
雨が降っていますが、私と結婚しませんか?
章 3
「はぁ~、昨日は緊張した。」
私は今、バスの中にいる。
なぜバスの中にいるのかと言うと、学校に向かうためである。
「昨日は私、少し大胆過ぎたかなぁ……」
はあ~‼恥ずかしい‼やっぱり今思い出すと、恥ずかしすぎて、自殺しそう……
「……でも、裕太君もまんざらではなさそうな表情だったけど……」
そう、ちゃんと至近距離じゃないと分からないけど、顔立ちは結構整ってるし、
「何より、優しい所が、いいと思う……」
わぁ~‼何言ってるんだ私‼こんなんじゃだめだね。
「よし、そろそろバス停に着くし、気合い入れておかないと‼」
私は今、この路線の人が少ないことに感謝している。まずもって私以外いないんだけどねっ‼
「よしっ‼今日も一日頑張るぞっ‼」
お~‼
「終点、百日草《ジニア》高校前」
どうやら着いたようだ。
「運転手さんっ‼」
「どうしたんだい雪乃ちゃん?」
「今日も運転、頑張ってくださいねっ‼」
「若い子にそんな事言われると、頑張るしかないねぇ~。よしっ‼今日も頑張ります‼」
「じゃあ、行ってきます。」
「いってらっしゃ~い」
私は運転手さんから見送られ、バスを降りた。
バスを降りると、そこは、昨日、私と裕太君のキスしたバス停でした。
まあ、そうですよね。
だっていつも降りる場所はそこなのですから。
どうしましょう。
「昨日の事がフラッシュバックし、ちょっとドキドキする……」
ダメ、ダメ‼そんな事でドキドキしてたらダメよ。
「私は常に裕太君の理想の先輩でいなくちゃいけないんだから。」
でも、それってちょっとキツイかも知れない……。
私は歩きだした。あまり長居すると、遅刻してしまうからである。
私は、校門の方へ歩いて行った。
「あ、ゆっきーじゃん、おはよっ‼」
「ヒャッ‼出会い頭に胸揉むのやめてって言ってるじゃん、リン‼」
「ダ~メ‼これは私の毎朝の日課で三年間続けてるのっ‼だから~、ゆっきーの胸は、私だけのもの~‼」
「ひぅっ‼」
この現在進行形で私にセクハラしているのは、山沢夏鈴《やまさわかりん》。
ちなみに、彼女は、自分ではBだと言っているが、Aカップである。
「何で今日は、何時もより強いのっ‼」
私はリンを振り払った。
「だって~、ゆっきーから、男の臭いがしたんだもんっ‼」
「はい?」
「その辺の女の子には分からないかもだけど、私にはわかるのよ。昨日、男子の部屋、しかも年下の2年生の部屋に行ったでしょう?」
「え……、行ってない‼行ったかもしれないけど、行ってないっ‼」
「今行った事の自白いただきました。」
「もうっ‼やっぱり、リンとは絶交っ‼」
「ごめん、ごめん。」
「早くしないと遅れますよ山沢さん。」
「もうすでに他人行儀⁉本当にごめんなさい‼そんなつもりなかったんだよ~、許してぇ~」
「フフッ、ごめんね、リン。ちょっと意地悪したくなってね。」
「も~っ‼」
私たちは、そのまま仲良く登校した。
「あいつが……でさ~、ねえ、ゆっきー聞いてる?」
「えっ、あ、ごめん。それで何だっけ?」
「ちょっと今日おかしいよ。何かあったの。さっきの時間もずっと心ここに有らずだったし。」
「そう、なの?」
どうやら、3時限目が終わりまで、私は、何も微動だにしてなかったらしい。
「あ、そろそろ時間だ。何か相談したくなったら、私を頼ってね。親友なんだから。」
「……うん。ありがとね、リン。」
「そんなのいいって。あ、ちゃんと授業は受けてね。評定落ち着か茂だから。」
「うん、わかったじゃあ、またあとでね。」
それからの授業もなぜか、集中することができなかった。
「ただいま~、て誰もいないんだけどね。」
私は、誰もいない廊下を抜け、リビングに向かった。
「あ、お父さん。居たなら電気くらい……」
「なあ、雪乃。今回の再婚どう思う?」
「え……」
「素直な意見でいい。お前が嫌なら……」
「嫌じゃないよ。お父さんが決めた人なんだもん。絶対いい人だよ。」
この言葉は嘘。私は、あの人の事をよく知らない。正直言うと、どうでもいい。
「そうか。なら質問を変えよう。裕太君はどう思う?」
「え……、そ、それは、どどど、どういう意味なの?」
「やっぱりそうか。お前、完璧主義者のくせに、わかりやすもんな。そこは、お前の母さんに似ているな。」
「でも、私の頑固なところは、お父さんに似たんだよ。」
「そうだな。で、どうなんだ。裕太君。」
「うん……正直言うと、彼の事で、頭の中が一杯なの。」
「そうか。なら、これは再婚してしまうしかない。」
「どうして⁉」
「まだよくわからん義息子に、俺の大事な娘はやらん。」
「なら、私が裕太君を貰ってくるっ‼」
「それもダメだ。私が許さない。」
「やっぱりお父さんは、親バカね。」
「親バカで何が悪い‼」
お父さんは、胸を張って言った。
「フフッ」
「ハハッ」
私たちはいつの間にか笑い合っていた。
やはり親子なのだと言うことを実感した。
「いいよ、再婚して。私たちは別の方法で結婚するから。」
「そうしてくれ。」
「うんっ‼」
私は決意した。
お父さん達の再婚は、最高のものにしようという事を。
翌日。その日も雨だった。傘は持ってきていたため、バス停までは、濡れることなく、たどり着いた。
「今日も、早いですね。そんなにホームルーム短いんですか。」
「いや、3年生は、意外と暇だから、早く終わるの。」
と少し微笑みながら彼女は、答えた。
「ところで、私とやる気になった?それとも結婚?いや、先に、妊娠させてくれるの?」
「あんたほんとに何言っちゃてってるんですか。やる気にはなりませんし、妊娠させる気もありません。でも、先輩が、いいなら、結婚を前提に、付き合いたいと思っています。かなり本気でです。」
「え、本当にいいの?本当に私なんかでいいの?後悔しない?まさか、私で散々遊んだあげくに捨てるとか言わないよね。そういうのも、気持ちよさ……。」
この人まさか、超ドMなんじゃないのか?俺そんな人と付き合っていいのか?
「先輩ってもしかしてMですか?」
「な、何故分かってしまったの?」
「質問を質問で返さないでください。」
「わかったわ。私は、超が付くほどドMよ。で、何故分かったの?」
「先輩の発言を聞いていたら分かりますよ。今度ドM発言したら、知りませんから。あと、この間の返事、ちゃんと言いに来ました。」
「本当に!?ちょっと待って、深呼吸させて。」
と彼女は、深く息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
「じゃあ、言って、いいよ。」
「はい。それでは、……」
僕は、そうつぶやくと、少し頬を赤く染めている彼女の眼をまっすぐ見て、
「僕はこの世界でずっと一緒にいたいと思う人は、雨沢雪乃さん、あなただけです」
僕は、一言言った。
「そして、楽しい時は一緒に楽しみ、悲しい時はそばで支えて、泣いたり、笑ったり、時には喧嘩もするかもだけど、僕はずっと、あなたと一緒に居たいです。だから、僕と結婚を前提に付き合って貰えないでしょうか?」
「……いよ」
「えっ?」
「ずるい、そんな事言われたら、もう、断ったりできないじゃん……」
と彼女は言いながら。僕の頬に手を当ててきた。
僕は、そのまま、顔を上げた。
彼女の頬を、一筋の雫が流れ落ちた。
「返事、するね?
私も、世界で一緒にいたい人は、1人だけ、その人は、少し意地悪で、でも、とても優しい人。私はそんなあなたが、大好きです。だから、今、とても幸せです。不束者ですが、よろしくお願いします」
といった。そして僕は咄嗟に彼女を抱きしめた。
「ありがとう、ございます。先輩に気持ちが届いて、とても嬉しくて、嬉しくて、震えが止まらないです。本当に一生大事にします。こちらこそよろしくお願いします」
と、僕は、全力で抱きしめながら答えた。
「やっぱり抱きしめるのは、ズルだよ……」
「先輩の方こそ、涙は、卑怯です。」
僕らは、抱きしめあいながら、
「よろしくね、私の大好きな騎士《ナイト》さん。」
「こちらこそ。かなりMっ気の強いお姫様。」
僕らは、笑いながら、お互いに、言い合った。
「ところで、私そんなにMなのかな?」
と聞いてきた。
「相当ですよ。攻められるのが好みなんですか、先輩。やっぱり結婚やめようかな。」
「ひどい、結婚は、やめないで。攻められるのは、かなり好きかもしれないけど。あと、先輩っていうのもダメ。名字も。」
「じゃあ、何と呼べばいいんですか。」
というと、
「名前で呼んでよ、私の。」
と、さっきよりも頬を赤くして彼女は、言った。
「わかりました、雪乃。これからよろしく。」
「不束者ですが、こちらこそ、よろしくお願いします。」
僕らの物語は、やっと始まりを迎えることができた。
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