フォローする
共有
10年愛の果て、私の決別 の小説カバー

10年愛の果て、私の決別

婚約者の藤尾真一に尽くし続けた10年間。心歌栄はキャリアも夢も、家族との縁さえも断ち切って彼を支えてきた。しかし、真一の傍らにはいつの間にか秘書の茅野花子が寄り添うようになり、心歌栄の誕生日は無視され、節目の10周年記念ディナーさえも放置されてしまう。高級レストランで独り、虚しく二時間を過ごした彼女は、ついに父へ電話をかけ「彼以外なら誰でもいい」と新たな縁談を懇願した。その直後、背後から真一が現れるが、彼はキッチンで声を上げた秘書を優先し、心歌栄を置き去りにして去っていく。その背中に絶望した彼女は、婚約指輪を突き返し、父が提示した大倉健一との結婚を決意した。「もう終わりよ」と別れの言葉を告げ、彼女は空港から新たな空へと飛び立つ。これは、献身の果てに裏切られた女性が、自らの人生と尊厳を取り戻すために過去を捨て去る決別の物語である。二度と彼の元へは戻らない。心歌栄の新しい歩みが、今ここから始まる。
共有

3

柏崎心歌栄 POV:

私は親密に寄り添う二人を無視し, 無言で玄関を出た. 私が手配した引っ越し業者が, ちょうどその時, 到着した. 彼らの迅速な作業は, 私の心にわずかな安堵をもたらした. 車に乗り込み, 友人宅へと向かう間, 私はスマートフォンを握りしめていた. 新しい生活への期待と, 長年の献身が裏切られた痛みがないまぜになって, 胸の奥で渦巻いていた.

友人宅に着き, 荷物を片付けた後, 私は恐る恐るスマートフォンをチェックした. 画面には, 何件もの通知が表示されていた. その中に, 真一のSNSの更新通知があった. 私は指が震えるのを感じながら, それを開いた.

そこに表示されていたのは, 真一と花子の親密なツーショットだった. 二人は寄り添い, 花子は真一の肩に頭を乗せて, どこか挑発的な笑顔を浮かべている. 写真の背景には, 旅行から持ち帰ったばかりであろう, 高級ブランドのショッピングバッグが山のように積まれていた.

コメント欄は, 二人の関係を推測し, 祝福するコメントで溢れかえっていた. 「お似合いの二人! 」「ついに公認カップル誕生? 」「幸せになってね! 」真一はそれらのコメントに「いいね」を押し, 花子は「ありがとうございます, 真一さんのおかげです」と, 控えめながらも得意げに返信していた. 花子のフォロワー数は瞬く間に増え, 彼女はまるでシンデレラのように, 一晩で脚光を浴びていた.

私はかつて, 真一の会社の広報担当として, 彼と親しい友人たちを集めたグループチャットを作っていた. 真一のビジネスパートナーや, 彼を応援するインフルエンサーたちだ. 彼らの献身的なサポートのおかげで, 真一の会社は急成長を遂げた. しかし, 花子が彼の秘書になってから, 真一は次第に私との連絡を疎かにし, グループチャットでのやり取りも減っていった. 私はいつしか, そのグループチャットから遠ざかっていた.

画面をスクロールすると, そのグループチャットがまだ生きていることに気づいた. そして, 花子からのメッセージが何件も届いていた. 彼女は, 真一と自分を重ね合わせるかのように, 彼のビジネスの成功を自分の手柄のように語っていた. そして, 私と真一の思い出の場所で, 真一が彼女のためにプレゼントを買ったことを誇らしげに報告していた. 「真一さんが私のために, 特別に選んでくださったんです! 」と.

全てが, 花子によって汚されていくような気がした. 真一が私のためだけに用意してくれたロマンチックなディナー, 彼が私のために書いてくれた温かい手紙, 彼が私を見つめる優しい瞳. その全てが, 花子の登場によって, 偽物のように思えてきた.

花子は, 真一の会社に勤める他の秘書たちを巻き込み, 些細なミスを連発していた. プレゼンテーションの資料を紛失したり, 重要な電話を繋ぎ忘れたり. しかし, 彼女はいつも泣きながら謝罪し, 真一は彼女を庇った. 「花子はまだ若いから」と彼は言った. 彼女のミスを指摘した従業員は, 真一によって次々と解雇された. 私は彼らを助け, 新しい仕事を見つけてあげた.

私は無意識のうちに, 左手の中指に触れた. そこには, 真一が私に贈ってくれた婚約指輪が光っていた. かつて, 彼はこの指輪を自らデザインし, 私の指に合わせて作ってくれたのだ. 「この指輪は, 永遠に君と僕を結びつける証だ」そう言って, 彼は私の指に指輪をはめてくれた.

だが, 今, その誓いはまるで錆びついた金属のように, もはや輝きを失っていた. 愛は, 形あるものと同じように, 時と共に摩耗し, やがて朽ち果てるのだ. 私は指輪をそっと外し, その表面を指でなぞった. 彼の温もりは, もうそこにはなかった.

私はすぐに宅配業者を呼び, 指輪を真一の元へ送り返す手配をした. 同時に, 父から送られてきた新しい縁談相手のリストを改めて開いた. 私の心は, かつてのようには揺れ動かなかった. ただ, 早くこの状況から抜け出したいという一心だった.

二週間後, 私は結婚する. 早すぎる, と思う人もいるかもしれない. しかし, 私にはもう, 待っている時間などなかった.

翌朝, 夜が明けきらないうちに, 真一が私の部屋のドアの前に立っていた. 彼の顔は憔悴し, 目には焦りと混乱が入り混じっていた.

「心歌栄, どうして指輪を送り返したんだ? 」彼の声は, まるで喉を絞り出すような苦しげなものだった.

私は冷たい視線で彼を見上げた.

「サイズが合わなかったからよ」私は感情を一切込めずに答えた.

真一はハッと息を呑んだ.

「すまない, 僕が悪かった. 君に何も言わずに送り返した僕が失礼だった」彼は頭を下げた.

「サイズが合わないなら, どうして早く言ってくれなかったんだ? 」

私は何も言わなかった. 真一が私に冷たくなったのは, いつからだろう? 彼の返信が遅れるようになり, 私の話を聞かなくなったのはいつからだろう? 私は彼の冷たい態度に慣れきってしまい, それが当たり前になっていた.

私は彼の目を見据えた. 彼はもう, 私だけを愛する男ではなかった.

「出て行ってちょうだい」私は静かに言った.

真一は私の言葉を聞いて, 唐突に私を抱きしめた. 彼の腕は私を捕らえるように強く, 私は身動きが取れなかった.

「結婚指輪は僕がデザインする. 君に一番似合うものを作るよ. ドレスも, 新しいものを見に行こう. 君の好きなブランドの新作が発表されたばかりだ」彼の声は, まるで壊れたレコードのように, 同じ言葉を繰り返していた.

彼の首筋に, 見慣れない赤い痕が見えた. そして, 甘い香水の匂い. それは花子の香水の匂いだった. 私は吐き気がした. 彼は私を抱きしめながら, 他の女の痕跡を身につけているのだ.

彼は本当に私を愛しているのだろうか? それとも, ただ私を失うのが惜しいだけなのだろうか?

私は真一を突き飛ばし, 嘲るように笑った.

「そうね. きっと素晴らしい結婚指輪とドレスになるでしょうね」私は冷たく言った.

真一は, 私の言葉の裏に隠された意味を理解しているのだろうか. 彼の顔は, 混乱と戸惑いを露わにしていた. 彼は私を, まだ自分の手の内にあるとでも思っているのだろうか?

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
全編を読むには、moboreaderで「95RQU」を検索してください。
コードをコピーし、Moboreaderアプリで検索して続きをお楽しみください。
95RQU
コピー
公式サイトを開く

おすすめの作品

婚約者の裏切り?問題なし、叔父が甘すぎます の小説カバー
9.7
名家の令嬢でありながら、20年もの間、田舎で疎外されて育った主人公。ようやく都会の実家へ呼び戻された彼女を待っていたのは、婚約者と養女による卑劣な裏切りだった。絶望の淵で自暴自棄になった彼女は、あろうことか婚約者の叔父である男と一夜を共にしてしまう。亡き許嫁への忠誠を誓い、3年間も禁欲を貫いてきたはずの男だったが、彼女との出会いがその理性を無残に崩壊させた。事後、冷徹に「体だけの関係」と言い放つ彼に対し、彼女は「満足度は最低、チップは200円ね」と痛烈に言い返し、不敵な笑みを浮かべる。奇妙な縁から契約結婚へと至った彼女は、かつての婚約者の「叔母」という立場で再会を果たし、裏切り者たちを戦慄させる。周囲からは教養のない出来損ないだと蔑まれていたが、彼女の真の正体は、資産1000億を誇る真の権力者だった。豪華な社交パーティーの場で、彼女は自分自身が比類なき「名家」そのものであることを証明し、華麗なる逆転劇を繰り広げる。圧倒的な財力と地位を武器に、彼女を侮っていた者たちを次々と屈服させていく、究極のスカッと系ラブストーリー。
誘われて溺れる──禁欲冷徹社長からの独占愛 の小説カバー
9.4
結婚3年目を迎えた如月璃奈と時任悠真の夫婦。平穏な日々は、璃奈の元恋人が現れたことで一変する。執拗に付きまとう男は「復縁する予定だ」という嘘を世間に流布し、璃奈は記者会見の場で窮地に立たされてしまう。非難の目が向けられたその時、会場に現れたのは冷徹な社長として知られる夫の悠真だった。彼は毅然とした態度で璃奈を抱き寄せ、結婚指輪を誇示しながら「彼女は私の妻だ」と宣言する。激昂する元恋人を前に、悠真は衆人環視の中で璃奈に深い口づけを落とし、彼女への独占欲を露わにした。璃奈はこの振る舞いを窮地を脱するための演技だと思い込もうとするが、高鳴る鼓動を抑えきれない。さらに親族から跡継ぎについて問い詰められた悠真は、璃奈の手を強く握り「すぐに作ります」と宣言し、彼女を翻弄していく。冷徹な仮面の裏に隠されていたのは、悠真が長年抱き続けてきたあまりにも熱烈な純愛だった。契約に近い関係だと思っていた夫の、甘く危険な本性を知った璃奈の運命は大きく動き出す。
「その胸を削るくらいなら俺が頂く」~狂犬ドクターの歪んだ全肯定~ の小説カバー
8.3
類まれな美貌と豊満な肢体のせいで、幼い頃から同性には疎まれ、異性からは卑猥な視線に晒されてきた主人公。信じていた幼馴染の男にさえ都合よく扱われ、彼女は彼に愛されたい一心で、自らの体を削る胸の縮小手術を決意し美容外科を訪れます。そこで出会ったのは、高潔で禁欲的と名高い医師でした。彼は彼女を歪んだ色眼鏡で見ることなく、「恋人の身勝手な美意識は手術の理由にならない」と断言し、彼女の存在を全肯定します。周囲の嘲笑や悪意から彼女を毅然と守り抜き、危機に陥った際もいち早く駆けつけて救い出した彼。その献身的な支えによって、彼女は他人の評価に怯える日々を卒業し、本来の輝きを取り戻していきます。一方、失って初めて彼女の価値に気づいた幼馴染は、後悔に震えながら復縁を乞いますが、時すでに遅し。政財界に絶大な影響力を持つ名門の御曹司でもある医師は、彼女を独占するように抱き寄せ、冷徹に告げました。「彼女はもう、私のものだ」と。これは、孤独な女性が真実の愛によって自己を解放する、波乱に満ちたロマンスです。
追放された令嬢、実は最強大富豪の娘でした の小説カバー
9.3
長谷川家の令嬢として二十年以上も何不自由なく育ってきた絵渡。しかし、血縁関係がないことが発覚した途端、真の令嬢による策略で家を追われ、世間の嘲笑の的となってしまう。行き場を失い、実の両親が待つ農村へ戻った彼女を待ち受けていたのは、予想だにしない真実だった。実は彼女の本当の父親は、国一番の大富豪だったのである。各界の頂点に君臨する天才的な兄たちに溺愛され、平穏な日々を送る絵渡だったが、彼女自身もまた、伝説のハッカーや舞踊界のカリスマといった、驚愕の裏の顔を隠し持っていた。再会したかつての家族や元恋人が彼女を見下し、貧乏人だと罵るなか、絵渡はその圧倒的な実力と財力で次々と報復を果たしていく。さらに、夜京を支配する強大な権力者が夫として現れ、彼女を全力で守り抜くことを誓う。偽りの令嬢という立場を捨てた絵渡が、真の富と才能を武器に、自分を貶めた者たちを震撼させる逆転劇が幕を開ける。華やかな社交界の裏側で、彼女の真の輝きがすべてを圧倒していく。
冷酷な夫を捨てた天才令嬢の華麗なる復讐 の小説カバー
7.9
夫の三十歳の誕生日、冷え切った夫婦関係を繋ぎ止めようと手作りのケーキで帰宅を待っていた。しかし、戻ってきた夫は私を蔑みの目で見下し、愛人からの電話一本で夜の街へと向かおうとする。必死に縋り付く私を彼は無慈悲に振り払い、大理石に頭を打ち付け血を流す姿さえ「三文芝居」と嘲笑って立ち去った。だが、その激痛と衝撃が、私の封印されていた記憶を呼び覚ます。私は虐げられるだけの無力な妻ではない。日本経済の頂点に君臨する西園寺財閥の正統な後継者であり、世界を震撼させる伝説のハッカーとしての真の姿を取り戻したのだ。臆病な自分はもういない。額の血を拭い、未練のかけらもなく離婚届を突きつけた私は、己を貶めた夫とその周囲の者たちすべてに、流した血に見合う絶望を与えるべく復讐を開始する。かつての天才令嬢による、華麗で冷徹な逆襲劇が幕を開ける。
喪服の純潔と、冷酷上司の重すぎる執着 の小説カバー
9.5
5年前、愛を信じて貧しい恋人と駆け落ちを約束した私は、当日に彼に裏切られ、無残にも捨てられた。街中の笑い者となった私に待ち受けていたのは、重病を患う相手との政略結婚という過酷な運命だった。それから5年が経過し、夫の死によって結婚生活は幕を閉じ、私は行き場を失って嫁ぎ先を追い出されてしまう。絶望の淵にいた私の前に現れたのは、かつて見下されていた過去を拭い去り、ビジネス界の寵児として凱旋したあの時の恋人だった。彼は私の新しい上司として君臨し、冷徹な態度で私を追い詰めていく。過去の傷から彼を避けようとする私に対し、男は執拗なまでに距離を詰め、逃げることを許さない。そんな中、私が別の男性とお見合いをしている場に彼が乱入する。激しい嫉妬に瞳を赤く染めた彼は、私を壁際に押し込み、震える声で問いかけた。「君はまた、俺を見捨てるつもりか?」冷酷な上司へと変貌したかつての恋人による、あまりに重すぎる執着と愛憎の物語が再び動き出す。