
クズ夫に復讐!離婚後、世界一の大富豪と結婚!?
章 3
晟真は冷たい表情を浮かべたまましゃがみ込み、和花の顔を覗き込んだ。その声には、優しさが滲んでいた。
「和花、大丈夫か?」
傍らにいた珠乃は、明里を嫌悪の目で睨みながら、畳み掛けるように言った。「晟真お兄様、この使用人は本当にひどいのよ。藤原家の未来の女主人を突き飛ばすなんて」 「お姉様に嫉妬して、わざと突き飛ばしたのよ。本当に性格悪いわ!」
和花はか弱げに晟真を見上げ、いかにも無垢そうに言った。「晟真、曽根さんのことは責めないで。彼女……きっと、気分が優れないだけよ。同じ女として、分かるわ」
晟真は心を痛めながら言った。「和花、君は優しすぎるよ」
彼は和花の腰に手を回して抱き上げると、明里に冷たい視線を向けた。「明里、君には心底がっかりだ」 そう言い残すと、和花を抱いたまま、後ろも振り返らずに階段を上っていった。
明里は説明しようとしたが、晟真の冷酷さを思い出し、喉に湿った綿を詰められたようで、どうしても声が出なかった。
一方、珠乃は明里を憎悪に満ちた目で睨みつけていた。
「この泥棒猫!」
明里は珠乃の罵声を聞き、ただ呆然と立ち尽くした。
やがて我に返った明里は、珠乃に向かって皮肉めいた笑みを浮かべた。
「珠乃さん、お姉様に聞いてみたら?本当に家庭を壊した『泥棒猫』が誰かって」
彼女はスーツケースを引き、黙ったまま藤原邸を後にした。背後から珠乃がどれほど酷い言葉を浴びせても、二度と振り返ることはなかった。
夏の夜、激しい雨が降っていた。
明里はひとり、雨の中を歩いていた。涙と雨が頬を伝い混ざり合っても、それを拭おうとはしなかった。
どれほど歩いただろうか。気がつくと、明里は古びた団地の前に立っていた。
そこは、両親が裕福になる前に住んでいた場所だった。
回り回って、結局、彼女はまたこの場所に戻ってきたのだった。
眠れぬ夜を過ごした翌朝、明里の電話が鳴った。
親友の陸田月奈からだった。
「あああ!明里、早くニュースを見て!あのクズ男と泥棒猫、本当に恥知らずすぎる!」
明里の手が、無意識に震えた。
彼女はニュースを開いた。画面に大きく映し出されたタイトルが、目に飛び込んでくる。
「#藤原グループ社長・藤原晟真、デザイナー園宮和花にプロポーズ。夜空に咲く豪華絢爛な花火」
プロポーズ……。
まだ離婚届も出していないのに、晟真はそんなにも待ちきれなかったのだろうか。
明里は、プロポーズの報道画像を開いた。
だが、二人の愛の瞬間よりも、彼女の目に映ったのは――夜空に咲いた花火だった。
彼女の胸は、鈍く痛み続けていた。
あの眩い花火が、空にいくつもの美しい軌跡を描いている。
あれは、彼女が自分たちの結婚式のためにデザインした花火だったのだ……。
それなのに、晟真はその花火を、別の女に捧げた。
彼にとって、彼女はもう、どうでもいい存在だったのだ。
月奈は怒り心頭だった。「明里、藤原夫人はあなたのはずじゃない!来月、結婚式であなたのことを公表するって言ってたのに、どうして急に園宮和花に変わってるのよ!?」
「存在を公表する」という言葉を聞き、明里は涙を堪えきれずに流し、その声も震えていた。
「月奈、私、晟真と離婚することにした」
月奈は完全にブチギレた。「離婚!?晟真が、園宮和花とかいう泥棒猫のために、あなたに離婚を迫ったのね!あいつら、兄妹って呼び合ってたけど、とっくに寝てたに決まってるわ!」
明里は唇を噛みしめて答えた。「……わからない」
彼女は本当に分からなかったな。晟真と和花が、どこまで関係が進んでいたのか……。
「もう知りたくもないの。月奈、晟真と離婚したら、私は本当の『曽根明里』になるわ。明里の夢は、つまらない日常や、男に縋ることじゃなくて――」
「ねえ明里、海浜市最大の花火デザインコンテストが始まるわ!出よう?私、エントリーしてあげるから!」 「あなたみたいな天才デザイナーが、晟真のところで家政婦みたいなことやってるなんて、才能の無駄遣いよ!離婚するんだから、夢を追いかけるべきよ!」
月奈は必死に説得を続けた。大切な親友が、たった一人の男のせいで夢を諦めるなんて、見たくなかった。
「わかった」明里は迷いなく、そう返事をした。
今度は、月奈が驚く番だった。
「明里……今、OKしてくれたの?本当!?」
「うん」明里は静かに頷いた。
月奈は力強く頷いた。「やったわ、明里!あなたが最高の花火デザイナーになったら、藤原晟真っていうクズ男、後悔させてやろう!」
二人は朝から夕方まで話し込んだ。そのほとんどは、月奈が一方的に晟真を「クズ男」だと罵る内容だった。
「あのクズ男、いつか必ず天罰が下るわ……」
夜が明ける頃、明里はやはり我慢できず、再びニュースのページを開いてしまった。
ニュースの下に並ぶコメントの言葉が、彼女の心に突き刺さる。
「藤原社長と園宮和花、美男美女でまさにお似合い」
「藤原晟真、 イケメンでお金持ちでロマンチストとか、もう前世で銀河系を救ったレベル」
「園宮和花が羨ましすぎる……こんなに愛されて」
……
明里の涙が、スマートフォンの画面に落ちた。
その時、明里のスマホに1通のメッセージが届いた。送り主は――藤原晟真。
「明里、もう騒ぐな。明日、市役所に離婚届を出しに行くぞ。手切れ金として100億やる」
明里は、スマホの画面についた涙を拭い、一言だけ文字を打ち込んだ。
「わかった」
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