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玉座についたヒーロー の小説カバー

玉座についたヒーロー

遺伝子研究の分野で比類なき才能を発揮し、若くして業界の頂点に君臨していたバイ・ロッキー。しかし、学会へ向かう途中の航空機事故が彼の運命を暗転させる。死の淵を越えた彼が目覚めたのは、未知なる異世界だった。第二の生を得たロッキーは、窮地に陥っていた一頭のドラゴンを救い出し、神龍帝国を舞台に過酷な修行の日々に身を投じていく。驚くべきことに、彼が絆を結んだドラゴンには、あらゆる病を癒やし、死者にさえ命を吹き込むという伝説的な力が秘められていた。かつての科学者は、この地で無力な人間であることをやめ、野心に満ちた武術の達人、そして精霊を操るスピリット・マニピュレーターとしての道を歩み始める。比類なき相棒となったドラゴンと共に、ロッキーは新たな世界の理を切り拓き、壮大な冒険の旅へと踏み出す。己の野望を胸に、かつての知識と新たな力を融合させた彼が、異世界の歴史にその名を刻んでいく物語がいま幕を開ける。彼らが辿る波乱に満ちた軌跡と、その先に待ち受ける真実をその目で見届けよ。
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ロッキーが叫んでいると、鏡の中の少年も口を開けたので、 彼は目を丸くした。 次はゆっくりと、手を顔に向けて上げると、 鏡の中の少年もその動きを正確にまねた。 額からあごまで細い顔にゆっくりと触わったが、 どの部分も自分のそれらとは違っていた。

ロッキーは唖然とした。 彼の顔ではなかったからだ。 目を凝らして鏡を見ても、 鏡に映っているのは見たこともない少年だった。 きっと自分の目がおかしくなったに違いない。

「司祭長、急いでください!」 彼がそう考えているとき、部屋の外ではやさしくも不安げな声が響き渡った。

「殿下、あなたのためでなければ、バジル王子の魂を体に呼び戻すドラゴン宗家のスピリチュアル・メソッドを使うために、私のドラゴン・スピリチュアル・パワーを無駄にすることなどなかったのですよ。 王子はすでに目覚められているのです。元気におなりになりますから、 そのようにご心配なさる必要はありません。 その上、バジル王子は王子とは言え、王室の血統ではないから、 何者でもないのです。陛下でさえ王子を無視されているのに、 どうしてそんなに王子のことをお気になさるのですか?」 ロッキーの耳にまた一人、知らない人の声が聞こえてきた。老人の大きな声だったが、その声からは明らかに傲慢さと苛立ちが感じられた。

「そんなことおっしゃらないでください。 バジルは生まれつき体が弱かったというそれだけの理由で、ドラゴン・スピリチュアル・パワーが備わらなかったのですから。 だからといって、今後もそのままというわけではありません。 さらに、彼の奥様が亡くなる前に彼女からバジルのことをよろしくと頼まれているので… 急いでください」と、優しい声の主は彼を急かしたが、その声には司祭長への怒りが見え隠れしていた。

「殿下、明日は我が聖ドラゴン帝国の神聖な儀式があるため、 今日の私はとても忙しいのです。 ドラゴン宗家の使節が30個のドラゴン・スピリット・ビーズをここに持ってくるのです。私は30人の候補者全員がそれらと結びつくかを確認しなければならないのです。 彼らは我が国における若き血統たちなので、 もし失敗するようなことがあれば、私の責任になってしまいます。 それに、陛下に許してもらうことがどれほど難しいかは、殿下もご存知でしょう。 さらに、国土が再び混乱しているのです。そのことをご承知おきいただきたく存じます..」 老人の声が答えた。

「私は気にしません! まずバジルのどこが悪いのかを突き止めてください」と優しい声の主が叫んだ。

ロッキーは彼らの奇妙な会話を聞いて異常なまでに混乱した。 そして彼がドアを見ると部屋に入ろうとする2つの人影があった。 そこにいたのはさっき彼の隣で目覚めた少女で、腰まで伸びるほど長いあごひげを生やした老人を伴っていた。 彼は頭に銀の冠をかぶり、派手な紫と金のローブを身にまとっていて、 その鋭い目から、位が高い長老のように見えた。 どうやら、彼が少女が言っていた司祭長らしい。

「バジル、どうしてベッドから出たの? 横になってないと」少女はそう言うと、ロッキーに近づき、そっと彼の腕をとった。

「大丈夫です。 僕は大丈夫です」 ロッキーは答えると、少女の後ろにいる司祭長に目を向けた。

「殿下、ご気分はいかがでしょうか?」 司祭長は少し頭を下げ尋ねた。 彼の言葉は習慣的に丁寧だったが、その表情はとても傲慢そうで、バジルを見下ろしているように見えた。

「気分はいいです」と全く気分が悪くなかったロッキーは何も考えずに答えた。 しかし、彼の前で起っている何もかもが違和感そのものだった。

「わかりました。 ほら、バジル王子は大丈夫だと申し上げたでしょう。 他に御用がなければ私は失礼して仕事に戻ります」と司祭長はバジルを見もぜずに形式的な口調で言った。

「でも、バジルは目覚めたとき私に奇妙なことを言ったんです。まるで私をまったく知らなかったように」と少女は大きく明るい目でバジルを見ながら司祭長に言った。

「恐らく、王子が回復したばかりだったからでしょう。 1日、2日休めば元気になられますよ。 正直申し上げて、バジル王子は十分幸運です。少なくとも今は生きてらっしゃるのですから」バジルをちらっと見ながら、司祭長は答えた。

「おそらくあなたの言う通りでしょう」 司祭長の推測が理にかなっていると思った彼女はロッキーの方を向いて、「バジル、ベッドに戻ってもう少し休んでいなさい」と命じた。

ロッキーにとって、彼らの奇妙な会話は衝撃的だった。 今起こっていることすべてが夢ではないとわかったからだった。それはもはや常人の想像の域を超えていた。 彼らは僕を何度か「バジル王子」と呼んでいたが、それは僕がロッキーではなくなっていることを意味していたのだろう。 そして唯一の解釈は、理由は分からないが、僕が死んだ後、魂がこの王子の体に入り込んだというものだった。 途方もない話だったが、これが解釈としては最もうなずけた。

さらに悪いことは、宮殿のような部屋、妻に関する話、または昔の服を着た司祭長などから、彼が今いる世界は彼が以前住んでいた世界とは違うということがわかったことだった。

「バジル、大丈夫?」 少女は、ロッキーがじっと立ち、茫然としているのを見て、心配そうに尋ねた。

ロッキーは落ち着こうと、こう考えた。 飛行機墜落事故さえも経験したんだ。他に奇妙なことが起こっても大したことはない。 自分は生まれ変わったのだろうか? 死ぬにはタイミングが良くなかったのかもしれないが、 これから別の人間として生きなければならなかった。 だが今、この少年については何も知らなかったので、うまくごまかすための口実を見つける必要があった。

「えー.. 実は、僕は大丈夫ではないのです」とロッキーは突然少女と司祭長に言った。

「どうしたの? また気分が悪くなった?」 少女は心配そうに彼の腕を取りながら尋ねた。

「僕は記憶を失いました。 あなたが誰なのか、彼が誰なのか思い出せません。 何も思い出せないのです。 僕は誰ですか?」 ロッキーはしどろもどろのふりをし、苦痛にゆがんだ顔を見せた。

少女と司祭長はロッキーの言葉を聞いて唖然とし、 衝撃のあまりお互いを見つめあった。

「バジル、あなたは何もかも忘れたというの? 冗談でしょう。私が誰なのかわからないの? そんなことがあってはならないわ。 私はレナ、レナ・ロンよ!」 少女はロッキーの手をつかんで心配そうに言い、 その目には涙が溢れた。

「僕は本当にあなたを知らないのです。 あなたのような魅力的な美女に出会ったら、忘れることなどあり得ません」とロッキーは冗談めかして言った。

「司祭長、何が起こっているのですか? バジルは本当に何もかも忘れてしまったんですよ!」 レナは感情的になり、すぐに司祭長に尋ねた。

司祭長はすぐには答えなかった。そしてバジルが元気であるかどうかはあまり気にしていないように見えた。 しばらく冷たく難色を示しながらもついに答えた。 「たぶん、王子の魂があまりにも長い間、体を離れていたことが精神に影響を与えたのでしょう。 十分休息すれば回復するかもしれません。 そして、秘薬をいくつか処方しますので、 秘薬を飲まれた後の様子を見てみましょう。 では殿下、私はこれで失礼します」 そう言うと、横柄な態度でバジルをちらっと見てから、彼はドアを出た。

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