フォローする
共有
裏切りと、母の最後の誓い の小説カバー

裏切りと、母の最後の誓い

末期の再生不良性貧血により、余命三ヶ月と宣告された美心。骨髄移植だけが唯一の希望だったが、ドナーとして適合した姉の聖穂と恋人の一歩は、彼女の救済を冷酷に拒絶する。二人の目的は、美心の死を早めることで彼女のすべてを強奪することだった。美心が心血を注いで築き上げたブランドも財産も、二人の手に渡ってしまう。さらに残酷なことに、最愛の娘までもが「聖穂ママがいい」と美心を突き放し、姉のもとへ去っていった。信頼していた者たちに裏切られ、居場所も愛も奪われた美心の心は完全に打ち砕かれる。なぜ自分だけがこれほどまでに踏みにじられ、絶望の淵に立たされなければならないのか。理不尽な運命を前に、彼女は静かに決意する。このまま無念のうちに死ぬつもりはない。自分の命が尽きるその瞬間まで、彼らの幸福を永遠に呪い、残酷な報いを受けさせるための「従順な復讐」を。裏切った者たちへの凄絶な復讐劇が、今幕を開ける。
共有

1

再生不良性貧血の末期と診断され, 余命三ヶ月を宣告された. 唯一の適合者は, 姉の聖穂と, 恋人の一歩.

しかし, 彼らは私の骨髄移植を冷酷に拒否した. 私の死を早め, 私のすべてを奪うために.

「美心は地味すぎるわ. 私のブランドには合わない」

「美心の才能は, 聖穂の比じゃない. 彼女こそが, このブランドの顔になるべきだ」

姉と恋人の裏切りだけではなかった. 私が命懸けで築き上げたブランドも, 財産も, そして最愛の娘さえも, 姉に奪われてしまった.

「聖穂ママと遊ぶから, 美心ママは邪魔なの! 」

娘の無邪気な一言が, 私の心を完全に打ち砕いた.

なぜ, 私の人生はここまで踏みにじられなければならないのか.

ならば, このままでは終わらせない. 私の死をもって, 彼らの幸福を永遠に呪ってやる. 私の「従順な」復讐が, 今, 始まる.

医者の言葉は, 私の人生を三日で終わらせた. 再生不良性貧血末期. 唯一の適合者は, 私の姉, 聖穂. そして, 私の恋人, 安達一歩.

第1章

広瀬美心 POV:

「広瀬美心さん, これ以上は…」

白衣の医師が私から目を逸らした. その表情は, 私にとって慣れ親しんだ感情の表れだった. 憐憫.

「彼女は, まるで吸血鬼だ. 広瀬聖穂の成功の陰で, 全ての血を吸い尽くしている」

「でも, 美心さんのおかげで, あのブランドはここまで成長したんでしょう? 」

「そうさ. だが, 聖穂はそんな妹を疎ましく思っている. 美心は, 自分の才能を姉のために捧げた愚かな女だ」

聞こえてくる看護師たちのひそひそ話. 私はベッドに横たわり, 天井を見上げていた.

彼らの言葉は, 鋭い刃物のように私の心臓を突き刺した. 痛い. だが, 驚きはなかった.

私の人生は, ずっとそうだったから.

私は静かに目を閉じた. 私の人生は, もうすぐ終わる. だが, このままでは終わらせない.

私の全てを奪った者たちに, 相応しい報いを.

「先生, 私の病気について, もう一度詳しく教えていただけますか? 」

私は静かな声で尋ねた. 医師は戸惑いながらも, 私に顔を向けた.

「再生不良性貧血です. 骨髄の機能が低下し, 全ての血球が作られなくなる難病です」

医師の声は, どこか遠くで聞こえるようだった.

「末期です. 余命は, 長くて三ヶ月…短ければ, 一ヶ月もたないかもしれません」

彼の言葉は, 私の胸に重くのしかかった. 三ヶ月. それが, 私の残された時間.

私はゆっくりと, 過去を振り返った.

両親を早くに亡くした後, 私と聖穂姉さんは二人きりになった.

聖穂姉さんは, 私の唯一の家族. 私の全てだった.

姉の夢は, 自分のファッションブランドを立ち上げること. その夢を叶えるために, 私は昼夜を問わず働いた.

寝る間も惜しんで, 資金を稼いだ.

「KIYOHO」というブランドが成功するにつれて, 姉は私を遠ざけるようになった.

「美心は, 地味すぎるわ. 私のブランドには合わない」

聖穂姉さんは, そう言った.

私は, 姉の成功のために, 自分の存在を消した. それが私の喜びだった.

だが, 姉は私の隣に, 別の人間を置いた.

それが, 私の恋人, 安達一歩だった.

一歩は, KIYOHOのCOOとして, 姉の右腕となった.

私は彼の才能を信じていた. 彼が, 聖穂姉さんのブランドを世界に羽ばたかせてくれると.

それが, 私の愚かな愛だった.

「美心, 今夜は聖穂と食事に行くんだ」

一歩は, 私にそう言った. 彼の声は, いつもと変わらない. だが, 彼の目は私を見ていなかった.

彼は, 姉のブランドの成功を喜んでいるようだった.

「そう. 楽しんできてね」

私は微笑んだ. 私の心は, 冷え切っていた.

彼の視線は, 私の背後, つまり聖穂姉さんが立つ場所に向けられていた.

「聖穂も, 美心と話したがっていたよ. 最近, 疲れているだろう? 」

一歩は, まるで私を気遣うように言った. その言葉は, 私にとっては空虚な響きだった.

「大丈夫よ. 仕事が忙しいだけ」

私は, 無理に笑顔を作った.

「そうか. 無理はするなよ」

一歩の言葉は, まるで上辺だけの優しさだった. 私の知っている一歩は, もっと温かい人だったはず.

「一歩, あなたには, いつも感謝しているわ」

私がそう言うと, 彼の表情がわずかに歪んだ.

彼は何か言いかけたが, 結局, 何も言わなかった.

私はその沈黙の意味を, 苦い思いで理解した.

彼は, もう私を愛していない.

安達一歩. 彼は, 私がKIYOHOを立ち上げる際に見出した, ビジネスの才能を持つ男だった.

私は彼を信じ, 私の全てを捧げた.

彼は私の才能を最大限に利用し, ブランドを成功へと導いた.

だが, 彼は同時に, 聖穂姉さんの野心的な性格に惹かれていった.

聖穂姉さんは, 彼にとって, 私よりも魅力的な「成功」の象徴だったのだろう.

私が倒れる前, 一歩は私に言った.

「美心, 聖穂の才能は, 君の比じゃない. 彼女こそが, このブランドの顔になるべきだ」

あの時, 私は彼の言葉を, 姉への賛辞だと思った. だが, それは私への, 残酷な宣告だった.

「美心, 私の夢を実現させてくれて, 本当にありがとう. でも, もういいわ」

聖穂姉さんは, かつて私にそう言った. その言葉は, 私の心に深く刻まれている.

私は, 姉のために全てを捧げた. だが, 姉は私を必要としなくなった.

「美心, 顔色が悪いぞ. 本当に大丈夫なのか? 」

一歩は, 心配そうに私に問いかけた. その声は, かつての優しさを装っていた.

「ええ, 大丈夫よ. 少し疲れているだけ」

私は, 彼の目を真っ直ぐに見つめた. 彼の偽善が, 私の心を激しく揺さぶった.

「そうか. あまり無理をするなよ. 心配だ」

一歩は, 私の頭を軽く撫でた. その手は, 冷たかった.

その瞬間, 私は悟った. 彼らは, 私が邪魔になったのだ.

彼らは, 私が病気で弱っているのをいいことに, 私の全てを奪い取ろうとしている.

「分かったわ. 心配してくれて, ありがとう」

私は, 彼の言葉を受け入れたフリをした. 私の心は, 復讐の炎で燃え上がっていた.

彼らは, 私が彼らの幸福を台無しにすることなど, 思いもよらないだろう.

私が積み上げてきたものは, 彼らにとってはただの足場に過ぎなかった.

私は病院から抜け出し, 足取りも覚束ないまま自宅へと向かった.

頭の中は, 彼らの言葉がこだましていた.

「美心は, ただの事務屋だ. デザインの才能もないくせに, 聖穂の隣にいる資格はない」

「母親の座も, 聖穂に譲るべきだったのよ」

家に着くと, リビングから子供たちの笑い声が聞こえてきた.

「聖穂ママ, もっと高く! 」

私の娘, 花が聖穂姉さんに抱きつき, はしゃいでいる.

私はその光景を見て, 呼吸が止まるかと思った. 花は, 私を「聖穂ママ」と呼んでいた.

私の心は, 砕け散った.

私は, その場に立ち尽くした.

花は, 私に気づくと, 一瞬笑顔を曇らせた.

「ママ…」

その声は, どこか遠慮がちだった. 私の心臓は, 氷の破片でできたようだった.

「あら, 美心. 帰っていたのね. 顔色が悪いわよ」

聖穂姉さんが, 私に気づいた. 彼女の笑顔は, 私を嘲笑っているように見えた.

私は一歩, リビングに入った. ソファには, 私が座っていたはずの場所に聖穂姉さんが座り, 私が使っていたカップでコーヒーを飲んでいた.

私の心は, 激しく波打った.

「聖穂姉さん, 一歩. あなたたちに話があるの」

私は, 震える声で言った. 彼らは, 私に顔を向けた.

「美心, 何の話? 」

聖穂姉さんが, 怪訝そうな顔で私を見た.

「私, 持っている全ての財産を, あなたたちに譲渡しようと思うの」

私の言葉に, 聖穂姉さんの顔から笑顔が消えた.

「え…? 美心, 何を言っているの? 」

聖穂姉さんは, 驚いたように目を見開いた. その顔は, 偽りだった.

私は, 彼女のために集めた絵画コレクション, 豪華なジュエリー, そして私が設計したこの家を見つめた.

これらは, 私の人生の全てだった. だが, もう私には必要ない.

「私には, もう必要ないものだから」

私は, 薄く微笑んだ. 私の心は, 冷たい復讐の炎で燃えていた.

「本当に? 美心, どういう風の吹き回し? 何か企んでいるんじゃないでしょうね? 」

聖穂姉さんの声は, 疑心に満ちていた. 彼女の偽装が, 一瞬崩れ落ちた.

私は彼女の目を見つめた.

「聖穂姉さん, 私はもう疲れたのよ. これ以上, あなたたちに邪魔されたくない」

私の言葉は, 静かだが, 鋼のように硬かった.

聖穂姉さんの顔から, 血の気が引いた. 彼女は, 私の真意を理解したようだった.

「いい? 聖穂姉さん, 一歩. あなたたちが, この上ない幸福を手に入れることを, 心から願っているわ」

私は, 彼らに向かって微笑んだ. 私の心は, 凍りついていた.

その時, 一歩がリビングに入ってきた. 彼は, 私と聖穂姉さんの間の緊張した空気を察したようだった.

「聖穂, どうしたんだ? 」

一歩が, 心配そうに聖穂姉さんに問いかけた.

「何でもないわ, 一歩. 美心が変なことを言い出しただけよ」

聖穂姉さんは, すぐにいつもの笑顔に戻った. 彼女は, 一歩に抱きついた.

「私はもう行くわ. 花, 言うことを聞くのよ」

私は, 花に優しく声をかけた. 花は, 私から目を逸らした.

「ママ, どこに行くの? 」

花の幼い声が, 私の胸を締め付けた.

「少し, 遠いところへね」

私は, 花に微笑んだ. 私の心は, 千の破片に砕け散っていた.

「聖穂ママと遊ぶから, ママは早く行ってよ! 」

花の言葉は, 私の心を深く抉った. 彼女は, 私を拒絶した.

「花, もう一度言ってごらん? 」

私は, 震える声で聞いた.

「聖穂ママと遊ぶから, 美心ママは邪魔なの! 」

花は, 大きな声で叫んだ. その言葉は, 私のとどめを刺した.

私は, その場に崩れ落ちそうになった. 私の体は, 血の気が引いていくように冷たくなった.

私の人生は, もう終わりに近づいている. 再生不良性貧血は, 確実に私の体を蝕んでいた.

私は, 這うようにして, 部屋に戻った.

「私が死んだら, この絵は聖穂姉さんに譲ってね」

私は, 壁にかかった絵画を見つめた. それは, 私が初めて自分で稼いだお金で買った絵だった.

私の復讐は, 始まったばかり.

彼らは, 私が死んだ後も, 私の存在に囚われることになるだろう.

私の復讐は, 彼らが最も幸せな瞬間に, 全ての真実を暴き出す.

彼らは, 永遠の後悔に苛まれるだろう.

私は, その未来を思い描いた. 私の心は, 静かに燃え上がった.

彼らは, 私が与えた幸福の全てを, 自らの手で破壊するだろう. 聖穂姉さん, 一歩. あなたたちの幸福は, 私の呪いと共に, 永遠の地獄へと落ちていく.

おすすめの作品

偽りのシンデレラ契約~冷徹CEOの計算ずくの溺愛に、心乱されて~ の小説カバー
8.9
将来を嘱望されるファッションデザイナーの彼女は、婚約者のキャリアを支えるため、長年ゴーストデザイナーとして影から尽くしてきた。しかし、待っていたのは残酷な裏切り。浮気現場を目撃し絶望に沈んだ彼女は、自暴自棄になり、行きずりの美しい男と一夜を共にしてしまう。その相手こそ、街中の人々が恐れおののく名家・孟家の若き当主であった。運命の悪戯か、二人はある契約を交わし電撃結婚を果たすことになる。冷徹なはずの彼は、彼女を骨の髄まで甘やかし、深い愛情を注いでいく。ようやく真実の愛を見つけたと確信した彼女だったが、その幸せはすべて、彼が冷徹な計算のもとに築き上げた周到な計画の一部に過ぎなかった。衝撃の事実に直面し、お腹に宿った新しい命を守るため、彼女は怒りと共に離婚を決意する。署名済みの協議書を突きつけられたとき、非情な支配者として恐れられてきた彼が、初めて瞳を赤く染めて懇願した。「ベイビー、俺が悪かった。どうか行かないでくれ」と。策略から始まった関係の行方は、果たしてどこへ向かうのか。
離婚後、帝京の御曹司が溺愛する奥様は世界最強でした! の小説カバー
9.8
献身的に尽くした三年間。その結末は、冷徹な離婚届と夫の裏切りだった。浮気に走る夫、それを煽る愛人や身勝手な義家族。耐え忍ぶ日々を捨てた星野梓は、溜まった怒りを爆発させ、彼らの化けの皮を次々と剥いでいく。しかし、虐げられていた「従順な妻」という姿は、彼女の真の顔ではなかった。その正体は、渡辺グループの上場を左右するビジネスの鬼才であり、手術室で「神」と崇められる伝説の外科医だったのである。かつての夫が己の過ちに気づき、涙を流して復縁を求めて土下座しても、もはや手遅れだった。彼女の隣には、帝京を支配する圧倒的な権力を持つ御曹司が控えていたのだ。かつてのしがらみを断ち切り、華麗なる逆転劇を見せる梓。彼女を独占するように抱き寄せた御曹司は、冷ややかな視線を元夫に向け、力強く宣言する。「二度と触れるな。彼女はもう、俺だけのものだ」と。どん底の離婚から一転、世界最強の女性として君臨する彼女の、究極の成り上がりと極上の溺愛ストーリーが幕を開ける。
今日から私、兄たちの最愛の妹です の小説カバー
9.0
家を追放された瞬間に自分が「偽の令嬢」だったと知らされた主人公。実の両親は貧しく、五人の兄たちの結婚資金にするため彼女を売ろうと企んでいた。しかし、判明した本当の父親は世界的な富豪ランキングに名を連ねる超大物だった。どん底の境遇から一転、財閥の「真の令嬢」として迎えられた彼女を待っていたのは、妹のためなら星さえ掴みかねない兄たちからの度を越した溺愛だった。世間は偽令嬢の没落を嘲笑おうと待ち構えていたが、彼女が秘めていた才能は人々の想像を絶するものだった。左手で千億の価値を生むデザインを描き出し、右手では航空局を指導するほどの知略を発揮する。各界の有力者たちがこぞって彼女の関心を引こうと躍起になり、正体不明の富豪までもが熱烈な求愛を仕掛けてくる。血筋だけでなく、圧倒的な実力で周囲を黙らせる彼女の快進撃が今始まる。かつての偽令嬢は、誰にも真似できない本物の輝きを放つ実力者へと変貌を遂げたのだ。
彼に捨てられたので、『男性専門医』になって帰ってきました の小説カバー
9.7
どん底の絶望に突き落とされた結城さくらを救ったのは、血の繋がらない年下の義弟・朝倉蓮だった。しかし、唯一の心の支えであった彼もまた、別の女性との婚姻を控えていた。失意のなか、蓮によって国外へと送り出された彼女は、過去のすべてを断ち切る決意を固める。異国の地で研鑽を積み、数年後、さくらは男性不妊やED治療の分野でその名を知らぬ者はいないカリスマ医師へと変貌を遂げていた。凱旋帰国を果たした彼女の診察室に現れたのは、かつて愛した義弟の蓮だった。再会した彼に対し、さくらは挑発的で悪戯な笑みを浮かべながら問いかける。「あなたがずっと独身を貫いている理由、もしかして……身体的な機能の問題かしら?」その言葉に対し、蓮は静かに、しかし熱を孕んだ瞳で彼女を見つめ返し、「……なら、ここで試してみるか?」と低く囁く。かつての純粋な姉弟関係は、再会を機に危うい駆け引きへと塗り替えられていく。空白の時間を経て、立場を変えた二人の歪な再会が、止まっていた運命の歯車を再び激しく回し始める。
凍える山に消えた私の愛 の小説カバー
9.0
極寒の冬山で、私は婚約者の真弘と彼の愛人である綾に裏切られ、崖から突き落とされた。頼みの綱である最新鋭の防寒具やGPSは細工されたかのように故障し、私はお腹に宿した新しい命と共に、冷たい雪の中で息絶えた。しかし、肉体が滅んでも私の魂はその場に留まり、二人の醜悪な本性を目撃することになる。救助を待つふりをしながら、私の死を「迷惑だ」と吐き捨てる真弘。悲劇のヒロインを演じつつ、裏でほくそ笑む綾。かつて私が絶望から救い、心から愛した男にとって、私と我が子の命はその程度の価値しかなかったのか。怒りと悲しみに震える幽霊の私が見守る中、事態は思わぬ方向へ動き出す。私が死の間際に必死で掴み取った決定的な「証拠」の存在。そして、異変に気づいた私の母と真弘の姉が、この偽装工作の裏に隠された真実を暴くために動き始めたのだ。愛する者に殺された女の執念が、逃げ場のない地獄へと二人を追い詰めていく。これは、雪山に消えた命が巻き起こす、凄惨な復讐劇の幕開けである。
十年愛して、ようやく君の心に触れた の小説カバー
9.1
初恋の相手をひたむきに想い続け、捧げた月日は十年に及んでいた。彼を守るために選んだ結婚という道だったが、夫となった彼の心に彼女の居場所はどこにもない。冷淡な拒絶を繰り返され、愛を注がれることのない孤独な日々。それでも彼の傍に居続けることを選んだ彼女だったが、無償の愛を貫いた代償はあまりにも残酷なものだった。絶望の淵に立たされ、彼女の心はついに限界を迎えて壊れてしまう。自身の命、そして宿ったばかりの新しい命が危うい均衡で揺れ動く事態に直面したとき、ようやく男は真実に向き合うことになる。失いかけて初めて、自分が人生のすべてを懸けて愛し、守り抜くべきだった存在が誰であったのかを、彼は痛切に悟るのだった。長すぎた片想いの果てに、二人の関係は最悪の局面で大きな転換点を迎える。すれ違い続けた十年の歳月を経て、ようやく彼の心は彼女へと向けられるが、その代償はあまりにも大きく、切ない運命が二人を翻弄していく。