
高温末世、私だけが生き延びる理由
章 3
義妹は、椀の中の黒ずんだ液体を睨みつけ、苦虫を噛み潰したような顔で言った。「こんな気味の悪いもの、飲めるわけないじゃない」
私は自分の太ももを強く抓った。時間が巻き戻ったなんて、にわかには信じがたかった。
椀の中の液体は、母がある村までわざわざ足を運び、大金をはたいて高名な祈祷師から授かったお札を燃やした水――符水だった。旧暦の七月七日、つまり今日この水を飲み干し、さらに祈祷師が調合した秘伝の丸薬を四十九日間飲み続ければ、必ずや双子の男の子を授かるのだという。
もちろん、私はそんな非科学的な迷信を信じたことなどなかった。だが、前の人生で経験した灼熱の天災が、もう目前に迫っていたのだ。それは、少なくとも三ヶ月は続く地獄だった。
未曾有の熱波は、地震や津波を誘発する可能性が高い。そして、大災害の後には決まって疫病が蔓延するものだ。
その期間、生活環境は劣悪を極める。物資も医療も枯渇し、屈強な大人でさえ生き延びるのは容易ではない。ましてや、身重の体や生まれたばかりの赤ん坊にとって、それは死を意味した。
だから私は義妹に助言したのだ。子供を授かるのは、この天災が過ぎ去ってからでも遅くはないはずだ、と。
義妹は私の言葉に従い、人知れず符水を捨てた。そして数日後、私の忠告通りあの水は飲まなかったと家族に告げたのだ。
私は家族から袋叩きにあった。だが、まさにその時、予言した通りの熱波が襲来したのだ。気温は日に日に上昇し、物価は暴騰、人々がばたばたと倒れていく。連日、テレビは市民に最大限の警戒を呼びかけ、そのおかげで家族からの追及も一旦は鳴りを潜めた。――そう、恵みの雨となるはずだった、あの人工降雨が降るまでは。
今度の人生では、もう誰の運命にも干渉しない。ただ、私が味わった屈辱と絶望のすべてを、そっくりそのまま彼らに返すだけだ。
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