混じる、逃げ場のない愛の物語。
私の正体を知らないのは、愚かな元夫だけ の小説カバー
9.5
献身的に尽くした三年の結婚生活。しかし、星野梓を待っていたのはあまりに無情な離婚宣告だった。元夫の忘れられない女性の存在、姑からの陰湿な嫌がらせ、そして義妹の罵詈雑言。理不尽な仕打ちに耐え忍んできた彼女だったが、ついに反撃の狼煙を上げる。クズな男と身勝手な愛人には容赦なくコーヒーを浴びせ、録音データで義妹の醜態を暴露。渡辺家の偽善的な仮面を次々と剥ぎ取っていく。これまで地味で無害な女を演じてきた梓の正体は、誰もが恐れるビジネス界の天才児であり、さらには医学界で神業を持つと噂される伝説の「鬼医」だったのだ。彼女の真の価値を知り、後悔に震えながら跪いて復縁を乞う元夫。だが、その願いが届くことは二度とない。なぜなら、圧倒的な権力を手にした首都圏屈指の御曹司が、すでに彼女をその腕に抱き寄せていたからだ。「彼女は、俺だけのものだ」。最強の正体を隠した令嬢が、傲慢な元婚家を叩き潰し、至高の愛を掴み取る痛快な逆転ロマンスが幕を開ける。