
絶対零度の暴君が狂信する、ただ一人のサキュバス
章 1
最高位の貴族サキュバスである私は、極度の潔癖症と偏食が原因で、なんと餓死してしまった。
次に目を開けると、私は不遇な本物の令嬢、シャー・ウェイに転生していた。
シャー家に引き取られたばかりだというのに、偽物の令嬢シャー・ニンの身代わりとして、都の社交界で「生き閻魔」と恐れられるフォ・ティンの「死のお見合いパーティー」に参加させられることになった。
噂によると、フォ・ティンは残忍で血に飢えており、彼と付き合った女性は死ぬか発狂するかのどちらかだという。
お見合いの会場では、百人もの令嬢たちが恐怖のあまりひざまずいて震え、自分が選ばれないようにと祈っていた。
フォ・ティンが冷笑を浮かべ、その不運な生贄を選び出そうとしたその時、人ごみの後ろにいた私は、ごくりと息をのんだ。
この男から放たれるのは、なんと一万年に一度と言われるほどの「極上の純陽の気」の香りだったのだ!
極度の偏食であるサキュバスの私にとって、これはまさに救いの神そのものだった!
私は前にいた令嬢を蹴散らし、目を輝かせながら両手を高く上げ、興奮して叫んだ。 「私よ!私を選んで!」
……
会場は水を打ったように静まり返った。
百人以上の令嬢たちは、まるで疫病神を避けるかのように、蜘蛛の子を散らすように下がっていった。
スポットライトの下にぽつんと取り残された私は、会場中の視線を一身に集めていた。
フォ・ティンは険しい眼差しで、手にした籤を宙に浮かせたまま、まるで死人でも見るかのように私を睨みつけた。
彼は冷たく鼻を鳴らすと、無造作にその串を投げ捨てた。
「そいつにしろ」
その言葉が響いた瞬間、宴会場には九死に一生を得たかのような安堵のため息が満ちた。
隅の方では、名ばかりの両親であるシャー夫妻が、心底ほっとした様子で椅子にへたり込み、額の冷や汗を必死に拭っている。
一方の私は、興奮のあまり飛び上がりそうだった。
フォ・ティンの体から放たれる「極上の純陽の気」は、まさに天からの恵み!私の救いの神なのだ!
黒服のボディーガードが二人近づいてくると、私の両腕を左右から乱暴に掴み、ストレッチリムジンの後部座席へと放り込んだ。
密閉された空間の中、フォ・ティンの体から発せられる濃厚な純陽の気が、私をすっぽりと包み込んだ。
間違いない、この人だ!
八百年も飢えていたのだ。 やっとご馳走にありつける!
その時、冷たい手が不意に私の顎を掴んだ。
フォ・ティンが顔を近づけてきた。 その端正な顔は、凶暴な気に満ちている。
彼の視線が、私が着ている明らかにサイズの合わない、洗いざらしで色褪せたワンピースをなめるように見遣ると、その目には隠しようもない嫌悪の色が浮かんでいた。
「金のめに、命も惜しくないのか?」
フォ・ティンに選ばれた者は、その一族が彼から絶大な金銭的・資源的援助を受けられることになっている。
この「暗黙のルール」こそが、各界の名士たちが娘を「死のお見合いパーティー」に送り込む唯一の理由なのだ。
私は痛みに小さく呻いたが、体の本能は完全に痛覚を凌駕していた。
私は目の前にある彼の薄い唇を食い入るように見つめ、ごくりと喉を鳴らすと、思わず口を開いていた。
「あなた、すごく美味しそうな匂いがする!」
空気が一瞬にして凍りついた。
フォ・ティンはまるで電気にでも触れたかのように、勢いよく私の顎から手を離した。
彼の耳は目に見える速さで赤く染まり、その赤みは首筋にまで広がっていく。
彼は歯ぎしりしながら、歯の隙間から言葉を絞り出した。
「この、恥知らずな狂女が!」
彼に振り払われた勢いで後頭部を車の窓に打ち付けた私は、一瞬呆然とした。
車はしばらく走り続け、やがてある邸宅の前に停まった。
邸宅では、使用人たちがすでに整列して待っていた。
彼女たちは私を見ていたが、その眼差しには同情と侮蔑が入り混じっていた。 まるで、ご主人様に飽きられて捨てられる寸前のガラクタでも見るかのように。
深夜、私はサキュバス特有の鋭い嗅覚を頼りに、音を立てずにフォ・ティンの寝室のドアの前まで忍び寄った。
ドアに鍵はかかっていなかった。
私は息を殺し、子猫のようにそっと部屋に滑り込んだ。
床まで届く大きな窓から差し込む月明かりが、ベッドで眠る男の輪郭をくっきりと浮かび上がらせていた。
眠っている時の彼は、あの凶暴な気をすっかり潜め、ただただ私の食欲をそそる純陽の気だけを漂わせている。
なんて美味しそうな香り……
ただ……ほんの一口、彼にキスをして、生き長らえるためのエネルギーを少しだけ吸い取るだけでいい。
私は身をかがめ、細心の注意を払いながら彼の顔に近づいた。
私の唇が彼のそれに触れようとした、まさにその瞬間。 固く閉じられていたはずの目が、何の前触れもなくカッと見開かれたのだ!
彼は私の喉を掴むと、ベッドに強く押し付けた。
暗闇の中、彼の瞳が恐ろしいほどの殺意を放っていた。
「死にたいのか?」
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