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あたたかいですね の小説カバー

あたたかいですね

現代の日本を舞台に、運命に導かれるようにして巡り会った男女が紡ぐ、切なくも温かな過去の恋の記憶。物語の始まりは、日常のなかに潜んでいたほんの些細な出来事でした。見知らぬ他人同士だった二人は、その偶然の出会いをきっかけに、少しずつ言葉を交わすようになります。最初は距離のあった二人の関係ですが、共に時間を過ごし、互いの内面に触れていくうちに、凍てついていた心は次第に解きほぐされていきました。いつしか二人の間には、他者には踏み込めない特別な絆と、穏やかで心地よい信頼関係が芽生え始めます。それは、どこにでもあるようでいて、二人にとってはかけがえのない、美しくも繊細な愛の軌跡でした。本作は、そんな二人が歩んだ日々と、心の奥底に刻まれた忘れられない恋愛模様を丁寧に描き出しています。ふとした瞬間に思い出す、あの時の体温や空気感。過ぎ去った時間の中で、彼らが何を感じ、どのようにして心を通わせていったのか。現代という時代を背景に、静かに、そして深く心に響く大人のための純愛ストーリーが、今ここにつづられます。
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「さて、今日も大学に行くかぁ……」

 ボクは憂鬱なのを隠さずに呟く。時期は冬、マフラーを巻いてトコトコと駐車場まで歩く。そして愛車の軽のドアを開けると鍵を差し込み回す。

 最近バッテリーが弱っているのか寒さのせいなのか少しエンジンに火が入るまで時間がかかる。来年の春に車検なのでその時に見てもらう事にして、今はなんとか走って貰う。

「寒っ」

 幸いフロントガラスは凍結していなかったものの車内は極寒。エンジンがかかって暖房を入れる。本当はあんまりバッテリーには優しくはないけれども寒さには代えがたい。

「行きがけにコンビニでも寄ってコーヒーでも買っていくか……」

 そして駐車場から出て大学へ。

 やはり通勤通学時間だからか道路にはそこそこの活気があり、歩道には学生の姿が多い。

 欠伸を噛み殺しながらコンビニに入り、車を止める。

「いらっしゃいませー」

 コンビニの店員さんがこちらをチラッと見てから挨拶してくる。

 ボクはペットボトルのお茶とパン、そしてレジ横でホットコーヒーを購入する。まぁこれがいつものルーチンワークだ。

「ありがとうございましたー」

 店員さんに見送られボクは車に戻りコーヒーを一口飲んでホルダーにセットする。パンとお茶はバッグの中に入れておく。

「さて、と。行くか」

 ボクは再び車を走らせて大学へ向かう。

 退屈な教授の講義を聞きながら、なんとなく空虚な感覚を胸に抱える。

 何故ボクはこんなにも虚しいのか、と。そして、それを埋めるにはどうすればいいのか、と。

 それを自分で把握できるのであれば苦労はない。わからないから空虚で、苦しいのだ。

 そんなボクはよく図書室に通う。好きなアーティストが言っていた言葉。

「学校の勉強がイマイチなら本を読みな」と。

 嘘をついて、自分に害を与えるヤツを見分ける事ができるようになる、との事。

 そして今日もボクは先週借りた本を返却しに図書室へと向かうのだった。

「あの、返却なのですけど」

「ああ、カードを読ませてくださいね」

 ここは学生証とレンタルしている本を紐付けしているので学生証を提示して本を返却すればそれで終わりである。

「はい、ありがとうございます。返却確認しました」

 係員さんの言葉を聞いてボクは図書室を後にしようとした。

「ん?」

 視界の端にこちらを見ている女子生徒が映る。そちらを向こうとすると彼女はすぐに目をそらして手元の本へと視線を向けるのであった。

 まぁ気にしていても仕方ないのでこちらも図書室を出る。そして帰宅するべく駐車場に向かう。

「なんか眠いな……。少し体もダルい」

 風邪でも引いてしまったかな、と考えながら車に乗り込み帰り道を走らせる。風邪だったら久々なので熱とかそこそこ出るかもしれない。

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