
エースの罠
章 3
「お茶はありますか?」
***
4時間半という長いフライトの後、ようやくカリフォルニアに到着すると、両親は待ち合わせの場所で待っていた。 「おかえり」と書かれたプラカードを掲げて、ママは会うなり、いつにもまして私を熱烈に抱きしめた。パパの方は、やっと帰ってきたことに安心している。 今回は、たった2週間の帰省だけど。
高校進学のため、ニューヨークに越すと決心した日から今まで、パパは私のことをずっと心配してくれたし、 ママも気を揉んでいた。 確かに、遠く離れて暮らすことは、簡単なことではなかったけど、この町で暮らす方が、私にとっては辛かった。
傷ついた心を癒すには、時間が必要だった。 それに、距離も。 あの夜の記憶が蘇るたび、心を閉ざし、記憶の奥に葬り去った。 この7年間、ずっとそう過ごしてきた。
そうして、前を向いて進んできた。
「おかえり!かわいいお嬢ちゃん」 敷居に足を踏み入れるなり、兄のトビアスが、骨が折れそうになるくらい、ぎゅっと抱きしめた。 「おや! 大人っぽくなったなあ!」と兄が言った。
その言葉に呆れて、兄を見ている。 「2ヶ月前に会ったばかりじゃない」
「そうだな。でも会いたくて仕方がなかったから、ずいぶん長い間会っていないように感じるよ」懐かしさで目を潤ませながら、兄は答えた。
私はにっこりした。 出張でニューヨークに来ると必ず、会いに来てくれたけれど、 私も、ずっと会いたいと思っていた。
「私は別に会いたくないわよ」 と、生真面目な表情を装って彼をからかった。
兄はくすくす笑いながら、青ざめた顔で10分おきにトイレを往復するワーナーに目を向けた。 ワーナーは、今にも気絶しそう。 父と握手をする前にトイレに駆け込むことになってしまい、とてもバツの悪い顔をしている。
これこそ、両親に印象づける方法!
両親との顔合わせがうまくいくように、と願っていたけど、 もうパパは、ワーナーをこれ以上嫌いになれないわ。
「ワーナーは、あまりにもいい人すぎる」と、パパは電話で言っていたっけ。 どういうわけか、パパは私が交際していると言っても、賛成してくれなかった。
「やあ、ワーナー! お会いできて嬉しいよ!」 トビアスがワーナーに横から抱きついた。 「君、大丈夫? 具合悪そうだね」
「たいしたことないです、ちょっとお腹の調子が悪いだけで。 お兄さんにお会いできて光栄です」 突然、何者かがワーナーの腸にパンチを入れたかのように、表情がねじれた。 「ええと、すみません…」
「右に行って、そのまま真っすぐ。最初のドアです。 ゲストルームを使ってください」パパは不機嫌そうに教えた。
「ありがとうございます」と言って、彼は走っていった。
私はため息をついた。
事情を、パパに説明しなくては。 ワーナーは、まだパパの口調に気づいてないけれど、すぐ気づくだろう。
「お気の毒ね」とママはぽつりと言って、さりげなくパパに責めるような視線を送ったが、パパは無視して部屋に入っていった。 ママはかぶりを振って、私の目を見つめた。 「エミー、お部屋に上がって休んできたら。 ママ、何かさっと作るわね」
私がうなずくと、ママは、パパの後に続いた。 間違いなく、パパの意見を聞くつもりだ。
階段を上がるとき、トビアスが私の肩に手をかけた。 「それで? あの彼と続けるつもり?」
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