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余命宣告、彼との終焉 の小説カバー

余命宣告、彼との終焉

余命わずかと宣告されたその日、杏樹は最愛の恋人である玉置春斗の残酷な本性を知る。無名だった彼をトップスターへと押し上げるため、彼女は己の人生と才能のすべてを捧げてきた。しかし、春斗にとって彼女は愛する対象ではなく、単なる「便利な金づる」に過ぎなかったのだ。浮気相手の人気モデル・梅田凛香から送りつけられた動画には、仲間と共に杏樹を地味で退屈な女だと嘲笑う彼の姿が収められていた。献身的に尽くしてきた日々も、削り続けた命も、すべてが踏みにじられた瞬間、深い愛情は冷徹な殺意へと変貌を遂げる。残された時間はあとわずか。杏樹は病の治療を拒否し、自らの命を対価にした最後の計画を実行に移すことを決意する。ターゲットは、裏切り者の春斗と凛香。華やかな表舞台に立つ彼らからすべてを奪い去り、死してなお消えることのない絶望と後悔をその胸に刻み込む。悲劇の幕開けと共に、命を賭した壮絶な復讐劇が今、静かに始まる。
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3

(桜庭杏樹 POV)

私は春斗のためにここに来たわけではなかった. 簡単な打ち合わせを終え, 彼に一瞥もくれず, 私はその場を立ち去ろうとした.

エレベーターホールに向かおうとしたその時, 私の目の前に一人の女性が立ちはだかった. 梅田凛香だった.

「何よ, この泥棒猫! 」凛香は, 興奮した様子で私を指さした. 「私の役を奪うなんて! どういうつもりなの! ? 」

私は驚きよりも, むしろ感心した. 指示を出してから, まさかここまで早く動いてくれるとは. 監督の仕事の速さに, 私は少し口角を上げた.

凛香の叫び声は, フロア中に響き渡った. 周りのスタッフや他の俳優たちが, 何事かとこちらを振り返る. 好奇の目が, 私と凛香に集中した.

その視線の中に, 春斗の姿もあった. 彼は信じられないといった表情で, 私を見つめていた. 彼の目には, 「一体, 何をしたんだ? 」という疑問がはっきりと浮かんでいた.

面倒だった. いちいち説明するのも, 言い訳するのも. 私はまっすぐに凛香の目を見て, 淡々と言い放った. 「私がやったことよ. 何か? 」

「なぜよ! ? 」凛香はヒステリックに叫んだ. 「どうしてそんなことができるのよ! あんたなんかに, 何の恨みがあるって言うの! ? 」

「この役は, 私がどれだけ努力して, どれだけ必死になって手に入れたか, あんたにわかるわけないでしょ! 」彼女の声には, 絶望が滲んでいた.

私はちらりと秘書に目をやった. 秘書はすぐに意図を察し, 周囲のスタッフに目配せをした. あっという間に, 周りから人影が消えていく.

私たちは, 近くの空いている休憩室に移動した. 重い沈黙が, 三人を取り囲む. これから起こるであろう衝突を予感させる, 張り詰めた空気だった.

私はソファに座った凛香を見下ろした. 彼女の顔は, まだ怒りで紅潮していた. 「私を挑発した結果よ. 自業自得だと思わない? 」

春斗は, 呆然とした表情で私たちを見ていた. まるで, 何もかもが彼の知らないところで起こっているかのように. 彼は唇を震わせ, 何かを言いたそうにしていた.

「一体, 何なんだよ, あんじゅ... 」春斗は, ようやく絞り出した声で私に尋ねた. 「どういうことなんだ? 」

私は無言でスマートフォンを取り出し, 春斗に差し出した. 画面には, 凛香が送ってきた, 彼との親密な写真の数々が表示されていた.

写真を見た春斗の顔は, みるみるうちに青ざめていった. 彼は凛香を睨みつけ, 怒りに満ちた声で叫んだ. 「お前, 俺の彼女だって言ったのか! ? 」

彼の言葉が終わるや否や, 春斗の手が凛香の頬を強く叩いた. 乾いた音が, 静まり返った部屋に響き渡る. 凛香は, その場に倒れ込んだ.

春斗は凛香を一瞥もせず, 私に駆け寄ってきた. 彼は私の手を握り, 甘えるような声で囁いた. 「あんじゅ, ごめん. 俺, 何も知らなかったんだ. 」

「なあ, 頼むよ. このドラマ, 凛香が主演じゃないと困るんだ」彼は私を必死に説得しようとした. 「撮影スケジュールに影響が出る. 俺の仕事にも. 」

私は何も答えず, 彼の腕を振り払って部屋を出た. 彼の言葉は, もはや私の心には響かなかった.

自宅に戻ると, 秘書から報告が入った. 新しい主演女優は無事に見つかったらしい. しかし, 凛香はまだ現場を離れようとしないとのことだった.

撮影は続くが, 春斗と新しい主演女優の間には, どうにもぎくしゃくした空気が漂っていると聞いた. 彼はしきりに, 凛香を戻せないかと制作陣に交渉しているらしい.

その日の夜遅く, 春斗は憔悴しきった顔で帰宅した. 彼の顔には, 疲労と困惑の色が深く刻まれている.

彼は私の前にひざまずいた. 「あんじゅ, 頼むよ. 凛香を戻してくれ. この作品を成功させるためには, どうしても彼女が必要なんだ. 」

私は彼の目を見つめた. 「彼女のことが好きなの? 梅田凛香が. 」

彼は慌てて首を横に振った. 「違う! そんなわけないだろ! 俺が好きなのは, あんじゅだけだよ. 信じてくれ. 」

私は彼に二つの選択肢を提示した. 「一つ. 梅田凛香を現場から完全に追い出し, 私たちの関係を公表する. 二つ目. 今の新しい女優と最後までやり遂げる. どっちを選ぶ? 」

彼は再び, 目を逸らした. 「だから, 公表はできないって言ってるだろ! 今が一番大事な時期なんだ! どうして, あんじゅは俺の気持ちをわかってくれないんだ! ? 」

「俺は浮気なんかしてない! 信じてくれ! 」彼は感情的に叫んだ. 「なんで, あんじゅだけそんなに俺を疑うんだ! 」

「わかったよ! 凛香のことは, 俺がちゃんと処理する! 」彼は頭をかきむしるように言った. 「だから, あんじゅはもう, これ以上何もするな! 」

私は彼の腕を掴み, その体をソファに押し倒した. そして, 彼の顔を無理やり私の方に向けさせた. 彼の目には, 驚きと恐怖の色が浮かんでいた.

彼は屈辱に顔を赤くし, 怒りに満ちた目で私を睨みつけた. 彼の喉からは, うめき声のようなものが漏れていた.

「何するんだよ, あんじゅ! 」彼は, ようやく絞り出した声で怒鳴った. 「何なんだ, 一体! 」

私は彼の唇に, 自分の唇を押し付けた. それは愛のキスではなかった. 別れの, そして, 決別のキスだった.

唇を離すと, 私は冷たく言い放った. 「わかったわ. あなたの選択を受け入れる. 」

私は彼から体を離し, ソファに倒れ込んだ彼を見下ろした. 彼の目は, まだ混乱と怒りに満ちていた.

「私のたった一つの願いすら叶えられないなら, もう何もかも, どうでもいいわ. 」私の声は, ひどく冷たかった.

「あんじゅ... 何を言ってるんだ? 」彼は, まだ状況を理解できない顔で, 私に問いかけた.

私は何も答えなかった. ただ, 一歩ずつ, 重い足取りで階段を上がっていった. 彼の声が, 背後から聞こえるが, もう私には届かなかった.

私の心の中で燃え盛っていた, 彼への情熱の炎は, 完全に消え去っていた. 冷たい灰だけが, そこに残されていた.

私に残された時間は, もうわずかだ. そんな貴重な時間を, 彼のような男に費やしている場合ではない.

私は決意した. もう二度と, 彼のために私の命を無駄にすることはない. 私の音楽は, 私の才能は, もっとふさわしい誰かのために使う.

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