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嘘つきと呼ばれた末期の妻 の小説カバー

嘘つきと呼ばれた末期の妻

末期の膵臓がんに侵された作曲家の私は、これまで自分のキャリアも情熱も、すべてを夫の成功のために捧げて生きてきた。しかし、残されたわずかな命を家族に打ち明けた時、返ってきたのは同情ではなく冷酷な嘲笑だった。嫉妬に狂った従姉妹・佳織が用意した偽の診断書のせいで、私の病は「関心を引くための卑劣な嘘」だと決めつけられたのだ。最愛の娘からも「嘘つき」と罵倒され、絶望した私は一人、北海道の山小屋で孤独に死を迎える道を選ぶ。だが、家族の非道な追及は止まらない。佳織の策略で監禁犯の汚名を着せられ、夫には業界の宴席で「まだ利用価値があることを証明しろ」と無理やりピアノの前に立たされる。家族という絆は不協和音へと変わり、私の心は無惨に砕け散った。真実が誰にも届かぬまま、私は屈辱の中で息を引き取る。しかし、私の死は終わりではなかった。死後に遺された一通の手紙が、偽りに満ちた彼らの日常を根底から破壊し、本当の地獄へと突き落とすことになる。
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真理穂 POV:

私の心臓は, もう何も感じなかった. 勇太の言葉も, 美咲の非難も, 佳織の偽りの涙も, 全てが遠いノイズのように聞こえた.

「私が精神がおかしいと? 」

私の声は, 氷のように冷たかった. 自分でも驚くほど, 感情がこもっていなかった.

「そうね. あなたたちが正常ならば, 私が異常なのでしょう」

私はそれ以上, 何も言わなかった.

私はゆっくりと, 椅子から立ち上がった. 体は重かったが, もう心に痛みはなかった.

勇太の傍らを通り過ぎようとした時, 彼が私の腕を掴んだ.

「どこへ行くつもりだ!  こんなことをして, ただで済むと思っているのか! 」

彼の顔は, 怒りに燃えていた. だが, 私の心は, その炎に照らされることはなかった.

勇太は, 私のこの変貌に戸惑っているようだった.

彼は, 私が泣き叫び, 彼にすがりつくことを期待していたのだろう. いつものように, 彼の言葉に怯え, 震える私を.

「お姉ちゃん! 」

佳織の声が, 甲高く響いた.

彼女は, 勇太の手を振りほどいて, 私の背中を追いかけてきた.

彼女の顔には, 偽りの笑顔が浮かんでいた. それが, 一瞬にして, 冷たい脅しの表情へと変わるのを, 私は見逃さなかった.

「真理穂お姉ちゃん. そんなに簡単に逃げられると思わないで. この家のすべては, 勇太さんと私のものになるのよ」

彼女の声は, 耳元で囁くように小さかった. だが, その声には, 冷酷な勝利の響きが込められていた.

私はその声に, 何も答えなかった. 私の足は, 玄関へと向かっていた. 扉を開け, 私は外に出た. 冷たい風が私の顔を叩いたが, 何も感じなかった.

勇太の怒鳴り声が, 背後から聞こえた. 美咲の泣き声も, 義両親の非難する声も. だが, それらは壁の向こうの, 遠い世界のことのように思えた.

私はただ, 一歩ずつ, 藤原家から離れていった. 私の心は空っぽだった. 私の居場所は, もうここにはない.

数日後, 私はひっそりと, 北海道へ向かう準備をしていた.

最低限の荷物をまとめた. 私の心臓は, もう何も感じていなかった. 私の体は, 私のものではないかのようだった.

私が家を出てから, 勇太や美咲から連絡はなかった. 義両親からも, もちろん佳織からも.

それが, 私の求めていた「静けさ」なのかもしれない.

だが, その静けさは長くは続かなかった.

ある日, 勇太の音楽スタジオから連絡が入った. 佳織が, スタジオで転倒したというのだ.

私はすぐに, それが佳織の仕業だと分かった. 彼女は, 私を追い詰めるために, あらゆる手を使ってくるだろう.

電話越しの勇太の声は, 怒りに満ちていた.

「真理穂, お前, 佳織を突き飛ばしたのか! ? 」

彼の言葉は, 私の耳を劈いた. 私は何もしていない. それなのに, 彼は私を信じない.

「私は, 何もしていません」

私の声は, 小さく, か細かった. だが, 彼の耳には届かなかった.

「何を言うか!  佳織は, お前が嫉妬して突き飛ばしたと証言している!  お前のせいで, 彼女の体に傷がついたんだぞ! 」

勇太は, 一方的に私を罵倒した. 彼の言葉は, まるで熱い灰を私の顔に投げつけるようだった.

義両親も, 勇太の言葉に同意した.

「真理穂さん, 本当にやってしまったの?  そんなに佳織ちゃんが憎いの? 」

義母の声には, 悲しみと, そして深い軽蔑が混じっていた.

「自分の病気を偽って, 佳織ちゃんを陥れようとするなんて…あなたは本当に恐ろしい人だわ」

義父の言葉が, 私の胸を抉った.

美咲も, 勇太の横で, 私を睨みつけていた.

「お母さん, 意地悪!  佳織おばちゃんをいじめないで! 」

彼女の言葉は, 小さなナイフのように私の心臓を刺した. 私は, 自分の娘にまで, 敵と見なされているのだと知った.

私の居場所は, もうどこにもなかった. 家族は, 完全に佳織の味方だった. 私の言葉は, 誰にも届かない. 私の存在は, 彼らにとって, 忌まわしいものとなっていた.

私は, 完全に孤立した. 私の体は, 冷たい檻の中に閉じ込められたかのようだった. 私の心臓は, もう動くのをやめたかった.

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