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裏切りと、母の最後の誓い の小説カバー

裏切りと、母の最後の誓い

末期の再生不良性貧血により、余命三ヶ月と宣告された美心。骨髄移植だけが唯一の希望だったが、ドナーとして適合した姉の聖穂と恋人の一歩は、彼女の救済を冷酷に拒絶する。二人の目的は、美心の死を早めることで彼女のすべてを強奪することだった。美心が心血を注いで築き上げたブランドも財産も、二人の手に渡ってしまう。さらに残酷なことに、最愛の娘までもが「聖穂ママがいい」と美心を突き放し、姉のもとへ去っていった。信頼していた者たちに裏切られ、居場所も愛も奪われた美心の心は完全に打ち砕かれる。なぜ自分だけがこれほどまでに踏みにじられ、絶望の淵に立たされなければならないのか。理不尽な運命を前に、彼女は静かに決意する。このまま無念のうちに死ぬつもりはない。自分の命が尽きるその瞬間まで、彼らの幸福を永遠に呪い、残酷な報いを受けさせるための「従順な復讐」を。裏切った者たちへの凄絶な復讐劇が、今幕を開ける。
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広瀬美心 POV:

「この会社は, 広瀬美心社長が全てを投げ打って創業したものです. その彼女が, 全ての株式を広瀬聖穂氏に譲渡すると? 」

KIYOHOの本社, 重厚な役員室にざわめきが広がった. 噂は, すでに社員たちの間を駆け巡っていた.

私は, 聖穂姉さんと共に, この場に立っていた. 私の顔色は, きっと蝋人形のように青白かっただろう.

「ええ. 間違いありません」

私は, はっきりと答えた. 私の声は, 驚くほど冷静だった.

役員たちは, 互いに顔を見合わせた. 彼らは, 私の言葉を信じられないようだった.

「社長, 本当にそれでよろしいのですか? 」

古参の役員が, 私に問いかけた.

「ええ. 私は, 決意しました」

私は, 彼らの視線から逃げることなく, 真っ直ぐに答えた.

「そして, 私は聖穂姉さんを, KIYOHOの新たな社長に指名します」

私の言葉に, 聖穂姉さんの顔が, 一瞬にして輝いた.

「美心…! 」

彼女の声は, 感動に震えているようだった. だが, その瞳の奥には, 抑えきれない歓喜の光が宿っていた.

「聖穂姉さん, これからはあなたがこのブランドを牽引していくのよ. 私に代わって, ね」

私は, 聖穂姉さんに冷たい視線を向けた. 彼女の頬の笑みが, わずかに引きつった.

私は, 用意していた書類を聖穂姉さんの手に渡した. それは, 全ての株式譲渡契約書と, 社長交代の同意書だった.

彼女の手が, 震えていた.

会議が終わり, 私は聖穂姉さんに呼び止められた. 彼女は, 私の後を追って廊下に出てきた.

「美心, 本当にこんなことをして, 何を企んでいるの? 私には, あなたの気持ちが理解できないわ」

聖穂姉さんの声は, 不審と戸惑いが入り混じっていた.

「企む? 私が? 聖穂姉さん, あなたは私の全てを奪い取ろうとしたでしょう? 私は, ただあなたに, その欲望を叶えてあげただけよ」

私は, 皮肉な笑みを浮かべた.

「あなたは, このブランドが欲しかった. 一歩も欲しかった. そして, 私の命も」

私の言葉に, 聖穂姉さんの顔から血の気が引いた.

「美心, 何を言っているの? 私は, そんな…! 」

彼女は, 必死に否定しようとした.

「いいえ, 聖穂姉さん. あなたは, 全てを手に入れたわ. おめでとう」

私は, 彼女の言葉を遮った. 私の心は, 既に死んでいた.

「だが, 一つだけ, あなたにお願いがあるわ」

私は, 聖穂姉さんに向き直った. 彼女は, 警戒の眼差しで私を見つめた.

「花を大切にしてほしい. それだけよ」

私の言葉に, 聖穂姉さんの表情が, 一瞬にして凍りついた.

「花は, 私の娘よ. 私の全てだった」

私は, 静かに言った. 私の心は, 母親としての最後の願いを込めていた.

聖穂姉さんは, 何も言わなかった.

私は, 自分のオフィスに戻り, 私物を整理した. 机の上に置かれた, 花の絵.

それは, 花が初めて描いた私の絵だった.

「美心様…」

扉が開き, 長年私に仕えてきた老執事の田中が, 心配そうに私の顔を見た.

「田中, これをお願いできるかしら? 」

私は, 一つのUSBメモリを田中から受け取った.

「これは, 一体…? 」

田中の目に, 疑問の色が浮かんだ.

「私の, 復讐の証拠よ」

私は, 薄く微笑んだ.

「しかし, 美心様…これは…」

田中は, USBメモリを握りしめた. その手は, 震えていた.

「美心様は, ご自分の命を…」

「いいのよ, 田中. 私には, もう時間がない. だから, これで終わりにするの」

私は, 彼の言葉を遮った.

「美心様の, お嬢様への深い愛情は, 私もよく存じております. ですが, このような形で…」

田中の目から, 涙が溢れ落ちた.

「田中, 花を頼むわね. どうか, 彼女を幸せにしてあげて」

私の言葉に, 田中は深く頭を下げた.

その夜, 私は自宅の寝室で, 窓の外に広がる夜景を見ていた. 体調は, 最悪だった.

全身の骨が, まるで溶けていくかのような痛み. 呼吸をするたびに, 肺が軋む.

鏡に映る自分の顔は, 別人のようだった. 血の気のない肌, 窪んだ目.

私の時間は, 確実に終わりに近づいている.

明日は, 聖穂姉さんと一歩の婚約発表パーティー.

彼らが最も輝く日.

リビングには, パーティーのために飾り付けられた豪華な装飾品が, 眩いばかりに輝いていた.

聖穂姉さんは, まさに主役といった様子で, 中央に立っていた. 彼女は, 私のために作った, 特別なドレスを身につけていた.

「あら, 美心. 来たのね」

聖穂姉さんが, 私に気づいた. 彼女の顔には, 勝利の笑みが浮かんでいた.

その時, 玄関のドアが開き, 両親が入ってきた. 彼らの顔にもまた, 疲労の色が濃く表れているように見えた.

「美心, あなたも来ていたのね」

母は, 私を見るなり, 少し驚いたような顔をした. そして, 彼女の胸元には, 私が代々受け継いできたはずの, 祖母の形見のブローチが飾られていた.

「聖穂が, 美心からブローチを譲り受けたそうよ. 美心も, ようやく分別がついたわね」

母の言葉は, まるで私を褒めているようだった. だが, その裏には, 私への不満が隠されていた.

「そうだな, 美心. 聖穂を見習いなさい. 家庭を顧みず, 仕事ばかりしていては…」

父もまた, 母に同調した. その言葉は, まるで私の存在を否定するかのようだった.

彼らの言葉は, 私の心を深く抉った. 私の人生は, ずっと彼らの期待に応えようと必死だった.

だが, 私は一度たりとも, 彼らに認められたことはなかった.

私は, 彼らに背を向けた. 私の心は, 絶望の淵に沈んでいた.

パーティーが始まった. 上流社会の華やかな面々が, 会場を埋め尽くしていた.

「広瀬美心さんも, いらっしゃっているわね. 病気だと聞いていたけれど」

「ずいぶん痩せたわね. 少し悲惨な姿だわ」

人々のひそひそ話が, 私の耳に届いた. 彼らは, 私を好奇の目で見つめていた.

その時, 一歩が私の元へ歩み寄ってきた. 彼の顔には, 複雑な感情が浮かんでいた.

「美心, 本当に来てくれたんだな」

一歩の声は, どこか安堵しているようだった. 彼の目は, 私を真っ直ぐに見つめた.

「ええ. あなたたちを, 祝福するために」

私は, 薄く微笑んだ. 私の心は, 冷え切っていた.

一歩は何かを言おうとしたが, その言葉は聖穂姉さんに遮られた.

「美心, 来てくれてありがとう. 嬉しいわ」

聖穂姉さんが, 一歩の腕に抱きついた. 彼女の指には, 私が贈ったはずの, ダイヤモンドの婚約指輪が輝いていた.

そして, 彼女の胸元には, 母がつけていたはずの, 祖母の形見のブローチが.

「一歩さん. 私, 本当に幸せよ」

聖穂姉さんは, 一歩に甘えた声で言った.

「聖穂. 私もだ」

一歩は, 聖穂姉さんの肩を抱き寄せた.

彼らは, 壇上に上がり, 挨拶を始めた.

「私は, 美心に心から感謝しています. 彼女がいなければ, 今のKIYOHOは存在しなかったでしょう」

一歩の言葉は, 完璧な偽善だった. 私は, 無言でグラスを掲げた.

「美心, 本当にありがとう. あなたは, 私の人生の恩人よ」

聖穂姉さんは, 涙声で言った. 彼女の目には, 偽りの涙が浮かんでいた.

私の心は, 冷たい氷でできたかのように, 麻木していた.

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