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禁忌の森、共食いの山 の小説カバー

禁忌の森、共食いの山

平和な街を突如として襲ったのは、人々が互いの肉を切り裂き、貪り食うという正気とは思えない凄惨な光景だった。この異常事態の真相を解明するため、新聞社の調査チームは一冊の死者の日記を頼りに、伝説と恐怖が渦巻く長白山の深部へと足を踏み入れる。そこは、人間が決して立ち入ってはならない禁忌の地であった。日記に記されていたのは「彼らは、喰らうべきでないものを喰らい、見るべきでないものを見た。その報いを受けねばならない」という不吉な警告。一行が山の奥深くで目撃したのは、人知を超えた恐怖と、逃れられない因果の連鎖だった。なぜ人々は理性を失い、獣へと成り果てたのか。禁断の地で待ち受けるのは、血塗られた罪への断罪か、それともさらなる絶望か。極限の状況下で、彼らは隠された真実へと迫っていく。アドベンチャーとミステリーが交錯する、戦慄のホラー長編。山に潜む古き呪いと、食人に取り憑かれた者たちの末路が、読者を逃げ場のない恐怖へと引き摺り込む。
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2

事態がまったく進展を見せない中、例の作家の遺族が彼の日記を公開した。

故人の遺品を整理していた際、何の変哲もない一冊のノートを見つけたという。

遺族の話によれば、何気なく開いてみたとのことだ。

すると、そこには驚くべきことに、彼らが長白山探検に赴いた際の日記が記されていた。

これにより、一行が道中で遭遇した出来事の全貌が、ようやく人々の知るところとなったのである。

作家日記:

山に入って一日目。長白山の風景は、噂に違わぬ絶景だった。

都会の喧騒から離れ、心は自然と解き放たれていく。

我々一行は西側を迂回し、パトロールの目を盗んで南側から入山した。

同行している探検家の何言は博識で話がうまく、いつも絶妙なタイミングで解説をしてくれる。

道中、我々は何言と例の科学研究者の後をついて歩いた。

目的の場所がどこなのか、私には知らされていない。どこへ行こうと構わない。どうせ私は取材のために山へ来ただけなのだから。

皆は彼のことを老周と呼んでいた。

老周は口数が少なく、彼のそばにいる学生の小周もまた無口だった。

一頭の子鹿を見かけた。すぐそこの大木の陰から、じっとこちらを見つめている。

その瞳はどこまでも澄み切っていた。穢れを知らない、純粋な眼差しだった。

作家日記:

入山四日目。

山の寒さと静けさは恐ろしいほどだ。

もはや方向感覚は完全に麻痺し、見渡す限り白一色の世界が広がっている。

皆も入山当初の高揚感を失い始め、互いの会話も次第に減っていった。

ただひたすら、歩き続ける毎日。

何かがおかしい、と感じ始めた。

老周は何かを探しているようだ。

腑に落ちない。何かを探しているのであれば、なぜ正式に所属機関へ報告し、専門の調査チームを編成しないのだろう。どうしてこんな雑多なメンバーの集団と行動を共にしているのか。

それとも、彼が探しているのは、上層部に知られてはならないものなのだろうか。

だが他のメンバーを見ると、写真家は山の景色に夢中でシャッターを切り続けているし、記者も行き先など気にしていない様子だ。残りの数名は、すべてを承知しているように見える。

途端に、私だけがチームの中で異質な存在になったような気がした。

胸が激しくざわめく。

休憩中、こっそりと何言を脇に呼び、尋ねてみた。

しかし彼は目的地について一言も触れず、ただ謎めいた笑みを浮かべて「期待を裏切ることはないさ」とだけ言った。

彼らは一体、どこへ向かっているというのだ?

作家日記:

入山七日目。

この数日、我々は休みなく歩き続けた。

写真家が疲れたから休みたいとこぼすと、投資家が「チームの進行を遅らせるな、もう少しの辛抱だ」と彼を諭した。

彼は驚いたように「俺たちに進行計画なんてあったのか?」と返した。

あまりに鈍感すぎる。

我々は極めて深刻な問題に直面していた。食料が尽きかけているのだ。

計画段階では、これほど長く山に留まることになるとは想定していなかったのだろう。

探しているものは一向に見つからない。それでも、引き返す気はないらしい。

明らかに、当初の計画から逸脱している。

森の中では、鹿やノロジカといった生き物を時折見かけることがあった。

不思議なことに、食料が十分にあった頃は、ぽつりぽつりと遭遇できた。

だが、食料が乏しくなってからは、ぱったりと姿を見せなくなったのだ。

あるいは、我々はもう、動物たちが寄り付かないような場所まで来てしまったのかもしれない。

彼らはすべてを知っている。 危険を避けているのだ。

腹が、減った。

飢えた人間が、どうして道を進めるだろうか。

ついに私は耐えきれず、歩いている途中で目の前が真っ暗になり、意識を失った。

昏睡の中、生臭く熱い液体が口に流れ込み、柔らかい食べ物が与えられるのを感じた。

目を覚ますと、皆が焚き火を囲んで座っていた。

一人ひとりの表情は、満ち足りている。

彼らは私が目覚めたことに気づくと、皆にこやかに私の身を案じてくれた。とても友好的だ。

私はうわべで応じながらも、心の中では違和感を覚えていた。普段の彼らはこんなではない。特に老周と小周は。

私が倒れたからだろうか。

焚き火のそばに寄ると、異様な香りが鼻をついた。火にかけられた何かが焼ける匂いだ。

何かの肉のようだった。

これは、何だ?

そう問いかける前に、答えは目の前にあった。

銀白色の蛇の皮が、くしゃくしゃになって脇に置かれている。

「蛇の肉か?」

思わず声が出た。

「そうだよ。君が飢えで気を失ったから、仕方なく皆で食料を探しに行ったんだ。そしたら森の中でこいつに出くわしてね」

蔡円が興奮気味に言った。

「この蛇、とんでもなくでかくてさ。五メートルはあったし、胴体は椀くらい太かった。これも老周のおかげだな。あの人、学者先生に見えるけど、何言さんと一緒に蛇を捕まえるなんて、大したもんだよ」

彼は身振り手振りを交えて説明する。彼の執筆のネタがまた一つ増えたようだ。

「君が意識を失っている間に、蛇の血と肉を食べさせたんだ」

やはり何かがおかしい。だが、その正体が何なのかは分からない。

「蛇肉はたっぷりある。ちょうど食料が尽きたところだったからな。これで数日はもつだろう」

そうだ。食料がなくなった途端、まるで誰かが見計らったかのように食料を届けてくれたようなものだ。

私は蛇の皮の山をぼんやりと眺めていた。

その時、皮の山の中にあった蛇の頭が、動いたような気がした。

違う、あれは蛇の頭ではない。

あれは――ノロジカの頭?

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