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砕かれた愛と、アレルギーレシピの秘密 の小説カバー

砕かれた愛と、アレルギーレシピの秘密

弟のアレルギーを治療するための特製レシピを手に、婚約者・真和のオフィスを訪れた理春。しかし、そこで彼女が耳にしたのは、あまりにも残酷な真実だった。真和にとって理春との愛は、自身の政治生命を守るための単なる道具に過ぎなかったのだ。かつて弟が遭った事故の真犯人は真和の妹・心菜であり、彼はその証拠を隠蔽するために理春を欺き続けていた。さらに、心菜によって海に突き落とされ、お腹の子を失った理春に対し、真和は妹を庇うばかりか彼女の精神を疑う言葉を放つ。愛する男に裏切られ、希望も子供もすべてを奪われた理春。しかし、絶望の淵で彼女は真和の金庫から、彼らを破滅させる決定的な証拠を掴み取る。恩師の助けを借りながら、理春は自分からすべてを奪った者たちへの冷徹な復讐を開始する。信じていた絆が憎しみへと変わる時、隠された罪が白日の下にさらされる。
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弟のアレルギーを治すための特別なレシピが完成し, 私は婚約者である真和のオフィスへ向かった.

しかし, ドアの隙間から聞こえてきたのは, 彼の冷酷な声だった.

「理春との婚約は一時的な措置だ. 陸の事故の件で, 俺を深く信頼しているからな」

弟の事故の犯人は, 彼の妹・心菜. そして真和は, 自身の政治生命のために証拠を隠蔽していたのだ.

妊娠中の私を心菜が海に突き落とし流産させても, 彼は妹を庇い, 私の精神状態を疑った.

愛も, 希望も, お腹の子も, すべてを奪われた. 信じていたすべてが, 彼の政治生命のための道具でしかなかった.

絶望の淵で, 私は彼の金庫から決定的な証拠を見つけ出す. 復讐の炎を胸に, 私は恩師の助けを借りて, 彼らからすべてを奪い返すことを誓った.

第1章

松原理春 POV:

弟の未来をかけたアレルギー対応スイーツの特別なレシピが完成した. この喜びを, まず真和に伝えようと, 私は急いで彼のオフィスへ向かった. 私の心は, 焼き立てのケーキのようにふんわりと膨らんでいた.

真和のオフィスは最上階にあった. 重厚なドアの前まで来て, 私は少し立ち止まった. 興奮が全身を駆け巡り, 軽く息を整える. ドアが少しだけ開いていることに気づいた. 中から真和の声が聞こえてくる.

「…理春との婚約は, あくまで一時的な措置だ. 分かっているだろう, 心菜. 」

その言葉は, 私の耳に鋭利なナイフのように突き刺さった. 私の心臓は, 突然氷で覆われたかのように冷たくなった. 婚約が一時的?  どういうことだろう. 私の頭の中は真っ白になった.

「心配するな. あの女は, 馬鹿正直で鈍感だからな. 俺に言われるがまま, 大人しくしているさ. それに, 陸の事故の件で, 俺を深く信頼している. そう簡単に真実にはたどり着けない」

真和の声は, まるで私という存在を嘲笑うかのように響いた. 弟, 陸の事故の真実?  その言葉が, 私の思考をかき乱した. 私は彼の言う「あの女」が自分であることに気づき, 全身の血が一瞬で凍り付いたようだった.

「兄さん, 本当に大丈夫なの?  彼女が何か感づいたら…」

心菜の声が, 不安げに響く. 私は息を殺し, 耳を澄ませた. 心菜が, なぜこの話に絡んでいるのだろう. 私の心臓は, 重々しく, そして不規則なリズムで脈打っていた.

「大丈夫だ. あの時, 警察に圧力をかけて, 証拠は全て揉み消した. もちろん, お前が薬物使用中に運転していたことも, 誰も知らない」

真和の声が, 冷酷なまでに落ち着いて響いた. 薬物使用中の運転. その言葉が, 私の脳裏に稲妻のように走った. 陸の事故. 心菜が犯人?  そして真和がそれを隠蔽した?  私の体は, 突然重力に逆らえなくなったかのように, 崩れ落ちそうになった.

「それにしても, あの女のレシピ, 本当にすごいね. あんなアレルギー対応のスイーツが作れるなんて. これなら, 私たちの新しいビジネスプラン, 間違いなく成功するわ」

心菜の声は, 喜びと満足に満ちていた. レシピ?  私が陸のために, 何年もかけて開発した, アレルギー対応スイーツの特別なレシピ?  それが, どうして心菜の手に?  私の思考は, 完全に停止した. 絶望が, 全身を駆け巡る.

「ああ, もちろん. あのレシピは, お前が事業を拡大するための最高の道具だ. 理春には, しばらく何も知らせずに置く. 彼女が俺の監視下にある限り, 何も問題ない. それに, このレシピが流出すれば, お前が政治家としての地位を守るのに役立つ」

真和は, まるで商談でもするように, 淡々と心菜に話していた. 私の存在は, ただの監視対象. 彼の政治生命と心菜のビジネスプランを守るための, 都合の良い駒. その事実に, 私は吐き気がした. 屈辱が, 私の胃を締め付けた.

「あの女は, 私たちにとって都合の良い道具でしかない. 兄さんの政治生命と私のビジネスのために, 利用できるものは何でも利用するべきよね」

心菜の声は, 私の心に深く, 深く刻み込まれた. 私の心は, まるで壊れたガラスのように, 粉々に砕け散った. 私は, ただ利用されるだけの存在だったのだ.

「ああ, そうだ. それに, あの女の感情なんて, どうでもいい. 俺にとって重要なのは, お前とお前の未来だけだ. お前は俺の唯一の家族だからな」

真和は, 心菜に優しく語りかけた. その言葉の刃は, 私の心臓をえぐり取った. 私が, 彼にとって何でもなかったことを, 私は今, 知った. 彼が私に注いでいた愛情は, 全て偽物だったのだ.

「でも, もし理春が真実を知ったら…」

心菜が, 少しだけ不安そうな声を上げた. その声に, 私の心はさらに深く沈んだ. 彼女は私が真実を知ることを恐れている. しかし, 私はもう知ってしまった.

「大丈夫だ. もし何かあったとしても, 俺が全てを解決する. 誰にもこの秘密を漏らすな. 理春には, お前を姉のように慕っているように振る舞い続けろ」

真和の声には, 有無を言わせぬ強い意志が込められていた. 彼の言葉は, 私にとって毒薬だった. 私は, 彼の言葉に体が凍り付くのを感じた. 心臓が, まるで誰かに鷲掴みにされたかのように締め付けられる.

私の手から, 陸のために作った特別レシピの入った箱が滑り落ちた. 箱は音を立てて床に落ち, 中のケーキは無残な姿を晒した. 砕け散ったケーキは, 私の希望そのものだった.

陸の事故の夜, 真和は私に寄り添い, 温かい言葉をかけてくれた. 彼は, 「君の弟は, 僕の義弟になるんだ. 必ず犯人を見つけ出し, 償わせる」と, 私の手を握りしめて誓った. その言葉は, 私にとって唯一の救いだった.

プロポーズの夜, 彼は跪いて, 私のために選んだと指輪を差し出した. 「君を一生かけて幸せにする」と, その瞳は真剣に私を見つめていた. 私はその言葉を信じ, 心から彼を愛した.

彼が毎朝, 私の髪を撫でてくれた手. 彼が私を抱きしめてくれた温かい腕. 彼が私に囁いてくれた愛の言葉. それら全てが, 今となっては薄汚れた偽りの幻影だった. 私の世界は, 音を立てて崩れ去った.

「すべてが偽物だった…」

私の口から, 絞り出すような声が漏れた. 信じていた愛も, 希望も, すべてが嘘だった. 私の全てが, 彼の政治生命のための道具だったのだ.

その時, 私の携帯電話が震え始めた. 真和からの着信. 私の心臓は, 警鐘のように激しく鳴り響いた. 私は急いで物陰に隠れ, 震える手で電話に出た.

「もしもし, 理春?  今, どこにいるんだい? 」

彼の声は, いつもと変わらず優しく, 私を気遣う響きだった. しかし, その甘い声は, 私にとっては吐き気を催すほどの毒だった. 彼の声の背後で, 心菜の楽しそうな笑い声が微かに聞こえる. 私は, 胃から込み上げてくる吐き気を必死で抑えた.

「ええ, 少し…用事を済ませていました. 今, 家に向かっています」

私の声は, 自分が思っていたよりもずっと平静だった. 私は, 自分の感情を完璧に隠し通したことに, 驚きと嫌悪を覚えた.

「そうか. お疲れ様. 君は本当に頑張り屋だな. 僕の自慢の婚約者だ」

彼の言葉は, 私を褒め称えているようだったが, 私にはそれが残酷な皮肉に聞こえた. 私は, ただ麻痺したように彼の言葉を聞いていた.

「早く帰ってきてくれないか?  君に会いたい. 実は, 来月の選挙が終わったら, 僕たちでハネムーン旅行に行かないかと思ってね. 君の行きたがっていた南の島はどうだろう? 」

彼は, 未来の約束を語り, 私を誘惑した. 南の島. かつて私たちが夢見ていた場所. しかし, その言葉はもはや希望ではなく, 私を奈落の底へと引きずり込む鎖にしか聞こえなかった.

「そして, 君の体調も心配だ. 最近, 少し顔色が悪いように見える. すぐに病院へ行こう」

彼の言葉は, 完璧なまでに私を気遣うものだった. しかし, その完璧さが, 私には吐き気を催すほどに虚偽に満ちていると感じられた. 彼は, 私を心から愛しているように振る舞い, 周囲からも賞賛されているのだろう.

「真和さんって, 本当に優しい方ね. 理春さんのこと, いつも大切にしているもの」

隣の部屋から, 真和の部下の声が聞こえてきた. 彼らは, 真和の演技に完全に騙されている. 私は, その事実が, たまらなく孤独に感じられた.

「もちろんだ. 理春は僕の妻になる人だからね. 彼女を守るのは, 僕の義務だ」

真和は, 自信たっぷりに答えた. その言葉は, 私への保護を装いながら, 実際には私を完全に支配下に置いていることを示していた. 彼の虚偽の保護は, 私をさらに深い絶望へと突き落とした.

「愛してるよ, 理春. 早く会いたい」

彼の最後の言葉は, 私にとって最大の侮辱だった. 私の心は, 完全に死んだ. 電話が切れると, 残されたのは, 耳鳴りのように響く空虚な沈黙だけだった.

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