フォローする
共有
籠の中の身重な鳥、冷酷な御曹司の甘い束縛 の小説カバー

籠の中の身重な鳥、冷酷な御曹司の甘い束縛

秘書として、そして妻として二年間、三谷美月は冷徹な夫・鷹司彰のために尽くし続けてきた。しかし、彼が心に抱くのは初恋の女性・佐野佳世への想いだけであり、美月の献身が報われることはなかった。佳世の帰国を機に二人は離婚。その半年後、美月は予期せぬ妊娠に気づく。彼女は長年の片思いに終止符を打ち、お腹の子を守るために誰にも告げず遠くへ姿を消した。彰と佳世の幸福な知らせを耳にするたび、美月は静かに彼らの幸せを願っていた。ところが、平穏な日々は出産という人生の転機に一変する。佳世と再婚するはずだった彰が、突如として美月の産室の前に現れたのだ。彼は再び共に歩みたいと切実に訴えかける。美月は「この子はあなたとは無関係」と拒絶するが、彰は「たとえ誰の子であろうと、二度と離さない」と強引なまでの執着を見せる。一度は壊れたはずの絆が、赤ん坊の誕生をきっかけに歪んだ愛へと形を変え、美月を再び甘く冷酷な束縛の中へと引き戻していく。
共有

2

三谷美月は頭の回転が速く聡明な女だ。だがどれほど利口な人間でも、心に情けが宿った瞬間、冷静さを保つのは難しい。

「貧しい家だからといって、犬すら離れはしない。我が子ならなおさらだ。私の子供はこの暮らしを嫌っていないのに、あなたは子供の身になって、私を見下しているの?」

彼女は昔から口が強く、譲歩することを知らなかった。

鷹司彰は彼女の性格をよく知っている。三谷美月は己の信念を曲げない、自分の決めたことは最後まで貫き通す女だ。

以前仕事の場でも、彼女は何度も自分に歯向かった。一つの事業評価をめぐり、解雇のリスクを顧みず、敢然と意見をぶつけてきたこともあった。

ただ一つ、夜の閨の中だけは、彼女が素直に身を委ね、弱さを見せてくれた。

だが今回は事情が違う。彼女がどれほど意地を張ろうとも、鷹司彰は一歩も引くつもりはなかった。

「三谷美月、貴女は私と対等に渡り合えると思っているのか?」

相手が力ずくで迫ってくる言葉に、美月はまるで見えない大きな手に首を絞められたような息苦しさを覚えた。言い返す言葉も、反撃する力も、完全に奪われてしまう。

美月は唇を引きつけ、淡い笑みを浮かべた。

「鷹司様、誤解なさっていますわ。」

「あの子は稲葉結優さんの子供です。退勤後に病院へ見舞いに行き、それから家に戻ったところなの。」

鷹司彰は眉根を寄せ、じっと彼女を見つめた。疑いの眼差し、そして詳細に観察する視線が美月を貫く。

目をやると、彼女はタイトなヒップスカートを着ており、引き締まった腰と艶やかな肢体は、妊娠していた様子も、出産直後の様子も微塵も感じさせなかった。

「そういえば、稲葉結優のこと、覚えていらっしゃる?以前よく話題に出していた友人なの……」

美月が言い訳を続けようとしたが、鷹司彰は耳を貸そうともしなかった。

ポケットからタバコを取り出して唇にくわえ、火をつけると窓際へ移り、ゆっくりと煙を吐き出した。

たった一時間の間に、突然父親になったかと思えば、それが誤解だと分かる。混乱した心を落ち着けるため、彼はただ煙を吸い続けた。

半年ぶりに顔を合わせた三谷美月は、どこか以前とは雰囲気が変わったように見える。言葉にできない違和感を抱きながら、彼は窓ガラスの映る姿を通して、彼女をじっと眺めた。

昔、夫婦だった頃の彼女は、多少気まぐれなところはあっても、自分の前では飼い猫のように従順で、おとなしく寄り添ってきた。

だが今の彼女は、野良猫のように気ままで、捉えどころがない。

まさかこんな突飛ないたずらを仕掛けてくるとは思いもしなかった。

美月は窓際に歩み寄り、窓を大きく開けた。真冬の身に染みる冷たい風が部屋に吹き込み、充満していたタバコの煙を散らしていく。

「誤解だったとはいえ、少し気になりますわ。もし本当に子供がいたとしたら、佐野さんと子供、どちらか一方しか選べない状況になった時、貴方はどちらを選びますの?」

彼女は自分の立場を心得ていた。自分は最初から、鷹司彰の選択肢にすら入っていない存在なのだ。

「そんな仮定の話は無意味だ。」

鷹司彰はタバコの火を揉み消した。部屋中を探したが灰皿が見当たらず、火の消えた吸い殻を手に持ったまま、その場を離れた。

彼は真夜中に元妻と昔話をするような、暇な人間ではない。

美月は内心で思った。あの SNS の投稿を見なければ、この男は一生、自分と顔を合わせることもなかっただろう。

一ヶ月ほど前、ホテルで偶然出会った時を除いては。その日、彼は酔いつぶれており、二人は再び関係を持ってしまった。

気まずさを恐れた美月は、彼が目を覚ます前に慌てて着替え、その場を逃げ出した。

この出来事を胸の奥に秘め、一生口にしないつもりだった。だが思いがけず、その一夜が身に宿り、芽を出してしまった。

彼女は本当に妊娠していた。現在六週目で、胎児は順調に発育している。

窓の外では大雪が降りしきり、綿菓子のような大きな雪片が舞い落ちていた。黒い服を身にまとった鷹司彰の姿は、白い雪景色の中で一際目立っている。

美月は窓を閉め、冷たいガラスに額をつけ、彼が吸い殻をゴミ箱に捨て、道端に停まったブガッティに乗り込み、車を走らせて遠ざかっていく姿を見送った。

高級スポーツカーが、この下町の貧しい地域に存在するのはあまりに不釣り合いだ。

まるで鷹司彰自身も、本来三谷美月の人生に現れるべき存在ではなかったかのように。

美月は心に決めた。逃げよう。鷹司彰から、できる限り遠くへ。

おすすめの作品

離婚後の私、無敵です。 の小説カバー
8.1
結婚記念日という特別な日に、御曹司の夫・尾崎時生から突きつけられたのは、初恋の女性を選ぶというあまりにも身勝手な裏切りだった。長年の献身を無下にする彼に対し、西森千夏は未練を断ち切り、即座に離婚届を叩きつけて去る。時生は「どうせすぐに戻ってくる」と高を括っていたが、彼女が選んだ道は芸能界への華々しい復帰だった。かつての「か弱い妻」から一転、圧倒的なカリスマ性で無双する千夏は、時生の愛人の本性を暴き、社会的に葬り去っていく。一方、千夏の前には世界的スターやメディア王、大富豪の継承者といった最高峰の男たちが現れ、彼女を巡って熱狂的な求愛を繰り広げる。立場は完全に逆転し、千夏の成功を目の当たりにした時生は、焦燥感からなりふり構わず復縁を迫る。しかし、かつての冷遇を忘れない彼女は、すがりつく元夫を一瞥だにせず冷酷に告げる。「一度捨てた過去を二度と拾うことはない」と。これは、裏切りを糧に覚醒した女性が、かつての夫を絶望の淵へと突き落とし、真の愛と栄光を掴み取る痛快な愛憎劇である。
三年間の冷酷な結婚生活:今更夫が後悔してももう遅い の小説カバー
8.5
結婚してから三年間、夫の健斗は「神聖な関係」という言葉を盾に私に一度も触れようとしませんでした。私はその言葉を信じ、献身的に五十嵐家を支えてきましたが、義兄の死をきっかけに現実は崩れ去ります。夫は密かに想いを寄せていた義兄の妻・彩音とその息子を自宅へ招き入れ、彼らを優先して私を冷酷に突き放したのです。彩音の息子が私の両親の遺影を損壊しても、夫は彼らを庇い、私を暴力的に責め立てました。さらに、一族にとって重要な鷹司家の晩餐会を欠席して彩音のもとへ向かい、私は極寒の吹雪の中に置き去りにされます。凍死寸前の絶望の中で救いの手を差し伸べたのは、財界で恐れられる鷹司家の当主でした。この三年間が、夫の不貞を隠すための茶番に過ぎなかったと悟った私は、復讐を誓います。巧妙な手段で夫に離婚届を書かせると、私はすべてを捨てて家を出ました。奪われた時間と尊厳の代償を、千倍にして彼らに突きつけるために。愛と裏切りの果てに、地獄を見た女の逆襲が今始まります。
夫が私を口説いている。 の小説カバー
9.3
結婚から二年の月日が流れたある夜、夫婦は初めて肌を重ねた。しかし、彼女が相手を夫だと認識していた一方で、夫は目の前の女性が自身の妻であることにすら気づいていなかった。冷徹に離婚を告げる夫に対し、彼女も未練を残すことなくその提案を受け入れる。だが、二人の運命はここから予想もしない形で深く絡み合っていく。時が過ぎ、業界の権力者である彼が帰国すると、世間はある噂で持ち切りとなった。彼が一人の有能な女性弁護士に執着しているというのだ。美貌と知性を兼ね備え、多くの男を虜にする彼女を彼は強引に追い詰める。しかし、彼女は指先で彼の胸を制し、「私には夫がおりますから」と冷ややかに告げた。絶句する彼をよそに、離婚が成立した後、彼女は不敵な笑みを浮かべて言い放つ。「私の元夫の名前を知りたい?奇遇ね、あなたと同じ名前なのよ」と。かつての無関心が執着へと変わり、皮肉な再会が二人の関係を泥沼の愛憎劇へと塗り替えていく。
私のセカンドチャンス、彼の後悔 の小説カバー
9.0
父の遺言により、二十二歳の誕生日に桐嶋家の男と結婚し、次期CEOを指名する運命を背負った神楽坂詩織。彼女は長年、桐嶋玲への一途な恋心を抱き続けていたが、誕生日の夜にその純愛は無残に打ち砕かれる。玲は衆人環視の中で、詩織に贈るはずのブレスレットを彼女の義妹である結菜に手渡し、愛を弄んだのだ。彼は詩織を罵倒し、不貞を容認するよう傲慢に迫る。前世の詩織は、その残酷な仕打ちに耐えながらも彼との結婚を選んだが、待っていたのは地獄のような日々だった。玲からの暴力や裏切りに遭い、最後は彼と結菜が睦まじく過ごす傍らで、毒を盛られ孤独な死を遂げる。しかし、絶望の中で息絶えたはずの詩織が再び目を開けると、そこは運命の分岐点となったあのパーティーの会場だった。玲が結菜に贈り物を渡そうとする数秒前の光景が目の前に広がる。忌まわしい記憶を鮮明に刻んだ彼女は、二度と同じ過ちを繰り返さないと決意する。自分を破滅させた男をCEOに指名することなど、もうあり得ない。今度こそ、自らの手で新たな人生を切り拓くための復讐が幕を開ける。
懐妊逃亡〜その種、国家最高権力につき〜 の小説カバー
7.8
予期せぬ不慮の事故が、彼女の運命を狂わせた。素性も知らぬ男と過ごした、決して明かすことのできない一夜。その場に残されていたのは、一枚の純金カードだった。しかし、それは対価などではなく、彼女を「泥棒」へと仕立て上げる罠であり、自由を奪う軟禁生活の幕開けとなる。投獄の恐怖と、法の裁きに絶望する彼女の前に現れたのは、あの一夜を共にした当の男だった。男は「妊娠」という事実を盾に取り、彼女の人生へと傲慢に踏み込んでくる。抗う術のない強引な支配に翻弄されるなか、彼女は衝撃の事実に直面する。目の前の男こそが、国家の最高権力者として万人の頂点に君臨する、現職の大統領だったのだ。逃げ場のない状況で、一国の主との歪な関係が加速していく。予測不能な事態に巻き込まれた彼女の行く末は、果たしてどこへ向かうのか。最高権力者の執着と、秘められた命を巡る物語が今、静かに動き出す。
社長、奥様がまた離婚届を取りに行かれました の小説カバー
8.3
南城を支配する冷徹な権力者との結婚。それは、誰もが「政略結婚の犠牲」と蔑む愛なき契約だった。ついに家を追われることになった彼女の前に現れたのは、身重の姿をした彼の「初恋の女性」だ。名門界隈の人々は、無惨に捨てられた正妻の末路を嘲笑おうと、固唾を飲んで事態を注視していた。しかし、悲劇のヒロインを演じるどころか、彼女は不敵な笑みを浮かべて言い放つ。離婚届を求めて役所に日参しているのは自分であり、誰よりもこの縁が切れることを切望しているのは私なのだと。世間はそれを強がりだと決めつけ、夫である彼こそが離婚を待ち望んでいるはずだと信じて疑わなかった。だが、その予想は彼自身の手によって無慈悲に打ち砕かれる。彼がSNSに投稿した「離婚の事実は一切ない。デマには法的措置を講じる」という断固たる声明は、瞬く間に世界を震撼させた。離縁を望む妻と、それを頑なに拒む夫。冷酷な支配者が執着の果てに求めている真意とは一体何なのか。予測不能な愛の攻防が今、幕を開ける。