フォローする
共有
人違いから始まった、冷徹社長の身も心も溶かすような束縛愛。 の小説カバー

人違いから始まった、冷徹社長の身も心も溶かすような束縛愛。

恋人に浮気をされた挙句、「顔が良いだけだ」と心ない言葉を投げつけられた陸田由梨。その屈辱を晴らすため、彼女は自身の美貌を武器に、自社の社長である佐伯征之と衝動的に一夜を共にしてしまう。しかし、事の重大さに気づいた由梨は、その場から逃げ出すという失態を演じた。さらに、夜の相手を社内でも有名な遊び人の三浦正俊だと思い込むという致命的な勘違いまでしてしまう。この人違いが原因で、二人の関係は複雑に絡み合い、予期せぬすれ違いが次々と巻き起こっていく。一方、由梨の思い人が自分ではなく別の男であると誤解した佐伯は、冷静沈着な仮面の裏で、激しい嫉妬の炎を燃やし始めていた。プライドを傷つけられた女性と、独占欲を募らせる冷徹な社長。人違いから始まった歪な関係は、次第に逃げ場のないほどの深く甘い束縛愛へと変貌を遂げていく。由梨の勘違いが解けるとき、冷徹な社長が隠し持っていた真実の熱情が彼女の身も心も溶かし尽くす。
共有

3

空はあっという間に暗くなった。

LINEの「三浦正俊」からは、忘れ物を取りに来いという連絡も、由梨が送ったメッセージへの返信も一切ない。

由梨はスマートフォンの画面を穴が開くほど見つめながら、胸の奥で煮えたぎる苛立ちを必死に押さえ込んでいた。

夜は暗いし、人もいない。これ幸いとまた美味しい思いをするつもりなんじゃ……。

昨夜あれだけ好き勝手されたというのに、まだ満足していないというのか。

今すぐすべてを放り出し、踵を返して帰ってしまいたい。

だが――。

盛景グループの採用基準は厳しい。自分はまだインターンの身だ。ここで上司の機嫌を損ねれば、契約を切られるのは目に見えている。

由梨はじっと耐えながら待ち続け、その間、頭の中では思いつく限りの刑法の条文を何度も反復していた。

そして最後には、自分自身に言い聞かせるようにして気持ちを落ち着かせる。

結局のところ、正俊は直属の上司だ。自分が将来正社員になれるかどうかも、彼の評価次第と言っていい。

それに昨夜は、酔った勢いで自分から誘ってしまったようなものだ。仮に警察へ訴えたところで、事件として扱われる可能性は低いだろう。

由梨は運が悪かったのだと半ば諦め、夜九時を過ぎても待ち続けた。やがて、革靴が床を打つ足音が近づいてくる。

「おや、こんな時間まで会社に人が残っていたのか?」 正俊のどこか軽薄な声が、無人のオフィスエリアに響き渡る。その響きは妙に耳につき、由梨の背筋をぞくりとさせた。

由梨はびくりと肩を震わせたものの、平静を装って口を開く。「三浦さん、やっと来てくださったんですね」

正俊は目を丸くした。「もしかして、僕を待ってたの?」

――分かりきったこと聞かないでよ。

由梨は怒りを押し殺しながら返事をしようとした。そのとき、正俊がふと思い出したように尋ねる。「そういえば、さっき何かぶつぶつ言ってなかったか?」

このインターン生はかなりの美人だ。入社初日から目をつけていた。 外見はふわふわな癒やし系なのに、性格は​無機質で​、まるで手応えがないのだ。

会社の親睦会が終わったあとも帰らず、一人でここに残っている。いったい何をしていたのだろう。

「刑法の条文を暗唱していました!」由梨は思わず歯を食いしばって言い返した。だが口にした瞬間、しまったと思う。

正俊は付き合った女性には優しいと聞く。だがもし今、怒って逆上されたらどうするのか。

そんなことを考えながら必死に取り繕おうとした、そのときだった。くすり、と小さな笑い声が聞こえた。振り向くと、あの社長様が立ってこちらを見ている。

なにあの脚の長さ、なにあの整った顔立ち。ただドア枠に寄りかかっているだけで、それがあまりにも絵になりすぎて、一枚の世界名画がそこにあった。 彼の口元には薄い笑みが浮かんでいる。だが美形というのは不公平なもので、どんな表情をしていても様になる。

由梨の心臓がどくりと跳ねた。自分の中の「イケメン基準」が、またひとつ更新された気がする。

正俊はそんな彼女の視線に気づき、軽く舌打ちした。

やはりこの従兄には敵わない。社内で誰よりも近寄りがたい美人ですら、こうして見惚れてしまうのだから。

その舌打ちで、由梨は我に返った。

あれは会社の社長だ。自分が憧れている存在であり、給料を払ってくれる雇い主でもある。 そんな相手をぼんやり見惚れていただなんて。本気で会社を辞めるつもりなのだろうか。

――いや、今はそれどころじゃない。まずは自分の荷物を取り戻すことが先決だ。

由梨は慌てて視線を正俊へ戻した。「三浦さん、昨夜の件なんですが……」

最後まで言い終える前に、征之が不意に口を開く。「正俊。車を回してこい」

征之には専属の運転手がいる。だが正俊は反論ひとつできず、素直に外へ向かっていった。

広いオフィスフロアには、由梨と征之だけが残される。静まり返った空間に取り残され、由梨は緊張のあまり手足の置き場に困った。

――どうしよう。社長、なんだか機嫌が悪そう。 もしかして、私と三浦マネージャーの間に何かあったことを察しているんだろうか。

その頃、正俊は車をエントランスへ回していた。ちょうどそのタイミングで彼女から電話がかかってくる。正俊は上機嫌で征之に軽く挨拶をすると、そのまま意気揚々とデートへ向かった。

征之は見向きもせず、無言で車のドアを開けて乗り込む。

その姿を見て、由梨はそっと胸をなで下ろした。ようやくこの場が終わる。

社長の放つ圧はあまりにも強く、そばにいるだけで息苦しくなるほどだった。

だが次の瞬間、征之が車の窓を下ろした。「どうやって帰るんだ?」

「バスで帰ります」由梨は慌てて答える。

征之は眉をひそめた。「乗れ」短い一言だった。

だが相手は会社の社長だ。自分が送ってもらうなど、恐れ多いにもほどがある。由梨は慌てて首を振った。「いえ、本当に大丈夫です。バスで帰れますので」

征之は黙って彼女を見つめた。その表情から感情は読み取れない。

だがなぜか、有無を言わせない圧力だけは伝わってくる。由梨は背筋がひやりとした。これ以上待たせるわけにもいかず、おずおずと後部座席のドアへ手を伸ばす。

少しでも離れて座った方が気が楽だと思ったのだ。だが――。

「僕を運転手代わりにする気か?」冷たい声が飛んできた。

征之の声は低く心地よい響きを持っている。それなのに、その一言だけで由梨の心臓はびくりと跳ねた。彼女は慌ててドアを閉め、助手席へ回り込む。そして急いでシートベルトを締めた。

車内では終始沈黙が続いた。由梨は緊張のあまり、一言も発することができない。征之の表情はずっと硬いままで、口元もきつく結ばれている。どう見ても機嫌が良いとは言えなかった。

由梨は膝の上で握った指先が、わずかに震えていることに気づく。

やっぱり、遠くから見ているくらいがちょうどいい。今日だけで何度も接してみて初めて分かった。自分が憧れていた社長は、思っていた以上に気難しくて、何を考えているのか全く分からない人だったのだ。

今後は絶対に近づきすぎないようにしよう。

信号待ちの間、征之は何度か口を開きかけた。だが結局、何も言わなかった。

やがて車は由梨の自宅前に到着する。車を降りるまでの間、征之の顔にはずっと不機嫌ですと書いてあった。あまりにも分かりやすすぎるほどに。

由梨はなんとも言えない気分になった。

社長に送ってほしいと頼んだわけでもない。

それなのに、どうしてあんなに不機嫌なのだろう。

だが、そのもやもやは次の瞬間、一気に吹き飛んだ。代わりに胸の奥から怒りが込み上げてくる。

玄関先に立っていたのだ。別れたはずの元恋人――黒田慎吾が。

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
公式サイトを開く

おすすめの作品

解放の代償は、傲慢社長のひざまずく愛 の小説カバー
8.5
自分が彼の思い通りに操られるだけの存在だったと気づいた彼女は、毅然とした態度で別れを突きつける。しかし、彼女が離れた途端、その周囲に魅力的な男たちが集まり始めたことで、彼は激しい嫉妬と執着に駆られていく。誰にも彼女を渡したくない、力ずくでも自分の傍に繋ぎ止めておきたいという独占欲が、彼を狂気へと追い込んでいった。彼女はそんな束縛から逃れるため、あらゆる手段を講じてただ一人で生きる自由を追い求める。執拗な追跡の末、ついに彼女を諦めて手放したはずの彼だったが、その決心はわずか五分も持たなかった。かつての傲慢な態度は見る影もなく、彼は彼女のベッドの前に跪き、なりふり構わず懇願する。「どこへ行くにも、どうか俺も一緒に連れて行ってくれ」と。かつて駒として扱った女性に対し、今や全てを投げ打って愛を乞うことしかできなくなった男。自由を求める彼女と、地を這ってでも彼女を離さないと誓う男の、歪で情熱的な攻防が幕を開ける。
当てつけに、元カレのお義姉さんになります の小説カバー
9.1
元恋人の婚約披露宴という屈辱的な場所で、彼女は泥酔した勢いのまま、元カレの兄へと大胆に迫る。「弟の妻になれないなら、あなたの妻になってお義姉さんと呼ばせてあげる」と。男は冷ややかな言葉とは裏腹に、彼女の誘惑に抗えずその身を委ねてしまう。こうして二人は、互いの利害が一致した愛のない享楽的な関係をスタートさせた。しかし、彼女の周囲に他の男たちが現れるたび、彼は激しい独占欲に突き動かされていく。一方、彼の庇護下で過ごすうちに、彼女もまた抱いてはならない恋心を募らせていた。そんな折、彼の「忘れられない女性」が帰還したことで、二人の関係に亀裂が生じる。彼は平静を失い、彼女は孤独に耐える日々。ついに関係の解消を告げられた彼女は、潔く身を引く決意を固めた。月日が流れ、彼女自身の婚約式典の日。かつての冷徹さをかなぐり捨て、自制心を失った彼が彼女の手を掴んで叫ぶ。「俺と先に結ばれただろう、君は俺のものだ!」と。対する彼女は、余裕の笑みを浮かべて言い放つ。「結婚に先着順なんてありませんよ、社長」
バツイチ女、今や社長。元夫は復縁希望中 の小説カバー
8.2
「彼女と自分を比べるなどおこがましい」――。3年間、献身的に尽くしてきた専業主婦の生活は、夫からの非情な言葉で幕を閉じた。愛が報われると信じて耐え忍んできた彼女に刻まれたのは、深い心の傷だけだった。しかし、絶望の淵で彼女は決断する。愛を捨て、自らの力で生きていくことを。離婚後、周囲の嘲笑を跳ね除けるように、彼女は隠れた才能を開花させていく。有名デザイナーとしての地位を確立し、ついにはビジネス界の頂点へと登り詰めたのだ。億万長者の家督を継ぐ道を選ばず、自らの手で巨大なビジネス帝国を築いた彼女。今や兄からは惜しみない愛を注がれ、数多の美男子たちから熱烈なアプローチを受ける存在となった。かつての夫の前に堂々と立ち、彼女は宣言する。「後悔など微塵もしていない」と。一方、輝きを放つ元妻の姿を前に、男は己の愚かさを痛感していた。かつての傲慢さは消え失せ、必死に復縁を乞い願う。「もう一度、俺の妻になってほしい」。立場が逆転した二人の、新たな関係が幕を開ける。
別れたら神崎さんの株が爆上がり!~資産千億の大逆転人生~ の小説カバー
8.5
神崎凪は、最愛の夫・藤川蓮のために家族と絶縁してまで尽くしてきた。しかし結婚二周年、彼女が手にしたのは偽造された婚姻届と、自分が別の女の身代わりでしかなかったという残酷な真実だった。報われない愛に終止符を打つべく、凪は絶縁していた父に連絡し、実家へ戻って縁談を受ける決意をする。かつて彼女を「都合のいい女」と見下し、嘲笑っていた周囲の人間たちは、その直後に驚愕することになる。表舞台に帰還した彼女の正体は、謎に包まれた天才F1レーサーであり、世界屈指の調香師、さらにはカジノを支配する女王だったのだ。圧倒的なカリスマ性で輝きを放つ凪の姿に、蓮は激しい後悔に襲われ彼女を追い縋る。だが、その隣にはすでにビジネス界の伝説と称される江原家の若様の姿があった。若様は冷徹な笑みを浮かべて蓮を突き放す。「私の妻はすでに新しい命を授かっている。いい加減、諦めたらどうだ?」かつての「負け犬」が真の女王へと覚醒し、華麗なる大逆転劇が幕を開ける。
パパ、ママがまた逃げた の小説カバー
8.1
かつて放蕩の限りを尽くした大企業の社長は、妻との死別を機に生活を改めたと噂されていた。女遊びを一切断ち、幼い息子と静かに暮らす日々。そんな彼の元へ、一人の女性家庭医が診察のために屋敷を訪れる。しかし、更生したはずの社長が向けた眼差しは、獲物を射抜くかのように鋭く冷徹なものだった。その威圧感に、彼女は思わずその場から逃げ出してしまう。ところが二ヶ月後、周囲の予想に反して、彼女は後妻として社長の隣に立っていた。亡き妻を想い続ける頑なな彼の心を、一体どうやって溶かしたのか。周囲がその秘訣を尋ねると、彼女は呆れたように笑って答える。「簡単よ、一人と結婚したら、おまけが二人もついてきたんだから!」新婦が憤慨しながら背後から引きずり出したのは、なんと新郎に瓜二つの小さな子供たち。一人息子だけだと思われていた家庭に隠されていた、驚きの事実とは。波乱に満ちた再婚生活が、今ここから幕を開ける。
永久不妊、残酷な宣告 の小説カバー
8.5
長年の不妊治療が実を結び、ようやく新しい命を授かった主人公。最愛の夫にその喜びを伝えようと、手作り弁当を携えて彼の経営するホテルを訪れる。しかし、そこで待っていたのは残酷な悲劇だった。夫を盲目的に慕う支配人の女が、彼女を不審なストーカーだと決めつけ、会議室に監禁したのだ。凄惨な暴行が始まり、熱い味噌汁を浴びせられ、服を切り裂かれる。お腹の子を必死に守ろうと懇願するも、女は冷酷に彼女の腹部を蹴り上げた。足元に鮮血が広がり意識を失いかけたその時、ようやく夫が駆けつけるが、彼は女の吐いた嘘を信じかけてしまう。その結果、失われたのは愛する我が子の命と、二度と子供を望めない身体だった。真実を悟った夫は加害者たちを徹底的に叩き潰し、血の滲むような後悔と共に許しを請う。しかし、身体も心も深く傷ついた彼女にとって、その謝罪はあまりに遅すぎた。失った命の重さと共に、夫への愛もまた、凍てつくように冷め切ってしまったのである。