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愛が灰燼と化すとき の小説カバー

愛が灰燼と化すとき

兄の親友であり、圧倒的な輝きを放つロックスター、桐谷蓮。十六歳の頃から彼に憧れ続けてきた沙英は、十八歳の時に彼が口にした「二十二歳になったら身を固める」という言葉を人生の指針にしてきた。しかし、運命だと信じていた二十二歳の誕生日、下北沢のバーで彼女を待っていたのは、無慈悲な裏切りだった。蓮は沙英の純真な想いを嘲笑い、彼女を諦めさせるために別の女性との狂言婚約や妊娠を仕組んでいたのだ。絶望の雨の中を逃げ出した後も、蓮の残酷な仕打ちは止まらない。事故の際に見捨てられた沙英は重傷を負い、さらには病院に現れた彼から「嫉妬に狂った女」と罵倒され、噴水に突き飛ばされて置き去りにされる。かつての愛は暴力と嘘によって踏みにじられ、献身はただの迷惑な執着として処理された。心身ともに深い傷を負った沙英は、彼に関連するすべての縁を断ち切ることを決意する。これは悲劇のヒロインとして終わるための逃避ではない。壊れた約束から自分を解放し、フィレンツェの地で新しい人生を刻むための、力強い再生の物語である。
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3

私は無理に笑った。「おめでとうございます。お二人の幸せを、心から願っています」

自分の声が、驚くほど落ち着いていることに気づいた。

蓮はほっとした顔をした。怜佳の笑顔は、ほんのわずかに引きつった。

そこへ、蓮のバンド仲間であるマコトとリョウが、ビールを片手に swaggering over してきた。

「よお、沙英!昔、俺たちのためにクッキー焼いてくれたの、覚えてるか?」マコトがからかうように言った。

「あとポスターもな!『MIDNIGHT HOWL、福岡を制覇!』とか書いてたよな」リョウが大げさな声で真似をした。

二人は下品に、大声で笑った。

「俺たちのナンバーワン追っかけだったもんな、沙英は?」

「健気な片想いだよな」マコトは怜佳にウィンクした。「うちの蓮も、やっと大人になったってことだ」

近くにいた業界人たちが、くすくす笑った。

顔が燃えるように熱くなった。完璧に、完膚なきまでに、屈辱的だった。

蓮はただそこに立っていた。かすかな、気まずそうな笑みを浮かべて。彼らを止める言葉は、一言もなかった。

彼は、どうでもよかったのだ。

その時、わかった。何年もの間、彼が私の存在を、私が彼とバンドの周りをうろつくことを許していたのは、健司がいたからだ。

健司は彼の親友で、バンド仲間。だから、その妹にも我慢していた。

今、彼には怜佳がいる。もう私に我慢する必要はない。

彼は私に消えてほしかった。この茶番劇は、それを確実にするためのものだった。

私は言い訳を呟いてその場を離れた。逃げ出したかった。

悲しみが胸に重くのしかかり、息が苦しかった。

街を見下ろす大きな窓のそばの、静かな隅を見つけた。

「大変な夜だったわね」

九条怜佳が隣にいた。シャンパンのグラスを二つ持っている。一つを私に差し出した。

私は首を振った。「いえ、結構です」

「聞いて」彼女の声は、先ほどより柔らかく、まるで共犯者のようだった。「蓮って、ちょっと馬鹿なところがあるの。あいつらも最低。気にすることないわ」

私はただ彼女を見つめた。

「本心ですよ、怜佳さん。お二人の幸せを願っています。私は、自分の人生を歩みますから」

彼女はシャンパンを一口飲み、私を品定めするような目で見た。

「本当に?ねえ、蓮って時々寝言を言うのよ。昔は、あなたの名前を呟いてた。何度も」

息が止まった。彼女は何を企んでいるの?

「罪悪感があったんだと思う。『二十二になるまで待ってろ』なんてくだらないこと言って、あなたを期待させたことにね」

彼女は肩をすくめた。「それとも、純粋で可愛いアート系の女の子に構われるのが、本当に好きだったのかもね」

彼女の笑みは、鋭く、すべてを知っているかのようだった。

私が何か答える前に、突然、頭上から大きなきしむ音がした。

二人で見上げた。

巨大なアートオブジェ、重い金属の彫刻が、天井から吊るされていた。

それが、揺れていた。

危険なほどに。

人々が悲鳴を上げ始めた。

どこからともなく現れた蓮が、本能的に怜佳を掴み、彫刻の直撃コースから乱暴に引き離した。

彼は、私の方を一瞥すらしなかった。

彫刻は、金属がねじれ、石膏が砕ける耳をつんざくような轟音と共に落下した。

私は真下ではなかったが、大きくギザギザの破片が一つ、空を舞って飛んできた。

足に激痛が走った。焼けるような、目のくらむような苦痛。

鎖骨のあたりにも、もう一撃。

そして、意識が遠のいた。

病院のベッドで目が覚めた。

消毒液と、恐怖の匂い。

健司がいた。顔は青ざめ、目は充血していた。

「沙英?ああ、神様、沙英、本当にごめん」彼は泣き出しそうだった。

「何があったの?」私の声は、かすれていた。

「彫刻が…落ちたんだ。お前が巻き込まれた。足の骨が折れてる、かなりひどく。それと、ここにも深い切り傷が」彼はそっと自分の鎖骨に触れた。

彼は激怒していた。「蓮のやつ…怜佳と突っ立ってただけだった。彼女を引き離した後、振り返りもしなかったんだ」

その言葉を、私は受け止めた。蓮は怜佳を救った。当然だ。彼女は彼の婚約者で、彼の未来。

私はただの…沙英。

その事実は、もう痛みさえ感じなかった。ただの、事実だった。

「大丈夫だよ、健司」私は囁いた。「彼は選んだ。それでいいの」

それが、すべてを決定づけた。ここを去るという、私の決意を。

健司は私を見た。彼の目には、私のものと同じ痛みが映っていたが、同時に、煮えたぎるような怒りも見て取れた。

「よくないよ、沙英。こんなの、何一つよくない」

でも私は、冷たい確信と共に知っていた。もう終わったのだと。私が蓮との間に何かあると思っていたものも、私が夢見ていた未来も、すべて消え去ったのだと。

そして不思議なことに、私は穏やかだった。

フィレンツェに行く。私は癒される。新しい人生を築く。

密かに、私は本当の計画を立て始めた。航空券と、片道切符の旅の計画を。

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