フォローする
共有
~八歳の王女~不死鳥のごとく甦る の小説カバー

~八歳の王女~不死鳥のごとく甦る

前世で最も高貴な嫡流皇女として生きた彼女は、家族や夫の愛を一身に浴び、傲慢な性格を募らせていた。しかし、その幸福は全て「母」が仕組んだ罠だった。夫と姉の裏切りを知り、最愛の息子が夫の手で殺害される惨劇を目の当たりにした彼女は、毒杯を煽り、深い怨恨を抱いたまま命を落とす。だが、次に目覚めた時、彼女は八歳の幼き皇女へと転生を遂げていた。その愛らしい体には、前世の悲劇で磨かれた狡猾な野心が宿っている。鳳凰が炎の中で再生するように、彼女もまた美貌と権謀術数を武器に、自分を貶めた者たちへの千倍の復讐を誓う。二度目の人生では国を掌握し、裏切り者を完膚なきまでに叩き潰すと決意したのだ。そんな彼女の前に、圧倒的な武勲を誇り、並ぶ者なき美貌を持つ大国の親王が現れる。当初はこの世に自分と釣り合う女などいないと断じていた彼だったが、無邪気な仮面の下に冷徹な計略を秘めた幼い皇女に、いつしか翻弄されていく。最強の親王をも従わせる彼女の覇道が、今ここから幕を開ける。
共有

2

寧国の皇宮の庭園を歩いていた二人は、日差しの強い朝日を浴び汗だくになっていた。 その日はこの夏一番の暑さで、 二人は影が掛かった軒下で、一休みすることにした。

シンプルな黒のドレスを着た女官は心配そうな様子で話した。「王女さまはどうされてしまったのかしら? 起床してからずっと落ち着かない様子なんです。 ぼんやりとして鏡を見つめて座りっぱなしで、ほとんど話しもしないんですの。 それに毎晩悪夢にうなされていて… まだあの事故のことを怖がっているのかしら?」

宦官は注意深く当たりを見回し、前かがみになって女官の耳にささやいた。「リアンシン、私は王女さまは憑りつかれたんだと思うんだが。 この皇宮に来る前に、私の妹の息子があんな感じになったのを、 見たことがあるんだ。 川で溺れていた甥が 助け出された後、様子がおかしくなってな。 そして、人を送って道教の僧侶を招くと、 甥に何か邪悪なものが憑りついていると言われた。 僧侶が悪魔払いをしたら、 甥はすぐに回復したんだ。 お前、どう思う...? 道教の僧侶を招いたほうがいい?」

リアンシンは不可解な様子だった。「ほんとに? 皇后さまは王女さまに起った事で自分を責めて、 みずから皇帝さまに罰を求め、丸三日、褄梧宮から外出禁止になったのよ。 あなたの言うことが本当なら、悪魔払いはとても重要だわ。 皇后さまに報告して、許可を求めましょう」

宦官は頷いたが、 すこし間を置いて続けた。「皇后さまは王女さまの産みの親でないのに、 よく王女さまの面倒を見ているなんて。なんと情け深いお方だろう。 王女さまは腕白すぎるから、あんな怪我をしたんだよ。 なのに、皇后さまはご自分で責任を取られた。 とても素晴らしいお方だね」

宦官とリアンシンが話していると、誰かが近づいてくる気配を感じて振り返ると、 ピンク色のドレスを着た少女が裸足で庭を歩いているのを見た。

ユンシャン王女だった。

宦官は急いで挨拶をした。「王女さま」

ユンシャンは軽くうなずき、庭にいる他の宦官を軽く見てから、 宮殿に戻って行った。 彼女は二人の会話を全て聞いていたのだ。 素晴らしいですって? 彼女は口をすぼめて嘲笑しており、 その顔つきは、無邪気で可愛らしい顔には釣り合わない冷酷な微笑みだった。

ユンシャンは再び鏡の前に立ち、 鏡に映っている自分を観察しており、 八歳から九歳くらいのあどけない顔の少女が、見つめ返していた。

彼女は自分の手で、そっと右頬にふれた。 王女でもある姉、ホアジンにつけられた深い頬の傷の事を覚えているのだ。 皇后の実の娘であり、彼女はその美しさと魅力で名を知られていた。

ホアジンはとある将軍と結婚したが、 彼は戦争で亡くなってしまったので、 彼女を哀れんで、自分の邸宅に連れて来たのだが、 まさか、彼女が自分の夫と浮気するとは思ってもみなかったのだ。 ユンシャンは、大好きであった姉と夫に椅子に縛り付けられ、彼らの情事を見せつけられたことも覚えていた。

さらに、ユンシャンが生涯を掛けて愛し、信じた夫に、目の前で赤ん坊を投げ捨てられたのだ。

幼かった子供。 彼女のたった一人の最愛の子供... 罪のない子供のことを考えると、ユンシャンは心が張り裂けるような気持ちになった。

例え、姉と夫に残酷で不当に扱われていても、それ以上に、尊敬し、実の母のように思っていた皇后に裏切られたことを受け入れるのがとても辛かった。

ユンシャンは、辛い思い出に押し潰されてしまいそうなのを堪え、自分自身を取り戻すために目を閉じ、 これらの辛い思いは隠し通さなければいけない、と思っていた。

どんなに頑張っても、魂が肉体を去った、あの寒い雨の夜に誓った復讐のことを考えずにはいられなかった。 母親によって毒殺され、姉に傷つけられ、そして夫と女官に裏切られた。 それはユンシャンにとって耐えがたい以上のことだったが、 しかし、まさか自分が幼い頃の自分に生き返り、復讐を果たすことになるとは思ってもみなかった。 全てのことが非現実的で、まるで夢を見ているかのようで、 目を開けたその時から何もせず、この夢から覚める時を待っているだけだった。 しかし、時が経つにつれ今起こっていることは、子供の頃起こったことと全く同じであると彼女は気づき始めていた。

人生をやり直すチャンスを得たのだろうか?

ユンシャンは、子供の頃の自分が木から落ち、数日意識を失っていたことを、今でもはっきりと覚えている。 目が覚めた時、彼女は皇后は自分に罪を着せ、皇帝に適切な罰を与えるように頼んだと、耳にしたのだ。 皇后はユンシャンの産みの親では無かったが、彼女が望む以上に守ってくれていたので、 その事故の後、彼女はとても感謝し、皇后との絆を深めていき、 母親として受け入れ、言われたことは何でもした。

ユンシャンは前世で起った全ての出来事を思い出し、皇后は最初から全てのことを支配していたのだと気づいた。 彼女の実の母は皇帝とは幼馴染で、のちにジン妃(妃とは皇帝に仕える女性で皇后に次ぐ位にあるもの)の称号を得たのだが、 しかし、なせだか彼女は皇帝を怒らせ、冷宮(皇帝の寵愛を失ったり罪を犯した后妃が軟禁される場所)に追放されたので、 ユンシャンは被後見人として皇后に引き取られたのだ。

皇后はユンシャンを熱愛し、 ユンシャンを甘やかし、彼女が欲するものは全て与えた。 その結果、彼女は誇り高く傲慢になり、常に問題を起こしていたので、 皇帝でさえ我慢の限度に達し、成人式の直後に彼女が選んだ男性と結婚させたのだ。 彼女は愛する男性といつまでも幸せに暮らせると思っていたが、 義母は彼女が王女であるにも関わらず、彼女のこと嫌っていて、 いつも彼女の粗探しをしており、やむを得ず彼女は目立たないように振る舞うことにするしかなかった。

ユンシャンはまたあざ笑っていた。 たとえこのことが夢だったとしても、二度と同じ間違いを繰り返さず、 彼らの借りを少しずつ返してもらおうと心に誓ったのだ。

「ユンシャン、ユンシャン...」 外から澄んだ声が聞こえると、 召使いが他の誰かに挨拶をしているような気がした。「おはようございます。ホアジン王女」

あまりの驚きに、ユンシャンは思わず椅子から立ち上がったが、ドレッサーに足をぶつけてしまい、 その上に置いてあった小物が床に落ちた声に我に返って、自分が過剰反応してしまったことに気づいた。 今起こっていることを理解するのに数日かかったが、それでも彼女はホアジン王女を目にした時は落ち着いていることができなかった。

「愛しい妹…」 紫のドレスを着た少女が走りこんできて、ユンシャンの前で立ち止まり、 彼女の手を取って上から下まで見回し、心配そうに聞いた。「気分は良くなった? まだ完全に回復していないのに、 裸足でいてはいけないわ。 今日はかなり暑いけど、裸足でいるのはよくないわ」 そして彼女は後ろに立っている女官に指示を出した。「リアンシン、これがあなたの主人を世話するやり方なの? すぐに、妹に靴を持ってきなさい」

ユンシャンはホアジンが部屋に入って来た瞬間から彼女のことを観察していた。 彼女は小さな女の子だったが、ユンシャンが覚えている彼女のままで、 とても愛らしく、 この先、残酷な心を持つ女性になるとは思えないほどで、 人は見かけだけでは判断できないことに気付いていた。

リアンシンが靴を取りに行こうとしていると、ユンシャンはホアジンの手を振りほどき、寝室へ歩いて行き、 目を大きく見開いたまま、ベッドに寝転んだ。

寝室の外からかすかにホアジンの困惑した声が聞こえてきた。「どうしたの? ユンシャンはまだ気分が悪いの?」

そして、リアンシンがホアジンの問いに答えているのが聞こえてきた。「よくわかりません。 ユンシャン王女は目が覚めた時からこのような状態だったんです。 一人すっとそこに座っていて、ほとんど話もしないんです。 先ほどアンと話していたんですが、もしかしたら王女は憑依されているのかもしれません。 皇后さまにご報告して、悪魔払いをするためにいい道教の僧侶を探そうかと思っているんです」

ホアジンは同意する前、何かを考えていた。「すぐに母上と話をします...」

そして、また静かになった。 ホアジンが去って行ったようだ。 ユンシャンは目を閉じ、自分を取り戻してしっかりしようとしており、 復讐したいのなら落ち着いて、気をしっかりさせないと、と考えていたのだ。

ただ一つの問題は、ここにいる女官や宦官たちは皆、皇后によって集められた者ばかりで、 誰一人信用できる者がいなかったのだ。 ユンシャンは自分の側に付いてくれる人なしでは、切り抜けていけないことはわかっていた。

誰が彼女を助けてくれるだろう?

おすすめの作品

100年越しの月下美人 の小説カバー
8.2
古くから続く陰陽師の名門に生まれた御子柴聖は、幼少期から類いまれなる才覚を発揮し、一族の期待を一身に背負っていた。しかし七歳の頃、伝説の大妖怪・八岐大蛇が一家を襲撃。一族は無残に惨殺され、聖自身も右脚を失うという悲劇に見舞われる。さらに彼女の身には、持ち主の命を糧として吸い尽くす「月下美人の呪い」が刻まれてしまった。絶望の淵に立たされながらも、聖は生き延びるために過酷な運命と対峙し続ける。惨劇から十年の月日が流れ、十七歳へと成長した彼女は、自らの命を蝕む呪縛を解き放つため、そして一族の仇を討つために、再び立ち上がることを決意する。彼女の前に立ちはだかるのは、闇夜を跋扈する恐るべき百鬼夜行の軍勢。失われた右脚と呪いの痛みを抱えながら、聖は凄絶な戦いの中へと身を投じていく。死と隣り合わせの激闘を繰り広げる彼女を待ち受けているのは、果たして救済か、それともさらなる絶望か。命を削る月下美人が咲き誇る時、宿命の歯車が大きく動き出す。
12度目の決別 〜11回の流産を超えて、私は夫の愛を捨てました〜 の小説カバー
9.2
11回もの流産を経験しながらも、彼女は希望を捨てなかった。病床で無数の針に耐え、愛する夫との子を救うための「特効薬」を待ちわびていたのだ。しかし、8年間連れ添った夫がその薬を渡したのは、妊娠したばかりの愛犬だった。夫のあまりに冷酷な裏切りに直面し、彼女の心は完全に壊れる。頬を伝う涙を拭った彼女は、苦難の末に宿した命を自らの手で終わらせる悲壮な決断を下した。心変わりした男に未練はない。だが、己の献身を蹂躙した報いは必ず受けさせると誓う。彼女は長らく放置していた携帯電話を手に取り、絶縁していた唯一の連絡先へとダイヤルした。「私を娘と認めたいなら、一週間後に迎えに来て。あなたの後継者になるわ」と。かつての愛を捨て、復讐へと舵を切った彼女。その背中を見送った夫が、後に神仏に縋り、血を吐くような後悔の中で再会を乞い願うことになるとは、今はまだ知る由もない。裏切りから始まる、壮絶な愛憎劇が幕を開ける。
蹂躙された七年婚〜私を戦場に置き去りにした男〜 の小説カバー
9.6
結婚七周年を迎えたその日、平穏な日常は一瞬にして崩れ去った。大使館から届いたのは、滞在先のA国で武力衝突が始まるという緊急の退避勧告。パニックに陥る街で、私は夫からの「階下で待て」という指示を信じ、救急キットを手に必死の思いで駆け出した。しかし、約束の時間を過ぎても夫は現れない。戦火が迫る恐怖の中でようやく繋がった電話の向こうから聞こえてきたのは、あまりに無慈悲な言葉だった。「機密書類で車が一杯だ。それに、戦争を怖がるあの子を優先して避難させる」。愛するはずの夫は、私を戦場へ置き去りにすることを選んだのだ。大使館のバスに乗れと冷たく言い放つ彼の声に、七年間積み上げてきた愛情は粉々に砕け散った。絶望の淵に立たされた私は、もはや彼に縋ることをやめる。轟音と火の海に包まれる街で、私はただ一人、生き延びるために救急キットを背負い直した。裏切りという名の消えない傷を胸に刻み、赤く染まった戦地の中を、私は自らの足で歩き始める。
追っても無駄。私はもう、愛より自由が好きだから の小説カバー
8.3
結婚生活において「悪女」という不当なレッテルを貼られ、蔑まれてきた橘玲奈。しかし、離婚を機に彼女の隠された真の姿が次々と明かされていく。法廷で華麗に立ち回る弁護士、人命を救う凄腕の医師、さらには裏で世界を操作する伝説のハッカー。圧倒的な能力を持つ「最強の女性」へと覚醒した彼女の前に、かつて自分を冷遇していた元夫が、今さら未練を抱いて復縁を迫り、泣きついてくる。かつては支配されていた玲奈だが、今の彼女にとって彼はもはや眼中になく、その謝罪も愛の言葉もすべては手遅れだった。「あなたの元妻であることさえ、私にとっては不名誉」と言い放つ彼女は、自分を縛っていた過去を切り捨て、自らの力で手に入れた自由を謳歌する。本作は、過小評価されていた女性が知略と実力で自らの尊厳を取り戻し、身勝手な男を突き放して輝かしい新生活を切り拓いていく、爽快な逆転劇である。元夫の執着をよそに、彼女は愛よりも価値のある自由な人生へと歩みを進めていく。
獄中龍王の逆襲~最強の力を手にした俺、婚約者と黒幕に鉄槌を下す~ の小説カバー
8.9
四年前、最愛の婚約者を守ろうとした私は、卑劣な罠に嵌められ四年間もの獄中生活を余儀なくされた。絶望の淵に立たされたが、刑務所内で出会った伝説的な師匠に弟子入りし、過酷な修行の末に人智を超越した武術と神業のごとき医術を習得する。しかし、出所した私を待ち受けていたのは、あまりに非情な裏切りだった。かつての婚約者は、私を陥れた張本人である黒幕と手を組み、私を嘲笑っていたのだ。燃え上がる復讐心を胸に、私は手にした圧倒的な力を行使し、自分をどん底に突き落とした者たちへの鉄槌を下し始める。かつての恋人が後悔に震え、涙ながらに許しを請うが、私の心が変わることはない。そんな中、衝撃の事実が判明する。四年前、ある女社長が秘かに私の娘を出産し、育てていたのだ。最強の力を手に入れた男による、怒涛の逆襲劇と愛の物語が今、幕を開ける。失った時間を取り戻し、大切な存在を守り抜くための戦いが始まる。
偽りの英雄と置き去りの花 の小説カバー
8.1
盛大な祝賀会の夜、かつての夫は私の手を握り「君こそが僕の命だ」と甘く囁いた。すでに離婚した他人同士であるにもかかわらず、彼は大勢の列席者の前で、あの命懸けの救出劇に悔いはないと宣言する。「愛する妻が巻き込まれていたのだから」と。しかし、戦場という極限状態のなかで彼が救おうとしたのは、私ではなく自身の愛人だった。皮肉な真実を隠し、輝かしい未来を確信して胸を張る彼。だが、その瞬間に授与された軍功勲章に刻まれていたのは、彼の名ではなく私の名前だった。壇上から呆然と立ち尽くす元夫を見下ろし、私は無数のフラッシュを浴びながら冷徹に告げる。人質交換という死線において、妻を捨てて愛人の安否だけを優先した平和維持軍人。その身勝手な振る舞いは、神聖な軍職に対するこの上ない冒涜であると。愛に裏切られ、戦場に置き去りにされた女が、偽りの英雄の仮面を剥ぎ取る。私を捨てた代償は、彼が渇望した名誉と地位の完全なる崩壊だった。