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ムリゲーの世界をバグと乱数調整で切り抜ける の小説カバー

ムリゲーの世界をバグと乱数調整で切り抜ける

「初回プレイでの死亡率4000%」という驚愕の数値を叩き出し、ゲーム史上類を見ない理不尽さで知られる超高難易度RPG『ムーンリカバリー』。魔王側の視点からリアリティを追求しすぎた結果、最初の町に辿り着くまでのわずか数歩で、初期レベルでは到底太刀打ちできない強敵と遭遇し、確実に命を落とすという絶望的な仕様が組み込まれていた。開発者は親しみを込めて『ムンリバ』と呼んだが、あまりにも過酷な死の連鎖から、プレイヤーたちからはいつしか『ム・リ』という不名誉な略称で恐れられるようになった。そんな、クリアすることなど到底不可能と思われた「ムリゲー」の異世界に、吉弘鑑理(ナオ)と流川斉子(リュウセイ)の二人は突然放り込まれてしまう。普通に挑めば10万回死んでも終わらない絶望的な状況下で、彼らが生き残るために選んだのは正攻法ではなかった。本作は、ゲームの根幹を揺るがす裏技的なバグや乱数調整という名のチート級のテクニックを駆使し、理不尽な世界の法則を鮮やかに切り抜けていく二人の型破りな冒険譚である。
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3

「これで、よし。じゃあナオ君、行こう」

「え?」

地面を調べていたリュウセイは立ち上がると、俺の手を引いて南へ歩きだした。

おい。町は東だぞ。

「あ、あの7歩分のゾーンは敵の出現率が通常の3倍になっているから通ったらダメだよ」

え?

「ゲームの厳しさを表現するための特殊処置だったんだろうね。あそこだけ平野でしょ?『そんな見つかり易い場所を歩いていたら敵に見つかるのは当然』って感じで通常よりも敵に出会いやすくなってるんだって」

不自然なリアルさを演出してるんじゃねぇよ。

2歩南に歩くと森がある。

「ここで森に入るとモンスターの出現パターンが変わるから、乱数の下一桁が6を越えるように4回『しらべる』コマンドを使って0に変更。東に6マス歩くまで敵とは遭遇しないよ」

よくわからない理論を述べると南アフリカの紛争地帯より危険な森をスタスタと、自分家の庭でも歩くように進むリュウセイ。

「…お、おい」

あわてて後をついていく。

もしも敵に遭遇すれば死亡確定だが、一人で生き延びる自信もない。銃弾飛び交う戦場のど真ん中をハイキングでもするような気分で恐る恐る歩いて行くと

「はい、ここでストップ」

とリュウセイが立ち止まる。

「どうした?」

「えっとね、ここで再び乱数が6を越えるから『しらべる』を4回使えば5マス分移動したのと同じだけ乱数が動くんだよ。そうすれば敵とは遭遇しないから…うん。町まで4マス。大丈夫。これで入れるよ」

そう言うと再び歩き始める。

おい!待てよ。命がけの移動を鼻歌交じりに進むんじゃない!だいたい乱数ってなんだよ!

「何言ってるの。ムンリバプレイヤーなら、乱数調整は知ってて当然の常識だよ?」

そんな特殊技能を常識にするゲームってなんだよ。

「乱数ってのは、ランダムに配置された数字の列で、たとえば今歩いている時は211って数字のくじを引いたと考えればいいのかな?」

ほうほう。

「で、ここで一歩歩くと072ってくじを引いた事になるのね」

ほうほう…はい?

「次は…ええと023、次は044と規則性のない数字のくじを引くの」

どうやら、この数字の下一ケタが6を超えると敵が登場するらしい。

その乱数とやらを地面を『しらべる』ことで1つ進めるらしい。

いや、規則性がないとか言ってるけど、下一桁だけはしっかりと1増えてるよね?無茶苦茶規則性あるよね?

某ボードゲームみたいにサイコロの出目が最初から決まっているレベルで規則性しかないよね?

「うん。普通なら『random』とかの関数を入れてランダムにするんだけど、プログラムの人が敵と会うのが面倒だったから適当に乱数表を作って進めてたらそれがそのまま販売されたそうなの」

なんだその

   『ここに文章が入ります』

『ああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああ』

みたいなサンプル文章をゲームのパッケージ裏にそのまま印刷して全国販売してしまった事故事例は。

 見た感じランダムに見えるから、誰も気がつかなかったんだろう。

「ムンリバのプログラムを解析してた人が見つけたんだけど、隠しメッセージとして『こんなクソゲー売れるわけがないんだよ』とか『徹夜8日目。帰りたい』とか『やろう、ぶっ●してやる』とか書かれてたから、色々大変だったんだと思うよ」

とリュウセイが補足する。

そんな最悪な状態で造られたゲーム世界を攻略しなきゃいけないのか…俺達。

そう思いながら、平野にでる。

すると、遠くで漆黒の鎧をまとった騎士がものすごい速さで迫って来る。

あれに遭遇したら死ぬのだろう。

まあ、だいぶ距離が空いているから大丈夫だろうが。

そう思いながら街に歩いていくと、

「あれ?」

そこには街への入口はなく、冷たい石の壁が延びているだけだった。

ゲームだと街のマップに重なれば簡単に入れる街も、現実っぽい世界なら街をまもる壁や門があるらしい。

………………………………………………余所者は入れないってことじゃねぇか。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

侵入者を見つけたデビルナイトはものすごい速度で迫って来る。

安全なはずの街は門を閉ざし、余所者の侵入を堅く拒んでいる。

「ど、どうする?このままじゃ戦いになっちまうよ!」

遠くからでも見える巨大な剣に巨大な馬。

私服しか着てない俺たちじゃ戦いにすらならないかもしれない。

そんな俺にリュウセイは

「困ったねぇ。どうしようか?」

と、笠が無いのに雨が降って来たような口調で言った。

……命がかかってるかもしれないんだから、もう少し緊迫感を持ってくれよ。

あと5秒くらいで終わるかもしれない人生を振り返りながら、俺はこの のんき者にぼやいた。

これが最後の言葉になるなんていやだ。

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