
残り72時間:残酷なアルファに拷問された私の愛
章 3
マリーナ視点
彼の夢を見ていた。
太陽の下で、サイラスが私の髪を梳いてくれる夢。私を、彼のルナと呼んでくれる夢。
「マリーナ、愛している」
バシャッ。
汚れた水が、私の顔に叩きつけられた。
「起きろ、寄生虫」
エミリーだった。
叫ぶことはできなかった。喉が焼け付いて、声が出ない。私は中庭のゴミ捨て場に引きずり出されていた。真昼の太陽が、私の肌をじりじりと焼いている。
「お腹、空いたでしょう?」
エミリーが、トレーを私の足元に蹴り寄こした。灰色の汚泥にまみれた、腐りかけの肉。
「食べなさい。特別なものよ」
彼女が衛兵に合図すると、彼は私の顎を無理やりこじ開けた。
「昨日捕まえたサイレンの肉よ」
思考が停止した。
彼女は、スプーンを私の口に押し込んだ。
「美味しいでしょう?家族の味よ」
私はえずいた。吐き出そうとしたが、衛兵が私の口を塞ぎ、飲み込むまで離さなかった。
魂に、ひびが入るのを感じた。涙が頬を伝う。激しく咳き込むと、吐瀉物がエミリーの踵を汚した。
「うわっ!汚らしい!」
そこへ、サイラスが歩いてきた。
「サイラス!この女、わざと私に吐きかけたのよ!」
彼は私の火傷を見なかった。私の瞳に宿る絶望を見なかった。彼が見たのは、エミリーの靴だけだった。
「こいつの口を塞いでおけ。行儀よく食べられないなら、食う資格はない」
粘着テープが、私の悲鳴を封じた。
「エミリー、新しい靴を買いに行こう」
「実はね、サイラス…絵を描きたいの。でも、赤色が足りなくて」
「好きにしろ。ただし、奴が口を割るまでは生かしておけ」
彼は去っていった。
エミリーは微笑んだ。「アトリエに連れてきて」
中には、真っ白なキャンバスが待っていた。
「サイレンの血は、乾くと実に美しい艶やかな深紅になるのよ」彼女は言った。
メイドが、錆びた銀のナイフで私の手首を切りつけた。
私の血がバケツに満ちていく間、エミリーはおしゃべりを続けた。
「知ってた?サイレンの心臓をすり潰すと、最高のフェイスクリームになるのよ。でも、王家の『白い真珠』じゃないとダメなの」
彼女は身を乗り出し、その目は狂気に満ちていた。
「どこにあるの、マリーナ?二つ目の真珠。魂の真珠は」
私は弱々しく首を振った。
「まあいいわ。どうせ一日後には泡になるんだもの。あなたの死体から掘り出してあげる」
彼女は、私の血に浸した筆を、キャンバスに叩きつけた。
残り、二十四時間。
足の感覚がなくなっていく。終わりが、近づいていた。
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