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蹂躙されるのはあなた達よ〜覚醒した天才神医と最狂ドンの淫らな執着〜 の小説カバー

蹂躙されるのはあなた達よ〜覚醒した天才神医と最狂ドンの淫らな執着〜

天才外科医としての顔を隠し、愛のために家庭を守ってきた桜井知美。しかし夫の田中鴻太は、帰国した初恋の女性と彼女を比較し「メスも握れない専業主婦」と蔑んで離婚を突きつける。夫の家族からも、失踪した母を侮辱され続けた知美だったが、彼女の正体は国連軍最年少の執刀医であり、欧州マフィアの首領を父に持つ令嬢だった。離婚を決意し、本来の居場所へと戻る彼女。再会した父の傍らには、圧倒的な権力を誇る最狂のゴッドファーザー・鷹司丈嗣の姿があった。医学サミットの場で、かつて見下した元妻が伝説の神医であることを知り、田中は己の愚かさを痛感する。一方、鷹司は知美に対し、狂気的なまでの独占欲を剥き出しにする。「他の男を見るなら、そいつを消し去る」と囁き、壁際へ追い詰めては彼女の傷痕に口づける鷹司。知美は彼の常軌を逸した愛に戸惑うが、冷酷なはずの男は彼女の前でだけは跪き、壊れそうな声で愛を乞うのだった。地位と名誉を取り戻した知美の、逆転劇と激しい執着愛が幕を開ける。
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3

田中家の屋敷。

「お母様、清佳姉さんって本当に品があるし、しかも博士号まで持ってるんですよ。 それに比べて桜井知美は何なんですか。いつも陰気くさくて、見てるだけで食欲なくなるわ」

「ふん、あんな女、うちで飯でも作ってるのがお似合いよ」 田中夫人の鼻で笑うような声が響いた。「今日はあの貧乏くさい父親に会いに行ったんでしょう?」

神子がくすくすと笑った。「海外から帰ってきたんですって? どうせどこかの辺境で違法な仕事でもしてて、食い詰めたから娘を頼って戻ってきたんじゃない?」

鴻太は眉をひそめただけで、その言葉を咎めようとはしなかった。

そのとき、玄関のドアが開く。

入ってきた知美の姿を見た途端、田中夫人の顔には露骨な嫌悪が浮かんだ。

「あら、ちゃんと帰ってきたのね。 だったら早く夕飯の支度をしなさいな」

知美は何も言わない。ただ静かに靴を履き替えると、そのまま二階へ向かって歩き出した。

「ちょっと!お母様が話してるでしょ!聞こえないの?」

「何その態度? 貧乏親父に会ってきたくらいで、急に図に乗ったわけ?」

知美は足を止めた。目の前に立ちはだかる神子を、氷のような目でまっすぐ見据える。「どいて」

その一言に、神子は思わず半歩退いた。けれどすぐに我に返ると、むきになって声を張り上げる。「なによ、その目! ここは私の家なのよ!」

「お兄ちゃんに養ってもらってるくせに、食事くらい作って何が悪いのよ!」

「あなたの家?」知美はそう呟き、ゆっくりと視線を屋敷の中へ巡らせた。

――家を探していたあの頃。田中鴻太は、まだスラム街を抜け出して間もない頃だった。知美は彼から千円だけ受け取ると、そのまま桜井家の所有する邸宅のひとつへ彼らを住まわせた。

しかも彼の自尊心を傷つけまいとして、これは自分の親戚が所有している家で、しばらく借りられるだけだと、わざわざ嘘までついて。

知美の唇に、冷え切った笑みが浮かんだ。「田中鴻太。教えてあげたら? この家が、本当は誰のものなのか」

その一言に、鴻太の顔色がさっと変わった。「お前、何を言い出すんだ!」

「何を、って?」 知美は目の前の男を見つめた。五年も一緒にいたはずなのに、今はもう、見知らぬ他人を見るような気分だった。「何? 本当のことを言えないの?」

「黙れ!」鴻太は低く怒鳴り、あからさまな警告をその目に滲ませる。「お義父さんを迎えに行かなかった件は、たしかに俺が悪かった。お前が腹を立てるのもわかる。そこは謝る」

「だからって、これ以上騒ぐな。疲れてるなら部屋に戻って休め」

「私は疲れてない」知美はそう言って、ゆっくりとローテーブルの前まで歩み出した。「ただ、ちゃんと話を終わらせたいだけよ」

あまりに普段と違うその態度に、田中夫人は完全に逆上した。勢いよく立ち上がると、甲高い声を張り上げた。「何様のつもりよ、この小娘が!鴻太に向かってそんな口を――」

そして、その口から飛び出したのは、さらに下劣な言葉だった。「どうせあんたの母親だって、どこぞの男と駆け落ちでもしたんでしょ!」

知美の目つきが、一瞬で変わる。「……今、何て言ったの?」

「何か間違ってる?」田中夫人は両手を腰に当て、唾を飛ばしながら吐き捨てた。「失踪ですって? 笑わせないで。男と逃げたに決まってるじゃない。

あのふしだらな女!」

「今日だって遅くまで帰ってこなかったんでしょ? 母親そっくりに、どこかで男と会ってたんじゃないの!」

「黙れ!」

次の瞬間、知美がテーブルを叩きつけた。バンッ――と鈍い音が響き、上に置かれていたカップが跳ねる。室内の空気が、一瞬で凍りついた。

母を侮辱することだけは、絶対に許せない。

それは、知美にとって誰にも触れさせてはならない逆鱗だった。

踏みにじった者は、何があっても無事では済まない。

その剣幕に、田中夫人は一度こそ怯んだ。けれどすぐに我に返ると、今度は恥をかかされた怒りで顔を真っ赤にした。「あらまあ!見てちょうだい鴻太!これがあんたの嫁よ!」

鴻太も眉間に深い皺を刻み、知美を睨んだ。「何をそんなに怒鳴ってるんだ。母さんだぞ!」

「年だって取ってるし、体も弱いんだ。少し口が過ぎたくらいで、そこまで怒ることか?今すぐ母さんに謝れ!」

謝れ――?

母を売女呼ばわりして、「少し口が過ぎた」で済ますつもりか?

知美は、五年間愛してきたその顔を見つめたまま、胸の奥からじわじわと冷え切っていくのを感じていた。

――あの日、自分を命懸けで助けてくれたのは、本当にこの人だったのだろうか。そんな疑いさえ、胸をよぎった。

知美は一歩、静かに後ろへ下がった。二人の間に、はっきりと距離を作るように。

「もう一度だけ聞くわ」

「あなたも……母のことを、あの人たちが言うような女だと思ってるの?」 「それに、私が母を捜そうとしてきたことを……あなたは一度でも、本気で助けようと思ったことがあるの?」

鴻太は知美を見た。それから、怒りに顔を歪めた母と妹へ視線を移した。

この場で母に逆らえば、また面倒なことになる。それは彼にも、よくわかっていた。

――知美のことなら、どうせ自分からは離れられない。あとでなだめればいい。

そう思った鴻太は、知美の焼けつくような視線から目を逸らし、口を閉ざした。

また、沈黙。

田中家の人間が彼女を踏みにじるたび、彼はいつもこうして黙り込む。何も言わず、何も止めず、ただ見ているだけ。

知美は、ふっと笑った。

――ほら。答えなんて、ずっと前から出ていたじゃない。

この五年間、彼女が母を捜したいと口にするたび、鴻太は決まって話をはぐらかした。時には、もう無駄だと暗に諦めさせようとすらした。

つまり彼の中でも、母はとうに「ろくでもない女」として片づけられていたのだ。

「……そう、よく分かったわ」

そして次の瞬間、まっすぐ鴻太を見据えた。「田中鴻太。三年前、あなたの会社の資金繰りが完全に詰まったとき、最初の融資を引っ張ってきたのが誰だったか――忘れたの?」

「まさか、自分の運が良かっただけだとでも思ってた? あれは私が、昔の恩師に頭を下げてようやく繋いでもらった話だったのよ」

「それから、あんたの母の胃潰瘍も」知美の視線が、そのまま田中夫人へと向く。「医者に手術しかないと言われたとき、誰が毎日三時間しか寝ずに薬膳を煎じて、一口ずつ飲ませて、あそこまで回復させたと思ってるの?」

鴻太は顔色を変え、苦々しく口を開いた。「……今さら昔のことを持ち出して、何になる」

「今さら?」知美はかすかに嗤ったあと、今度は神子を見た。 「田中神子。あなた、自分がヨーロッパの上流階級のパーティーに出入りできるようになったのは、田中家にお金があるからだと思ってるの?」

「出席するたびに私があなたのドレスを選んで、誰が何を好んで、どんな話題を嫌うかまで全部教えてあげた。それがなかったら、あなたは今でもあの世界の入口にすら立てていなかったはずよ」

「私は……あなたたちのために、できることを全部してきた」一語一語、押し殺したように言い切った。「家族だと思っていたから」

「それなのに、あなたたちは?」

「もういい加減にしなさい!」ついに田中夫人が怒鳴り声を上げ、知美の目の前まで突進してきた。怒りに任せて振り上げた手が、そのまま頬を打とうと振り下ろされた。

「恩知らずめ!うちが拾ってやらなきゃ、あんたなんかとっくに野垂れ死にしてたくせに!」

「お前がいなかったら、私の胃だってとっくに治ってたわ!」

「この恩知らずが――ぶっ叩いてやる!」

鋭い風を切って、掌が迫る。

だがその瞬間、知美は身を翻してそれをかわした。すると夫人は、その勢いのまま知美が胸に抱えていたクラフト封筒をひったきた。「そんなガラクタ、寄こしなさい!」

ビリッ――封筒が破れ、中から一枚の家族写真が滑り落ちた。

床へ舞い落ちたそれを、夫人はろくに見もしないまま拾い上げ、その場で引き裂いた。

「縁起でもない!あんたの死んだ母親と同じで、不吉なものは田中家に持ち込むんじゃないよ!」

その瞬間。知美の表情から、最後の温度が消えた。彼女は田中夫人を押しのけ、床に散った写真を拾い上げた。震える指で破れた端を合わせながら、そのまま弾かれたように外へ飛び出した。

「知美――!」制止しようとする間もなく、知美は彼の手を振り払い、わずかな躊躇もなく玄関の向こうへと姿を消した。

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