フォローする
共有
元婚約者の叔父と秘密の契約結婚 の小説カバー

元婚約者の叔父と秘密の契約結婚

母の遺品を探すため車載カメラを確認した安紀は、婚約者の雅彦と実妹・美咲の不貞を知る。だが、家族の前で裏切りを告発した彼女を待っていたのは、父からの冷酷な拒絶だった。父は雅彦と妹の婚約を認め、安紀を別の政略結婚の道具として扱うと宣言。継母も妹を庇い、安紀を家の恥と罵る。幼少期から病弱な妹のために犠牲を強いられてきた彼女は、自分を蔑む者たちへの復讐を決意した。安紀は家を飛び出し、ある大胆な賭けに出る。それは、雅彦の叔父であり、一族の絶対権力者である鷹司暁と契約結婚を結ぶこと。かつての婚約者の「叔母」という立場を手に入れ、自分を裏切った家族と男に、受けた屈辱のすべてを倍返しにするための壮絶な反撃が今、幕を開ける。
共有

1

高石安紀は最後の荷物をスーツケースに詰め終え、満足げに息をついた。

パスポート。ニューヨーク支社との契約書類。

すべて準備万端だ。

それから彼女は化粧台の方へ視線を向けた。そこには母の遺した記念品――一箱の宝石が置かれている。

安紀は蓋を開け、お守りのように大切にしてきたサファイアのイヤリングを取り出そうとした。

しかし、安紀が指で匣を開けてみると、中のイヤリングは一つだけしか残っておらず、もう片方はどこへともなく消え去っていた。

心臓が不吉な鼓動を立てて激しく躍り、胃が鈍く疼いた。このイヤリングは彼女にとって単なる装身具ではない。これは母そのものだった。

安紀は気が狂ったように部屋中を探し回った。

カーペットの下、ベッドの裏、クローゼットの隅。どこを探しても見つからない。

安紀は関連する詳細を思い出そうと努めた。彼女は今日、婚約者の鷹司雅彦に会った後、自ら車を運転して家に帰った。もしかすると——ある可能性が頭をよぎった。車の中でうっかり落としてしまったのかもしれない。

静まり返った空間で、安紀は車に設置されたドライブレコーダーのことを思い出した。スマホで録画映像を確認すれば、いつ、どこで落としたか分かるかもしれない。

微かな希望にすがり、彼女は専用アプリを起動し、本日の映像を再生した。

画面には、先ほど雅彦の会社へ向かう見慣れた道のりが映し出された。特に異変はない。安紀は少しずつ映像を巻き戻して確認していく。

突如、画面が切り替わり、車が雅彦の会社の駐車場に停車した場面が映し出された。

運転席のドアが開き、二つの人影が車内に侵入してきた。

鷹司雅彦。そして彼女の妹、高石美咲だ。

安紀の呼吸が完全に止まった。

なぜ美咲が、雅彦と一緒に私の車にいるのか。

録画された映像と音声が、スマホの画面とスピーカーから流れ出す。

「雅彦さん、お姉様の車、いい匂いがする。お姉様の匂いだね」

美咲の甘ったるい声が安紀の鼓膜を揺らした。

「美咲は、姉さんの匂いと俺の匂い、どっちが好きだ?」

雅彦の低い笑い声が響いた。

「もちろん雅彦さんの匂いよ。お姉様なんて、いつも仕事ばっかりで女らしさもなく、堅苦しくてつまらない、大嫌い」

美咲は嘲るように言い放った。

「その通り。安紀は融通が利かなくて、一緒にいても全然楽しくない。それに、ベッドの上でも冷めきっている。可愛らしい美咲とは全然違う」

雅彦は吐き捨てるように続けた。

「あんな女、婚約破棄されて当然よ。雅彦さんに似合うのは私なの」

美咲の声には抑えきれない得意さが滲んでいた。

その直後、狭い車内には、耳を塞ぎたくなるような喘ぎ声と生々しいキスの音が響き渡った。

安紀の顔から急速に血の気が引いた。

指先は氷のように冷たくなり、胃が激しく痙攣した。

映像の中の美咲は、泣き出しそうな声で囁いた。

「雅彦さん、お姉様がもうすぐ戻ってくるわ。こんなことしてたら……殺されちゃう」

「何を怖がることがある。どうせすぐ婚約を破棄するんだ。安紀みたいな勝気な女より、君のほうがずっと可愛い」

雅彦の言葉は、まるで刃のように安紀の心臓を突き刺した。

彼女は無意識にスマホの縁を強く握りしめ、指関節が白くなるほど力を込めた。画面には、血色を失った自分の顔が映り込んでいた。

安紀は震える手で動画ファイルをスマートフォンに保存した。一滴の涙も流さない。瞳には、すべてを凍らせるような冷たい光だけが宿っていた。

彼女はスマホを持ち、110番をダイヤルした。

「もしもし、警察ですか。通報します。他人が私の車に無断で侵入し、車内でわいせつ行為を行っています。至急、車両の移動と捜査をお願いします。場所は——」

安紀は冷静に雅彦の会社の住所を告げた。

通話を終えると、彼女はスーツケースを引き、無表情でタクシーを拾って成田空港へ向かった。

空港のVIPラウンジで、乱れた心を落ち着けようとコーヒーを汲みに行った。

その時、考え事に気を取られ、曲がり角で一人の男性とぶつかってしまった。

コーヒーが相手の高級スーツに飛び散った。

「大変申し訳ございません!」

安紀は慌てて頭を下げ、顔を上げた瞬間、言葉を失った。

目の前の男は身長が高く、圧倒的な存在感を放っていた。

隣に立つアシスタントらしき青年、天野潤貴が大げさに叫んだ。

「暁!お前、公共の場でこんなものを見てるのかよ!」

安紀の視線は男が落としたタブレットに落ちた。画面には、男女が大胆に絡み合う芸術映画のワンシーンが映し出されていた。

暁と呼ばれた男、鷹司暁はただ静かに彼女を一瞥した。

その瞳はあらゆるものを見透かすように深く、瞬く間に安紀の心の奥底を射抜いた。

おすすめの作品

離婚後の私、無敵です。 の小説カバー
8.1
結婚記念日という特別な日に、御曹司の夫・尾崎時生から突きつけられたのは、初恋の女性を選ぶというあまりにも身勝手な裏切りだった。長年の献身を無下にする彼に対し、西森千夏は未練を断ち切り、即座に離婚届を叩きつけて去る。時生は「どうせすぐに戻ってくる」と高を括っていたが、彼女が選んだ道は芸能界への華々しい復帰だった。かつての「か弱い妻」から一転、圧倒的なカリスマ性で無双する千夏は、時生の愛人の本性を暴き、社会的に葬り去っていく。一方、千夏の前には世界的スターやメディア王、大富豪の継承者といった最高峰の男たちが現れ、彼女を巡って熱狂的な求愛を繰り広げる。立場は完全に逆転し、千夏の成功を目の当たりにした時生は、焦燥感からなりふり構わず復縁を迫る。しかし、かつての冷遇を忘れない彼女は、すがりつく元夫を一瞥だにせず冷酷に告げる。「一度捨てた過去を二度と拾うことはない」と。これは、裏切りを糧に覚醒した女性が、かつての夫を絶望の淵へと突き落とし、真の愛と栄光を掴み取る痛快な愛憎劇である。
最悪の夜に私を奪った男は、潔癖症の億万長者 の小説カバー
8.0
新婚の夜、花婿を待つ彼女の運命は、見知らぬ男の侵入によって無残に引き裂かれた。この事件をきっかけに、彼女は姑から執拗な辱めを受け、夫からは冷酷に見放されてしまう。さらに夫の愛人からも嘲笑を浴びせられた末、住み慣れた家を追い出されるという絶望の淵に立たされた。しかし、彼女には敏腕弁護士という隠された顔があった。自分からすべてを奪った男を裁くため、彼女は法廷で戦う決意を固め、訴状を叩きつける。だが、その相手は街で一番の富豪として知られる男だった。彼は派手な女性遍歴を持ちながらも、実は重度の潔癖症で、激しい感情の起伏と強引な性格を併せ持つ厄介な人物だった。男はあらゆる手段を駆使して彼女に結婚を迫り、執拗に追い詰めていく。法によって復讐を遂げようとした彼女だったが、皮肉にもさらなる波乱に満ちた泥沼の展開へと巻き込まれていくことになる。富と権力を手にした億万長者の横暴な愛に、彼女の日常は再び激しく揺れ動いていく。
砕けた心の鎮魂歌:冷徹な夫への永遠の別れ の小説カバー
7.9
結婚3周年の記念日に小松原静が目撃したのは、夫である鷹司暁が別の女性と情事に耽る衝撃的な姿だった。暁は静に贈られたネクタイを外し、静との関係をただの政略結婚だと冷酷に切り捨てる。怒りを抑えて離婚を突きつけた静だったが、鷹司グループの権力者である暁は書類を破り捨て、跡継ぎを産む義務を強要して彼女を力ずくで押さえつけた。さらに彼は静のカードを止め、職を奪うことで彼女を孤立させ、徹底的な支配を試みる。しかし、暁は知らない。4年前に彼を救うために遭った事故で、静がすでに子供を産めない体になっていることを。代わりの女のために妻としての尊厳を無惨に踏みにじる夫の傲慢さが、静の心に冷徹な復讐の炎を灯す。絶望の淵に立たされた彼女は、自分を追い詰めた夫を「死人以下」と断じ、その権力に抗うための壮絶な反撃を開始する。愛が憎しみに変わる時、静はすべてを賭けて自らの尊厳を取り戻す戦いに身を投じていく。
どん底令嬢の逆転シンデレラ・リベンジ の小説カバー
8.4
結婚式という人生最良の日に、小林綾乃は妹の卑劣な罠によって殺人未遂の濡れ衣を着せられ、奈落の底へと突き落とされました。婚約者に裏切られ、高台から突き落とされた彼女を待っていたのは、三年に及ぶ過酷な獄中生活と非人道的な拷問の日々でした。出獄後も、悪辣な妹は母親の命を盾に、綾乃を老いた男へ捧げようと画策します。しかし、絶体絶命の窮地で彼女を救い出したのは、冷酷非道な帝王として畏怖される竹田安律でした。決して女を寄せ付けない彼が、傷ついた綾乃だけは慈しみ、掌中の珠として執着します。最強の庇護者を得た彼女は、もはや虐げられるだけの令嬢ではありません。清純を装う妹を叩きのめし、冷酷な継母に報いを受けさせ、かつての敵たちを次々と翻弄していきます。後悔に震え許しを乞う妹や、復縁を迫る元婚約者を前に、安律は冷徹に言い放ちました。「失せろ。貴様の叔母に対して、二度とその口を開くな」。覇道を行く夫の腕に抱かれ、どん底からの華麗なる逆転劇が今、幕を開けます。
バツイチ女、今や社長。元夫は復縁希望中 の小説カバー
8.2
「彼女と自分を比べるなどおこがましい」――。3年間、献身的に尽くしてきた専業主婦の生活は、夫からの非情な言葉で幕を閉じた。愛が報われると信じて耐え忍んできた彼女に刻まれたのは、深い心の傷だけだった。しかし、絶望の淵で彼女は決断する。愛を捨て、自らの力で生きていくことを。離婚後、周囲の嘲笑を跳ね除けるように、彼女は隠れた才能を開花させていく。有名デザイナーとしての地位を確立し、ついにはビジネス界の頂点へと登り詰めたのだ。億万長者の家督を継ぐ道を選ばず、自らの手で巨大なビジネス帝国を築いた彼女。今や兄からは惜しみない愛を注がれ、数多の美男子たちから熱烈なアプローチを受ける存在となった。かつての夫の前に堂々と立ち、彼女は宣言する。「後悔など微塵もしていない」と。一方、輝きを放つ元妻の姿を前に、男は己の愚かさを痛感していた。かつての傲慢さは消え失せ、必死に復縁を乞い願う。「もう一度、俺の妻になってほしい」。立場が逆転した二人の、新たな関係が幕を開ける。
彼の裏切りが、彼女の真の力を解き放った の小説カバー
8.5
恋人の浩人を支えるため、私は正体を隠して数百億円規模のソフトウェア「Aura」を開発し、彼をスタープロジェクトリーダーの座へと押し上げた。二人の幸せな未来を信じ、影の設計者として尽くしてきた五年間。しかし、サプライズで彼の転属先を訪れた私を待っていたのは、見知らぬ女性キラと抱き合う彼の姿だった。浩人は彼女を単なる友人だと言い張るが、キラが会社に数億円の損失を与えた際、彼は信じがたい行動に出る。役員たちの前で彼女を庇い、あろうことか全ての責任を私に押し付けたのだ。「プレッシャーに耐えられないなら本社へ帰れ」と、彼は冷酷に私を解雇した。尽くしてきた男の裏切りに絶望し、世界が崩れ去ったその時、エレベーターからCTOが現れる。彼は涙に濡れる私と傲慢な浩人を交互に見据え、静かに、しかし鋭く問いかけた。「君は、この会社のオーナーに対して、そのような口の利き方をするつもりか?」と。裏切られた設計者の真の身分が明かされる時、二人の関係は決定的な破滅を迎える。