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奪われた子供と妻の決意 の小説カバー

奪われた子供と妻の決意

結婚三周年を祝う記念旅行の前夜、夫・京佑の態度は一変した。元恋人である和歌菜からの連絡を受けた彼は、「君には関係ない」と冷淡な言葉を私に投げつけ、そのまま家を飛び出してしまう。不信感が募る中、出張中と偽っていたはずのクリスマスの夜、私はSNSで衝撃的な光景を目にする。そこには、和歌菜とその子供と共に、まるで本当の家族のように睦まじく公園で過ごす京佑の姿があった。裏切りを問い詰める私に対し、彼は和歌菜が末期癌であると涙ながらに主張し、自身の行動を正当化しようとする。しかし、運命のいたずらか、公園で彼らと直接鉢合わせした私は、あまりのショックからその場に倒れ込み、お腹に宿っていた大切な新しい命を失ってしまう。愛した夫に裏切られ、最愛の我が子まで奪われた絶望。悲しみの淵に立たされた私は、静かに、そして強く心に誓った。これは単なる男女の愛憎劇ではない。私の未来を無残に踏みにじった彼らに対し、すべてを懸けた復讐を開始することを。失意の底で決意したのだ。
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田島琴莉 POV:

空港から, 私はそのまま最寄りの総合病院へと向かった. 旅行はキャンセルし, 今朝の体調不良で予約していた検査を受けるためだ.

受付に着いた時には, 予約時間はすでに過ぎていた. しかし, 院内は人でごった返しており, 長い列がいくつもできていた.

私は, 疲れた体を引きずるように, 適当な列の最後尾に並んだ.

待合室の椅子に座る夫婦やカップルが, 楽しそうに談笑しているのが目に入った. 彼らは互いの手を握り合ったり, 心配そうに相手の顔を覗き込んだりしている. 私は, その光景を眺めながら, 深くため息をついた.

私の隣には, 誰もいない.

しばらく立っていると, 足の裏がじんじんと痛くなってきた. 昨夜からの不眠と, 精神的な疲労が, 体を蝕んでいた. 胃のあたりがムカムカして, ひどい吐き気が込み上げてくる. トイレに行きたかったが, 列は一向に進む気配がない.

こんな場所で吐くわけにはいかない. 私は必死で吐き気をこらえた.

その時, 隣にいた男性が, 私に声をかけてきた.

「大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」

見上げると, 整った顔立ちの男性が, 心配そうに私を見ていた. どこかで会ったことがあるような気がした.

「もしよかったら, 僕が代わりに並んでいましょうか? 少し休んできた方がいいですよ」

彼の優しい言葉に, 私は思わず涙腺が緩みそうになった.

「ありがとうございます. 助かります」

私はすぐにトイレへと向かった. 吐き気は収まったものの, 体は鉛のように重かった.

受付に戻ると, 先ほどの男性はすでにいなかった. 彼の家族の診察が終わったのだろう.

代わりに, 彼の連れ合いの女性が, 私に小さな紙袋を差し出してきた.

「これ, よかったらどうぞ. さっきの男性が, あなたにって」

中には, 温かいお茶と, 小さなサンドイッチが入っていた. 私は, 感謝の気持ちを込めて, 深く頭を下げた.

「ありがとうございます. 本当に助かります」

「いえいえ. 妊婦さんは無理しちゃいけませんよ. 特に, つわりがひどい時は, 無理せず休むのが一番です. 温かい飲み物と, 少し何か口に入れると, 楽になりますよ」

彼女の言葉に, 私はハッとした. 妊婦. そうだ, 私は今, 京佑の子を宿している.

「あの…旦那さんは? 」

彼女は, 京佑が一緒にいないことを不思議そうに尋ねた.

私は, 曖昧な笑顔を浮かべた. どう説明すればいいのだろう.

「夫は…急な仕事で, どうしても外せない用事があるんです. 元々の知り合いが, とても大変な状況に陥ってしまって」

そう言うのが精一杯だった.

彼女は, 私の言葉を聞いて, 眉をひそめた.

「急な用事って, 奥さんがこんな時に…? 妊婦さんを一人で病院に行かせるなんて, ちょっと理解に苦しみますね. どんなに大切な知り合いでも, 奥さんより優先することなんて, ありますか? 」

彼女の言葉が, 私の心に深く突き刺さった. 私の口から出た言葉は, 彼にとってただの言い訳に過ぎなかった.

「その知り合いの方, よほど大変なんですね. でも, ご主人がそこまで心配するなんて…もしかして, その方とご主人は, 何か特別な関係なんですか? 」

彼女の真っ直ぐな問いかけに, 私の心臓が大きく跳ねた. 鋭い指摘に, 私は言葉を失った.

「あなた, まさか…」

彼女は, 何かを察したように, 私の顔をじっと見つめた. その時, 隣にいた男性が, 彼女の腕を軽く叩いた.

「もう行こう. 大丈夫? 検査, 終わった? 」

男性は, 私に軽く会釈をすると, 彼女の手を引いて立ち去った.

彼らの背中を見送りながら, 私の心には, 言いようのない後悔の念が押し寄せた.

京佑は, なぜ私をこんなに傷つけるのだろう. 彼が本当に大切にすべきものは何なのか. 私と, 私たちの赤ちゃんのことではないのか.

私の目からは, 大粒の涙が溢れ出した. こんなところで泣くなんて, みっともない. 私は, 必死で涙をこらえた.

京佑. あなたは, 一体何を考えているの?

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