替え玉の花嫁 の小説カバー

替え玉の花嫁

8.3 / 10.0
祖母の治療費を工面するため、オータムは逃亡した姉の身代わりとして大富豪チャールズと結婚する。この『替え玉の花嫁』に課せられた使命は、女癖が悪いと噂される彼と一年間夫婦を演じ抜き、無事に離婚すること。権力を持つ彼との契約結婚は、単なるビジネスのはずだった。人気のbillionaire romance booksとしても楽しめる本作は、打算から始まった関係が予想外の展開を見せる現代劇です。話題のromance novelを今すぐチェック。
「替え玉の花嫁」のあらすじ
祖母の莫大な治療費を工面するため、オータムは切羽詰まった状況に追い込まれていた。そんな時、姉のイヴォンヌが自身の結婚式を目前にして行方をくらませてしまう。残されたオータムは、治療費の支払いと引き換えに、姉の身代わりとして花嫁の座に就くことを決意した。結婚相手は、莫大な富と権力を掌中に収める若き実業家、チャールズ。彼は端正な容姿と地位を武器に、常に派手な女性関係が噂される奔放な男だった。次々と恋人を替える彼の不実な振る舞いは世間の知るところであり、愛のない政略結婚に未来を感じる者は誰もいない。オータム自身の願いも、契約期間である一年を無事に終え、彼との離婚を成立させることだけだった。互いに惹かれ合うはずがないと確信していた二人だったが、偽りの夫婦生活を続けるうちに、運命の歯車は予想外の方向へと動き始める。金と利害で結ばれた仮初めの関係は、冷徹なチャールズの心と、秘密を抱えたオータムの境遇を少しずつ変えていく。果たして、一年後の二人に待っているのは、予定通りの別れか、それとも予期せぬ愛の結末か。
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替え玉の花嫁 第1章

イボンヌ・グーが結婚式から逃げだした! マスコミで取り上げられているこの結婚式は、21世紀最大の結婚式であるはずだったが、 今となっては、世間の笑い種になってしまう寸前だった。

オータム・イェは鏡で自分の姿を見て、 床に置かれているウェディングドレスを力強く踏んだ。 イボンヌが滅茶苦茶にしたのに何故私が解決しないといけないの?

「もっとやったら! まだ怒ってるなら、踏みつけれるドレスが後10着もあるわ!」 オータムの母親であるウェンディ・イェが厳しい顔つきで彼女を見た。

オータムの心が沈んでいった。 彼女は立ち尽くし、呼吸を整えてから話し始めた。「お婆様の医療費を払うお金が必要なの。 お金が入り次第イボンヌの代わりに、チャールズ・ルーと結婚するわ」

歪んだ微笑みを浮かべながらウェンディは携帯を取り出し、秘書に電話をした。「チャンさん、病院の理事に連絡をとって」

電話を切った後、ウェンディは振り返ってオータムの方を見た。 素朴なウェディングドレス姿のオータムをうんざりとした顔で見て、 ハサミを手に彼女に向かって歩いて行った。

ウェンディは落胆した表情でハサミを持ち上げながら言った、「そんな顔で見ないでよ。 あなたは私の娘だけど、あなたを見るたびにあの役立たずな父親を思い出すわ。 あなたを見捨てた事を責めないでね。 人間は我が儘になって自分の事だけ気にすればいいのよ」

ウェンディはオータムのドレスを切り、袖に大きな穴を開けた。

そして部屋の外で待っている担当者の方を向き、「ボケっと立ってないで。 ウェディングドレスが破れてるわ。 新しいのを持ってきてあげて! 私のイボンヌは一般人ではないのよ。 彼女は一番素敵なウェディングドレスを着るべきだわ」

オータムは鼻を引き攣らせた。 ウェンディが自分が彼女の娘だと初めて認めたからだ。 しかしそれは、ウェンディが世間にイボンヌが彼女の最愛の娘であり、オータムはただの代理だと公表したことにより落胆させられた。

オータムはひび割れた下唇をかみ、小馬鹿にしたように笑った、「私の父親は確かに頼りない男性だったけど、あなたみたいなグー叔父の愛人になるような女性と結婚したんだもんね。 まぁ、あなたがしたみたいに、別の女性がグー叔父を誘惑してくれるといいけど」

「お黙り! なんてことを!」 ウェンディは激怒し、 手を振り上げ、オータムの右頬を叩こうとしていたが 、オータムの完璧に仕上げられた化粧を見て、 彼女の魅惑的な美しさに落ち尽かされた。 「今日はあなたと言い合いはしないわ。 とにかく、さっさとチャールズと結婚して、騒ぎを起こさないで! グー家とイボンヌに恥をかかせないでよ!」 ウェンディが断固とした態度で言った。

オータムはにやにやと笑った。

チャールズ・ルー? その男は金持ちで権力があった。 1年中毎日違う女を連れているほど、 無数の女性と関係づけていた。 「なぜチャールズはイボンヌと結婚したいのかしら?」 オータムは不思議に思った。

「騒ぎを起こさずに、この結婚式を乗り切ればいい! あなたはチャールズを知らないけど、結婚式はかなりのものよ。 あなたを見捨てた事は本当に悪いと思ってるわ、でも裕福になるんだし、これからはいい人生を送れるわよ。 昔の事は忘れて、新しい人生を送りなさい!」

母親のその言葉を聞き、オータム・イェは長い事押し隠していた感情が涙になり湧き出てきた。 涙が頬を伝い流れ落ちた。 「獰猛な虎ですらこの母親のように自分の子供を扱わないわ」 と、彼女は思っていた。

オータムはまだ体の震た状態で荒々しくウェディングドレスを掴んだ。

「わかったわ! 彼と結婚するわ! イボンヌの代わりにチャールズ・ルーと結婚することを約束するわ。 でも… 今後、私はあなたの娘ではないわ。 だから私の人生の邪魔をしないで。 それに、お婆様に何かあったらあなたのことは許さないから!」

「あなたがチャールズ・ルーと結婚さえしてくれれば、あなたの言う通りにするから」

ウェンディがオータムにこれほど親切だったことはなかった。 彼女はオータムをチャールズに差し出せるのであれば何でもした。 数年後、オータムがこの出来事を思い出し、思いもよらなかった運命に思わずため息を漏らした。 彼女を絶望に落としたこの結婚式は、後々、彼女の人生を守る重大な事となった。 彼女が思いもよらなかった出来事が起こり始めた。

「結婚式が始まります。 新婦さん、急いでください!」

結婚式は予定通りに行われた。 白いウェディングドレス、レッドカーペット、花、そしてゲスト… その結婚式は映画で見るような華やかなものだったが、 オータムの心は氷のように冷たかった。 彼女は無表情だった。

豪華な結婚式だったにも関わらず、彼女は夫の顔すら見たことがなかった。 出席者たちは微笑んでいたが、オータムは周りにいる皆が式の初日に夫に愛されていない自分を嘲笑っていると感じていた。

チャールズが彼女の手をしっかり握っているにも関わらず、彼女は彼と話をしようともしなかった。 式の後、チャールズは乱暴に彼女の手を振り解いて言った。「先に帰るんだ。 俺は終わらせないといけない仕事がある」

チャールズの運転手がオータムを送り届けた。 彼女は運転手にチャールズがどこへ行くのかを聞いた。 運転手はチャールズがどこに居るのかよく知っているようだし、彼女に言わないような指示も受けていないようだから、 無関心に「リリーヴィラ」と言った。

「リリーヴィラ?」 確かにセレブのレイチェル・バイがリリー・ヴィラに住んでいるという噂があった。なるほど。 オータムはそう考えながら無関心な笑顔を見せた。 レイチェル・バイが私の夫となった男のガールフレンドだと言う噂は本当だったようだ。 今この瞬間にも、チャールズはレイチェルを抱きしめ、そして宥めているに違いない。 つまり、チャールズには既にガールフレンドがいたのだ。それで、彼が私の提案を受け入れるのはそんなに困難ではなかっただろう。

オータムは長い間チャールズをウェディングルームで待っていた。 その部屋は結婚式ムードで飾られいたが、オータムはそんなロマンチックな気分ではなかった。

彼女はチャールズは今夜は戻ってこないだろうと思ったので、 着替えをし、気分転換をしようと浴室へ向かった。

彼女は肉体的にも精神的にも疲れていたので、浴室で長い時間過ごした。 今日は色んなことがあり過ぎ、じっくり考えたかったからだ。

浴室の温度は高く、鏡は蒸気で曇っていた。 オータムは混乱していた。

ウェンディ、イボンヌ、チャールズそしてレイチェルのことが頭から離れなかった。

考えれば考えるほど、彼女はより混乱になった。

温かい湯船に浸かり落ち着きを取り戻してから、 彼女はタオルで身を包み、 別のタオルで髪を拭いた。 浴室から出て来た時、チャールズがまっすぐ自分を見ているのに気がついた。

部屋は暗く 壁ランプだけが点けられていた。 しかし、部屋のその暗さは無表情なチャールズよりましであった。

この20数年の人生で、男性の前でこれほど体をあらわにしているのは初めての事だった。

彼女はチャールズを見るや否や、服を取りに向きを変えた。 しかし、チャールズは彼女を捕まえ、 ベッドに投げ入れた。 「お前、どうしても俺と初夜を過ごしたいようだな??」 チャールズがバカにしたような口調で言った。

彼女の体はタオルで覆われているだけで 濡れた髪からは水滴が落ちていた。 分厚い結婚式用メークは既に洗い落とされていたが、チャールズは彼女の素顔から目を離せなかった。

チャールズは彼女の体から石鹸の香りがするのに気がついた。 その石鹸は彼がいつも使っているものであったから、 彼のにおいが彼女に付いていると感じ、彼の欲望に火をつけた。

が、レイチェルの涙目が頭に浮び、すぐに落ち着きを取り戻した。

彼とレイチェルは2年も付き合っている。 彼女をがっかりさせたくない。

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