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末期癌の嘘、隠された真実 の小説カバー

末期癌の嘘、隠された真実

婚約者の晴翔から告げられたのは、私たちの結婚式を単なる「パーティー」に格下げするという残酷な通告だった。彼は、恩人の娘が末期癌で余命一年しかないことを理由に、彼女の願いを叶えるための偽装結婚を承諾したという。私は彼の語る「恩返し」という言葉を信じようと葛藤したが、その裏には衝撃的な裏切りが隠されていた。実は彼女はすでに晴翔の子を身に宿しており、二人は密かに親になる喜びを分かち合っていたのだ。真実を問いただす私に対し、彼は「病人の気持ちが分からないのか」と非情な言葉を投げつけ、私を責め立てて彼女の元へと去っていく。彼の中に私への愛など、もう一欠片も残っていなかった。信じていた未来はあまりにも呆気なく崩れ去り、私は全てを失った。しかし、絶望の果てに私はある決意を固める。本来ならば彼と添い遂げるはずだった結婚式の当日、私は日本を離れ、海外へと旅立つ。それは過去の自分との決別であり、裏切りに満ちた愛に終止符を打って、自分自身の新しい人生を切り拓くための第一歩なのだ。
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婚約者の晴翔は, 私との結婚式を「ただのパーティー」に格下げすると一方的に告げた. 会社の恩人の娘が末期がんで余命一年だから, 彼女と偽装結婚するのだと.

しかし, その裏で彼はとっくに彼女を妊娠させていた. 私が彼の「恩返し」という言葉を信じようと苦しんでいる間, 二人は密かにお腹の子の父親と母親になる喜びを分かち合っていたのだ.

「君は残酷だ. 病気の人の気持ちを少しも理解してくれないのか? 」

彼は私を一方的に責め, 彼女の元へ駆けつける. 私への愛情など, とうの昔に消え失せていた.

なぜ, 私たちの未来はこんなにもあっけなく壊されてしまったのだろう?

全てを失った私は, 彼との結婚式の日に海外へ旅立つことを決意した. これは, 私の新しい人生の始まり. そして, 彼への訣別の儀式なのだ.

第1章

塚田莉結 POV:

石田晴翔は, 私との結婚を「ただのパーティー」に格下げした. それは, 彼の会社の恩人の娘, 桐山友美子が末期がんで余命一年だという理由で, 彼が彼女と偽装結婚すると一方的に告げた日から, 私を襲った悪夢の始まりだった.

「莉結, 僕を信じてくれ. これは, 会社のためなんだ. 友美子さんの会社を守るため, 恩返しなんだ」

晴翔は, 私に何度も何度もそう説明した. その言葉は, 私の耳には届かなかった. 彼の理屈を繰り返すたびに, 私の心は少しずつ冷えていった.

「恩返し, 恩返しって... . 晴翔, そんな言葉で, 私たちが築き上げてきた全てが台無しになるのよ」

私の声は震えていた.

「わかっている. でも, これしか方法がないんだ. 友美子さんの最後の願いなんだ」

彼の言葉は, まるで録音されたテープのように, いつも同じだった.

私は最初, 彼の提案を断固として拒否した.

「そんな偽りの結婚, 認められない. 私たちの結婚式はどうなるの? 」

私は彼の目を見て, 必死に訴えた. だが, 彼の瞳に映るのは, 私への罪悪感と, 友美子への義務感だけだった.

数日後, 彼は態度を変え, 私に懇願するようになった.

「莉結, 頼む. この結婚は形式的なものだ. 君との結婚は, ちゃんと行う. ただ, 友美子さんとの入籍を先に済ませるだけだ」

彼の言葉は, 私を追い詰めた. 疲弊した私は, いつしか反論する気力も失っていた.

「君は残酷だ. 病気の友美子さんの気持ちを, 少しも理解してくれないのか? 」

友美子から直接そう言われた時, 私の全身の血液が凍り付くようだった.

一体, 誰が誰に残酷だと言うのだろう?

私の心の中では, 激しい反論が渦巻いた. 私が, 晴翔と築き上げてきた未来を, 病気を盾に奪おうとしているあなたの方が, よほど残酷ではないか, と.

だが, 私は何も言えなかった. 疲れ果てていたのだ. この先の人生で, こんなにも言い争うことになるなんて, 想像もしていなかった.

「... もう, いい」

私はそう呟くと, 力なくソファに沈み込んだ.

夜, 親友の笹原光子に電話をかけた.

「ねえ, 光子. 晴翔が, 私との結婚を『ただのパーティー』だなんて言い出したの」

私の声は, 震えどころか, ほとんど息のようなかすれ声だった.

光子はすぐに電話口で息を飲んだ. 一瞬の沈黙の後, 光子の怒りに満ちた声が響き渡った.

「は? 何それ? ふざけてんの? 晴翔くん, 頭おかしいんじゃないの? 」

光子の激しい反応は, 私の心の奥底にまだ残っていた僅かな希望を揺さぶった.

「彼は, 『会社の恩返しのためだ』って. 友美子さんが末期がんで, 彼女の会社を守る最後の願いだって言うの」

彼の言葉を繰り返すたびに, 私自身が彼を正当化しているように聞こえて, 胃の底が冷たくなった.

「恩返し? それが, あんたとの婚約を一方的に破棄して, 別の女と偽装結婚する理由になるわけ? 莉結, あんた, それで納得してるの? 」

光子の声は, 私を責めているのではなく, 私のために怒ってくれているのだとわかった.

「彼曰く, これは『偽装結婚』だから, 私たちには何の影響もないって」

私は晴翔の言葉をそのまま引用した. 彼の言葉の無害性を強調することで, 自分を守ろうとしていたのかもしれない.

「馬鹿にするのもいい加減にして! 偽装だろうが何だろうが, 結婚は結婚よ! あんたの気持ちを何だと思ってるの? ! 」

光子は感情的に叫んだ.

「莉結, 晴翔くんは本当にあんたを愛しているの? 愛しているなら, そんなことできるはずないじゃない! 」

光子の言葉は, 私の心を深く抉った. 彼の行動が, 私の長年の愛への裏切りだと, 誰よりも私が知っていた.

彼の「愛している」という言葉が, まるで偽りの鎖のように私を縛り付けていることに, この時, 私は気づいた.

晴翔はすでに, 彼の心の中で決定を下していた. 私の意見や感情は, 彼の計画の中では取るに足らないものだったのだ. 私は, 彼にとって, ただの付録だった.

その時, 晴翔の携帯が鳴り響いた. 彼は慌てて通話ボタンを押す.

「うん, すぐに行く. 大丈夫だ」

受話器から漏れる声は, 焦りと, 同時に深い安堵に満ちていた.

彼は私にろくに説明もせず, スマートフォンを片手に家を飛び出していった.

「友美子さんのところに行く」

彼の背中を見送りながら, 私は苦笑いを浮かべた.

彼の, あの切羽詰まった声. あの優しい表情. 私には, もう向けられることのない表情だった.

過去の記憶が走馬灯のように駆け巡った.

私と晴翔は幼馴染で, 成長するにつれて自然と惹かれ合った. 私は彼の隣にいることが, まるで空気のように当たり前だった.

ある日, 私が彼の仕事に協力しようと, 夜遅くまで資料をまとめていた時があった.

「莉結, 君は僕を信頼していないのか? 」

私が彼に渡した資料に, 何点か疑問点を挙げただけで, 彼は不機嫌な顔をした.

「君はいつもそうだ. 僕のやること全てに口を出す」

まるで私が彼を責めているかのような言い方だった.

私はただ, 彼のために最善を尽くしたいだけだったのに.

私はいつも, 彼の言葉を自分の中で言い聞かせていた.

「晴翔は, 本当に努力家だから. 完璧主義だから, 自分にも人にも厳しいんだ」

そうやって, 彼の冷たい態度や, 時に見せる不信感を, 私は自分の中で納得させていた.

きっと, 結婚すれば変わる. そう信じて疑わなかった.

だが, 現実は違った. 彼は何も変わっていなかった.

晴翔は, 私を置き去りにして, 急ぎ足で玄関を出て行った.

彼の足取りは, 友美子の元へ向かう喜びで弾んでいるように見えた.

取り残されたリビングには, 静寂だけが広がっていた.

この静けさが, 私の心に深く沈み込んでいく.

晴翔が, 友美子の元へ急いだ理由.

まさか, そんな, と頭を振ったが, 悪寒が走った.

胸騒ぎを覚えながら, 私はスマートフォンを手に取った.

光子からのメッセージ.

「莉結, 大変なことになってるよ. あんた, これ, 見てないの? 」

添付された写真を開く.

そこに写っていたのは, 友美子の膨らんだお腹. そして, 添えられた一通の紙.

それは, まぎれもなく妊娠診断書だった.

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