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元カレが跪く時私は笑う の小説カバー

元カレが跪く時私は笑う

15年という長い年月を捧げ、恋人・篠原勇夫の事業を成功へと導いた私。しかし、待っていたのは残酷な裏切りだった。勇夫は大手クライアントの令嬢・高塚優と結託し、私のプロジェクトを彼女の手柄として奪い取った。かつて私がデザインした指輪も、贈った香水も、すべてが彼女のものへと成り代わったのだ。長年の献身を無下にされた絶望から、私は彼との子を中絶。さらに二人は、重度のナッツアレルギーを持つ私にナッツ入りのケーキを強要し、生死の境をさまよう事態へと追い込んだ。私が病院で苦しんでいる間も、勇夫は優のそばを離れず、私を邪魔者として切り捨てた。なぜ私の愛はこれほど無残に踏みにじられなければならなかったのか。病室で目覚めた私は、深い悲しみとともに復讐を誓う。親友の助けを借りて過去の未練をすべて断ち切り、私は別の男性との政略結婚という道を選択した。かつての恋人が後悔に震え、私の前に跪くその日まで、この歩みを止めることはない。
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松本莉泉 POV:

翌日, 私は事務所に出社し, 辞職届を提出した.

午前中は, 淡々と引き継ぎ作業をこなした.

私の手から, これまで心血を注いできたプロジェクトが離れていく.

だが, もう何の感情も湧き上がらない.

休憩時間, 給湯室でコーヒーを淹れていると, ふと近くのデスクから聞こえてくる会話が耳に入った.

それは, 同僚たちのチャットルームの通知音だった.

画面を覗き込むつもりはなかったが, 目に飛び込んできた文字に, 私は思わず息を飲んだ.

「篠原さんと高塚さん, やっぱりお似合いだよね」

「莉泉さん, 可哀想だけど, 高塚さんには敵わないよ」

「うんうん, なんか莉泉さんって, ずっと篠原さんのこと追いかけてた感じだったし」

「結局, 篠原さんにとって, 莉泉さんはただの便利な人だったってことだよね」

「高塚さんみたいなお金持ちのお嬢様と結婚できるなんて, 篠原さんも運がいいわ」

熱湯がカップから溢れ, 私の指に落ちた.

熱い.

だが, その痛みよりも, 心に広がる冷たさの方が, ずっと強かった.

私は勇夫と十五年もの間, 共に歩んできた.

無名の事務所を, 業界の注目株にまで押し上げた.

寝食を忘れ, 彼の夢のために尽くした.

だが, 周りの人間には, そんな私の努力も, 愛情も, 見えていなかった.

彼らは私を, ただ「篠原さんにすがりつく, 気の毒な女」としか見ていなかったのだ.

勇夫はいつも, 「俺たちの関係は, 仕事に影響が出ないように, 公にはしないでおこう」と言っていた.

私はそれを, 彼の優しさだと信じていた.

だが, 高塚優が現れてから, 彼は手のひらを返したように, 優との関係を公にした.

優がSNSに投稿する私たち二人の写真にも, 勇夫は笑顔で写っていた.

公での振る舞いは, 以前とは比べ物にならないほど堂々としていた.

ああ, そうか.

勇夫は, 一度たりとも私を愛してなどいなかったのだ.

私がどれだけ尽くしても, どれだけ努力しても, 彼の心は動かなかった.

私はただ, 彼の成功のための道具でしかなかった.

その事実に, 私は今更ながら気づいた.

私はスマートフォンを開いた.

優のSNSアカウント.

そこに投稿されているのは, まばゆいばかりのエンゲージリングの写真と, 勇夫と優が抱き合っている写真だった.

「勇夫さんからのサプライズプロポーズ! 最高の誕生日プレゼントだわ! 」

優の文章は, 幸せをこれでもかとばかりにアピールしていた.

私は, そのエンゲージリングのデザインに目を奪われた.

それは, 私が勇夫の誕生日プレゼントとして, 数ヶ月かけてデザインし, 制作した指輪だった.

限定版の香水と, この指輪.

勇夫は, 私からのプレゼントを, そのまま優に横流ししたのだ.

自分の才能が, こんな形で利用されるとは.

私は, ただただ呆然とした.

勇夫は, 優の投稿をリツイートし, 「最高のパートナーと巡り会えた」というコメントを添えていた.

その投稿には, すでに何百件もの「おめでとう」のコメントが寄せられている.

私は, 無感情な指で, その投稿に「いいね」を押した.

その瞬間のことだった.

私のスマートフォンが, けたたましく鳴り響いた.

勇夫からの電話だった.

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