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契約結婚、期限切れのはずが?――長谷川社長が毎夜跪いて更新を懇願してくる の小説カバー

契約結婚、期限切れのはずが?――長谷川社長が毎夜跪いて更新を懇願してくる

信じていた婚約者と実の妹に裏切られ、家産まで奪われそうになった榊原詩織。愛という名の茶番に絶望した彼女は、復讐を果たすべく、冷酷非道な「悪魔」と恐れられる長谷川彰人と結婚契約を交わす。周囲は詩織の末路を嘲笑うが、蓋を開けてみれば、彰人は彼女を狂おしいほどに甘やかし、溺愛する日々が待っていた。妹が彰人を「馬の骨」と蔑み、元婚約者が「愛人でいろ」と吠えても、彰人は圧倒的な富と力で詩織を揺るぎなく守り抜く。これは目的を果たすための偽りの芝居――そう自分に言い聞かせ、詩織は決して心を開くまいと誓っていた。しかし、ついに迎えた契約終了の日、彼女を待っていたのは自由ではなかった。彰人は詩織を寝室へ閉じ込め、一晩中その腕から離そうとしない。契約違反だと抗議する彼女に対し、彰人は熱を帯びた瞳で唇をなぞり、一生の契約更新を懇願する。期限切れから始まる、危険な男の執着と真実の愛が幕を開ける。
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3

榊原詩織は、何が起こっているのか全く分からないまま、車に乗せられた。

隣から低い男の声が聞こえた。 「あなたが榊原詩織さんですか?」

その声を聞いた瞬間、詩織の体はこわばった。

どこかで聞いたことがあるような声だった。

顔を上げると、目の前の男は彫りの深い顔立ちをしていた。 濃い眉の下に、鷹のように鋭い眼差しが光り、直視できないほどだった。

驚くほど整った顔立ちと、並外れた気品を兼ね備えている。

一度見たら、決して忘れられないような人物だ。

詩織は、この男に会った記憶は全くないと確信していた。 先ほどの既視感は、きっと気のせいだろう。

そんなことを考えながら、詩織はうつむき、か細い声で答えた。 「はい、そうですが……どちら様でしょうか?」

男は探るような視線で詩織を上から下まで見つめ、口を開いた。 「俺は長谷川彰人だ。 俺の家は、かつて君の父親と婚約を交わした。 今、その約束を履行しに来た」

……え?

詩織はどもりながら尋ねた。 「あ、あなたは……私と結婚する、と?」

「そう解釈してもらって構わない」

詩織は完全に呆然とした。 冗談に決まっている、と心の中で思った。

彰人は無表情で彼女の反応を観察していた。

その眼差しは鋭く、すべてを見透かすような探究心に満ちていた。

この男は危険だ、と詩織は本能的に感じた。

居心地の悪さに身をよじり、詩織は口を開いた。 「あの……」

「どれくらい風呂に入っていない?」

男は突然、詩織の言葉を遮った。

詩織は目をわずかに見開き、驚いて尋ねた。 「え?」

「臭い」 彰人は、その言葉がどれほど女性を傷つけるかなど、全く考慮していない様子で平然と言い放った。

詩織の顔は、みるみるうちに真っ赤になった。

恥ずかしさと屈辱感が、胸の奥からこみ上げてくる。

詩織は不安そうに自分の服の裾を握りしめた。 服はしわくちゃで、雨に濡れた上に、病院の壁の埃までついていた。 確かに、汚い。

赤らみは首筋まで広がり、詩織は恥ずかしさのあまり、自分の靴の先を見つめて身を固くした。

彰人は視線を外し、冷淡に運転手に命じた。 「麗水館へ戻れ」

車はすぐに発進し、詩織が拒否する間もなく、一路を飛ばした。

麗水館は高級住宅街の一角に位置していた。 陽光を浴びて静かに佇む、壮麗な二階建ての洋館である。

車を降りると、彰人は一人のメイドに、詩織を風呂に入れるよう命じた。

先ほど体臭を指摘されたせいか、メイドが近づいてきた時、不快そうに眉をひそめたように見えた。

詩織は気まずさを感じ、口を開いた。 「自分でできますから」

メイドは清潔な着替えを彼女に手渡すと、数歩下がって距離を保ちながら言った。 「二階の各部屋には専用の浴室がございます。 廊下の一番奥、右から三番目の部屋がご主人の部屋ですので、それ以外の部屋はご自由にお使いください」

詩織は一刻も早くこの屈辱的な場所から逃れたかった。 適当に頷くと、服を抱えて足早に階段を上った。

二階には多くの部屋があった。 詩織は階段口に一番近いドアを無造作に開け、そのまま中の浴室へ入った。

服を脱ぎ、鏡に映った自分の体を見て、詩織は息をのんだ。 白い肌の上には、無数のキス痕や噛み痕が痛々しく残っていた。

痕が残っていることは分かっていたが、まさかこれほどひどいとは……。

詩織は鼻の奥がツンとし、涙がこぼれそうになった。 鏡の中の自分を直視できず、慌ててシャワーをひねった。 温かい湯が、顔を伝う涙と混じり合って流れ落ちる。

あれは、ずっと大切にしてきた初めての経験だった。 愛する人のために取っておきたかったのに、こんな馬鹿げた形で失ってしまった。

相手の顔すら知らない。

詩織は、まるで痕を消し去るかのように、自分の体を力任せにこすり洗い続けた。 深い悲しみに沈み込み、シャワーの音にかき消されて、浴室のドアが静かに開けられた音に気づかなかった。

背後から、男の低い笑い声が聞こえるまでは。

「詩織、そんなに急いでこの家の女主人になりたいのか?」

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