フォローする
共有
玉座についたヒーロー の小説カバー

玉座についたヒーロー

遺伝子研究の分野で比類なき才能を発揮し、若くして業界の頂点に君臨していたバイ・ロッキー。しかし、学会へ向かう途中の航空機事故が彼の運命を暗転させる。死の淵を越えた彼が目覚めたのは、未知なる異世界だった。第二の生を得たロッキーは、窮地に陥っていた一頭のドラゴンを救い出し、神龍帝国を舞台に過酷な修行の日々に身を投じていく。驚くべきことに、彼が絆を結んだドラゴンには、あらゆる病を癒やし、死者にさえ命を吹き込むという伝説的な力が秘められていた。かつての科学者は、この地で無力な人間であることをやめ、野心に満ちた武術の達人、そして精霊を操るスピリット・マニピュレーターとしての道を歩み始める。比類なき相棒となったドラゴンと共に、ロッキーは新たな世界の理を切り拓き、壮大な冒険の旅へと踏み出す。己の野望を胸に、かつての知識と新たな力を融合させた彼が、異世界の歴史にその名を刻んでいく物語がいま幕を開ける。彼らが辿る波乱に満ちた軌跡と、その先に待ち受ける真実をその目で見届けよ。
共有

2

ロッキーが叫んでいると、鏡の中の少年も口を開けたので、 彼は目を丸くした。 次はゆっくりと、手を顔に向けて上げると、 鏡の中の少年もその動きを正確にまねた。 額からあごまで細い顔にゆっくりと触わったが、 どの部分も自分のそれらとは違っていた。

ロッキーは唖然とした。 彼の顔ではなかったからだ。 目を凝らして鏡を見ても、 鏡に映っているのは見たこともない少年だった。 きっと自分の目がおかしくなったに違いない。

「司祭長、急いでください!」 彼がそう考えているとき、部屋の外ではやさしくも不安げな声が響き渡った。

「殿下、あなたのためでなければ、バジル王子の魂を体に呼び戻すドラゴン宗家のスピリチュアル・メソッドを使うために、私のドラゴン・スピリチュアル・パワーを無駄にすることなどなかったのですよ。 王子はすでに目覚められているのです。元気におなりになりますから、 そのようにご心配なさる必要はありません。 その上、バジル王子は王子とは言え、王室の血統ではないから、 何者でもないのです。陛下でさえ王子を無視されているのに、 どうしてそんなに王子のことをお気になさるのですか?」 ロッキーの耳にまた一人、知らない人の声が聞こえてきた。老人の大きな声だったが、その声からは明らかに傲慢さと苛立ちが感じられた。

「そんなことおっしゃらないでください。 バジルは生まれつき体が弱かったというそれだけの理由で、ドラゴン・スピリチュアル・パワーが備わらなかったのですから。 だからといって、今後もそのままというわけではありません。 さらに、彼の奥様が亡くなる前に彼女からバジルのことをよろしくと頼まれているので… 急いでください」と、優しい声の主は彼を急かしたが、その声には司祭長への怒りが見え隠れしていた。

「殿下、明日は我が聖ドラゴン帝国の神聖な儀式があるため、 今日の私はとても忙しいのです。 ドラゴン宗家の使節が30個のドラゴン・スピリット・ビーズをここに持ってくるのです。私は30人の候補者全員がそれらと結びつくかを確認しなければならないのです。 彼らは我が国における若き血統たちなので、 もし失敗するようなことがあれば、私の責任になってしまいます。 それに、陛下に許してもらうことがどれほど難しいかは、殿下もご存知でしょう。 さらに、国土が再び混乱しているのです。そのことをご承知おきいただきたく存じます..」 老人の声が答えた。

「私は気にしません! まずバジルのどこが悪いのかを突き止めてください」と優しい声の主が叫んだ。

ロッキーは彼らの奇妙な会話を聞いて異常なまでに混乱した。 そして彼がドアを見ると部屋に入ろうとする2つの人影があった。 そこにいたのはさっき彼の隣で目覚めた少女で、腰まで伸びるほど長いあごひげを生やした老人を伴っていた。 彼は頭に銀の冠をかぶり、派手な紫と金のローブを身にまとっていて、 その鋭い目から、位が高い長老のように見えた。 どうやら、彼が少女が言っていた司祭長らしい。

「バジル、どうしてベッドから出たの? 横になってないと」少女はそう言うと、ロッキーに近づき、そっと彼の腕をとった。

「大丈夫です。 僕は大丈夫です」 ロッキーは答えると、少女の後ろにいる司祭長に目を向けた。

「殿下、ご気分はいかがでしょうか?」 司祭長は少し頭を下げ尋ねた。 彼の言葉は習慣的に丁寧だったが、その表情はとても傲慢そうで、バジルを見下ろしているように見えた。

「気分はいいです」と全く気分が悪くなかったロッキーは何も考えずに答えた。 しかし、彼の前で起っている何もかもが違和感そのものだった。

「わかりました。 ほら、バジル王子は大丈夫だと申し上げたでしょう。 他に御用がなければ私は失礼して仕事に戻ります」と司祭長はバジルを見もぜずに形式的な口調で言った。

「でも、バジルは目覚めたとき私に奇妙なことを言ったんです。まるで私をまったく知らなかったように」と少女は大きく明るい目でバジルを見ながら司祭長に言った。

「恐らく、王子が回復したばかりだったからでしょう。 1日、2日休めば元気になられますよ。 正直申し上げて、バジル王子は十分幸運です。少なくとも今は生きてらっしゃるのですから」バジルをちらっと見ながら、司祭長は答えた。

「おそらくあなたの言う通りでしょう」 司祭長の推測が理にかなっていると思った彼女はロッキーの方を向いて、「バジル、ベッドに戻ってもう少し休んでいなさい」と命じた。

ロッキーにとって、彼らの奇妙な会話は衝撃的だった。 今起こっていることすべてが夢ではないとわかったからだった。それはもはや常人の想像の域を超えていた。 彼らは僕を何度か「バジル王子」と呼んでいたが、それは僕がロッキーではなくなっていることを意味していたのだろう。 そして唯一の解釈は、理由は分からないが、僕が死んだ後、魂がこの王子の体に入り込んだというものだった。 途方もない話だったが、これが解釈としては最もうなずけた。

さらに悪いことは、宮殿のような部屋、妻に関する話、または昔の服を着た司祭長などから、彼が今いる世界は彼が以前住んでいた世界とは違うということがわかったことだった。

「バジル、大丈夫?」 少女は、ロッキーがじっと立ち、茫然としているのを見て、心配そうに尋ねた。

ロッキーは落ち着こうと、こう考えた。 飛行機墜落事故さえも経験したんだ。他に奇妙なことが起こっても大したことはない。 自分は生まれ変わったのだろうか? 死ぬにはタイミングが良くなかったのかもしれないが、 これから別の人間として生きなければならなかった。 だが今、この少年については何も知らなかったので、うまくごまかすための口実を見つける必要があった。

「えー.. 実は、僕は大丈夫ではないのです」とロッキーは突然少女と司祭長に言った。

「どうしたの? また気分が悪くなった?」 少女は心配そうに彼の腕を取りながら尋ねた。

「僕は記憶を失いました。 あなたが誰なのか、彼が誰なのか思い出せません。 何も思い出せないのです。 僕は誰ですか?」 ロッキーはしどろもどろのふりをし、苦痛にゆがんだ顔を見せた。

少女と司祭長はロッキーの言葉を聞いて唖然とし、 衝撃のあまりお互いを見つめあった。

「バジル、あなたは何もかも忘れたというの? 冗談でしょう。私が誰なのかわからないの? そんなことがあってはならないわ。 私はレナ、レナ・ロンよ!」 少女はロッキーの手をつかんで心配そうに言い、 その目には涙が溢れた。

「僕は本当にあなたを知らないのです。 あなたのような魅力的な美女に出会ったら、忘れることなどあり得ません」とロッキーは冗談めかして言った。

「司祭長、何が起こっているのですか? バジルは本当に何もかも忘れてしまったんですよ!」 レナは感情的になり、すぐに司祭長に尋ねた。

司祭長はすぐには答えなかった。そしてバジルが元気であるかどうかはあまり気にしていないように見えた。 しばらく冷たく難色を示しながらもついに答えた。 「たぶん、王子の魂があまりにも長い間、体を離れていたことが精神に影響を与えたのでしょう。 十分休息すれば回復するかもしれません。 そして、秘薬をいくつか処方しますので、 秘薬を飲まれた後の様子を見てみましょう。 では殿下、私はこれで失礼します」 そう言うと、横柄な態度でバジルをちらっと見てから、彼はドアを出た。

おすすめの作品

ゴミと捨てられた80歳の祖母、実は世界最強のプリンセス。 の小説カバー
7.9
猛吹雪が吹き荒れる聖夜、私と祖母は血の繋がった叔父の手によって、まるで不要なゴミのように極寒の屋外へ放り出された。叔母からは忌まわしい疫病神と罵声を浴びせられ、叔父の容赦ない暴行に私はなすすべもなく雪原に倒れ込む。次第に体温を失っていく祖母の体を必死に抱きしめ、手のひらに爪が食い込むほどの絶望の中で死を覚悟したその時、突如として強烈な光が闇を貫いた。貧民街の路地を封鎖するように現れたのは、外交官ナンバーを掲げた高級車ロールスロイスの車列だった。周囲が騒然とする中、車から降り立った老執事は、四十年間も「盲目の老人」として静かに暮らしてきたはずの私の祖母のもとへ歩み寄る。そして、敬意を込めてその場に跪くと、信じがたい言葉を口にした。「高貴なる一族の第一公女殿下、お迎えに上がりました」。捨てられたはずの祖母の正体は、世界を揺るがすほどの影響力を持つ最強のプリンセスだったのだ。最底辺の淵から、運命の歯車が音を立てて逆転し始める。
記憶をなくした女将軍、運命の人を間違えました の小説カバー
8.8
崖下への転落事故によって記憶を失った女将軍の私は、目覚めた際、自らの地位と許嫁の存在のみを辛うじて覚えていた。やがて朝廷から迎えの使者が訪れた時、私は期待に胸を膨らませて再会を待ちわびる。しかし、副将が私の婚約者として指し示したのは、全く予期せぬ人物だった。その事実を到底受け入れられず、私は思わず「正気で彼を愛するはずがない」と強く否定してしまう。その言葉に皇太子は嘲笑を浮かべ、屈辱に顔を歪ませた若君は「後悔するな」と私に言い放つのだった。だが、実際に後悔の念に駆られたのは、私ではなく彼の方であった。かつての私は、彼一人を真っ直ぐに見つめ、その存在だけで心を満たしていたかもしれない。しかし、記憶を失い、一人の戦士として再生した今の私は、もはや過去の献身的な娘ではないのだ。運命の歯車が狂い始めた中で、かつての愛に縛られない新たな人生が幕を開ける。失われた記憶の断片と、すれ違う想いが交錯する、愛と運命の物語。
夫は姉を殺した女の味方でした の小説カバー
8.7
マフィアの闇取引という危険な現場に足を踏み入れてしまった姉は、一人の女の手によって無残に命を奪われた。しかし、最愛の家族を失った私に突きつけられたのは、あまりにも残酷な現実だった。私の夫はあろうことか、姉を殺害した犯人を擁護し、彼女の偽証を全面的に支援したのである。それどころか夫は、亡き姉が精神を病んでいたという虚偽の事実を捏造して辱め、私に対して犯人への謝罪声明に署名するよう冷酷に迫った。姉の唯一の形見を守り抜くため、私は煮え湯を飲まされるような屈辱に耐え、その書面にペンを走らせるしかなかった。愛していたはずの男に裏切られ、理不尽に姉を奪われた私の心は、激しい憎悪と復讐の炎に包まれる。もはや慈悲の心など残っていない。姉を死に追いやり、その尊厳を泥にまみれさせた彼らに対し、私は自らの手で報いを受けさせることを固く決意した。流した涙は冷徹な殺意へと変わり、彼らの血をもって姉の魂を弔うまで、私の戦いは終わらない。この命を賭して、必ずや地獄を見せてやる。
ゴミ夫に捨てられた3秒後、世界最強のシスコン・ロイヤルファミリーに拾われました。 の小説カバー
9.4
結婚から3年、安藤咲良を待っていたのは愛のない孤独な日々だった。夫の伊藤景丞からは家柄を蔑まれ、義母からは心ない言葉を浴びせられる。さらに愛人の妊娠を機に離婚を突きつけられた彼女は、未練を断ち切り家を出る決意をした。しかし、離婚した瞬間に彼女の運命は激変する。実は彼女、世界最強の王室の血を引く令嬢だったのだ。再会した国王夫妻からは王位継承権を託され、規格外な兄たちからも過保護なほどの寵愛を受ける。武器商人の長男は莫大な富を、天才外科医の次男は復讐の技術を、そしてアクションスターの三男は圧倒的な武力で彼女を守り抜く。立場が逆転し、咲良の真の価値を知った元夫が必死に復縁を迫るが、時すでに遅し。女王として君臨する彼女の傍らには、王室が認めた完璧な騎士が控えていた。冷遇された過去を捨て、最強の家族と共に最高の人生を切り拓く、華麗なる逆転劇が幕を開ける。
妻の激怒、王朝は灰燼と化す の小説カバー
9.1
最愛の息子の命日、鎮魂のために訪れた神聖な山荘で私が目にしたのは、身重の愛人を慈しむ夫の姿だった。裏切りに打ち震える私に、夫は冷酷にも彼らの結婚披露宴への招待状を突きつける。さらに、送られてきた音声データには信じがたい事実が記録されていた。彼は、息子の死という悲劇に見舞われた私を「穢れた存在」と蔑み、自分の血筋に「純粋な」跡継ぎを迎え入れるため、私に無断で不妊手術を施していたのだ。愛した男の目的は、私を犠牲にして新たな一族の王朝を築くことだった。あまりにも身勝手で残虐な仕打ちに、私の心に宿っていた愛情は激しい復讐の炎へと変わる。すべてを奪われ、踏みにじられた妻としての尊厳を取り戻すため、私は決意を固める。彼らが幸福の絶頂に酔いしれる結婚式の当日、私はその場に乗り込み、彼が築き上げようとしている野望のすべてを灰燼に帰すことを。愛と憎しみが交錯する中、絶望の淵から立ち上がった一人の女性による、命懸けの報復劇がいま幕を開ける。
前世の分まで、あなたを守る の小説カバー
9.6
前世、海に沈むという非業の死を遂げた綾瀬美羽。再び生を受けた彼女は、かつての悲劇を繰り返さないと固く誓う。今度の人生において、美羽はもう誰の顔色もうかがわない。自分を押し殺す我慢や遠慮は捨て去り、天賦の音楽の才能を武器に、立ちはだかる女配役たちを圧倒していく。彼女の前に渦巻く陰謀さえも、持ち前の知略と行動力で華麗に打ち砕いていく。冷徹なまでに強くなった彼女の心に唯一残り続けるのは、前世から変わることのない彼への深い情愛だけだった。「今度こそ、何があってもあなたを守り抜く」という彼女の決意に対し、彼は静かに「――いいよ」とだけ言葉を返す。すべてを知る一人の女性が、運命の濁流に抗いながら大切な存在を守るために突き進む、華麗なる逆転劇が幕を開ける。アクションとロマンスが交錯する、再起の物語。