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末期癌の嘘、隠された真実 の小説カバー

末期癌の嘘、隠された真実

婚約者の晴翔から告げられたのは、私たちの結婚式を単なる「パーティー」に格下げするという残酷な通告だった。彼は、恩人の娘が末期癌で余命一年しかないことを理由に、彼女の願いを叶えるための偽装結婚を承諾したという。私は彼の語る「恩返し」という言葉を信じようと葛藤したが、その裏には衝撃的な裏切りが隠されていた。実は彼女はすでに晴翔の子を身に宿しており、二人は密かに親になる喜びを分かち合っていたのだ。真実を問いただす私に対し、彼は「病人の気持ちが分からないのか」と非情な言葉を投げつけ、私を責め立てて彼女の元へと去っていく。彼の中に私への愛など、もう一欠片も残っていなかった。信じていた未来はあまりにも呆気なく崩れ去り、私は全てを失った。しかし、絶望の果てに私はある決意を固める。本来ならば彼と添い遂げるはずだった結婚式の当日、私は日本を離れ、海外へと旅立つ。それは過去の自分との決別であり、裏切りに満ちた愛に終止符を打って、自分自身の新しい人生を切り拓くための第一歩なのだ。
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塚田莉結 POV:

妊娠診断書.

それは, 友美子の名前と, 晴翔の名前が連名で書かれていた.

心臓が, まるで誰かに鷲掴みにされたように激しく脈打つ.

私は震える指で, 診断書の日付と妊娠週数を確認した.

三ヶ月.

私が晴翔に偽装結婚を告げられた, あの衝撃的な日の, さらに二週間前の日付だった.

友美子が妊娠したことを, 晴翔はとっくの昔に知っていた.

知っていて, 私に「偽装結婚」を持ちかけ, 私との結婚式を「ただのパーティー」に格下げしようとしたのだ.

そう思うと, 全身の血が逆流するような感覚に襲われた.

どうして? なぜ?

私の頭の中は, 疑問と怒りでいっぱいに膨れ上がった.

私はその場で意識を失いそうになった.

足元がぐらつき, 立っていることすらできなくなる.

まるで, 私の世界が音を立てて崩れ落ちていくようだった.

晴翔が最近見せていた, あの優しい表情. あの焦った声.

それらは全て, 友美子とそのお腹の子に向けられたものだったのだ.

私が, 彼らの「偽装結婚」を受け入れるかどうか, 苦しんでいる間も, 彼らはひそかに, この「喜ばしい」事実を分かち合っていたのだろう.

私が必死に準備を進めていた結婚式.

あの幸せな誓いを立てる日.

それは, 私にとって, 人生で最も輝かしい瞬間になるはずだった.

それが, 晴翔の口から「ただのパーティー」と形容された日から, 私はもう, その日を心待ちにすることはできなかった.

そして今, その「パーティー」すら, 意味をなさなくなっていた.

全てが終わったのだ. 私の希望は, 粉々に砕け散った.

その時, 私の携帯が鳴った. 振動音が, 耳元で雷のように響く.

電話に出てみると, それは大学時代の恩師, 田中教授からだった.

「塚田くん, 元気かい? 実は, 君に話があるんだ. 海外の研究プロジェクトで, どうしても君の力が必要なんだが, どうだろう? 」

田中教授の声は, いつもと変わらず穏やかだった.

私はその提案に, 一瞬, 戸惑いを覚えた.

「教授, 私, 以前にもお話した通り, 結婚の準備がありますので…」

私は反射的にそう答えた.

教授は少し間を置いてから, 優しい声で続けた.

「うん, それは聞いている. だが, 今回のプロジェクトは, 以前君が強く関心を示していた分野だ. しかも, 君がトップに立つ. これは, 君にとってまたとないチャンスだと思うのだが」

教授の言葉は, 私の心に一筋の光を差し込んだ.

晴翔は, もうすぐ, いや, もうすでに, 友美子の子供の父親になる.

私と彼の関係は, 完全に終わったのだ.

私はもう, 彼のために何かを犠牲にする必要はない.

「教授, お引き受けします. 喜んで参加させてください」

私の声は, 驚くほど冷静だった.

「本当かい? ! それは嬉しいね! ただし, 条件がある. 研究に集中するため, 私生活は一切持ち込まないこと. プロジェクト期間中は, 完全に研究に没頭してほしい」

教授の言葉に, 私は迷わず答えた.

「はい, 承知いたしました. 私生活の整理は, きちんとつけてから渡航します」

私には, もう失うものは何もなかった.

私生活など, とうに壊れ果てていた.

教授は少し驚いた様子だったが, すぐに喜びに満ちた声で言った.

「そうか! それは頼もしい! では, すぐに手続きを進めよう. 出発は, 君の都合に合わせて調整しよう」

「出発は, 私の結婚式の日にしてください」

私の口から出た言葉は, 自分でも驚くほど冷徹だった.

電話を切ると, 私は壁掛けカレンダーの, 未来の結婚式の日に大きく赤い丸をつけた.

そして, その横に力強く書き込んだ.

「新しい, 私の人生の始まりの日」

私の結婚式の日. それは, 私にとって, 晴翔との関係を完全に断ち切り, 新たな人生を歩み出すための「訣別の日」となるだろう.

そして, これからの数年間, 私はこの男と二度と会うことはないだろう.

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